116資金のうち2資金については、資金事業の内容を定めている各法律において、法施行から10年までの間又は10年経過後に見直しの検討を行うこととされており、今後、見直しが予定されている。これ以外の114資金については、法律、補助金交付要綱、事業実施要領等のいずれにおいても、資金事業の見直し時期を設定していない状況となっている。
見直し時期を設定していない理由をみると、表4-1のとおりとなっていて、主なものの具体的内容は次のとおりである。
表4-1 見直し時期の設定状況
(単位:件)
府省名 | 資金数 | (1) |
見直し時期を設定していない理由 | |||
(2)
事業の内容等を適宜見直しているので設定していない |
(3)
事業内容、性質等からみて設定していない |
(4)
資金事業が法律で定められているので設定していない |
(5) その他 |
|||
内閣府 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
総務省 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
財務省 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
文部科学省 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
厚生労働省 | 3 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 |
農林水産省 | 61 | 0 | 27 | 15 | 2 | 17 |
経済産業省 | 28 | 0 | 8 | 13 | 1 | 6 |
国土交通省 | 14 | 1 | 9 | 4 | 0 | 0 |
環境省 | 5 | 1 | 2 | 1 | 0 | 1 |
合計 | 116 | 2 | 51 | 35 | 3 | 25 |
すなわち、事業内容等を適宜見直しているので見直し時期を設定していないとしている51資金については、予算要求時、法律改正時、中期目標策定時、毎年度の事業終了時等に適宜見直しているので、あらかじめ見直し時期を設定していないとしているものである。
また、事業内容、性質等からみて見直し時期を設定していないとしている35資金については、将来の資金需要が予想できず、あらかじめ見直し時期を設定するのは困難であること、業界の構造改善や安定化等のため事業を長期・継続的に実施する必要があることなどから見直し時期を設定していないとしているものである。
しかし、あらかじめ見直し時期を設定するのが困難なものや資金事業の内容が長期・継続的なものであっても、社会経済情勢が激しく変化する中で、資金事業の内容がその変化に対応しているか、あるいは利用対象者のニーズを反映しているかを確認することは必要であり、適宜見直しを行うほか、時期を定めて定期的に見直しを行う体制を確立することは重要と考えられる。
116資金のうち、資金事業の目的達成について判定し、最終的に資金事業がその役割を終えたかどうかの目的達成度を測るための基準を策定しているものは1件もない状況となっている。
そして、目的達成度を測るための基準を策定していない理由をみると、表4-2のとおりとなっていて、主なものの具体的内容は次のとおりである。
表4-2 目的達成度を測るための基準の策定状況
(単位:件)
府省名 | 資金数 | (1) |
目的達成度を測るための基準を策定していない理由 | |||
(2)
事業の内容等を適宜見直しているので策定していない |
(3)
事業内容、性質等からみて策定していない |
(4)
資金事業が法律で定められているので策定していない |
(5) その他 |
|||
内閣府 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
総務省 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
財務省 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 |
文部科学省 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
厚生労働省 | 3 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 |
農林水産省 | 61 | 0 | 8 | 42 | 2 | 9 |
経済産業省 | 28 | 0 | 2 | 24 | 1 | 1 |
国土交通省 | 14 | 0 | 1 | 12 | 0 | 1 |
環境省 | 5 | 0 | 0 | 4 | 0 | 1 |
合計 | 116 | 0 | 13 | 88 | 3 | 12 |
