ページトップ
  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第34 東日本電信電話株式会社、第35 西日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

@@@目次の項目@@@


(1)(2)加入者収容モジュールに搭載されている基板収容ユニットの転用を促進し、購入費の節減を図るよう改善させたもの

会社名 (1) 東日本電信電話株式会社
  (2) 西日本電信電話株式会社
科目 (1) 設備投資勘定
  (2) 設備投資勘定
部局等の名称 (1) 東日本電信電話株式会社本社
  (2) 西日本電信電話株式会社本社
購入の概要
旧型交換機を更改するため設置する新型交換機システムの、加入者収容モジュールに搭載する基板収容ユニットを購入するもの

購入数量 (1) 1,264個
(2) 1,788個
購入費 (1) 2億8813万余円
(2) 4億0758万余円
上記のうち購入の要がなかった数量 (1) 1,059個
(2) 688個
節減できた購入費 (1) 6260万円
(2) 4930万円

1 設備の概要

(新型交換機システムの設備)

 東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、老朽化した一般加入電話サービス用の旧型交換機を更改するため、新型交換機システムを導入してきており、平成17年3月末現在、NTT東日本の東京支店ほか16支店(注1) に643組、NTT西日本の大阪支店ほか15支店(注2) に519組設置している。
 新型交換機システムは、交換接続機能を担う回線処理モジュール及びこれと加入者宅との間の伝送機能を担う加入者収容モジュールで構成されている。
 このうち加入者収容モジュールは、電源部、制御部、回線接続部などがユニット化されていて、サービスを提供する一般加入電話回線等(以下「加入者回線」という。)の回線数に合わせ、各種のユニットを組み合わせて使用する構造となっている。そして、これらユニットのうち回線接続部は、加入者回線を1回線ごとに接続する基板と、それを128回線分実装可能な基板収容ユニットなどから構成されている(参考図参照)

(参考図)

(参考図)

(基板収容ユニットの調達及び設置)

 各支店では、加入者収容モジュールに基板収容ユニットを搭載するに当たって、1年後の加入者回線数を想定し、それを128回線で除して、基板収容ユニットの必要数量を算定している。そして、この必要数量に基づき、交換機設計支援等システムを用いて基板収容ユニットの設置工事の設計を行い、基板収容ユニットの搭載位置等を決定するとともに、これと並行して、基板収容ユニットの調達を行っている。
 基板収容ユニットの調達においては、まず支店内で加入者収容モジュールに設置済みの基板収容ユニットのうち加入者回線が全く割り付けられていないもの(以下「未利用ユニット」という。)を撤去して転用し、支店内の転用で賄えない場合は、各支店から返納され本社が管理する物流倉庫に保管されている未利用ユニットを転用することとしている。そして、なお不足する場合に、本社を通じてメーカーから新品を購入して調達する仕組みになっている。

(割付システムと基板収容ユニットの管理)

 本社では、加入者収容モジュール搭載の基板収容ユニットに実装された基板に加入者回線を割り付けるための回線設定切替システム(以下「割付システム」という。)を管理・運用している。一方、支店では、基板収容ユニットの設置工事の施工後、基板を実装したときは、その設備情報を割付システムに登録する作業を行っており、これにより加入者回線の割り付けが可能な状態となる。また、基板の実装を変更したときは、その都度、割付システムに変更情報を登録している。
 そして、NTT東日本の本社では四半期に一度、NTT西日本の本社では支店からの要求に応じて、割付システムから出力した基板の加入者回線割付情報一覧表(以下「回線一覧表」という。)を各支店に配布しており、各支店では、これに基づいて、加入者回線の割付数が少なく低利用となっている基板収容ユニット(以下「低利用ユニット」という。)に収容されている加入者回線を、回線収容可能数に余裕のある基板収容ユニットに移し替えて(以下、このような作業を「集約」という。)、低利用ユニットの解消と設備利用の効率化を図るなどの管理を行うこととしている。

(基板収容ユニットの転用及び返納)

 各支店では、回線一覧表に基づき加入者回線を集約した結果生じた未利用ユニットについて、設備投資を抑制するため、支店内の加入者回線の需要が見込まれる加入者収容モジュールで使用するための転用を検討することとしている。
 また、支店内で当分の間、未利用ユニットの利用が見込まれない場合は、本社が管理する物流倉庫に返納し、在庫品として、必要とする支店に払い出される仕組みとなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 加入者回線サービスの大半を占める一般加入電話については、IP電話の普及・拡大が急速に図られているなどして、今後更なる加入者回線数の減少が予想される一方、両会社では、ユニバーサルサービスとして固定電話網の維持が義務付けられており、今後も加入者収容モジュールや基板収容ユニット等の調達を必要としている。
 このような中で、利活用可能な基板収容ユニットの管理、転用が適切に行われ、購入費の節減が図られているかに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、NTT東日本の東京支店ほか16支店、NTT西日本の大阪支店ほか15支店において、〔1〕16年9月末から17年3月末までの期間に基板収容ユニットの設置又は撤去工事が行われていない加入者収容モジュールに搭載されていた基板収容ユニット(以下「搭載ユニット」という。)と、〔2〕16年12月1日から17年3月末までの期間に新たに設置された基板収容ユニット(以下「新設ユニット」という。)を対象として、〔1〕の搭載ユニットの中に〔2〕の新設ユニットとして転用可能なものがどの程度あったかを調査することとした。なお、〔1〕と〔2〕の期間が異なるのは、転用の決定から撤去までに一定の期間を要することを考慮したことによる。
 また、上記〔1〕の搭載ユニット数の把握に当たっては、各支店が加入者回線の集約に利用している回線一覧表のほか、基板収容ユニットの搭載位置、数量等の情報が容易に入手可能な所内設備エンジニアリング支援システム(以下「設備記録システム」という。)の登録情報を利用することとした。この設備記録システムは、各支店が棚卸し等の資産管理に使用しているもので、前記の交換機設計支援等システムから情報が転送されている。

