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  • 平成16年度|
  • 第4章 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況|
  • 第2節 特定検査対象に関する検査状況

国の広報業務の実施状況について


第20 国の広報業務の実施状況について

検査対象 内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、国会、裁判所、会計検査院
国の広報業務の概要 国がその施策等の背景、内容、必要性等に関する情報を各種媒体により広く国民に提供する業務のうち、外部に発注して実施しているもの
検査の対象とした広報業務の契約件数 4,471件(平成14年度〜16年度)
上記に係る支払相当額 920億円

1 検査の背景、視点及び対象

(検査の背景)

 我が国の社会経済は、少子・高齢化の進展、グローバル化、情報通信技術の革新とその普及等により大きく変化し、国民の意識やニーズも多様化しており、厳しい財政状況の中で国がその施策を推進するに当たって、国民の理解と協力を得ることはますます重要となってきている。また、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)が施行され、行政文書の開示を請求する権利が法定化されるなど、行政の説明責任、行政の透明化も一層重視されてきている。
 このような状況の下、国民に対する適時適切な情報提供の重要性は増しており、国が行う広報業務の役割も一層高まっているが、毎年度、多額の予算が投入されている国の広報業務の実施状況の全体像は、必ずしも明らかにはなっていない。
 また、広報関連の契約の経済性、透明性に対する社会的関心が高くなっている中で、広報業務については、その効果の判断が容易でないこともあり、効果的な実施についての検討や社会経済情勢の変化に対応した見直しが十分になされないまま業務が実施され、契約が継続されているおそれもある。

(検査の視点)

 このような背景を踏まえ、国がその施策等の背景、内容、必要性等に関する情報を広く国民に提供する広報業務について、その全体的な状況を把握するとともに、契約の競争性、透明性が十分確保され、経済的なものになっているか、また、広報業務を効果的に実施するための取組や、実施された業務の検証がどのようになされているかという視点から、各府省等を横断的に検査した。

(検査の対象)

 内閣ほか14府省等の本省及び外局等(以下「省庁」という。)の内部部局が実施した広報業務のうち、平成14年度から16年度までの間に外部に発注して実施した以下の媒体による契約で、契約金額(単価契約の場合は年間支払額。以下同じ。)が100万円以上のもの(以下「調査対象契約」という。)について検査を実施した。

媒体区分 広報媒体の内容
印刷広報 定期刊行物・広報誌、白書・年報、冊子・ハンドブック、ポスター、パンフレット・リーフレット・チラシなど
紙面広報 新聞紙面への広告掲載、雑誌紙面への広告掲載、交通広告、電光板、屋外広告板など
放送広報 テレビ番組、テレビスポット、ラジオ番組、ラジオスポット、ムービースポットなど
映像広報 ビデオ、DVD、CD—ROMなど
ホームページ インターネットを利用して各種の情報を提供するホームページ
イベント広報 シンポジウム、フェア・キャンペーン、コンクール、タウンミーティングなど

2 検査の状況

(1)各省庁が実施している広報業務の概況

ア 国における広報業務

 国の広報業務には、各省庁がその所管する施策、事務事業等について、それぞれ実施するもの(以下「省庁所管広報」という。)のほかに、政府の重要施策について、内閣官房の総合調整の下に、内閣府大臣官房政府広報室(以下「政府広報室」という。)が各省庁との協議・調整を行い実施するもの(以下「政府広報」という。)がある。

イ 調査対象契約の概要

 各省庁から提出された資料によると、調査対象契約は、表1のとおり、14年度から16年度までの3箇年度合計で、契約件数4,471件、これら契約の広報業務に係る支払相当額(注1) 920億余円となっている。

支払相当額 調査対象契約の中には、1契約で広報業務とそれ以外の業務(調査業務等)を併せて実施しているものが含まれており、このような契約については、契約金額を基にあん分計算を行って広報業務に係る金額を算出し、支払相当額とした。

表1 調査対象契約の概況

(単位:上段:件、中段:%、下段:千円)

媒体区分
区分
印刷広報 紙面広報 放送広報 映像広報 ホーム
ページ
イベント広報 複数媒体 合計
省庁所管広報 (1,860) (241) (112) (139) (473) (379) (410) (3,614)
<20.2>
12,885,474
<5.6>
3,570,297
<5.8>
3,730,429
<2.1>
1,355,842
<11.7>
7,441,773
<12.1>
7,729,001
<42.2>
26,808,786
<100>
63,521,603
政府広報 (90) (381) (320) (46) (15) (4) (1) (857)
<9.5>
2,718,254
<42.6>
12,176,984
<41.4>
11,819,921
<2.1>
612,835
<1.0>
302,010
<0.6>
192,937
<2.4>
700,000
<100>
28,522,944
合計 (1,950) (622) (432) (185) (488) (383) (411) (4,471)
<16.9>
15,603,728
<17.1>
15,747,282
<16.8>
15,550,350
<2.1>
1,968,677
<8.4>
7,743,783
<8.6>
7,921,938
<29.8>
27,508,786
<100>
92,044,548
注(1) 各欄の上段は契約件数、中段は支払相当額の割合、下段は支払相当額である。
注(2) 金額は千円未満を切り捨てているため、各項目の数値を合計しても合計欄の数値と一致しない場合がある。また、割合は、小数点第2位以下を切り捨てているため、各項目を合計しても100にならない場合がある。以下同じ。
注(3) 1件の契約で複数の広報媒体を使用している場合、「複数媒体」として区分している。

 そして、その媒体区分別の割合は、複数媒体29.8%、紙面広報17.1%、印刷広報16.9%、放送広報16.8%、イベント広報8.6%、ホームページ8.4%などとなっている。

(2)契約の競争性、透明性の状況

 国の役務等の調達の事務は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等に従って執行することとされており、契約を締結する場合には、原則として一般競争に付さなければならないとされている。ただし、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合、一般競争に付することが不利と認められる場合等においては、指名競争に付することとされている。また、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合等は随意契約によることとされている。
 そこで、以下、調査対象契約の中で、広報業務以外の業務を併せて実施しているものを除いた契約件数4,199件、契約金額865億余円について、契約の競争性及び透明性の状況を調査した。

ア 契約方式の状況

(ア)概況

 上記4,199件の契約を契約方式別にみると、表2のとおり、競争契約(一般競争契約及び指名競争契約をいう。以下同じ。)の割合は、件数で16.0%、金額で15.0%であるのに対し、随意契約の割合は、件数で83.9%、金額で84.9%となっており、広報業務の大半は随意契約で執行されている。

表2 契約方式の分類  
 件数 (単位:件、%)
契約方式
年度
競争契約 随意契約 合計
  うち少額随契を除いたもの
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
14年度 212 15.1 1,187 84.8 1,002 71.6 1,399 100
15年度 245 16.7 1,222 83.2 1,051 71.6 1,467 100
16年度 216 16.2 1,117 83.7 950 71.2 1,333 100
合計 673 16.0 3,526 83.9 3,003 71.5 4,199 100
   
 金額 (単位:千円、%)
契約方式
年度
競争契約 随意契約 合計
  うち少額随契を除いたもの
金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額 割合
14年度 3,703,744 13.3 23,946,845 86.6 23,622,210 85.4 27,650,589 100
15年度 4,559,087 13.9 28,132,010 86.0 27,830,112 85.1 32,691,098 100
16年度 4,717,791 18.0 21,470,485 81.9 21,181,929 80.8 26,188,276 100
合計 12,980,623 15.0 73,549,341 84.9 72,634,252 83.9 86,529,964 100
少額随契 法令により、予定価格が250万円を超えない工事又は製造をさせる場合、予定価格が160万円を超えない財産を買い入れる場合、工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約でその予定価格が100万円を超えない場合等は、随意契約によることができるものとされている。

