会計名及び科目 | 道路整備特別会計 | (項)道路事業費 |
(項)北海道道路事業費 | ||
(項)沖縄道路事業費 | ||
(項)道路環境整備事業費 | ||
(項)北海道道路環境整備事業費 | ||
(項)沖縄道路環境整備事業費 |
部局等の名称 | 国土交通本省(平成13年1月5日以前は建設本省)、国土交通省東北地方整備局(13年1月5日以前は建設省東北地方建設局)ほか7地方整備局、国土交通省北海道開発局(13年1月5日以前は総理府北海道開発庁)、内閣府沖縄総合事務局(13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁)、岩手県ほか21都府県、横浜市ほか6政令指定都市 |
事業の概要 | 道路事業の一環として、安全で快適な通行空間の確保、都市災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上等を目的として、電線共同溝を整備し道路の無電柱化の推進を図るもの |
検査した電線共同溝整備事業費の合計 | 2325億円
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(平成7年度〜16年度) | |
直轄事業 | 1082億円
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国庫補助事業 | 1243億円
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(国庫補助金相当額624億円) |
1 事業の概要
国土交通省では、道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号。平成15年4月以降は道路整備費の財源等の特例に関する法律。)等に基づいて、直轄事業と国庫補助事業として道路事業を実施している。
そして、道路の種類及びその道路管理者は、道路法等に規定されており、政令で指定する区間(以下「指定区間」という。)内の一般国道については国土交通大臣、指定区間外の一般国道及び都道府県道については都道府県又は政令指定都市、市町村道については市町村が当該道路の道路管理者とされている。
国の災害対策は、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)に基づき行われており、国土交通省は防災業務計画を、都道府県及び市町村は地域防災計画を、それぞれ策定している。そして、国土交通省防災業務計画では、災害発生時におけるライフライン確保の重要性から計画的かつ重点的な電線共同溝の整備等を推進することとし、また、都道府県地域防災計画等においても同様に電線共同溝の整備等を推進することとしている。
また、国が13年3月に情報通信技術関連施策を推進するために策定したe−Japan重点計画に沿って、国土交通省では、道路、河川等の公共施設管理用光ファイバの整備と併せて電線共同溝の整備による電線類の地中化を推進している。
国土交通省では、阪神・淡路大震災を契機として、7年3月に電線共同溝の整備等に関する特別措置法(平成7年法律第39号。以下「電共法」という。)が施行されたのに伴い、電線共同溝整備事業を電共法に基づき実施している。同事業は、安全で快適な通行空間の確保、都市災害の防止等を目的として実施するものである。
そして、電線共同溝は、2者以上の電線管理者の電線類を収容するため道路管理者が道路の地下に設ける施設をいい、電線類を収容するための管路、電線類の分岐部分を収容するための施設等から構成されている。
電線共同溝の整備は、道路管理者、電線管理者が参加している都道府県電線類地中化協議会において作成した計画を基本として、各地方ブロックごとに組織された電線類地中化協議会(以下「協議会」という。)において、5箇年程度の整備箇所及び整備時期についての計画を決定し、国土交通省のほか電力事業者や通信事業者の代表等を構成メンバーとする電線類地中化推進検討会議において策定した電線類地中化5箇年計画等(以下「電線類地中化計画」という。)に基づいて実施している。
