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  • 平成17年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

防衛施設庁における建設工事及び委託業務に係る入札・契約の実施状況について


第1 防衛施設庁における建設工事及び委託業務に係る入札・契約の実施状況について

検査対象
防衛施設庁
会計名
一般会計、特定国有財産整備特別会計(支出委任分)、空港整備特別会計(支出委任分)
防衛施設庁における建設工事及び委託業務の概要
自衛隊及び在日米軍が使用する飛行場、庁舎、隊舎等の建築、土木、電気、機械等の各種建設工事及びこれらの各種建設工事を実施するに当たり、建設コンサルタント等に委託している設計、施工監理等の業務
検査の対象とした建設工事及び委託業務
平成16年度又は17年度に契約期間がかかる建設工事及び委託業務
上記に係る契約件数及び契約金額
建設工事
2,728件
6125億円
 
委託業務
891件
225億円
 

1 検査の背景

(1)防衛施設庁が実施する建設工事及び委託業務の概要

 防衛施設庁は、防衛庁設置法(昭和29年法律第164号)に基づき、防衛施設を取得し、その安定的な運用の確保を図ることなどを任務としている。
 そして、同庁では、「防衛施設庁における自衛隊関係の建設工事の実施に関する訓令」(昭和42年防衛施設庁訓令第7号)、「提供施設整備及び提供施設移設整備の事務処理手続に関する訓令」(平成14年防衛施設庁訓令第18号)等に基づき、自衛隊及び在日米軍が使用する飛行場、庁舎、隊舎等(以下これらを「防衛施設等」という。)の土木、建築、電気、機械等の各種建設工事を施行している。
 また、これら各種建設工事を実施するに当たり、設計、施工監理、建設工事技術業務等を建設コンサルタント等に委託している。

(2)防衛施設等の建設工事に係る入札・契約制度を巡る状況

 防衛施設庁が実施する各種建設工事の入札・契約制度に関しては、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(平成6年1月閣議了解)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号。以下「入札契約適正化法」という。)等に基づき、予定価格が「政府調達に関する協定」(平成7年条約第23号。以下「政府調達協定」という。)等で定められた基準額である450万SDR(注1) 以上の工事に係る一般競争入札等の導入、工事発注に関する情報公表の拡充等による透明性の向上等の入札・契約の適正化に資する措置が執られてきた。

 450万SDR SDRはIMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)であり、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの加重平均方式により決定されている。邦貨換算額は2年ごとに見直されており、平成14年度及び15年度は6.6億円、16年度及び17年度は7.3億円となっている。


(3)官製談合事件の概要

 このような状況にあって、東京地方検察庁(以下「地検」という。)は、当時の防衛施設庁技術審議官、同建設部長及び同建設部建設企画課長の3名を、防衛施設庁の地方支分部局である東京防衛施設局が平成16年度に発注した三宿(16)病院新設空調工事(その1)ほか2件の建設工事において、公正な価格を害する目的で、特定の建設共同企業体に落札させるための談合(いわゆる官製談合)を行ったとして、18年2月20日、刑法(明治40年法律第45号)第96条の3第2項による競売入札妨害(談合)の容疑により、東京地方裁判所に起訴した。
 さらに、地検は、3月14日に広島防衛施設局が15年度に発注した岩国飛行場(15)滑走路移設中央地区地盤改良工事ほか4件及び福岡防衛施設局が15年度に発注した佐世保米軍(15)岸壁整備(1工区)ほか1件、計7件の建設工事においても同様に、公正な価格を害する目的で、特定の建設共同企業体に落札させるための談合を行ったとして、上記の3名を東京地方裁判所に起訴した。
 そして、地検は、上記10件の建設工事と東京防衛施設局が15年度に発注した市ヶ谷(15)庁舎新設建築工事を落札した各請負業者11社の営業担当者等について、東京簡易裁判所に略式命令請求を行い、同裁判所は罰金50万円の略式命令を行った。
 なお、東京地方裁判所は、7月31日、前記の技術審議官ら3名について、技術審議官には懲役1年6月、建設部長及び建設企画課長には懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を下している。