(イ)省庁別の契約方式

 上記4,199件の契約について、省庁別(注2) に契約方式をみると、表3のとおりである。
 省庁所管広報については、省庁によって契約件数及び契約金額に隔たりがあり、また、契約内容及び広報媒体も同様でないことから、一概に表3の数値によって各省庁の競争性を比較することはできないが、38省庁のうち、随意契約の割合が90%以上となっているのは、件数ベースでは19省庁、金額ベースでは23省庁となっている。これに対して、政府広報における随意契約の割合は、件数ベースでは88.7%、金額ベースでは69.2%となっている。

省庁別 政府広報室について、省庁所管広報を実施している内閣本府とは別に計上している。

表3 省庁別の契約方式

(単位:件、千円、%)

契約方式
省庁名
競争契約 随意契約 合計
  うち少額随契を除いたもの
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数
金額 割合 金額 割合 金額 割合 金額
1 内閣官房 2 5.5 34 94.4 34 94.4 36
6,258 0.9 636,986 99.0 636,986 99.0 643,244
2 人事院 3 25.0 9 75.0 6 50.0 12
11,981 38.1 19,425 61.8 15,390 49.0 31,406
3 内閣本府(政府広報室を除く。) 16 7.7 191 92.2 179 86.4 207
777,835 42.0 1,073,770 57.9 1,056,246 57.0 1,851,606
4 宮内庁 1 10.0 9 90.0 8 80.0 10
12,560 6.5 178,377 93.4 177,285 92.8 190,937
5 公正取引委員会 3 7.8 35 92.1 17 44.7 38
7,196 4.7 144,661 95.2 109,598 72.1 151,857
6 警察庁 8 9.3 78 90.6 60 69.7 86
69,693 10.9 565,274 89.0 528,678 83.2 634,967
7 防衛本庁 7 9.7 65 90.2 65 90.2 72
28,492 5.7 467,130 94.2 467,130 94.2 495,623
8 防衛施設庁 2 25.0 6 75.0 4 50.0 8
4,024 8.5 42,767 91.4 39,869 85.2 46,792
9 金融庁 1 5.5 17 94.4 13 72.2 18
3,651 7.2 46,494 92.7 37,423 74.6 50,145
10 総務本省 54 22.0 191 77.9 173 70.6 245
400,409 8.7 4,195,750 91.2 4,169,045 90.7 4,596,160
11 公害等調整委員会 0 0.0 3 100 0 0.0 3
0 0.0 4,266 100 0 0.0 4,266
12 消防庁 0 0.0 24 100 24 100 24
0 0.0 266,542 100 266,542 100 266,542
13 法務本省 6 7.5 74 92.5 50 62.5 80
33,922 11.4 261,297 88.5 220,631 74.7 295,220
14 公安調査庁 0 0.0 11 100 0 0.0 11
0 0.0 18,646 100 0 0.0 18,646
15 外務省 38 17.4 180 82.5 170 77.9 218
302,631 9.4 2,903,641 90.5 2,889,625 90.1 3,206,273
16 財務本省 12 11.1 96 88.8 53 49.0 108
52,855 1.7 2,932,563 98.2 2,850,567 95.4 2,985,419
17 国税庁 83 48.2 89 51.7 51 29.6 172
588,315 19.1 2,488,384 80.8 2,423,031 78.7 3,076,700
18 文部科学本省 23 20.9 87 79.0 84 76.3 110
284,180 5.7 4,696,148 94.2 4,691,180 94.1 4,980,328
19 文化庁 2 25.0 6 75.0 4 50.0 8
11,777 11.1 93,553 88.8 88,576 84.0 105,330
20 厚生労働本省 113 30.9 252 69.0 116 31.7 365
676,468 22.7 2,298,953 77.2 2,043,569 68.6 2,975,422
21 社会保険庁 5 2.9 167 97.0 161 93.6 172
13,760 0.2 5,218,249 99.7 5,207,476 99.5 5,232,009
22 農林水産本省 22 19.8 89 80.1 78 70.2 111
87,326 7.7 1,039,440 92.2 1,024,977 90.9 1,126,766
23 林野庁 3 9.0 30 90.9 20 60.6 33
7,665 7.6 92,218 92.3 71,498 71.5 99,883
24 水産庁 0 0.0 15 100 15 100 15
0 0.0 1,185,645 100 1,185,645 100 1,185,645
25 経済産業本省 12 13.9 74 86.0 68 79.0 86
31,460 4.1 724,339 95.8 715,734 94.6 755,800
26 資源エネルギー庁 1 0.7 127 99.2 125 97.6 128
3,984 0.0 12,570,478 99.9 12,567,548 99.9 12,574,462
27 特許庁 40 44.9 49 55.0 38 42.6 89
199,555 23.2 659,627 76.7 645,361 75.1 859,183
28 中小企業庁 50 46.2 58 53.7 38 35.1 108
204,651 5.8 3,321,334 94.1 3,294,026 93.4 3,525,985
29 国土交通本省 22 6.6 311 93.3 288 86.4 333
128,480 5.7 2,109,823 94.2 2,071,698 92.5 2,238,303
30 気象庁 3 23.0 10 76.9 6 46.1 13
9,712 21.0 36,458 78.9 28,346 61.3 46,171
31 海上保安庁 9 17.3 43 82.6 24 46.1 52
25,471 16.7 126,776 83.2 89,138 58.5 152,248
32 海難審判庁 0 0.0 9 100 0 0.0 9
0 0.0 15,619 100 0 0.0 15,619
33 環境省 3 1.3 215 98.6 197 90.3 218
22,806 0.8 2,719,700 99.1 2,686,598 97.9 2,742,506
34 衆議院 12 21.4 44 78.5 25 44.6 56
70,755 26.0 201,064 73.9 171,117 62.9 271,820
35 参議院 2 6.0 31 93.9 26 78.7 33
62,760 17.2 301,131 82.7 293,050 80.5 363,892
36 国立国会図書館 2 18.1 9 81.8 6 54.5 11
17,462 17.9 80,047 82.0 76,455 78.4 97,509
37 裁判所 14 45.1 17 54.8 16 51.6 31
24,786 31.7 53,206 68.2 51,484 66.0 77,993
38 会計検査院 3 23.0 10 76.9 2 15.3 13
13,812 40.2 20,513 59.7 6,212 18.0 34,325
計  577 17.2 2,765 82.7 2,244 67.1 3,342
4,196,707 7.2 53,810,313 92.7 52,897,751 91.1 58,007,020
39 政府広報室 96 11.2 761 88.7 759 88.5 857
8,783,916 30.7 19,739,028 69.2 19,736,500 69.1 28,522,944
合計  673 16.0 3,526 83.9 3,003 71.5 4,199
12,980,623 15.0 73,549,341 84.9 72,634,252 83.9 86,529,964

(ウ)契約方式と落札比率

 上記4,199件の契約のうち、契約締結時に契約金額が確定していない概算契約等を除いた3,657件について、契約方式別に契約金額の予定価格に対する割合(以下「落札比率」という。)をみると、表4のとおりとなっている。
 広報業務における予定価格については、積算体系が確立している工事請負契約等と異なり、広報媒体によってはその妥当性を十分に検証できない面がある。したがって、一概に落札比率の高低をもって競争性を評価することはできないが、契約方式別の平均落札比率は競争契約で76.9%、随意契約で94.4%となっている。

表4 契約方式別の平均落札比率

(単位:件、%)

契約方式 件数 平均落札比率
競争契約 597 76.9
随意契約 3,060 94.4
合計 3,657 91.5

(エ)随意契約の理由

 随意契約を締結している3,526件について、随意契約の適用理由別に分類すると、表5のとおり、件数で77.8%(金額で94.2%)は「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由としている。

表5 随意契約の適用理由

(単位:件、千円、%)