近年の厳しい財政状況により公共事業費が抑制されている中、電線共同溝整備事業は、地域活性化等の社会的要請に対応する道路事業として重要性が高まっており、電線共同溝整備のために国が支出した額は、電線共同溝整備事業費、電線共同溝整備事業費補助を合わせて、7年度から16年度までに、計6,130億余円となっている。そして、年度ごとの額は、7年度69億余円、8年度347億余円、9年度495億余円、10年度485億余円、11年度583億余円、12年度677億余円、13年度797億余円、14年度807億余円、15年度936億余円、16年度930億余円と増加傾向にある。
電共法によると、道路管理者は、電線を地下に埋設し、地上の電線、電柱を撤去または設置の制限をすることが特に必要と認める道路について、区間を定めて、電線共同溝を整備すべき道路として指定(以下、指定された道路を「指定道路」という。)することができるとされている。そして、指定道路については、地中化の効果を確保するために新たな上空の占用を制限しており、原則として電線、電柱に新たに占用許可をしてはならないこととされている。
電共法によると、道路管理者は、指定道路について、あらかじめ整備完了後の占用の許可を申請した電力事業者、通信事業者等(以下「占用予定者」という。)の意見を聴いて、電線共同溝整備計画(以下「整備計画」という。)を策定し、これに基づき電線共同溝の建設を行うこととされている。そして、整備計画には、工事期間、占用予定者が負担する建設負担金の額や納入時期、占用予定者の電線類の入溝予定時期等を明示した敷設計画等の事項を定めることとされている。
また、占用予定者が負担する建設負担金の額については電線共同溝の整備等に関する特別措置法施行令(平成7年政令256号。以下「施行令」という。)において定められており、占用予定者が電線共同溝の建設によって支出を免れることとなる推定の投資額を勘案して算出した費用とされている。そして、16年4月以降の建設負担金は、電線類1条につき1m当たり505円となっている。なお、電線共同溝の建設費は、1m当たり30万円から40万円程度である。
道路管理者は、電共法の規定に基づき、整備した電線共同溝を適正かつ円滑に管理するため、構造の保全及び敷設する電線類の管理に関する事項等を内容とした電線共同溝管理規程(以下「管理規程」という。)を定めることとされている。
管理規程では、電線共同溝は道路管理者が、電線類等の占用物件は占用者がそれぞれ管理することとされており、占用物件の入溝状況等を内容とする電線共同溝管理台帳(以下「管理台帳」という。)の作成及び保管、電線共同溝へ入溝する工事を施行するために必要な道路管理者への申請等について定めている。
道路に電線、電柱等を設置する場合は、道路法の規定に基づき、占用の目的、占用の期間、工事の時期等を記載した道路占用許可申請書を提出し、道路管理者の許可を受けることとされている。一方、電線共同溝の占用を希望する場合は、電共法の規定に基づき、指定道路について、整備完了後の占用の許可を申請することができるとされている。
そして、電線共同溝の整備完了後に電線類を入溝させる場合、施行令の規定に基づき、敷設工事の時期、電線類の入溝条数、延長等の敷設工事の概要を届け出なければならないとされている(以下、この届出を「敷設工事届」という。)。道路管理者は、占用予定者からの敷設工事届により、当該電線類について、道路法の規定に基づき占用料を算定し、占用料の徴収を行うこととなる。
指定区間内の一般国道の占用料は、道路法施行令(昭和27年政令第479号)で定められており、地上部に設ける共架電線は1m当たり都市部の甲地で年間20円、乙地で年間10円とされているのに対し、地下に設ける場合は甲地で年間10円、乙地で年間5円とされ、道路管理者が地方公共団体の場合は条例で定められている。
2 検査の結果
近年、地域住民の意識の高まりから、道路事業においては、円滑な交通の確保のみならず、沿道環境への配慮がなされている。
そして、電線共同溝の整備においても、安全かつ円滑な交通の確保、景観の整備等の目的に加えて、観光振興や地域活性化の観点からの推進が強く要請されており、このような社会的要請を背景として、電線共同溝の整備の対象範囲も、大規模商業地域から中規模商業地域、住居系地域へと拡大してきている。また、前記のとおり、地震時等におけるライフライン確保の重要性が認識され、さらに、e−Japan重点計画において、電線共同溝の整備を推進することとするなど、事業の重要性は近年急速に高まっており、事業費も増加してきている。