(4)防衛施設庁の対応状況

 防衛施設庁では、18年1月中旬以降、建設工事の発注をすべて停止していたが、17年度の入札・契約に当たっては、同年3月に次のような措置を執り、手続を再開している。
〔1〕 防衛施設庁発注建設工事に関し談合の疑いのある業者並びに防衛施設庁建設部の関与により就職した防衛庁及び防衛施設庁の退職者が14年度以降に在籍した業者計181社(以下、単に「181社」という。)を入札・契約手続から一定期間排除する。
〔2〕 入札に参加する業者に談合行為を行っていない旨などを記した誓約書の提出を求める。
〔3〕 各防衛施設局建設部が行ってきた建設工事及び委託業務の契約方式の決定、予定価格の決定の補助、開札事務等の入札・契約事務を各防衛施設局総務部に行わせる(各防衛施設支局においても、これに準じた措置を執る。)。
〔4〕 支出負担行為担当官を各防衛施設局長から同総務部長に変更する(各防衛施設支局においても、これに準じた措置を執る。)。
〔5〕 一般競争入札の競争参加資格について、参加者に求めている同種工事の施工実績を可能な限り緩和する等、競争参加者の拡大に努める。
〔6〕 公募型指名競争入札について、競争性を高めた公募型指名競争入札を適用するなど、競争性の向上を図る。
〔7〕 予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)第99条の2に基づく随意契約(入札者又は落札者がいないときに行う随意契約。以下「不落随契」という。)については、適正な競争を促す観点から実施しない。
 さらに、同年4月、前記の官製談合等が行われた11件の建設工事のうち、工事が既に完了している7件の建設工事の請負業者に対しては、請負契約締結時に付していた違約金に関する特約条項(注2) に基づき、請負代金額の10分の1に相当する金額(約17億3550万円)を請求し、全額納付を受けている。

 違約金に関する特約条項 防衛施設庁では、平成15年6月11日以降に入札手続を開始する建設工事から、当該契約に関し、刑法第96条の3又は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)第89条第1項に規定する刑が確定したときなどの場合には、請負業者は、発注者の請求に基づき請負代金額の10分の1に相当する額を違約金として支払わなければならないとする特約条項を請負契約締結時に付することとしている。


 防衛施設庁では、18年1月に入札談合等に係る事案の事実関係の究明を図るため、「防衛施設庁入札談合等に係る事案に対する調査委員会」を設置して、起訴された事案の調査結果、官製談合の構造等、原因・背景の分析等を取りまとめ、同年6月に「防衛施設庁入札談合等に係る事案の調査について」(以下「調査委員会報告書」という。)を公表し、その中で、官製談合事件の直接の原因は、防衛庁及び防衛施設庁の退職者の再就職先の確保と再就職した退職者への配慮にあるとしている。また、建設工事等に係る事務を執行する職員と防衛施設庁の退職者を含む業界関係者との対応について要領等を定め、各防衛施設局及び各防衛施設支局(注3) (以下「防衛施設局等」という。)に通知している。
 そして、起訴された前記3名のうち現職職員であった当時の建設部長及び建設部建設企画課長の2名を4月26日付けで懲戒免職とし、入札談合等への関与行為に係るものとして51名の職員に対し、降任、停職、減給等の懲戒処分等を行い、併せて談合関係資料の廃棄及び予定価格情報教示に関わった者などについても懲戒処分等を行っている。