随意契約の適用理由 件数 割合 金額 割合
国の行為を秘密にする必要がある 1 0.0 1,422 0.0
競争に付したが落札者がいない 16 0.4 153,324 0.2
契約の性質又は目的が競争を許さない 2,745 77.8 69,340,101 94.2
緊急の必要により競争に付することができない 33 0.9 285,713 0.3
競争に付することを不利と認める 48 1.3 385,431 0.5
少額のため 523 14.8 915,089 1.2
その他 160 4.5 2,468,257 3.3
合計 3,526 100 73,549,341 100

 そこで、「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由としている2,745件のうち、次項イに記述する企画競争を経たものを除いたもののうち、直近の16年度契約分711件、150億余円について、具体的な随意契約の理由をみると、表6のとおりとなっている。

表6 「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由としている随意契約の具体的な理由(平成16年度分)

(単位:件、千円、%)

随意契約の具体的な理由 件数 割合 金額 割合
事業内容について専門的知見及び高度な技術が必要である 256 36.0 6,030,680 39.9
中立性が必要である 1 0.1 49,017 0.3
契約相手方が著作権を有している 114 16.0 2,272,648 15.0
契約相手方が著作権以外の事業実施の権利を有している 168 23.6 1,910,704 12.6
自府省等において同様の契約実績を有する 46 6.4 367,199 2.4
他府省等において同様の契約実績を有する 2 0.2 4,554 0.0
業務上のセキュリティ確保のため 19 2.6 242,965 1.6
その他 105 14.7 4,200,753 27.8
合計 711 100 15,078,522 100

 しかし、「専門的知見」や「高度な技術」、契約相手方との「契約実績」を理由としているものについては、履行可能な者がその契約相手方だけに限られるのか、また、「著作権」や「事業実施の権利」を理由としているものについては、他の業者への発注が全くできないのか、検討する必要があると思料される。
 そして、このような検討が十分なされないまま「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由として随意契約を締結しているような場合については、随意契約が例外的なものとされている会計法等の趣旨にかんがみ、今後とも競争性の拡大について検討することが必要と考えられる。なお、内容の質の評価が重要となる場合がある広報業務の契約についても、公共工事等の分野で導入が図られている総合評価落札方式の活用が可能かどうかの検討も視野に入れることが有用と思料される。

イ 企画競争の状況

 国が発注する広報業務についても、他の業務と同様に、契約の経済性、効率性及び公正性の確保の観点から競争契約の割合を高めることは重要であるが、広報業務の内容によっては、競争契約を実施することが困難なものがあると考えられる。
 こうした中で、近年、随意契約によらざるを得ない場合においても、業者選定の公平性、透明性の向上等の取組の一環として、契約手続の前段階において、複数の業者から仕様書案や企画書等を提出させるなどして、これらの内容や業務遂行能力が最も優れた者を選定する手続(以下「企画競争」という。)を経て、その者を契約相手方とする随意契約(以下「企画競争随契」という。)が行われるようになってきている。

(ア)企画競争の実施状況

 随意契約3,526件、735億余円のうち、企画競争随契は、表7のとおり、570件、166億余円であり、件数で16.1%、金額で22.6%を占めている。

表7 企画競争の実施状況

(単位:件、千円、%)

区分 件数 割合 金額 割合
企画競争随契 570 16.1 16,681,433 22.6
企画競争を経ない随意契約 2,956 83.8 56,867,907 77.3
合計 3,526 100 73,549,341 100

(イ)企画競争の実施方法

 企画競争は、契約事務を行う契約担当部局ではなく、広報業務を実施する部局(以下「広報実施部局」という。)が実施するのが通例である。このため、その実施方法によっては、公平性、透明性が十分に確保されなかったり、恣意的な業者選定が行われたりするおそれもあることから、企画競争における実施方法の在り方は、極めて重要である。
 そこで、企画競争の実施方法について、16年度における企画競争随契196件を対象に検査したところ、次のような状況となっている。

a 参加者の公募

 企画競争の実施に当たり、既往に広報業務を発注した業者だけに限定するのではなく、広く公募することは、企画競争の公平性、透明性を高めるだけでなく、競争性を向上させることにもつながると考えられる。
 そこで、企画競争における参加者の公募の状況についてみると、図1のとおり、参加者を公募しているものは78.5%となっている。

b 契約担当部局の関与

 国の役務等の調達に当たっては競争契約が原則であることから、広報実施部局が企画競争を実施する場合においても、競争契約にできるかどうかの契約担当部局の判断は重要と考えられる。また、企画競争における業者選定は広報実施部局の判断によらざるを得ないとしても、契約担当部局も関与して、業者選定における透明性を担保することが必要である。
 そこで、企画競争における契約担当部局の関与の状況についてみると、図2のとおり、契約担当部局が仕様書案や企画書等の審査に参加しているものは7.6%、参加はしていないが審査内容の報告を受けているものは67.8%となっている。

図1 企画競争における参加者の公募の状況(平成16年度分)

図1企画競争における参加者の公募の状況(平成16年度分)

図2 企画競争における契約担当部局の関与の状況(平成16年度分)

図2企画競争における契約担当部局の関与の状況(平成16年度分)

c 審査を実施する者の構成

 仕様書案や企画書等の審査には、専門性及び客観性が求められることから、広報の専門的な知見や多様な視点からの評価が必要となる場合がある。
 そこで、企画競争において審査を実施している者の構成についてみると、表8のとおり、広報実施部局職員のみで審査を行っているものが69.8%となっている。

表8 企画競争における審査を実施している者(平成16年度分)

(単位:件、%)

  契約担当部局職員 広報実施部局及び契約担当部局以外の職員 外部専門家・外部有識者 その他 合計
(企画競争を実施したもの)
広報実施部局職員 左のうち広報実施部局職員のみ
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数
190 96.9 137 69.8 15 7.6 46 23.4 4 2.0 4 2.0 196
(注)
審査を実施している者の区分が複数ある場合があるので、内訳の計と合計は一致しない。

d 採点項目の設定及び採点項目数

 企画競争の審査に当たって、あらかじめ具体的に定めた複数の採点項目により採点を行うことは、審査の公正性を高めるだけでなく、審査結果の妥当性の検証にも寄与し、透明性を向上させると考えられる。
 そこで、審査における採点項目の設定の有無及び採点項目数についてみると、表9のとおり、採点項目を設定しているものが82.1%を占めるが、採点項目数が3項目以下のものが23.4%あり、また、採点項目を設定していないものも17.8%見受けられる。

表9 企画競争における採点項目の設定及び採点項目数(平成16年度分)

(単位:件、%)

採点項目を設定しているもの 採点項目を設定していないもの 合計
1項目 2項目 3項目 4項目 5項目 6項目以上
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
5 2.5 5 2.5 36 18.3 26 13.2 42 21.4 47 23.9 161 82.1 35 17.8 196 100

e 採点項目及び採点配分の開示

 公正な競争を確保する観点からは、仕様書案や企画書等の審査における採点項目及び採点配分を事前に業者に開示することが重要である。
 そこで、審査実施前に、採点項目、採点配分を業者に開示しているかどうかをみると、表10のとおり、これらを開示したものは10.2%、採点項目のみを開示したものは7.6%となっている。

表10 企画競争における採点項目及び採点配分の開示(平成16年度分)

(単位:件、%)

採点項目を設定しているもの 採点項目を設定していないもの 合計
採点項目及び採点配分を開示した 採点項目のみ開示した 開示していない
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数
20 10.2 15 7.6 126 64.2 161 82.1 35 17.8 196

 このように、企画競争については、その実施方法が区々となっており、実施方法によっては、公平性、透明性が十分に確保されなかったり、恣意的な業者選定が行われたりするおそれがあり、競争性を向上させ、業者選定の公平性、透明性を確保する企画競争の意義が実質的に損なわれかねない。
 したがって、今後、企画競争を実施するに当たっては、競争性、透明性を確保した実施方法の検討が重要と考えられる。