そこで、電共法施行以降10年が経過し、この間2期にわたる電線類地中化計画に基づき電線共同溝の整備が行われてきたところであり、今後も引き続き電線共同溝の整備が推進されることなどから、電線共同溝の整備及び管理の状況等について、次のような点などに着眼して検査した。
〔1〕 電線共同溝の占用予定者の入溝予定時期及び入溝状況等は適切に把握されているか
〔2〕 電線共同溝の管理は十分に行われているか
〔3〕 電線共同溝の整備は無電柱化の推進に資するものとなっているか
東北地方整備局ほか7地方整備局(注1) 、北海道開発局及び内閣府沖縄総合事務局(以下、これらを合わせて「地方整備局等」という。)管内の磐城国道事務所ほか20国道事務所等(注2) (以下「事務所」という。)及び岩手県ほか28都府県等(注3) が、7年度から16年度までの間に整備した電線共同溝750箇所(直轄事業229箇所、国庫補助事業521箇所)、これにかかる事業費2325億余円(直轄事業1082億余円、国庫補助事業1243億余円(国庫補助金相当額624億余円))について検査を実施した。
検査を実施した直轄事業229箇所の電線共同溝の延長は計249,997m、国庫補助事業521箇所の延長は計327,019mであり、計750箇所の延長は合計577,016mである。また、750箇所のうち直轄事業21事務所の204箇所、国庫補助事業29都府県等の438箇所、計642箇所は16年度末までに整備が完了している。
これらの整備箇所における事業の実施状況は以下のとおりである。
(1)占用予定者等の入溝状況
直轄事業204箇所のうち整備完了後1年以上経過した176箇所及び国庫補助事業438箇所のうち整備完了後1年以上経過した360箇所、計536箇所の入溝状況について調査したところ、電力事業者及び大規模通信事業者については、電柱に添架している電線を電線共同溝に入溝させるもののほか、電線共同溝整備後に必要となる地域の将来需要の分を含めていることなどから、比較的多数の入溝予定条数を設定していた。これに対し、地域のケーブルテレビ会社等については、入溝予定条数を1条程度と設定していた。そして、地域のケーブルテレビ会社等の小規模事業者は、電力事業者等の大規模事業者に比べ資金力に差があり、事業展開が経済状況の変化に左右されやすいと思料されることなどから、占用予定者等を大規模事業者と小規模事業者とに分類して入溝状況等について調査した。
ア 大規模事業者の入溝状況
大規模事業者の入溝状況を延べ事業者数でみたところ、上記の536箇所に入溝予定のある大規模事業者数は延べ1,035事業者となっていた。
1,035事業者について、経過年数別に入溝状況をみたところ、図1のとおり、経過年数が整備完了後1年以上2年未満の100箇所の入溝予定事業者数197事業者に対して入溝事業者数は140事業者となっている。そして、入溝予定事業者数に占める入溝事業者数の割合は2年以上3年未満の約83%で以後漸増しており、整備完了後5年以上経過した234箇所の入溝予定事業者数431事業者のうち46事業者については、入溝していない状況となっていた。
そして、大規模事業者は電柱管理者であることが多く、比較的計画的に事業参加しているため、上記のように整備完了後年以上経過した箇所で80%を超える状況となっていた。
図1 大規模事業者の入溝状況
イ 小規模事業者の入溝状況
小規模事業者の入溝状況を延べ事業者数でみたところ、前記の536箇所に入溝予定のある小規模事業者数は延べ1,814事業者となっていた。
1,814事業者について、経過年数別に入溝状況をみたところ、図2のとおり、経過年数が整備完了後1年以上2年未満の100箇所の入溝予定事業者数339事業者に対して入溝事業者数は115事業者となっている。そして、入溝予定事業者数に占める入溝事業者数の割合は増加しているものの、整備完了後5年以上経過した234箇所の入溝予定事業者数730事業者のうち264事業者については、入溝していない状況となっていた。
そして、小規模事業者は事業規模が小さく事業展開の変更等のため、大規模事業者では約83%となっている整備完了後の経過年数が2年以上3年未満の整備箇所の入溝予定事業者数に占める入溝事業者の割合は、約47%にとどまっていた。
図2 小規模事業者の入溝状況
