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国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの


(229)—(282)国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称
厚生労働本省(交付決定庁)(平成13年1月5日以前は厚生本省)
北海道ほか24都府県(支出庁)
交付の根拠
国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先
市32、区1、町16、村5、計54市区町村(保険者)
財政調整交付金の概要
市町村の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。
上記に対する交付金交付額の合計
31,121,228,000円
(平成12年度〜17年度)
不当と認める交付金交付額
219,428,000円
(平成12年度〜17年度)

1 交付金の概要

(1)国民健康保険の財政調整交付金

 国民健康保険(前掲の「国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの」 参照)については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

(2)普通調整交付金

 普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(以下「調整対象収入額」という。)が、医療費、保健事業費等から一定の基準により算定される支出額(以下「調整対象需要額」という。)に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。そして、平成12年度からは、介護保険制度の導入に伴い、医療費等に係るもの(以下「医療分」という。)に介護納付金に係るもの(以下「介護分」という。)を加えて交付されている。
 普通調整交付金の交付額は、当該市町村の調整対象需要額から当該市町村の調整対象収入額を控除した額に基づいて算定することとなっている。

(3)特別調整交付金

 特別調整交付金は、市町村について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものであり、レセプト点検特別交付金、医療費通知特別交付金、収納割合確保・向上特別交付金、保健事業費多額特別交付金、地域における包括的な保健・医療推進モデル事業特別交付金(以下「地域モデル事業特別交付金」という。)などがある。

(4)交付手続

 財政調整交付金の交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び実績報告書を提出し、これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生労働省に提出し、厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び方法

 北海道ほか33都府県の392市区町村において、12年度から17年度までに交付を受けた財政調整交付金について、実績報告書及びその基礎資料等により検査した。

(2)過大交付の事態

 検査したところ、北海道ほか24都府県の54市区町村において、交付金交付額計31,121,228,000円のうち計219,428,000円が過大に交付されていたり交付の必要がなかったりしていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

ア 普通調整交付金の交付が過大と認められるもの
(ア)調整対象需要額を過大に算定しているもの
25市区町村(注1)
66,840,000円
(イ)調整対象収入額を過小に算定しているもの
70,466,000円
イ 特別調整交付金の交付が過大と認められるもの
 
(ア)レセプト点検の実施に係る交付要件を満たしていないもの
15市町村
28,000,000円
(イ)医療費通知の調整基準額を過大に算定しているもの
1市
1,614,000円
(ウ)交付要件である事業運営の広域化を行っていないもの
2市町
7,862,000円
(エ)保健事業費対象額を過大に算定しているもの
9市町村(注1)
33,940,000円
(オ)モデル事業に係る費用を過大に算定しているもの
1市
10,706,000円

 ア(ア)、ア(イ)及びイ(エ)のうちの各1市は重複している。また、ア(ア)のうちの1市1町とイ(エ)のうちの1市1町は重複している。


 このような事態が生じていたのは、上記の54市区町村において制度の理解が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりなどしたため適正な交付申請等を行っていなかったこと、また、これに対する北海道ほか24都府県の審査が十分でなかったことによると認められる。

(3)各態様の詳細

 前記の各態様について検査した結果の詳細を示すと次のとおりである。

ア 普通調整交付金の交付が過大と認められるもの

(ア)調整対象需要額を過大に算定しているもの

 調整対象需要額は、本来保険料で賄うべきとされている額であり、そのうち医療分に係る需要額は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費(注2) 、老人保健医療費拠出金及び保健事業費の合計額から療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。
 このうち、保健事業費は、健康相談、保健施設の運営等被保険者の健康の保持増進のために必要な事業に係る費用である。そして、その額は、〔1〕年間の保健事業費支出額から保健事業に係る国庫補助金、保健施設に係る利用料等の収入額を控除した額(以下「保健事業費対象額」という。)と、〔2〕当該市町村の年間平均被保険者数に700円を乗じて得た額(以下「保健事業費基準額」という。)のうちいずれか少ない方の額とすることとなっている。

 医療給付費 療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額


 北海道ほか12都府県の25市区町村では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、被保険者の健康の保持増進に資するとは認められないレセプト点検に係る経費を含めるなどして保健事業費を過大に算定したり、退職被保険者及びその被扶養者に係る医療給付費を含めて医療給付費を過大に算定したりしていたため、調整対象需要額が過大に算定されていた。

 この事態を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

 
都道府県名
交付先
(保険者)
年度
交付金交付額
左のうち不当と認める額
摘要
 
 
 