(検査の結果)

 両会社における新設ユニットは、5,344個(NTT東日本2,520個、NTT西日本2,824個)で、そのうち2,292個(同1,256個、同1,036個)は他から転用されたもので、購入して設置されたものは3,052個(同1,264個・購入金額2億8813万余円、同1,788個・購入金額4億0758万余円)となっていた。
 一方、搭載ユニットのうち、前記の期間における利用状況の把握に必要なデータが入手できたものは、90,721個(同42,150個、同48,571個)で、この中には、次のようなものが見受けられた。

(1)回線一覧表に記載されていない未利用ユニット

 設備記録システムに登録されていながら、回線一覧表に記載されていないため、各支店において転用の可否の判断の対象外となっている搭載ユニットが東京支店ほか16支店で2,962個、大阪支店ほか15支店で3,596個、計6,558個見受けられた。
 これらは、割付システムでは、基板が一度も実装されなかったり、すべて抜去されたりした基板収容ユニットは、加入者回線の割り付けの対象外となるため、回線一覧表に記載されていない未利用ユニット(以下「未登録ユニット」という。)である。
 しかし、設備記録システムから基板収容ユニットの搭載位置情報を抽出し、回線一覧表と照合すれば未登録ユニットを把握でき、転用できるものと認められた。

(2)回線一覧表に記載されている未利用ユニット

 回線一覧表に記載されている搭載ユニットの中に、16年9月末において、実装されている基板に加入者回線が全く割り付けられておらず、その状態が17年3月まで継続していたものが、東京支店ほか9支店(注3) で339個、大阪支店ほか13支店(注4) で130個、計469個見受けられた。
 これらは、各支店において、支店内に転用先がなく、撤去しても撤去工事費が計上されるのみで、支店の損益に不利となるとして撤去していなかったものである。
 しかし、これらの未利用ユニットは、物流倉庫に返納していれば、他の支店に転用できるものと認められた。

(3)低利用ユニット

 回線一覧表に記載されている搭載ユニットの中に、16年9月末において、加入者回線が1回線しか割り付けられておらず、その状態が17年3月まで継続していたものが、東京支店ほか13支店(注5) で1,170個、大阪支店ほか14支店(注6) で524個、計1,694個見受けられた。
 これらは、回線一覧表の配布が四半期に一度であるなどして、各支店で基板収容ユニットの利用状況を随時確認できる状態にないことから、積極的に加入者回線の集約を行うことをしていなかったものである。
 しかし、回線一覧表を各支店で適宜閲覧可能とし、日常業務の中で集約を行っていれば、未利用ユニットとして転用できるものと認められた。
 したがって、上記(1)の未登録ユニット6,558個、(2)の未利用ユニット469個及び(3)の低利用ユニット1,694個、計8,721個(NTT東日本4,471個、NTT西日本4,250個)については、適切な管理を行っていれば、前記の購入した新設ユニットに代えて転用できたものもあったと認められた。

(節減できた購入費)

 上記8,721個のうち、1箇所の加入者収容モジュールから一度に数個以上撤去でき、1個当たりの撤去工事費が購入費より低価となると認められるものを転用したとすれば、購入した新設ユニットのうち1,747個(NTT東日本1,059個、NTT西日本688個)は購入の要がなく、撤去工事費を考慮してもNTT東日本で約6260万円、NTT西日本で約4930万円の購入費が節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
ア 各支店において、割付システムではすべての基板収容ユニットの情報を把握できないことについて十分認識していなかったため、設備記録システムなど他のシステムの利用に対する配慮が十分でなかったこと、及びこのことに対する本社の指導が十分でなく、その周知徹底を図っていなかったこと
イ 各支店において、全社レベルで基板収容ユニットを有効に利用する意識が十分でなく、物流倉庫への返納が促進されなかったこと、及びこのことに対する本社の指導が十分でなかったこと
ウ 本社において、回線一覧表を四半期に一度又は支店から要求があったときに配布するにとどめていたこと、及び各支店において、加入者回線の集約が日常業務の中で十分行われなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、両会社では、回線一覧表を各支店が適宜確認できるよう情報提供を行うとともに、17年9月に、各支店に対して次のような内容の指示文書を発し、基板収容ユニットの転用を促進するための処置を講じた。
ア 回線一覧表の情報を設備記録システム等で補い、運用する設備を漏れなく管理すること
イ 当分の間利用が見込まれない未利用ユニットについて、物流倉庫に返納すること
ウ 回線一覧表を適宜確認し、日常業務の中で加入者回線を集約しておくこと

(注1) 東京支店ほか16支店 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨、長野、新潟、宮城、福島、岩手、青森、山形、秋田、北海道各支店
(注2) 大阪支店ほか15支店 大阪、京都、兵庫、名古屋、静岡、岐阜、三重、金沢、広島、岡山、山口、愛媛、福岡、熊本、鹿児島、沖縄各支店
(注3) 東京支店ほか9支店 東京、千葉、埼玉、茨城、長野、宮城、福島、岩手、秋田、北海道各支店
(注4) 大阪支店ほか13支店 大阪、京都、兵庫、名古屋、岐阜、三重、金沢、岡山、山口、愛媛、福岡、熊本、鹿児島、沖縄各支店
(注5) 東京支店ほか13支店 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、長野、新潟、宮城、福島、青森、秋田、北海道各支店
(注6) 大阪支店ほか14支店 大阪、京都、兵庫、名古屋、静岡、岐阜、三重、金沢、広島、岡山、山口、福岡、熊本、鹿児島、沖縄各支店