ウ 競争性、透明性の向上の可能性

 前項の記述のとおり、広報業務の発注の8割程度は、契約件数、金額ともに随意契約が占めているが、表4のとおり、競争契約の経済的効果は、落札比率の状況からもうかがえる。このため、できる限り競争契約の拡大を図るとともに、随意契約によらざるを得ない場合においても、複数の業者による企画競争を行うなどして実質的な競争性の拡大を図り、契約の透明性の向上を図ることが必要である。
 そして、特に、同種の広報媒体や同種の契約について、競争契約や企画競争随契を実施しているものもある一方、「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由として企画競争を経ない随意契約を実施しているものもあることから、他省庁の契約実例等の把握にも努めるなどして、競争の可能性を検討することが重要と考えられる。
 広報業務の契約における競争性、透明性の向上を図る余地があるものとして、次のような事例が見受けられた。

(ア)白書についての競争性の拡大の検討

 多くの省庁において、政治社会経済の情勢及び政府の施策の現状について、法律に基づいて国会に提出し又は閣議に報告若しくは配布する白書類(以下「白書」という。)を作成し、国民への周知に努めている。
 各省庁における白書の印刷・製本等に係る16年度の契約について、その契約方式をみると、表11のとおり、競争契約や企画競争随契を行っているものがある一方、企画競争を経ない随意契約としているものも多数見受けられる。

表11 白書の契約相手方別の契約方式(平成16年度分)

(単位:件)

契約方式
契約相手方
競争契約 企画競争随契 企画競争を経ない随意契約 合計
独立行政法人国立印刷局 2 12 11 25
その他 1 6 15 22
合計 3 18 26 47

 企画競争を経ない随意契約を行っているものについて、随意契約の具体的な理由を検査したところ、〔1〕契約相手方が白書等の印刷・製本等について実績を有している、〔2〕秘密を保持できる、〔3〕修正等に迅速に対応できる、〔4〕販売経路を有しているなどとなっている。また、独立行政法人国立印刷局(14年度は財務省印刷局)を契約相手方としているものについては、上記のほか、〔5〕「政府刊行物(白書類)の取扱いについて」(昭和38年10月事務次官等会議申合せ。以下「次官申合せ」という。)において、「白書類の印刷発行については、(中略)特に財務省印刷局を活用するものとする」とされていることを理由に挙げている省庁もある。
 しかし、白書の印刷・製本等について、現に競争契約を実施している省庁もあることを踏まえると、上記のような理由だけでは随意契約とする理由として十分ではなく、契約の公正性に欠けることになるおそれがある。
 したがって、白書の印刷・製本等についても、他部局や他省庁における契約実例を調査するなどして、履行可能な他の業者の把握に努め、競争契約や企画競争随契への移行を検討することが必要であると思料される。

<参考事例>

(a)白書について競争契約を実施しているもの

〔1〕 法務本省では、「犯罪白書」の印刷・製本等について、15年度までは、契約実績があることなどから、財務省印刷局と企画競争を経ない随意契約を行ってきたが、16年度から、仕様書において具体的な作業内容、校正等の作業日程、秘密を保持する義務、一般販売を行う際の条件等を定めることにより、一般競争契約に移行した。その結果、落札比率が低下するなど経済性の確保が図られている。

〔2〕 公正取引委員会では、「公正取引委員会年次報告(独占禁止白書)」の印刷・製本等について、従来は次官申合せに基づき財務省印刷局と契約していたが、15年度から財務省印刷局が独立行政法人国立印刷局となり、調達において一般の民間企業と区分する必要がなくなったと判断したことから、一般の印刷会社も競争に参加できる一般競争契約に移行した。その結果、落札比率が低下するなど経済性の確保が図られている。

(イ)仕様書等の内容を具体的に定めることによる競争性の拡大の検討

 ホームページの更新、広報誌等の作成等、毎年同様の業務を実施する契約を企画競争を経ない随意契約で行っているものの中には、随意契約の理由に「専門的知見」、「高度な技術」又は「同様の契約実績」を有していることを挙げているものがある。すなわち、これらは、それぞれ、契約相手方が業務の内容や作業の手順等を熟知していること、全体として整合性、統一性を確保する必要がある業務の一部を他の業者に請け負わせることができないこと、他の業者に替わると事業の継続性が確保されないことなどを理由とするものである。
 しかし、省庁によっては、このような専門性や技術の習熟、継続性を必要とする業務の場合でも、仕様書等で業務内容、実施手順等を具体的に提示することにより、履行可能な業者を複数に拡大することができると判断して競争契約を実施しているものがある。
 したがって、このような業務内容の契約においては、上記のように複数の業者が入札に参加できるようにすることにより、競争契約への移行を検討することが必要であると思料される。

<参考事例>

(b)ガイドラインを整備することなどにより、事業の継続性、統一性を確保しつつ、競争入札に付しているもの

 文部科学本省では、ホームページに係るコンテンツの作成、更新等の業務発注に当たり、業者が替わっても整合性や統一性が保たれるよう「ホームページの作成・運用に関するガイドライン」を作成し、入札説明書及び契約仕様書として添付することにより、一般競争入札による契約を締結し、実施させている。


(ウ)企画競争における透明性の向上

 国の行う広報業務において企画競争随契は拡大しているが、前記のとおり、その実施方法は区々となっている。
 すなわち、具体的な採点項目を設定せず、広報実施部局の限られた職員のみの審査では、公平性、透明性を向上させる取組である企画競争の意義が損なわれるおそれがある。一方、企画競争に際して、参加者を広く公募したり、審査に外部の第三者を加えたり、複数の具体的な採点項目を設定したりするなど、実施方法の公平性及び透明性を高める工夫をしているものも見受けられる。
 したがって、企画競争の参加者を限定し、採点項目も設定せず、広報実施部局の限られた職員だけで審査している契約については、実施方法を見直し、公平性、透明性の向上を図る必要があると思料される。

<参考事例>

(c)参加者を公募したり、複数の具体的な採点項目を設定したりなどして、企画競争の公平性、透明性を高めているもの

 特許庁では、複数の広報媒体による「模倣品・海賊版撲滅キャンペーン」を請け負わせる相手方を企画競争により選定している。そして、その実施に当たっては、参加者を広くホームページで公募したり、審査に広報実施部局の職員のほか契約担当部局及び広報担当課の職員を参加させたり、複数の具体的な採点項目及び審査基準を設定したりしている。

(3)予定価格の算定の状況

 国は、競争契約又は随意契約を行おうとする場合、契約金額を決定するための基準となる予定価格を、当該契約に係る仕様書等に基づいて算定することとされている。しかし、広報業務の契約における予定価格については、工事請負契約等のように積算体系が確立されておらず、使用する媒体によって積算項目もそれぞれ異なるため、統一的に比較しにくい面がある。
 そこで、共通的な積算項目と考えられる〔1〕新聞広告の広告掲載料、〔2〕テレビ番組・テレビスポット(以下「テレビ広告」という。)及びラジオ番組・ラジオスポット(以下「ラジオ広告」という。)の放送料について、予定価格の算定方法を検査した。

ア 新聞広告

(ア)新聞広告の予定価格の概要

 新聞広告の予定価格は、広告の制作費(企画、デザイン、出演料、写真撮影費等の項目からなる。)、広告を新聞に掲載する際の広告掲載料等からなっており、既に制作した原稿やデザインがある場合は、制作費は必要なく、広告掲載料のみとなる。
 このうち、広告掲載料は、広告の種類、量、範囲及び契約期間によって適用料金は異なるが、その料金については、広告関係団体が資料を発行、公表している。そして、各省庁では、広告掲載料の予定価格については、この公表資料のほか、契約相手方等から徴した参考見積書、業界各社の料金資料に基づくなどして算定している。