すなわち、事業内容、性質等からみて目的達成度を測るための基準を策定していないとしている88資金については、将来の資金需要が予想できずあらかじめ基準を策定するのは困難であること、事業者等の経営安定等を目的とした資金については客観的数値をもって判断することは困難であること、資金の目的が社会経済情勢の悪化に備えたセーフティネットであること、資金事業のみで目的達成度を測るのではなく社会経済情勢などを総合的に判断する必要があることなどを理由として、目的達成度を測るための基準を策定していないとしているものである。
しかし、資金事業は、単年度の補助事業と異なり、長期・継続的に事業を実施することを前提にしているものが多いため、社会経済情勢が激しく変化したり、事業を実施する過程で資金需要の少ない状況が続いたりしていても、そのまま事業が継続され、資金の存続そのものが目的化するおそれがある。したがって、このような事態が生じないようにするためには、上記のような場合においても可能な限り資金事業がその役割を終えたかどうかを判定するための基準の策定に努め、資金設置から一定期間経過後に資金事業の目的達成度を客観的に判定するようにすることが重要と考えられる。
116資金のうち15資金については、事業の終期を法律、補助金交付要綱、事業実施要領等で明確に定めているサンセット方式を導入している。しかし、これ以外の101資金については、サンセット方式を導入していない。
サンセット方式を導入していない理由をみると、表4-3のとおりとなっていて、主なものの具体的内容は次のとおりである。
表4-3 サンセット方式の導入状況
(単位:件)
府省名 | 資金数 | (1)
サンセット方式を導入している |
サンセット方式を導入していない理由 | |||
(2)
事業の内容等を適宜見直しているので導入していない |
(3)
事業内容、性質等からみて導入していない |
(4)
資金事業が法律で定められているので導入していない |
(5) その他 |
|||
内閣府 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
総務省 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
財務省 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 |
文部科学省 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
厚生労働省 | 3 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 |
農林水産省 | 61 | 12 | 2 | 35 | 2 | 10 |
経済産業省 | 28 | 1 | 0 | 21 | 1 | 5 |
国土交通省 | 14 | 1 | 0 | 9 | 3 | 1 |
環境省 | 5 | 0 | 1 | 2 | 1 | 1 |
合計 | 116 | 15 | 5 | 71 | 7 | 18 |
すなわち、事業内容、性質等からみてサンセット方式を導入していないとしている71資金については、経営安定等を目的としており制度を維持していくこと自体に意義があるとしていたり、国際交渉等の急展開の変化にも臨機応変に対応する必要があるとしたり、農畜産物の需要不均衡等不測の事態(異常気象、災害、事故等)が生じたときのための資金であるとしたりしてサンセット方式を導入していないとしているものである。
しかし、制度の存続自体を目的化したり、将来の資金需要や突発的な需要に対する機動的な対応が困難であることなどを理由とすることは、社会経済情勢の変化や事業の進ちょくに伴って事業の需要が減少し、資金の存続意義が薄れても、それとは関係なく資金をそのまま保有し続けたり、あるいは、利用者のニーズを踏まえずに単なる事業の衣替えにより事業を継続したりするおそれがある。したがって、このような事態が生じないようにするためには、事業実施期間中において定期的な見直しを行うほか、原則として、事業の内容、性質等にかかわらず、あらかじめ事業の終期を設け、特に存続の必要が認められない限り終期が来たら自動的に廃止するサンセット方式を導入することは有用と考えられる。
116資金のうち12資金については、補助金交付要綱等において、事業の途中で余裕資金を国へ返納することに関する規定を設けているが、これ以外の104資金については返納規定を設けていない。
そして、返納規定を設けていない理由としては、事業を終了した場合に精算するとしたり、事業実施期間中に精算することは想定していないとしたり、取崩し型資金であるため事業実施期間中に全額を使い切ることを予定しており資金に余剰を生ずるとは考えていないとしたり、事業実施期間中は資金が余剰であると判断することが困難であるとしたりしている。