 
千円
千円
 
(229)
北海道
室蘭市
14
950,919
1,351
保健事業費を過大にしていたもの
(230)
 同
登別市
15、16
809,686
2,337
(231)
 同
北広島市
16
311,424
2,954
(232)
岩手県
花巻市
13〜16
1,913,090
4,917
(233)
茨城県
日立市
14
763,221
1,523
(234)
 同
ひたちなか市
15、16
1,187,793
2,980
(235)
 同
那珂郡東海村
16
135,878
2,389
医療給付費を過大にしていたもの
(236)
千葉県
富里市
15
159,910
1,239
保健事業費を過大にしていたもの
(237)
 同
匝瑳郡光町 (注3)
14〜16
268,044
2,843
(238)
東京都
練馬区
15
171,387
3,173
医療給付費を過大にしていたもの
(239)
福井県
敦賀市
14
291,050
1,540
保健事業費を過大にしていたもの
(240)
静岡県
沼津市
15
796,105
3,675
(241)
 同
富士市
16
399,461
1,740
(242)
愛知県
岡崎市
16
227,883
1,310
(243)
 同
西尾市
16
83,816
1,478
(244)
三重県
度会郡小俣町 (注4)
14
82,989
1,039
(245)
大阪府
池田市
15、16
661,276
4,527
(246)
 同
枚方市
15、16
3,526,920
3,396
(247)
 同
大東市
15、16
1,533,928
3,188
(248)
奈良県
橿原市
12〜15
2,781,407
4,733
(249)
 同
桜井市
12〜15
2,015,233
2,821
(250)
奈良県
香芝市
12〜16
1,430,415
5,527
保健事業費を過大にしていたもの
(251)
 同
磯城郡田原本町
13〜15
664,558
1,927
(252)
島根県
浜田市
14〜16
791,997
2,492
(253)
長崎県
壱岐市
16
514,584
1,741
 (ア)の計
   
22,472,974
66,840
 

(注3)
 平成18年3月27日以降は山武郡横芝光町
(注4)
 平成17年11月1日以降は伊勢市

(イ)調整対象収入額を過小に算定しているもの

 調整対象収入額は、医療分及び介護分それぞれについて、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の数を基に算定される応益保険料額と、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の所得を基に算定される応能保険料額とを合計した額となっており、本来徴収すべきとされている保険料の額である。
 このうち、医療分の応能保険料額は、一般被保険者の所得(以下「算定基礎所得金額」という。)に一定の方法により計算された率を乗じて算定される。
 そして、算定基礎所得金額は、保険料の賦課期日現在一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額とすることとなっているが、同一世帯に属する被保険者の所得金額の合計額が別に計算される金額(以下「所得限度額」という。)を超えて高額である世帯(以下「所得限度額超過世帯」という。)がある場合には、当該世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額に一定の方法により計算した率を乗じて得た額を、上記一般被保険者の所得金額の合計額から控除して、算定基礎所得金額を算定することとなっている。
 北海道ほか3県の5市では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、所得限度額超過世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額を過大にしたり、保険料の賦課期日現在一般被保険者である者の前年における所得金額を過小に計算したりしていたため、算定基礎所得金額が過小に計算されるなどし、その結果、調整対象収入額が過小に算定されていた。
 この事態を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

(229)
北海道
室蘭市
15〜17
2,350,453
13,346
所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(254)
網走市
15〜17
307,543
8,091
(255)
福島県
いわき市
15、16
5,410,769
6,193
所得金額を過小にしていたもの
(256)
長野県
千曲市
16
341,649
8,299
所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(257)
静岡県
菊川市
16
105,265
34,537
 (イ)の計
   
8,515,679
70,466
 

イ 特別調整交付金の交付が過大と認められるもの

(ア)レセプト点検の実施に係る交付要件を満たしていないもの

 レセプト点検特別交付金は、レセプト点検に積極的に取り組み、定められた内容点検を行っている市町村において、当年の1月から12月までの間にレセプト点検により過誤調整を行った額(以下「財政効果評価額」という。)があり、この財政効果評価額を年間平均被保険者数で除した額(以下「一人当たり財政効果評価額」という。)が2年連続して前年以上となっているなどの交付要件を満たす場合に交付するものである。
 青森県ほか10都県の15市町村では、レセプト点検特別交付金の交付申請等に当たり、定められた内容点検を行っていなかったり、一人当たり財政効果評価額が2年連続して前年以上となっていなかったりしていたため、上記の交付要件を満たしていなかった。
 この事態を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

(258)
青森県
東津軽郡蟹田町 (注5)
14
1,900
1,500
一人当たり財政効果評価額が2年連続して前年以上となっていないもの
(259)
北津軽郡中里町 (注6)
14
3,000
3,000
(260)
山形県
東村山郡中山町
15
2,000
2,000
(261)
福島県
田村市
16
1,500
1,500
(262)
千葉県
印旛郡本埜村
13
1,500
1,500
(263)
東京都
大島町
13
3,750
3,000
定められた内容点検を行っていなかったもの
(264)
富山県
黒部市
13
3,000
3,000
一人当たり財政効果評価額が2年連続して前年以上となっていないもの
(265)
上新川郡大山町 (注7)
13
1,900
1,500
(266)
福井県
南条郡南条町 (注8)
14
1,500
1,500
(267)
丹生郡清水町 (注9)
14
2,000
2,000
(268)
岐阜県
本巣市
15
1,500
1,500
(269)
吉城郡上宝村 (注10)
15
1,500
1,500
(270)
鳥取県
東伯郡赤碕町 (注11)
14
2,000
2,000
定められた内容点検を行っていなかったもの
(271)
山口県
玖珂郡本郷村 (注12)
14
1,000
1,000
一人当たり財政効果評価額が2年連続して前年以上となっていないもの
(272)
愛媛県
今治市
16
1,500
1,500
 (ア)の計
   