(イ)広告掲載料の算定方法

 16年度の新聞広告に係る契約のうち80契約、87件(1契約で複数の広告掲載料を算定する場合があるため、契約件数とは合致しない。)について、広告掲載料の予定価格の算定時における根拠資料の利用状況を検査したところ、表12のとおり、単一の資料のみを利用しているものが55件、複数の資料を併せて検討しているものが32件となっている。

表12 広告掲載料の予定価格の算定における根拠資料の利用状況(平成16年度分)

(単位:件、%)

単一の資料のみで検討 複数の資料を併せて検討
参考見積書 公表資料 業界各社の料金資料 公表資料
参考見積書 過去の実績額 業界各社の料金資料+参考見積書 小計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
13 14.9 7 8.0 35 40.2 55 63.2 9 10.3 9 10.3 4 4.5 22 25.2

複数の資料を併せて検討 合計
業界各社の料金資料 その他
参考見積書 過去の実績額 参考見積書+過去の実績額 小計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
4 4.5 3 3.4 1 1.1 8 9.1 2 2.2 32 36.7 87 100
 

 上記のうち、予定価格の算定の際に公表資料を利用している29件の広告掲載料について、公表資料の額に対する予定価格の額の比率をみると、表13のとおり、公表資料とそれ以外の根拠資料を併せて検討した場合の方が、公表資料のみを利用する場合よりこの比率が低くなっており、予定価格が低減している傾向がうかがえる。

表13 広告掲載料に係る公表資料の額に対する予定価格の額の比率(平成16年度分)

(単位:件、%)

比率
根拠資料の利用状況
100% 90%以上
100%未満
80%以上
90%未満
70%以上
80%未満
60%以上
70%未満
50%以上
60%未満
50%未満
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
公表資料のみ 5 71.4 2 28.5 7 100
公表資料とそれ以外の根拠資料を併せて検討 1 4.5 5 22.7 11 50.0 2 9.0 1 4.5 2 9.0 22 100

イ テレビ広告及びラジオ広告

(ア)テレビ広告及びラジオ広告の予定価格の概要

 テレビ広告及びラジオ広告の予定価格は、放送料(テレビ局及びラジオ局の放送実施料と放送管理料からなる。)、制作費(企画・構成費、出演料、ロケーション費用等の項目からなる。)等からなっている。
 このうち、放送料は、広告主がテレビ又はラジオの放送を利用する際に負担するもので、放送局及び放送時間のランクによって異なるが、その料金については、広告関係団体が資料を発行、公表している。そして、各省庁では、放送料の予定価格については、この公表資料のほか、契約相手方等から徴した参考見積書、業界各社の料金資料に基づくなどして算定している。

(イ)放送料の算定方法

 14年度から16年度までのテレビ広告及びラジオ広告に係る契約のうち、113契約、144件(1契約で複数の放送料を算定する場合があるため、契約件数とは合致しない。)について、放送料の予定価格の算定時における根拠資料の利用状況を検査したところ、表14のとおり、単一の資料のみを利用しているものが78件、複数の資料を併せて検討しているものが66件となっている。

表14 テレビ広告及びラジオ広告の放送料の予定価格の算定における根拠資料の利用状況

(単位:件、%)

単一の資料のみで検討 複数の資料を併せて検討
参考見積書 公表資料 業界各社の料金資料 過去の実績額 その他 公表資料
参考見積書 過去の実績額 小計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
41 28.4 3 2.0 27 18.7 1 0.6 6 4.1 78 54.1 7 4.8 19 13.1 26 18.0

複数の資料を併せて検討 合計
業界各社の料金資料 その他
参考見積書 その他 小計
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
27 18.7 3 2.0 30 20.8 10 6.9 66 45.8 144 100
 

 そして、上記のうち、予定価格の算定の際に公表資料を利用している29件の放送料について、公表資料の額に対する予定価格の額の比率をみると、表15のとおり、公表資料とそれ以外の根拠資料を併せて検討した場合の方が、公表資料のみを利用する場合よりこの比率が低くなっており、予定価格が低減している傾向がうかがえる。

表15 放送料に係る公表資料の額に対する予定価格の額の比率

(単位:件、%)

比率
根拠資料の利用状況
100% 90%以上
100%未満
80%以上
90%未満
70%以上
80%未満
60%以上
70%未満
50%以上
60%未満
50%未満
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
公表資料のみ 3 100 3 100
公表資料とそれ以外の根拠資料を併せて検討 1 3.8 2 7.6 4 15.3 2 7.6 7 26.9 2 7.6 8 30.7 26 100

ウ 積算の合理性の向上の可能性

 上記のように、同一の広報媒体を使用していても、契約によって経費の算定方法や算定根拠資料の額に対する予定価格の額の比率は区々となっているが、なかには、契約相手方等から徴した参考見積書と公表資料等とを比較検討するなど、広報業務に係る予定価格の積算方法の合理性の向上に努めているものも見受けられる。
 したがって、今後、新聞広告の広告掲載料、テレビ広告及びラジオ広告の放送料の算定に当たっては、できるだけ複数の者から参考見積書を徴するとともに、公表資料等との比較検討を行ったり、同種の契約実例を調査したりなどして、積算の合理性の向上を図ることが重要であると思料される。

(4)効果的な広報への取組と広報業務の検証の状況

ア 広報媒体の利用状況

 各省庁が効果的な広報を実施するに当たっては、特性の異なる広報媒体のいずれを使用するかの選択も重要な要素と考えられる。
各省庁が、14年度から16年度までの間に調査対象契約によって実施した広報業務における個別、具体的な広報媒体の利用件数(注3) をみると、表16のとおりとなっている。

広報媒体の利用件数 1件の契約で複数の広報媒体を使用して広報業務を実施しているもの(複数媒体)などがあるため、契約件数とは一致しない。また、前記(1)において「複数媒体」として区分していたものについては、ここではそれぞれ別々にカウントしている。

 そして、16年度の調査対象契約における広報媒体の利用件数1,515件のうち、政府広報167件では、紙面広報(59.2%)及び放送広報(25.7%)で8割を占めているのに対し、省庁所管広報1,348件では、印刷広報(58.4%)、イベント広報(13.7%)及びホームページ(11.5%)で8割を占めている。

表16 広報媒体の利用状況(平成14年度〜16年度)

(単位:件、%)

媒体区分
区分
印刷
広報
紙面
広報
放送
広報
映像
広報
ホーム
ページ
イベン
ト広報
合計
省庁所管広報 14年度 (59.3)
773
(7.6)
100
(4.5)
59
(5.1)
67
(9.5)
124
(13.7)
179
(100)
1,302
15年度 (58.6)
796
(7.3)
100
(4.1)
56
(5.5)
75
(10.9)
148
(13.4)
182
(100)
1,357
16年度 (58.4)
788
(7.4)
101
(4.5)
61
(4.2)
57
(11.5)
156
(13.7)
185
(100)
1,348
政府広報 14年度 (9.5)
18
(48.9)
92
(29.7)
56
(10.1)
19
(1.0)
2
(0.5)
1
(100)
188
15年度 (8.2)
16
(60.1)
116
(25.9)
50
(3.1)
6
(1.5)
3
(1.0)
2
(100)
193
16年度 (8.9)
15
(59.2)
99
(25.7)
43
(3.5)
6
(1.7)
3
(0.5)
1
(100)
167
合計 14年度 (53.0)
791
(12.8)
192
(7.7)
115
(5.7)
86
(8.4)
126
(12.0)
180
(100)
1,490
15年度 (52.3)
812
(13.9)
216
(6.8)
106
(5.2)
81
(9.7)
151
(11.8)
184
(100)
1,550
16年度 (53.0)
803
(13.2)
200
(6.8)
104
(4.1)
63
(10.4)
159
(12.2)
186
(100)
1,515