 各防衛施設局及び各防衛施設支局 札幌、仙台、東京、横浜、大阪、広島、福岡、那覇各防衛施設局並びに帯広、名古屋、熊本各防衛施設支局


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1)検査の観点及び着眼点

 前記のように、防衛施設庁では、官製談合事件を契機として181社を排除したり、支出負担行為担当官の変更を行ったりなどして入札・契約手続の変更を行っているところである。
 また、前記の技術審議官が防衛施設庁退職後、理事長に就いていた財団法人防衛施設技術協会(以下「技術協会」という。)について、防衛施設庁から受託した契約のほとんどが随意契約であり、受託した業務を再委託しているものが多数あるという事態についても、今回の事件を契機に明らかになった。
 このような状況を踏まえ、合規性、経済性・効率性等の観点から、建設工事について、入札・契約の透明性、競争性の確保を図るために導入された既存の制度がどのように運用されてきたのか、事件発覚後に防衛施設庁の執った措置により入札・契約の状況にどのような変化が生じたのか、また、技術協会に対する業務委託契約がどのように行われてきたのかなどに着眼して検査した。

(2)検査の対象

 検査に当たっては、16年度又は17年度に契約期間がかかる建設工事で契約金額が5000万円以上のもの2,728件、当初契約金額計6125億余円を対象とした(表1参照) 。また、16年度又は17年度に契約期間がかかる委託業務で契約金額が1000万円以上のもの(契約の相手方が技術協会のものについては1000万円未満を含むすべての契約)、891件、当初契約金額計225億余円を対象とした(表2参照)

表1 検査の対象とした建設工事の工事種類別・契約年度別内訳

(単位:件、百万円)

契約
工事種類
15年度以前
16年度
17年度
合計
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
土木
344
111,085
244
64,303
(98)
147
(28,773)
41,988
735
217,377
建築
380
104,367
249
66,357
(87)
169
(23,025)
39,944
798
210,669
電気
307
55,110
186
25,278
(73)
143
(7,000)
20,535
636
100,923
機械
277
39,382
168
25,380
(61)
114
(7,730)
18,853
559
83,616
合計
1,308
309,945
847
181,321
(319)
573
(66,530)
121,321
2,728
612,587

注(1)
 平成17年度の( )書きは、18年3月の入札に係る分で内書きである。
注(2)
 国庫債務負担行為によるものを含む。

表2 検査の対象とした委託業務の委託先別・契約年度別内訳

(単位:件、百万円)

契約
委託先
15年度以前
16年度
17年度
合計
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
技術協会
43
1,548
52
1,240
15
174
110
2,963
技術協会以外
326
8,480
242
6,435
213
4,688
781
19,604
合計
369
10,029
294
7,675
228
4,863
891
22,568

 国庫債務負担行為によるものを含む。


(3)検査の方法

 検査は、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類のほか、契約状況等に関する調書を徴し、これらの調査、分析を行うとともに、防衛施設本庁及び防衛施設局等(以下「本庁等」という。)の実地検査において予定価格の算定状況や工事の発注状況を調査するなどの方法により実施した。

3 検査の状況

(1)建設工事について

ア 入札・契約方式の推移

 防衛施設庁が、防衛施設等の建設工事の発注に当たって適用している入札・契約方式の推移は表3に示したとおりであり、各方式における手続の流れは、図1に示したとおりである。

表3 入札・契約方式の推移

(土木・建設一式の場合)

<一般調達>  

 

<安全保障調達>


〜14年度
15、16年度
17年度
(18年3月を除く。)
18年3月
工事概算額
〜14年度
15、16年度
17年度
(18年3月を除く。)
18年3月
一般競争
一般競争
一般競争
一般競争
 
 
450万SDR
指名競争
指名競争
公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
 
 
5億円
公募型指名競争
 
 
3億円
意向確認型指名競争
 
 
2億円
指名競争
指名競争
指名競争
指名競争
指名競争
指名競争
 
 
5000万円

(専門工事の場合)

<一般調達>

 

<安全保障調達>


〜14年度
15、16年度
17年度
(18年3月を除く。)
18年3月
工事概算額
〜14年度
15、16年度
17年度
(18年3月を除く。)
18年3月
一般競争
一般競争
一般競争
一般競争
 
 
450万SDR
指名競争
指名競争
公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
競争性を高めた公募型指名競争
 