道路管理者は、未入溝となっている事業者について未入溝の理由や今後の入溝予定等を把握することとし、整備した電線共同溝の利用を促進するよう努めることが必要である。特に、小規模事業者については、計画的に入溝が促進されるよう整備計画策定時において十分に入溝予定時期等について把握しておくことが重要である。
(2)電線共同溝の管理状況等
道路管理者は、整備された電線共同溝を適正かつ円滑に管理するために管理規程及び管理台帳を整備することとされているが、その整備状況等は次のとおりである。
ア 管理規程等の整備状況
管理規程については21事務所11府県等においては定めているものの、18都県等においては定めていない。また、管理台帳は電線共同溝への電線類の入溝条数や入溝管路の把握等、管理規程に基づく電線共同溝の管理の基礎となるものであるが、管理台帳を整備しているのは、5事務所5県等にとどまっており、16事務所24都府県等において未整備のままとなっている事態が見受けられた。
イ 保安管理の状況
道路管理者及び入溝事業者は、施設及び入溝している電線類について、常時良好な状態に保つよう努めなければならないとされている。また、近年におけるテロ対策の観点から、国土交通省においても不審者の入溝防止等道路管理の強化を図っているところであり、電線共同溝の既設の上蓋に加えて、中蓋を新たに設置している整備箇所も見受けられる。
そこで、電線共同溝の入溝に必要な鍵の管理、貸出しの手続等についてみたところ、21事務所14府県等では管理規程等において定めているものの、15都府県等においては定めていなかった。また、21事務所10都府県等においては、占用予定者が電線類の入溝工事等を行うため電線共同溝に入溝する際、入溝日時や入溝目的等を把握できる入溝届等を徴しているが、19府県等においては、入溝届等を徴していなかった。
ウ 入溝している電線類の把握状況
電線共同溝に入溝している電線類の把握状況を確認するため、9事務所、22都府県等で整備された直轄事業17箇所及び国庫補助事業71箇所において、電線類の入溝状況を実地に検査した。
この結果、敷設工事届等により道路管理者が把握している電線類以外の電線類の入溝を確認したものが6事務所で6箇所、13都府県等で26箇所見受けられた。また、他の占用予定者の入溝予定管路に別の占用予定者の電線類が入溝していたり、敷設工事届等により、道路管理者が入溝済みと把握している管路に電線類の入溝が確認できなかったりしているものが、2事務所で3箇所、7都県で10箇所見受けられた。
このほか、道路管理者において、敷設工事届等の資料が確認できず、このため整備箇所の電線類の入溝状況が把握できていない箇所が6都県等の9箇所で見受けられた。
上記のように、道路管理者が、電線共同溝の管理に当たって、電線共同溝を適正かつ円滑に管理するための管理規程や管理台帳の整備が十分でなかったり、入溝している電線類を十分に把握していなかったりなどしている事態が見受けられた。
今後、事業が更に進ちょくし管理対象となる電線共同溝の数が膨大となり、入溝状況が複雑になった場合に備え、入溝の促進や無電柱化の推進に資するよう管理規程や管理台帳の整備を十分に行い、入溝している電線類について正確に把握する必要がある。
また、道路占用のための敷設工事届等により道路管理者が把握していない電線類については、占用料の納入状況を確認することも必要である。
(3)無電柱化の状況
都府県等が管理している道路には地域に密着した生活道路も多数に上り、整備箇所には駅周辺の密集地域等も多く見受けられる。これらの道路には、水道管等の占用物件が多数あり、事業の推進が困難となる場合もある。一方、これらの密集地域で地震等の災害が発生した場合、大きな被害が想定される。
そこで、都府県等における国庫補助事業による整備箇所のうち、整備完了後1年以上経過した360箇所について、無電柱化が図られているか、その状況を調査したところ、次表のような状況となっていた。
(A)整備完了後1年以上経過箇所数及び延長 | |||||||||||
(A)のうち無電柱化完了箇所数及び延長 | (A)のうち無電柱化未完了箇所数及び延長 | ||||||||||
(B) 一部区間 |
(C) 全区間 |
(B)+(C) 合計 |