イ 効果的な広報への取組状況

 広報媒体としての利用件数が最も多い印刷広報、比較的制作コストが高く利用件数の多い紙面広報、インターネットの普及に伴い一層重要な媒体となっているホームページについて、効果的な広報に向けた各省庁の取組状況を調査した。

(ア)印刷広報

a 白書

 白書は、国会に提出又は閣議に報告若しくは配布されるほか、各省庁の施策、事務事業等を広く国民に情報提供することができる重要な媒体である。
 白書は、国民が直接閲読できるよう、印刷物を図書館等の公共機関に積極的に配布することも重要と考えられることから、各省庁が16年度に作成した41白書のうち配布先ごとの配布部数を把握している38白書について、図書館等の公共機関への配布割合をみると、表17のとおり、10%以上が3白書(ものづくり白書・製造基盤白書、防衛白書、政府開発援助白書)、5%以上10%未満が3白書(国民生活白書、交通安全白書、経済財政白書)、0%が23白書となっている。

表17 各省庁における白書の配布状況
省庁名 白書名 作成部数
(部)
配布部数
(部)
うち「公共機関(図書館等)」への配布割合(%)
人事院 公務員白書 3,000 2,950 0.0
内閣本府 経済財政白書 2,800 2,670 5.6
原子力白書 2,000 725 0.0
少子化社会白書 2,650 2,353 0.0
高齢社会白書 7,050 5,309 0.0
障害者白書 4,500 4,500 0.0
交通安全白書 400 279 6.4
青少年白書 2,600 2,450 4.0
男女共同参画白書 5,150 4,376 0.0
国民生活白書 1,700 1,400 7.1
防災白書 2,000 1,900 0.0
公正取引委員会 独占禁止白書 2,700 2,528 0.1
警察庁 警察白書 2,400 2,097 0.0
防衛本庁 防衛白書 11,900 11,899 11.3
総務本省 公益法人白書 1,300 1,130 0.0
地方財政白書 1,500 1,473 0.3
情報通信白書 3,400 3,280 1.6
公害等調整委員会 公害紛争処理白書 2,000 1,913 3.3
消防庁 消防白書 5,700 5,280 0.5
法務本省 犯罪白書 2,650 2,516 0.0
人権教育・啓発白書 2,000 1,958 0.0
外務省 政府開発援助白書 5,700 5,047 10.9
外交青書 4,000 3,682 1.6
文部科学本省 文部科学白書 2,000 1,500 0.0
ものづくり白書・製造基盤白書 1,098 988 23.0
厚生労働本省 厚生労働白書 1,050 805 0.0
労働経済白書 892 883 0.0
ものづくり白書・製造基盤白書 878 801 0.0
農林水産本省 食料・農業・農村白書 3,100 2,178 0.0
林野庁 森林・林業白書 3,440 3,229 0.0
水産庁 水産白書 3,000 2,600 0.0
経済産業本省 通商白書 1,000 993 0.0
ものづくり白書・製造基盤白書 1,048 948 0.0
資源エネルギー庁 エネルギー白書 2,360
中小企業庁 中小企業白書 2,200
国土交通本省 観光白書 3,300 3,103 0.0
国土交通白書 3,000 2,850 0.0
土地白書 2,750 2,480 2.0
首都圏白書 2,550 2,345 1.2
環境省 循環型社会白書 4,200
環境白書 2,070 2,020 0.0
(注)
「—」は、配布先ごとの配布部数を把握していないものである。

b 広報誌等及びパンフレット類

 各省庁の代表的な広報誌等24件及びパンフレット・リーフレット・チラシ(以下「パンフレット類」という。)のうち、各省庁ごとに原則として6件(注4) 、計143件を対象として、それぞれの作成部数と配布部数の把握状況をみると、表18のとおりである。

6件 作成部数の多寡による特徴の有無もみるために、各省庁ごとに、作成部数の多いものから順に3件、少ないものから順に3件、計6件を選定した。

 

表18 印刷広報の作成状況等
項目
印刷広報の区分
対象件数
(件)
作成部数 配布部数の把握状況
最大
(部)
最小
(部)
(部)
把握している
(件)
把握していない
(件)
広報誌等 24 12,152,000 7,128 16,223,300 23 1
パンフレット類 143 23,000,000 500 160,102,801 119 24

 このうち、配布先ごとの配布部数を把握していないものは、広報誌等1件、パンフレット類24件となっており、これらは作成した広報誌等やパンフレット類の利用実態が把握されていないものである。
 一方、配布部数を把握しているものは、広報誌等23件及びパンフレット類119件となっており、これらについて、各省庁の直接の配布先をみると、全体としては、図3のとおり、国の機関(33.0%)が最も多く、次いで地方自治体(20.0%)となっている。

図3 印刷広報の配布先別割合

図3印刷広報の配布先別割合

 このように、国の機関への配布部数の割合が高いのは、国の機関そのものを広報の対象とすることがあるほか、多くの省庁において、地方支分部局等を経由して配布するものがあるためと考えられる。しかし、本来国民に対する広報を目的とした広報誌等やパンフレット類が、国の機関の内部にとどまったままでは十分な効果は発揮されないこととなる。
 そこで、各省庁において、直接の配布先である地方支分部局等における配布物の利用状況(再配布や掲示、備置きなど)をどの程度把握しているかをみると、表19のとおり、把握しているのは全体の20.3%にとどまり、大半については利用状況を把握していない状況となっている。

表19 配布先での利用状況の把握状況

(単位:件、%)

項目
印刷広報の区分
対象件数 利用状況の把握状況
把握している 把握していない
広報誌等 (100)
24
(29.1)
7
(70.8)
17
パンフレット類 (100)
143
(18.8)
27
(81.1)
116
(100)
167
(20.3)
34
(79.6)
133

 以上のように、印刷広報については、実際には多くの国民を対象に配布することとなっていないことから、効果的な広報を実施するためには、配布部数や配布先について十分検討した上で、より効果的に配布を行うよう努めることが必要と考えられる。

<参考事例>

(d)広報誌の配布先、配布部数等を決定するため、閲読率等の調査をしているもの政府広報室では、不特定多数の閲読者を対象とする広報誌「Cabiネット」を、人が多く集まる公共の場所に配布するため、14年度以降毎年、利用実態を把握し、読者による内容評価を調査するため、アンケート調査を実施しており、配布先、配布部数及び編集内容の見直しなどの参考にしている。
 その結果、16年度は、高い閲読率が見込まれる金融機関を新たに配布先に加える一方、閲読率の低い箇所の配布部数を削減している。

(イ)紙面広報

 一般に、新聞の紙面広告を見る国民の数は、その新聞の販売部数、掲載面等の影響を受けると考えられ、その広告効果の測定には、販売部数と面別接触率(注5) 等が利用されている。そこで、省庁所管広報の16年度における新聞広告の利用件数56件のうち支払相当額1000万円以上の新聞広告20件を抽出し、本院において、販売部数(注6) に平均面別接触率(注7) を乗じた数値に、さらに独自に算定した面積係数(注8) を乗じた想定周知人数を算出し、これを支払相当額で除した比率を算定した。
 その結果、この比率が高いほど単価当たりの想定周知人数が多いと考えられるが、図4のとおり、契約方式別にみると、競争契約の方が随意契約よりこの比率が高い傾向が見受けられる。また、企画競争随契の中には、業者の選定に際し、新聞広告による効果について周知人数等を用いて定量的に表した資料を提出させ、それらを比較しているものがあるが、その他の随意契約に比べて上記の比率が高くなっており、より多くの人に周知するという効果も上がっていると思料される。

(注5) 面別接触率 新聞購読者の中で、ある面の記事、広告に接触した人の割合で、新聞社が定期的にデータを公表している。
(注6) 販売部数 「全国新聞ガイド2005年度版」(日本新聞協会)による。
(注7) 平均面別接触率 読売新聞社、毎日新聞社及び産経新聞社の面別接触率の調査結果の平均値
(注8) 面積係数 新聞紙面1ページの面積に対する当該広告記事の面積の割合