 
5億円
公募型指名競争
 
 
3億円
意向確認型指名競争
 
 
2億円
指名競争
指名競争
指名競争
指名競争
指名競争
指名競争
 
 
5000万円

注(1)
 専門工事とは、電気工事、機械器具設置工事等の土木・建築工事一式以外のものをいう。
注(2)
 安全保障調達とは、設計図書が「秘密保全に関する訓令」(昭和33年防衛庁訓令第102号)に基づき秘密に指定されている調達や指揮統制の中枢機能を有する施設に係る調達等のことであり、安全保障調達以外の調達を一般調達としている。
注(3)
 一般調達において、平成17年度に一部公募型指名競争入札が導入されたのは、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成17年法律第18号)の施行に伴い、公共工事の適正な施工を求められたことから変更を行ったものである。

図1 各競争入札の手続の概要

図1各競争入札の手続の概要

(ア) 一般競争入札は、入札参加希望者を公募する入札・契約方式であり、会社の経営規模等に基づく総合審査数値(注4) や同種工事の施工実績等による入札参加資格を満たす者すべてが入札に参加できる入札・契約方式でもあり、政府調達協定に基づき予定価格が450万SDR以上の工事に適用されている。

 総合審査数値 建設工事の発注者が入札参加資格の格付けをする際に、客観的評価として用いる数値


(イ) 競争性を高めた公募型指名競争入札は、入札参加希望者を公募する入札・契約方式であり、工事の内容等に応じて定めた入札参加資格を有する者から、技術資料募集要領に基づき提出を受けた技術資料を審査し、このうち入札参加条件を満たす入札参加業者のすべてを選定し、指名するものである。
(ウ)公募型指名競争入札は、入札参加希望者を公募する入札・契約方式であるが、(イ)と同様の手順を経た後、原則10社以上の入札参加業者を選定し、指名するものである。
(エ)意向確認型指名競争入札は、技術資料の提出を受ける者(20社程度)を選定した後、提出された技術資料の審査を行い入札参加業者を選定し、指名するものである。
(オ)指名競争入札は、あらかじめ登録された者の中から、発注者が一定数の入札者を指名する入札・契約方式で、原則10社以上の入札者を指名するものである。
(カ)随意契約は、特定の者と契約を締結しなければ契約の目的を達することができない特殊な工事等に競争入札の例外として適用されている。
 なお、防衛本庁では、今回の事件を契機に、行政上・組織上の問題点を洗い出し、再発を防止し、もって防衛行政全般に対する国民の信頼を回復することを目的として「防衛施設庁入札談合等再発防止に係る抜本的対策に関する検討会」を18年1月に設置し、入札手続等、再就職、人事管理等の各分野について検討を行い、同年6月に報告書(以下「検討会報告書」という。)を公表している。
 これを受けて防衛施設庁では、18年度から価格のみならず品質等の価格以外の多様な要素が考慮された競争が行われることで、談合等の不正行為が行われにくい環境の整備が期待される総合評価方式の導入を図り、この方式を適用する工事を金額ベースで3割超とすることや予定価格2億円以上の建設工事について一般競争入札を拡大して適用することとするなど入札・契約手続の変更を行っている。

イ 入札・契約方式の適用状況

 防衛施設局等が実施した16年度又は17年度に契約期間がかかる建設工事について、工事種類別に入札・契約方式の適用状況をみると、表4のとおりとなっている。

表4 入札・契約方式の適用状況 

(単位:件、百万円)

工事種類
入札・契約方式
土木
建築
電気
機械
合計
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
一般競争
(7)
48
(18,742)
83,538
33
38,965
7
5,354
(2)
7
(2,205)
6,333
(9)
95
(20,947)
134,192
競争性を高めた公募型指名競争
77
25,923
128
37,764
18
4,127
45
11,796
268
79,612
公募型指名競争
30
14,258
82
25,541
6
1,730
14
4,375
132
45,905
意向確認型指名競争
4
807
16
3,603
4
717
6
1,296
30
6,425
指名競争
550
85,249
(1)
481
(2,121)
80,963
572
63,787
(1)
450
(1,260)
50,480
(2)
2,053
(3,381)
280,480
随意契約
26
7,599
58
23,831
29
25,206
37
9,334
150
65,972
合計
(7)
735
(18,742)
217,377
(1)
798
(2,121)
210,669
636
100,923
(3)
559
(3,465)
83,616
(11)
2,728
(24,328)
612,587