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左のうち整備完了後5年以上経過箇所数及び延長 | |||||||||||
箇所数
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延長(m)
|
箇所数
|
延長(m)
|
箇所数
|
延長(m)
|
箇所数
|
延長(m)
|
箇所数
|
延長(m)
|
箇所数
|
延長(m)
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360
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209,557
|
304
|
171,922
|
12
|
5,720
|
44
|
31,915
|
56
|
37,635
|
14
|
9,505
|
すなわち、29都府県等の360箇所において、電柱及び架空線が撤去され、無電柱化が完了している整備箇所は304箇所(延長171,922m)である。しかし、12箇所(同5,720m)については一部区間の完了となっており、44箇所(同31,915m)については無電柱化が全区間にわたって完了していなかった。そして、これら56箇所(同37,635m)のうち14箇所(同9,505m)は電線共同溝の整備完了後5年以上経過していた。このうち、特に整備完了後5年以上経過しても無電柱化が全区間にわたって完了していない整備箇所数は、5府県等で11箇所(同7,845m)となっている。
このような状況となっているのは、占用予定者が、当該区間に隣接する区間の整備完了時期との整合を図って入溝しようとすることや、周辺地域における電力需要等により入溝に時間を要することなどにもよるが、占用予定者の認識が十分でなく、整備計画の内容が必ずしも実情に即したものとなっていないこと、電線共同溝の管理の状況が必ずしも十分でなく、入溝の促進のための推進体制が十分確保されていないことなどによると思料される。また、無電柱化が完了していない整備箇所の中には、電柱所有者等が把握していない架空線が添架されていたり、架空線を添架している地元のマンション管理組合が当該整備計画に参加していないため、電柱に架空線が添架されたままであったりしているものが見受けられた。
このため、電線共同溝の整備完了後も地上部の電柱及び架空線が撤去されていない状況となっていた。
したがって、より実情に即した整備計画の策定に努めるとともに、このように長期にわたり無電柱化が完了していない整備箇所については、占用予定者等の入溝状況及び未入溝の理由や今後の入溝予定等を十分把握し、計画的な無電柱化の実施を図る必要がある。
(4)事業の実施体制等
事業の実施体制等についてみると、以下の事態が見受けられた。
ア 整備計画の策定時期等
電線共同溝の整備に当たって、道路管理者は、電線共同溝を整備すべき道路を指定し、整備計画を策定し、これに基づき電線共同溝の建設を行うこととされているが、15都県等の81箇所において指定が工事着工後であったり、11都県等の43箇所において整備計画の策定が工事竣工後であったりする事態が見受けられた。そして、12都県等の34箇所においては、整備計画の策定が途中で中断し、策定したのが整備完了後となり、占用予定者からの建設負担金の納入が整備完了の翌年度となっており、適切な時期に整備計画が策定されないことなどから、計画的な建設負担金の納入が行われていないなどの事態が見受けられた。
イ 推進体制
電線共同溝への入溝を促進するためには、それぞれの占用予定者の未入溝の理由や今後の入溝予定等について把握しておくことが重要となるが、道路管理者において、未入溝となっている占用予定者に対して入溝の打診等を行っているものの、協議会のほか、道路占用調整会議等の定期的な機会を捉えての具体的な要請等が十分行われていない状況となっていた。
また、電線類地中化計画においては、道路管理者、電線管理者等に地元関係者を加えた連絡会議の設置等により事業の円滑な推進を図るとしている。
そして、事業の推進に当たっては、道路管理者のみではなく、電線管理者等と地元関係者が十分に協議し、住民の要望や電線管理者等の事情等についての調整も重要であるが地元説明会等の機会を通じて地元関係者の意見を反映させている整備箇所もある一方、連絡会議が設置されず、地上部に設置する機器の設置位置等について十分な意見調整が整わないことなどから事業の円滑な推進が図られていない整備箇所も見受けられた。