図4 契約方式別の比率

図4契約方式別の比率

<参考事例>

(e)企画競争説明書の仕様において、想定される効果を定量的に提出させているもの

 社会保険庁では、17年4月からの年金制度改正内容等の周知を図ることにより、制度の円滑な施行と事務の実施を図ることを目的として、新聞広告による「年度末の年金広報」を企画競争随契により実施している。
 この契約では、費用対効果を考慮するため、企画競争説明書において、公募に参加する業者に、共通の様式で掲載する新聞紙の種類、その購読部数、段数、掲載面等により、新聞広告が周知される予測人数を算出し提出させている。そして、同庁では、その人数を基に一人当たりの周知に要する費用を算出して、契約相手方を選定する際の判断材料としている。

(ウ)ホームページ

a ホームページの利便性等

 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部令(平成12年政令第555号)により設置された各府省情報化統括責任者連絡会議が、行政機関の透明性を高めるとともに、国民、企業等に有益な情報を提供するための指針として16年11月に決定した「行政情報の電子的提供に関する基本的考え方」(以下「指針」という。)によれば、各省庁のホームページは、その利便性の向上等を図るため、日本工業規格(JIS X8341—3)を踏まえて作成することとされている。
 そこで、各省庁のホームページのアクセシビリティ(利用者の年齢や障害の有無に関係なく利用できることや、利用者が使いやすいこと)への対応状況をみると、表20のとおりとなっている。
 また、指針では、各省庁のホームページのトップページにおいて掲載すべき共通項目として、「白書・年次報告書等」、「予算及び決算の概要」等の16項目を規定しているが、36省庁におけるこれらの項目に関する掲載状況をみると、表20のとおり、すべての項目を掲載しているのは8省庁にとどまっている。

表20 アクセシビリティなどへの対応状況
区分

省庁名
アクセシビリティ 共通項目
〔1〕音声読上げソフト 〔2〕市販ソフトの対応 〔3〕基本操作部分の一貫性 〔4〕階層構造の提示 〔5〕掲載の必要な共通項目数 掲載している共通項目数 掲載率
(%)
トップページ 検索 問合せ先 サイトマップ
内閣官房 × × 12 9 75.0
首相官邸 × × × ×
内閣法制局 × × × × 15 5 33.3
人事院 × × × × × × × 11 11 100
内閣本府 × × × × × × 16 13 81.2
政府広報室 × ×
宮内庁 × × × 12 7 58.3
公正取引委員会 × × × × × × × 16 10 62.5
警察庁 × × × × × 16 12 75.0
防衛本庁 × × × 16 11 68.7
防衛施設庁 × 16 11 68.7
金融庁 × × × × 15 15 100
総務本省 × × × × × × 16 16 100
消防庁 × 16 5 31.2
法務本省 × × 16 12 75.0
外務省 × 16 8 50.0
財務本省 × × × × × × 15 14 93.3
国税庁 × × × × 12 10 83.3
文部科学本省 × × 16 16 100
文化庁 × × × × × × 16 4 25.0
厚生労働本省 × 16 16 100
社会保険庁 × × × 15 12 80.0
農林水産本省 × 16 12 75.0
林野庁 × × × 16 8 50.0
水産庁 × × × × × × 16 6 37.5
経済産業本省 × 16 14 87.5
資源エネルギー庁 × × × 16 6 37.5
特許庁 × × 15 9 60.0
中小企業庁 × × × 10 8 80.0
国土交通本省 × × 16 16 100
気象庁 × 13 13 100
海上保安庁 × × × × 16 8 50.0
環境省 16 16 100
衆議院 × 9 5 55.5
参議院 × × × × 14 2 14.2
国立国会図書館 × × × × × × 12 2 16.6
裁判所 × × × × × × 14 6 42.8
会計検査院 × × × × 10 6 60.0
合計 6 23 25 21 17 24 17 524 354 67.5
注(1) ホームページに係る契約金額が100万円未満となっている省庁のホームページ及び「首相官邸ホームページ」も含めた38件のホームページについて比較している。
注(2) 17年6月17日から7月1日の任意の時点において本院が調査したものである。
注(3) 「区分」欄の〔1〕から〔5〕は、次のとおりである。
〔1〕 音声読上げソフトは、当該サイトから入手できるか。
〔2〕 〔1〕で「×」の場合、市販の音声読上げソフトをインストールした際にトップページの主要な項目について読み上げられるようになっているか。(一部でも、主要な項目について読み上げないものがある場合には×を記載している。)
〔3〕 基本操作部分は、ウェブサイト内で一貫性のある位置、表示スタイル及び表記になっているか。(トップページの新着情報・トピックス等の項目から直接リンクしているページについて、基本操作部分を常に一定の分かりやすい位置に表示している場合に〇を記載している。なお、1件でも表示していない場合には×を記載している。)
〔4〕 閲覧しているページがウェブサイトの構造のどこに位置しているか把握できるように、階層構造等を示した情報を表示しているか。(トップページの新着情報・トピックス等の項目から直接リンクしているページについて、閲覧しているページの位置がウェブサイト内のどこであるのか把握できる階層構造等を示した情報(〇>〇>〇など)を表示している場合に〇を記載している。なお、1件でも表示していない場合には×を記載している。)
〔5〕 共通項目は、所管の法令・告示・通達等、白書・年次報告書等、予算及び決算の概要等16項目あるが、各省庁に該当しない項目もあるため必要な項目数は必ずしも16とはならない。

 さらに、ほとんどの白書はその内容が所管省庁のホームページにも掲載されているが、ホームページに掲載されている40白書について、データベース化や用語に係る検索機能の有無の利便性の状況をみると、既往10年分の白書をデータベース化していないものが14白書(35.0%)、全く検索機能のないものが22白書(55.0%)となっている。
 各省庁のホームページの利便性等については、以上のように改善すべき点が見受けられることから、指針に沿って利便性の向上を図るとともに、利用者の意見等も参考にするなどして、一層の改善を図ることが望まれる。

<参考事例>

(f)ホームページ上でアンケート調査を実施し、ホームページのリニューアルの参考としているもの

 総務本省では、利用者の立場に立ったより親しみやすく利用しやすいホームページに改善していくことを目的とし、16年9月からホームページ上で利用者がホームページの評価をできるように、アンケート形式の入力フォームを用意している。
 これにより、担当職員は、ホームページの見やすさ、使いやすさ、利用満足度等のアンケート結果を利用して、ホームページの改善に役立てている。
 一例として、17年度にホームページをリニューアルした際に、以前は、省内の組織である各局ごとのコンテンツ表示としていたが、利用者にとって局の区分はむしろ分かりにくいというアンケート結果が得られたため、組織別ではなく情報の内容・種類ごとに示すこととするなど、利用者の立場に立ったコンテンツ表示とした。

b 他の媒体による広報内容のホームページへの掲載状況

 他の広報媒体で実施した広報内容についてホームページに掲載することは、それにより、広報の相乗効果が期待できると考えられる。そこで、ホームページ以外の広報媒体の利用件数1,356件について、それらの広報内容がホームページにも掲載されているかどうかをみると、すべて掲載しているものが34.9%、一部又は件名のみ表示しているものが16.5%、全く掲載していないものも48.4%となっている。
 印刷広報、放送広報及び映像広報の中には、ホームページへの掲載に関して著作権等の問題を伴うものがあるが、できるだけ多くの国民に伝えるべき広報内容については、コンテンツの二次利用を考慮し、ホームページにも併せて掲載することが、より効果的な広報に資することになると考えられる。

