会計名及び科目 | 国立学校特別会計 (項)大学附属病院 | |
部局等の名称 | (1) | 広島大学(平成16年4月1日以降は国立大学法人広島大学) |
(2) | 佐賀大学(平成16年4月1日以降は国立大学法人佐賀大学) | |
不適正に経理された経費の内容 | (1) | 患者の診療に使用する診療材料等の購入、医療機器等の修理点検に要する経費 |
(2) | 患者の診療に使用する医薬品等の購入に要する経費 |
不適正に経理された経費の額 | (1) | 689,910,510円 | (平成11年度〜15年度) |
(2) | 81,810,588円 | (平成15年度) |
1 会計経理の概要等
国立大学法人広島大学及び国立大学法人佐賀大学は、平成16年4月1日、文部科学省(13年1月5日以前は文部省)の施設等機関として設置されていた広島大学及び佐賀大学に係る権利及び義務を承継して設立された。
広島大学病院(15年9月30日以前は医学部附属病院及び歯学部附属病院)及び佐賀大学医学部附属病院は、臨床医学の教育、研究を行うほか保険医療機関として患者の診療を行っている。そして、これらに要する経費は、法人化前の15年度までは文部科学大臣(13年1月5日以前は文部大臣)から国立学校特別会計の(項)大学附属病院として支出負担行為計画の示達を受けた歳出予算の額(以下「示達額」という。)の範囲内で賄うこととされていた。このうち、主として、患者の診療に必要な経費は(目)医療費(以下「医療費」という。)から、また、教育研究経費及び一般管理運営経費は(目)校費(以下「校費」という。)からそれぞれ支出されている。
国が行う契約から支払までの会計事務は、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等に従って処理することとなっている。
財政法等では、予算の執行を、支出の原因となる債務負担とその結果として発生する支出に区分して、支出の原因となる債務負担の段階において厳格な統制を実施し、予算の適正かつ計画的な執行を図ることを目的として支出負担行為制度が設けられている。
この支出負担行為制度は、示達額を超過して国の債務負担の原因となる行為が行われることを防止しようとするものであり、支出負担行為担当官は、支出官から当該支出負担行為が示達額を超過しないことの確認を受け、関係の帳簿に登記された後でなければ、支出負担行為をすることができないとされている。
国立大学法人の会計においては、文部科学大臣が国立大学法人に適用する会計の基準として定めた国立大学法人会計基準(平成16年文部科学省告示第37号)により、すべての取引及び事象について、複式簿記により体系的に記録し、正確な会計帳簿を作成しなければならないなどとされている。
また、国立大学法人は、各事業年度の業務運営に関する計画を定めることとされ、これに基づき自ら予算を作成し、財務健全化や規律保持を図るためにも予算による管理が行われている。
そして、各法人の会計事務は、財務及び会計に関して適用される法令等に準拠し、予算で定めるところに従うなどして行うこととされている。
2 検査の結果
本院では、5年12月に、文部大臣に対し、国立大学の附属病院における医薬品費の予算執行に当たり、示達額を超えて購入した医薬品、診療材料等に係る支払が年度内に行われず、翌年度又は翌々年度の予算から支払われている事態について、是正改善の処置を要求した。これに対し、文部省では、附属病院を置く各国立大学に対して通知を発するなどして、予算執行残額を確認した上で、その範囲内で法令に従って契約・発注を行うよう指導の徹底を図るなどの処置を講じたところであるが、上記と同様の事態が2国立大学で見受けられたため、14、15両年度の決算検査報告に掲記している。
そこで、法人に移行した後も含めて、附属病院における医薬品、診療材料等に係る会計経理が、法令や予算に従って適正に行われているかなどに着眼して検査した。
検査したところ、次のとおり、法令や予算に違背した事態が見受けられた。
(1)広島大学について
広島大学病院は、11年度から15年度までの医療費及び校費の会計経理において、各年度中に購入した診療材料、事務用消耗品等及び医療機器等修理点検の一部について、当該年度内に支出負担行為等の会計事務処理を行うと示達額を超えることになるため、会計事務を翌年度又は翌々年度に持ち越して処理していた。各年度において会計事務処理を行わなかった金額は、合計689,910,510円に上っている。
これらのうち、11年度から13年度までの分及び14年度分の大半については、それぞれ翌年度の医療費及び校費から支払われている。また、14年度分の一部及び15年度分については、国立大学法人広島大学が代金支払義務を承継しているのに、法人設立時の貸借対照表に負債(未払金)として計上することなく、16事業年度の診療経費から支払っている。
そして、その支払に当たっては、日付欄が空白の見積書・納品書・請求書等を業者にあらかじめ提出させておき、これに適当な日付を記入するなどし、これに合わせて支出負担行為及び支出の決議書、会計伝票を作成していた。
上記の事態について、年度別に件数、金額及び支払を行った科目を示すと次表のとおりである。
表 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(単位:件、円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(2)佐賀大学について
佐賀大学医学部附属病院は、15年度の医療費の会計経理において、年度中に購入した医薬品及び診療材料の一部について、当該年度内に支出負担行為等の会計事務処理を行うと示達額を超えることになるため、その事務処理を行わず、代金が支払われていなかった。その件数及び金額は39件、81,810,588円に上っている。
これらについては、国立大学法人佐賀大学が代金支払義務を承継しているのに、法人設立時の貸借対照表に負債(未払金)として計上することなく、16事業年度の診療経費から支払っている。
そして、その支払に当たっては、日付欄が空白の見積書・納品書・請求書を業者に提出させ、これに適当な日付を記入するなどし、これに合わせて会計伝票を作成していた。このように、法令や予算に違背し、医薬品、診療材料等の購入、医療機器等の修理点検に当たり、示達額を超えて購入等を行い、当該年度に行うべき会計事務処理を行わず、翌年度等に購入等を行ったかのようにして事実と異なる会計経理を行い、代金を支払っている事態は、著しく不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められる。
ア 事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと
イ 医薬品、診療材料等の購入などに係る予算執行について、法令や予算を遵守して適正に執行すべきことへの認識が欠如していたこと
ウ 予算執行の状況把握や見直し、医薬品等の在庫量の把握が適時適切に行われておらず、支出削減等の措置が十分に執られていなかったこと