しかし、前記3-(3)-ウ-(ア)の「使用見込みのない資金を保有しているもの」に記載しているように、利子助成対象事業の採択期間が終了し、将来の後年度負担額が算定できる場合や、利子助成以外の資金についても事業実績等からみて資金保有額に余裕がある場合には、資金の効率的使用の観点から資金事業の終了前でも国に返納させることも必要であり、このためには、事業実施期間中における国への返納規定を補助金交付要綱等で明確にしておくことは重要と考えられる。
「インターネットによる公益法人のディスクロージャーについて」(平成13年8月28日、公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申合せ)によれば、各府省は、所管公益法人に対し、可能な限り平成13年中を目途に最新の業務及び財務等に関する資料(事業報告書、収支計算書、貸借対照表、財産目録等)をインターネットにより公開するよう、速やかに要請を行うこととしている。
116資金のディスクロージャーの状況をみると、ほとんどの資金については、公益法人以外の法人が実施しているものも含め、事業実績額、資金保有額等が、上記の業務及び財務等に関する資料の中に記載され、インターネット等により公開されている。
しかし、資金保有額のうちの国庫補助金等の額が不明であったり、事業実績額、資金保有額の情報等が法人の事業報告書、決算書等に分散して記載されていたり、事業実績額の推移が示されていなかったりなどしていて資金の全体像が把握しにくいものが相当数見受けられる。
したがって、国庫補助金を財源とし、複数年度にわたり実施される資金事業の透明性を高めるためには、直接の受益者だけでなく、広く国民に対しても、分かりやすいディスクロージャーの方法を工夫することは重要と考えられる。
所管府省では、法人に資金を設置造成した後の資金事業の運営状況については、法人から資金事業についての実績報告書等が提出されたとき、法人から業務及び財務等に関する資料が提出されたとき、担当部局が法人の立入検査をするときなどに審査、検査を行っている。
実績報告書等については、大多数の資金において、適正な資金事業の運営に資するためなどとして、補助金交付要綱等の中で、毎年度あるいは主務大臣が必要と認めるときに法人から提出させることとしている。しかし、実績報告書等の内容についてみると、当該年度の事業実績や資金の収支状況は明らかになっているものの、従来からの事業実績の推移、各年度末における後年度負担額等が分かるような書式にはなっていない状況である。
業務及び財務等に関する資料については、公益法人の設立及び監督に関する各府省令及び独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)等に基づき主務大臣に提出されるものであり、その内容は、事業報告書、収支計算書、貸借対照表等である。しかし、これらの書類は、上記(5)「資金事業のディスクロージャーの状況」に記載したとおり、事業実績、資金保有額の情報等が事業報告書や決算書等に分散して記載されているだけである。
所管府省の担当部局が行う法人の立入検査については、法人全体の運営状況や決算状況を検査することに主眼が置かれる傾向にあり、資金事業の内容、事業の実績、資金の保有量、資金の管理等についての検査が必ずしも十分ではないおそれがある。
そして、今回本院が資金事業の運営において検討すべき事態として取り上げた33資金についてみると、いずれの資金に対しても審査又は検査は実施されているが、事業の内容、事業の実績、資金の保有量及び資金の管理等の面から問題点を指摘し、改善を指示している例は1件もない状況となっている。
したがって、所管府省では、資金事業に係る審査の充実を図るため、実績報告書等の書式について工夫するほか、担当部局が実施する法人の審査、検査に当たっては、その決算状況とともに、資金事業について見直しや改善をすべき点がないかとの視点からの審査、検査を実施し、適時適切な指導監督を行うことは、効率的、効果的な資金事業を実施していく上で必要と考えられる。
このように、見直し時期の設定、目的達成度を測るための基準の策定、サンセット方式の導入及び余裕資金に係る国への返納規定の設定については、所管府省の取組は必ずしも十分とは認められない状況である。また、資金事業のディスクロージャー及び所管府省の審査、検査についても透明性を確保する見地からは改善の余地がある。
なお、政府においては、「今後の行政改革の方針」(平成16年12月閣議決定)の中で、平成18年度末までに、補助金等の交付により造成した基金等を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。)については、〔1〕基金事業の見直しの時期の設定に係る基準、〔2〕資金事業の目的達成度の客観的な判定、公表に係る基準、〔3〕基金の保有割合についての数値基準、〔4〕使用見込みのない資金の国への返納に係る基準を策定するとともに、個別法人ごとに精査し、事業の見直しを行うこととしている。