(5)道路占用の許可申請について
道路に電線、電柱等を設置する場合には、前記の道路占用許可申請書を提出することとされている。そして、位置図、平面図等の添付書類、提出先等については道路管理者が定めており、事務所または事務所の出張所に提出することとなっている。
国土交通省では、手続の効率化を図るため、道路占用許可申請及びその添付書類の電子化を11年度以降推進しており、このための経費は、16年度末までに、開発経費3億3298万余円、運用経費6億8028万余円、計10億1327万余円となっている。
電子化を本格的に開始した13年度以降の道路占用許可申請における電子化の利用状況についてみたところ、13年度は申請件数14,687件に対し利用件数は1,093件であり、その利用率は7.4%となっていた。その後利用件数は漸増しているものの、16年度では申請件数18,851件に対し利用件数は2,311件とその利用率は12.3%と低率となっており、累計では、16年度末までの利用件数は、申請件数71,255件に対し6,213件となっていた。
3 本院の所見
近年、道路事業においては、沿道環境への配慮や地震時等におけるライフライン確保等の観点からの整備が要請されている。このような中、国土交通省においては、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備等を図るため、7年度以降電線共同溝整備事業を推進してきており、16年度以降も引き続き電線共同溝の整備を推進することとしている。この間、13年にはe−Japan重点計画において、電線共同溝の整備を図るとするなど、高度情報通信ネットワーク社会の推進が国の施策目標として掲げられており、事業の重要性は益々高まっている。
しかし、事務所、都府県等の電線共同溝の整備箇所における占用予定者等の入溝の状況や、整備した電線共同溝の管理の体制等は、前記の「検査の結果」で記述したとおり、必ずしも十分とはいえない状況となっており、電線共同溝の整備の効果が早期に発現しないおそれがあると思料される。
ついては、電線共同溝の整備は道路事業の中でも重要な施策であり、国土交通省においても、無電柱化を重点的に進める道路の区間を指定し、一定期間内で無電柱化を完了させるための仕組みを検討しており、その社会的要請も高まっていることから、より計画的かつ効果的な推進をすることが肝要である。
そのためには、国土交通省又は各道路管理者において、無電柱化推進検討会議や協議会を活用するなどし、次のような方策を講じ、電線共同溝の整備のための推進体制を充実させることが望まれる。
ア 電線共同溝整備事業の実施に当たって、電線管理者の入溝条数、入溝予定時期、費用負担等及び地元関係者等の意見を十分把握し、適時、適切な整備計画の策定に一層努め、無電柱化がより円滑に進ちょくするよう努めること
イ 管理体制を充実させるため、管理台帳等の整備を行い、占用予定者等の入溝状況等を正確に把握し、計画的、効果的な無電柱化の推進に資するように努めるとともに、未入溝となっている占用予定者等について、未入溝の理由や今後の入溝予定等を把握するなどして、整備した電線共同溝の利用が計画的に促進されるよう一層努めること
ウ 道路占用許可の電子化の普及を図るため、各地域において推進組織等を設置、活用し、電子化促進のための計画を定め、普及活動に努めること
(注1) | 東北地方整備局ほか7地方整備局 東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局 |
(注2) | 磐城国道事務所ほか20国道事務所等 磐城、郡山、北首都、横浜、甲府河川、金沢河川、岐阜、京都、兵庫、奈良、鳥取河川、松江、岡山、香川河川、土佐、宮崎河川各国道事務所、札幌、函館、室蘭、帯広各開発建設部、南部国道事務所 |
(注3) | 岩手県ほか28都府県等 東京都、京都、大阪両府、岩手、山形、群馬、埼玉、神奈川、山梨、岐阜、静岡、愛知、和歌山、島根、岡山、山口、徳島、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分各県、横浜、川崎、名古屋、京都、大阪、北九州、福岡各市 |