注(1)
 不落随契は、当初の入札・契約方式に分類している。以下同じ。
注(2)
 ( )書きは、起訴事実の対象となった事案で内書きである。

 入札・契約状況について、18年2月までの状況と官製談合事件発覚後の同年3月の状況を比較すると表5のとおり、指名競争入札及び随意契約が減少している一方、競争性を高めた公募型指名競争入札の件数、金額の割合が高くなっている。これは、前記のとおり18年3月、181社を入札契約手続から排除したことにより競争性が低下するのを防止するため、新たに公募を行う場合、入札者の数を制限しない競争性を高めた公募型指名競争入札の適用拡大を図ったことによるものである。

表5 入札・契約方式の適用状況の比較 

(単位:件、百万円)

契約
入札・契約方式
18年2月まで
18年3月
合計
件数
金額
件数
金額
件数
金額
一般競争
(3.4%)
82
(21.7%)
118,950
(4.0%)
13
(22.9%)
15,242
(3.4%)
95
(21.9%)
134,192
競争性を高めた公募型指名競争
(9.1%)
220
(11.2%)
61,543
(15.0%)
48
(27.1%)
18,068
(9.8%)
268
(12.9%)
79,612
公募型指名競争
(4.1%)
99
(6.6%)
36,427
(10.3%)
33
(14.2%)
9,477
(4.8%)
132
(7.4%)
45,905
意向確認型指名競争
(1.2%)
30
(1.1%)
6,425
(—)
0
(—)
0
(1.0%)
30
(1.0%)
6,425
指名競争
(76.0%)
1,831
(47.0%)
256,959
(69.5%)
222
(35.3%)
23,521
(75.2%)
2,053
(45.7%)
280,480
随意契約
(6.1%)
147
(12.0%)
65,752
(0.9%)
3
(0.3%)
219
(5.4%)
150
(10.7%)
65,972
合計
(100%)
2,409
(100%)
546,057
(100%)
319
(100%)
66,530
(100%)
2,728
(100%)
612,587

 平成18年3月の公募型指名競争入札に実績があるのは、建設工事の入札・契約手続を停止する前に既に公募を行っていたためである。


 随意契約については、表6のとおり、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3第4項の規定により契約の性質又は目的が競争を許さない場合等に該当するとして、防衛施設局等で150件の契約が締結されている。
 このうち、既に発注した工事(以下「前工事」という。)と密接に関連する工事(以下「追加工事」という。)を発注するものについては、予決令第102条の4第4号イ 「現に契約履行中の工事に直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利であること」に該当するとして随意契約を締結したものが129件、86%を占めている。

表6 建設工事における随意契約の適用理由

(単位:件)

大分類
小分類
件数
契約の性質又は目的が競争を許さない場合
特殊な技術、機器又は設備等を必要とする工事等で、特定の者と契約を締結しなければ契約の目的を達することができない場合
(12%)
18
施工上の経験及び知識を特に必要とする場合、または現場の状況等に精通した者に施工させる必要がある場合
(2%)
3
競争に付することが不利と認められる場合
現に契約履行中の工事に直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利である場合
(86%)
129
合計
(100%)
150