29,550
28,000
 

(注5)
 平成17年3月28日以降は東津軽郡外ヶ浜町
(注6)
 平成17年3月28日以降は北津軽郡中泊町
(注7)
 平成17年4月1日以降は富山市
(注8)
 平成17年1月1日以降は南条郡南越前町
(注9)
 平成18年2月1日以降は福井市
(注10)
 平成17年2月1日以降は高山市
(注11)
 平成16年9月1日以降は東伯郡琴浦町
(注12)
 平成18年3月20日以降は岩国市

(イ)医療費通知の調整基準額を過大に算定しているもの

 医療費通知特別交付金は、当年の1月から12月までの間に、請求月ごとのレセプトの全数について6回以上医療費通知を実施したなどの場合に交付するものである。
 そして、この交付額は、〔1〕医療費通知を実施した世帯数に50円又は55円の単価を乗じて得た額及び〔2〕減額通知(被保険者の一部負担金等の過払い額を付記した医療費通知をいう。)の通知世帯数に60円の単価を乗じて得た額の合算額(以下「医療費通知の調整基準額」という。)となっている。
 福井県小浜市では、医療費通知特別交付金の交付申請等に当たり、一世帯当たりの単価50円に、医療費通知を実施した世帯数ではなく医療費通知に係るレセプトの総数を乗じていたため、医療費通知の調整基準額が過大に算定されていた。

(273)
福井県
小浜市
16
4,029
1,614
医療費通知の通知世帯数を誤っていたもの

(ウ)交付要件である事業運営の広域化を行っていないもの

 収納割合確保・向上特別交付金は、14年4月2日から15年4月1日の間に国民健康保険の事業運営の広域化(市町村合併による広域化を含む。)を行っており、かつ、当該広域化を行った市町村間において保険料(税)に格差があり、保険料(税)の平準化を行っている場合で、15年度の収納率が14年度を上回っているなどの交付要件を満たす場合に交付するものである。
 高知県ほか1県の2市町では、収納割合確保・向上特別交付金の交付申請等に当たり、事業運営の広域化を行っていなかったため、上記の交付要件を満たしていなかった。
 この事態を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

(274)
高知県
須崎市
16
8,000
3,862
事業運営の広域化を行っていなかったもの
(275)
長崎県
南松浦郡新上五島町 (注13)
16
6,000
4,000
 (ウ)の計
   
14,000
7,862
 

 平成16年7月31日以前は南松浦郡有川町


(エ)保健事業費対象額を過大に算定しているもの

 保健事業費多額特別交付金は、保健事業費対象額が保健事業費基準額を超える場合に交付するものである。
 そして、この交付額は、保健事業費対象額から保健事業費基準額を控除して得た額の2分の1(15年度以前は4分の1)の額となっている。
 北海道ほか6県の9市町村では、保健事業費多額特別交付金の交付申請等に当たり、14年度からは保健事業費支出額から除くこととなった健康診査事業に係る経費を含めるなどしていたため、保健事業費対象額が過大に算定されていた。
この事態を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

(229)
北海道
室蘭市
14〜16
9,951
7,088
保健事業費支出額を過大にしていたもの
(276)
美唄市
16
1,570
1,538
(277)
山形県
最上郡真室川町
15、16
5,487
4,752
(237)
千葉県
匝瑳郡光町 (注3)
14〜16
4,162
4,162
(278)
和歌山県
日高郡美山村 (注14)
13〜16
9,345
7,288
(252)
島根県
浜田市
14、16
2,202
2,202
(279)
福岡県
嘉穂郡稲築町 (注15)
16
5,682
2,928
(280)
長崎県
北松浦郡鹿町町
15
2,849
2,358
(281)
南松浦郡新上五島町 (注16)
16
1,826
1,624
 (エ)の計
   
43,074
33,940
 

(注14)
 平成17年5月1日以降は日高郡日高川町
(注15)
 平成18年3月27日以降は嘉麻市
(注16)
 平成16年7月31日以前は南松浦郡奈良尾町

(オ)モデル事業に係る費用を過大に算定しているもの

 地域モデル事業特別交付金は、開業医が中心となって健康相談、健康教育等を実施したり、健康管理に必要な情報を共有するシステムを構築したりなどして、地域における包括的な保健・医療の推進体制を構築するモデル事業(以下「地域モデル事業」という。)を実施し、その分析・評価を行った場合に交付するものである。
 そして、この交付額は、現に要した費用(以下「対象経費」という。)の2分の1などとなっている。
 長野県茅野市では、地域モデル事業特別交付金の交付申請等に当たり、健康相談を計画の一部しか実施していないのに、計画どおり実施したとして未実施の健康相談に係る費用を含めていたため、地域モデル事業の対象経費が過大に算定されていた。

(282)
長野県
茅野市
15〜17
41,922
10,706
対象経費を過大にしていたもの
 ア、イの合計
   
31,121,228
219,428