ウ 広報業務の検証状況

(ア)各省庁における検証の実施状況

 広報の効果を測定することは容易ではないが、厳しい財政状況の下で、より効率的、効果的な広報を実施するためには、実施した広報業務を検証し、必要な改善を重ねて業務の透明性を高めていくことが重要である。
 そこで、各省庁が実施した広報業務における広報媒体の利用件数1,515件について、広報の目標に対する効果の測定及び検証(以下、単に「検証」という。)の実施状況をみると、検証を実施したとしているものは339件(22.3%)にすぎない状況となっている。

(イ)検証の実施方法

 広報業務の検証を実施したとしている339件について、どのような方法で検証を実施したかについてみると、図5のとおりとなっている。

図5 検証の実施方法

図5検証の実施方法

(注)
1件で複数の方法による検証を実施する場合があるため、実施方法別の件数の合計は検証を実施した件数とは一致しない。

 このうち、最も件数の多い「アンケート(書面・はがき)」について、実施件数が多い印刷広報及びイベント広報におけるアンケートの回収率をみると、表21のとおり、参加者に直接アンケートの書面を配布して回収できるイベント広報の平均回収率65.3%に対して、不特定多数への広報という特性を有する印刷広報の平均回収率は10.5%と低くなっている。さらに、印刷広報のうちでも、アンケート(はがき)をとじ込むなどして作成部数すべてを対象にアンケートを実施しているものの回収率は、ほとんどが1%未満で、平均回収率も0.8%にとどまっている。
 このように、印刷広報では、検証を実施したとしていても、広報媒体の特性を反映して、実際にはアンケートの回答がほとんど返送されていない場合もあり、検証の精度を上げるための工夫が必要と考えられる。

表21 アンケート(書面・はがき)の回収状況

(単位:件、%)

媒体区分
回収率
印刷広報 イベント広報
  左のうち、作成部数すべてを対象にアンケートを実施しているもの
件数 割合 件数 割合 件数 割合
0%以上1%未満 15 33.3 10 90.9
1%以上5%未満 11 24.4
5%以上10%未満 7 15.5 1 9.0 1 1.1
10%以上20%未満 3 6.6 3 3.4
20%以上30%未満 2 4.4 4 4.6
30%以上40%未満 1 2.2 11 12.7
40%以上50%未満 4 8.8 12 13.9
50%以上 2 4.4 55 63.9
合計 45 100 11 100 86 100
平均回収率 10.5 0.8 65.3

<参考事例>

(g)アンケートの調査方法を変更することにより回答率を上げたもの

 外務省では、広報誌「世界の動き」を毎月20,100冊買い上げ、全国の中学校・高校、公共図書館等に配布している。
 この広報誌は、学校の副教材としても用いることができることから、その構成や内容を検討するため、広報誌の中の半ページでアンケートを実施して、内容についての意見募集等を行っていた。しかし、アンケートが広報誌の途中のページにあり見落とされるなどの理由から、18,125校に配布して得られた回答は、16年度の1年間で約100通(回答率0.5%)であった。
 そこで、17年5月号の広報誌では、1,596校に依頼文書を付したアンケートを一緒に送付し、FAXで返信できるようにしたことにより、1箇月間で133通(回答率8.3%)の回答が得られ、その意見を基にその後の広報誌の検討を行っている。

 また、ホームページについては、主なコンテンツ別のアクセス状況を把握することで国民の関心動向を測定し、今後の各種施策の広報に反映させることが重要であると考えられる。

<参考事例>

(h)ホームページのコンテンツ別アクセス件数を毎週調査し、施策に対する国民の関心度を継続して測っているもの

 財務本省では、ホームページのコンテンツ別アクセス件数を1週間ごとに調査し、上位10位までの結果を省内各課に配布して執務の参考としている。
 各コンテンツを作成している担当課は、この資料を基にして、現在、国民の関心度が高い財務省の施策は何かを把握するとともに、各種の施策の広報の時期、方法等の参考にしている。

(ウ)検証の結果を踏まえた見直しの検討状況

 広報業務の検証を実施したとしている339件について、17年度の広報を実施するに当たり、検証結果を踏まえて見直しの検討を行ったかどうかをみると、図6のとおりとなっている。

図6 検証結果を踏まえた実施の見直し状況

図6検証結果を踏まえた実施の見直し状況

 そして、「見直しの検討を行い実施内容を変更した」としているものには、インターネット利用者が増加していることから、ホームページの利便性を活用して情報を分かりやすく掲示したり、内容の充実化を図ったりしたものがある。

<参考事例>

(i)広報媒体の見直しを実施したもの

 国税庁が実施している税に関する情報提供として、テレビ番組(CS放送、15分番組、7年から実施)及びラジオ番組(10分番組、昭和55年から実施)がある。しかし、放送広報では、限られた時間帯だけに放送するため、納税者への情報提供が時間的に制約され、情報量も限られることから、モニターアンケートの結果等を参考にして、媒体の見直しを行った。
 そして、平成17年度からは、これらの番組提供に替え、ホームページ上で動画により税情報を提供するインターネット番組を開始した。この番組では、24時間映像配信を行うとともに配信した番組を蓄積できるほか、番組内で使用した資料のダウンロードを可能にし、関連するページへのリンク集を設けるなど、通常の動画配信と異なり、インターネットの特性をいかしたものとした。

3 本院の所見

 現下の厳しい財政状況の下、社会経済情勢の変化に対応して、国が、各種の施策、事務事業等を推進していくためには、行政の透明性を高め、国民の理解と協力を得ることが極めて重要であり、その意味において広報業務の役割の重要性も高まっているが、国の広報業務の実施状況の全体像は必ずしも明らかにはなっていない。
 そこで、本院において、国の広報業務の実施状況について、各省庁を横断的に検査したところ、以下のような状況となっていた。

ア 広報業務の契約方式については、競争契約の割合が随意契約の割合よりも低くなっており、また、随意契約の中で企画競争を実施している契約の割合も低い。そして、企画競争の実施方法については、公平性、透明性が十分に確保されていないものがある。

イ 予定価格の算定については、単一の資料のみに基づいて積算を行っているものも少なくなく、積算方法の合理性の向上を図る余地のあるものが相当数見受けられる。

ウ 効果的な広報に対する取組を行っている事例がある一方、印刷広報において配布先の利用状況の把握をしていないものや、ホームページにおいて指針に沿った利便性の向上について十分な取組がなされていないものなどがある。また、広報業務の検証については、効果の測定が困難であることもあり、半数以上において実施していないが、検証方法を工夫してその実効性の向上に努めているものもある。

 したがって、各省庁においては、次のような点に留意するとともに、広報の実施体制を整備して、今後とも、適時適切な広報業務を積極的に進め、もって国民に対する説明責任を十分果たしていくことが望まれる。

ア 契約に当たっては、次のような方策を講じて、競争性、透明性を高めること

(ア)「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由として随意契約を締結してきた契約については、同種の契約実例の把握に努めるなどして随意契約によらざるを得ない理由の妥当性を再検討するとともに、仕様書等の内容を具体的に提示するなどして競争契約の拡大を図ること

(イ)広報業務の内容から随意契約によらざるを得ない場合には、企画競争の可能性を検討すること。そして、企画競争を実施する場合には、参加者を公募したり、複数の具体的な採点項目を設定したりするなど恣意的な業者選定を行うおそれがないような実施方法を採用すること

イ 予定価格の算定に当たっては、できるだけ複数の者から参考見積書を徴するとともに、公表資料との比較検討を行ったり、同種の契約実例を調査したりして、積算の合理性の向上に努めること

ウ 印刷広報について、配布先の利用状況の把握に努めて配布先ごとの配布部数を見直したり、近年重要な広報媒体となってきたホームページについて、指針に沿って利便性の一層の向上を図ったりするなど、他省庁の事例等も参考にしながら、限られた予算の中でより効果的な広報を実施するための取組を進めるとともに、実効性のある検証を行うことにより、効果的な広報業務を実施するよう、その見直しに努めること