ウ 入札・契約の状況

(ア)落札率の状況

 18年3月に防衛施設庁が前記の措置を執った前後における落札率(注5) の状況について、検査の対象とした2,728件の建設工事のうち随意契約(150件)を除く2,578件の入札・契約方式別ごとの平均落札率をみると、表7のとおりとなっている。全体の傾向としては、措置を執る前は95%程度で推移してきた平均落札率が18年3月では、86.4%と約10ポイント程度低下している。
 この平均落札率の低下の背景には、181社を入札から排除することにより、これまで防衛施設等の建設工事の受注実績のある業者の入札参加を制限する一方、18年3月の入札においては、一般競争入札の入札参加資格について、土木及び建築一式工事の場合、総合審査数値を1,200点以上から1,000点以上に緩和するなど従来の入札とは異なる条件の下で実施されたことの影響があったものと思料される。
 また、入札・契約方式別にみると、競争性を高めた公募型指名競争入札の平均落札率は、18年2月までは93.7%から95.2%であったものが18年3月は80.9%に低下しており、全体件数の約8割を占める指名競争入札においても95%程度で推移していたものが18年3月は88.1%に低下している。

 落札率 落札価格の予定価格に対する割合


表7 落札率の状況

(単位:件、百万円)

入札・契約方式
15年度以前
16年度
17年度
(18年2月まで)
18年3月
合計
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
一般競争
47
72,857
98.2%
31
40,887
96.6%
4
5,206
94.3%
13
15,242
74.5%
95
134,192
94.3%
競争性を高めた公募型指名競争
101
29,521
94.9%
113
30,184
93.7%
6
1,837
95.2%
48
18,069
80.9%
268
79,612
91.9%
公募型指名競争
60
21,538
98.6%
0
39
14,889
94.2%
33
9,478
87.9%
132
45,905
94.6%
意向確認型指名競争
30
6,425
96.3%
0
0
0
30
6,425
96.3%
指名競争
992
144,994
96.2%
677
94,387
94.5%
162
17,578
94.9%
222
23,521
88.1%
2,053
280,480
94.7%
合計
1,230
275,337
96.3%
821
165,458
94.5%
211
39,510
94.8%
316
66,310
86.4%
2,578
546,616
94.4%

(イ)割振表の対象となった可能性があるとされた建設工事の落札状況

 調査委員会報告書によれば、今回の官製談合は、工事件名ごとに受注予定業者を記載したいわゆる割振表により建設工事の割振りが組織的・構造的に行われていたものとしている。そして、受注予定業者への建設工事の割振りは所定の工事概算額以上の工事を対象としており、土木・建築工事については、通常5億円以上(15年度頃以降は3億円以上の工事を対象とする場合もある。)、舗装工事については、通常1億円以上の工事を対象としていたとしている。
 また、設備工事については、機械工事で通常1億5000万円以上、電気工事で通常1億円以上、通信工事で通常5000万円以上の工事を対象としていたとしている。
 そこで、今回検査の対象とした2,728件の建設工事から随意契約によるもの及び18年3月の入札を除く2,262件の建設工事について、予定価格が上記所定の金額以上のものとそれ以外のものの落札状況を示すと、表8のとおりとなる。

表8 所定の金額以上の建設工事とそれ以外の建設工事の落札状況 (平成18年2月までの分)

(単位:件、百万円)

工事種類(所定の金額)
所定の金額以上
所定の金額未満
合計
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
土木
(5億円以上の建設工事)
65
87,827
97.4%
413
57,709
93.8%
478
145,536
94.3%
建築
(5億円以上の建設工事)
54
55,280
98.5%
601
108,663
95.9%
655
163,944
96.1%
舗装
(1億円以上の建設工事)
85
31,955
96.3%
49
3,601
97.4%
134
35,556
96.7%
電気
(1億円以上の電気工事及び5000万円以上の通信工事)
301
52,243
95.5%
233
16,473
95.0%
534
68,716
95.3%
機械
(1.5億円以上の空調工事及び機械設置工事)
140
38,010
95.5%
321
28,540
96.0%
461
66,551
95.9%
合計
(28.5%)
645
(55.2%)
265,317
96.0%
(71.4%)
1,617
(44.7%)
214,988
95.3%
(100%)
2,262
(100%)
480,305
95.5%

 割振表の対象となった可能性があるとされた所定の金額以上の建設工事における平均落札率と所定の金額未満の平均落札率を比較してみると、後者が若干低くなっているものの双方とも95%程度となっている。
 また、この所定の金額以上の建設工事は、前記2,262件のうち645件、28.5%となっており、契約金額は4803億余円のうち2653億余円、55.2%となっている状況であった。

(ウ)181社の落札状況

 前記2,262件の建設工事について、181社が単独又は建設共同企業体として請け負ったものと、181社以外の業者が請け負ったものの落札状況をみると表9のとおりとなっている。

表9 181社と181社以外の落札状況(平成18年2月までの分)

(単位:件、百万円)

入札・契約方式
181社
181社以外
合計
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
一般競争
78
115,045
97.7%
4
3,904
92.4%
82
118,950
97.4%
競争性を高めた公募型指名競争
96
31,203
96.6%
124
30,339
92.5%
220
61,543
94.3%
公募型指名競争
31
16,351
98.1%
68
20,075
96.3%
99
36,427
96.9%
意向確認型指名競争
9
1,743
98.0%
21
4,681
95.6%
30
6,425
96.3%
指名競争
543
124,051
96.8%
1,288
132,907
95.0%
1,831
256,959
95.5%
合計
(33.4%)
757
(60.0%)
288,396
96.9%
(66.5%)
1,505
(39.9%)
191,909
94.8%
(100%)
2,262
(100%)
480,305
95.5%

 181社の平均落札率と181社以外の業者の平均落札率を比較してみると、後者が若干低くなっているものの双方とも95%程度となっている。また、181社以外の契約金額の合計を件数の合計で除した1件当たりの契約金額が1億2751万余円となるのに対し、181社では1件当たり、3億8097万余円と高くなっている。
 そして、181社による建設工事は、前記2,262件のうち757件、33.4%となっており、契約金額4803億余円のうち2883億余円、60.0%となっている状況であった。

(エ)複数回入札を実施した場合の1位入札者の状況

 18年3月に防衛施設庁が措置を執った前後で複数回入札を実施した場合の1位入札者の状況についてみると表10のとおりとなっており、落札に至るまで1位不動のものの割合は、98.7%から92.8%と若干減少している。また、全体の件数のうち複数回入札が行われたものの割合は、49.1%から13.2%と大幅に減少している。

表10 複数回入札を実施した場合の1位入札者の状況

(単位:件)

入札・契約方式
18年2月まで
18年3月
合計
件数
左のうち複数回入札が行われたもの(a)
(a)のうち落札に至るまで1位不動のもの
件数
左のうち複数回入札が行われたもの(b)
(b)のうち落札に至るまで1位不動のもの
件数
左のうち複数回入札が行われたもの(c)
(c)のうち落札に至るまで1位不動のもの
一般競争
82
(34.1%)
28
(100%)
28
13
(—)
0
(—)
0
95
(29.4%)
28
(100%)
28
競争性を高めた公募型指名競争
220
(39.5%)
87
(96.5%)
84
48
(2.0%)
1
(100%)
1
268
(32.8%)
88
(96.5%)
85
公募型指名競争
99
(69.6%)
69
(95.6%)
66
33
(9.0%)
3
(100%)
3
132
(54.5%)
72
(95.8%)
69
意向確認型指名競争
30
(63.3%)
19
(94.7%)
18
0
(—)
0
(—)
0
30
(63.3%)
19
(94.7%)
18
指名競争
1,831
(49.5%)
908
(99.2%)
901
222
(17.1%)
38
(92.1%)
35
2,053
(46.0%)
946
(98.9%)
936
合計
2,262
(49.1%)
1,111
(98.7%)
1,097
316
(13.2%)
42
(92.8%)
39
2,578
(44.7%)
1,153
(98.5%)
1,136

 そして、全体の傾向として、複数回の入札が行われた場合、最初に1位で応札した業者が落札に至るまで1位不動のものが1,153件中1,136件、98.5%と非常に高い割合となっている。また、一般競争入札、競争性を高めた公募型指名競争入札等の業者の受注意欲を反映できる入札・契約方式においても同様の傾向がみられる。

<1位不動の例>

<1位不動の例>

 なお、検討会報告書によれば、入札監視委員会の機能強化として、入札執行時における入札金額の順位変動の状況等の監視や、落札率及び個々の入札における全入札参加業者の入札金額の状況など入札結果の事後的、統計的分析を行い、分析結果について専門的・客観的な審議を行うこととしている。

エ 工事費内訳明細書

(ア)工事費内訳明細書の提出及び確認

 防衛施設局等では、「建設工事請負契約に係る一般競争入札の実施細則について(通知)」(平成8年施本建第13号(CCP))等により、入札参加業者の不誠実な行為の有無及び真摯な見積りを行っているかの確認を目的として、第1回入札時に、入札書に記載された金額に対応する工事費内訳明細書の提出を入札参加業者に求めるなどしている。
 そして、16年度以降は入札契約適正化法の趣旨を踏まえ、提出を求める工事の範囲を、一般競争入札のほか、競争性を高めた公募型指名競争入札、工事概算額が2億円以上の指名競争入札に拡大して、防衛施設局等の工事を担当する課において、他の入札参加業者の工事費内訳明細書を入手して使用していないか、他の工事の工事費内訳明細書が添付されていないかなど、工事費内訳明細書の確認をより厳正かつ効率的に行うこととしている。
 上記確認の結果、談合が行われたと疑うに足る事実が認められた場合には、防衛施設局等に設置されている建設工事公正入札調査委員会において審議を行い、必要に応じ工事費内訳明細書を公正取引委員会へ提出する等の所要の措置を執ることとしている。

(イ)工事費内訳明細書の規則性

 防衛施設局等に保管している工事費内訳明細書を比較するなどしたところ、18年3月契約を含む一部工事において、複数の業者の工事費内訳明細書に名称、単位等に共通の誤字があったり、各社の直接工事費に対する共通仮設費、現場管理費等の率が、一般には各社の個々の事情により変動するものであるのに、複数の業者においてほぼ同率であったりするなどの不自然な規則性が見受けられた。
 防衛施設庁では、16年6月以降、入札・契約手続の透明性を高めるため、公募型指名競争入札及び競争性を高めた公募型指名競争入札以外の指名競争入札の場合に、指名した者の商号又は名称及びその者を指名した理由について、指名後速やかに公表することとしていたが、17年12月からは談合等の不正行為を防止する観点から、落札者が決定した以降の事後公表としている。このように17年12月以降の入札においては、指名された業者は他の指名業者がどこかわからないようにしていたのに同様の不自然な規則性が見受けられた。

<事例1>

 A防衛施設局で平成18年3月20日に指名競争入札を行った設備工事において、9社が入札に参加した結果、a社が落札している。A防衛施設局が保管している工事費内訳明細書を比較するなどしたところ、表11のとおり、落札したa社を含めて9社中6社において共通の誤字が認められ、また、a社を含めた3社において、直接工事費に対する共通仮設費、現場管理費等の率がほぼ同率である規則性が認められた。

表11

<共通の誤字の例>

誤(×)
a社
b社
c社
d社
e社
f社
g社
h社
i社
消火 ポンプ
消化 ポンプ
×
×
×
×
×
×
水石鹸入れ ○個
水石鹸入れ ○組
×
×
×
×
×
×
給排水管保温塗装
給排水管保温装置
×
×
×
×
×
×

<見積額の規則性の例>

(単位:円)


 
直接工事費
諸経費
共通仮設費
現場管理費
一般管理費
a社
(落札者)
167,635,214
(4.2%)
7,000,046
(7.3%)
12,225,000
(8.0%)
13,380,000
b社
183,410,519
(4.2%)
7,667,082
(7.3%)
13,389,923
(8.0%)
14,653,983
c社
184,398,723
(4.2%)
7,700,050
(7.3%)
13,447,500
(8.0%)
14,718,000

 ( )書きは、直接工事費に対する共通仮設費、現場管理費等の率である。


(ウ)防衛施設庁で行った工事費内訳明細書の再点検

 防衛施設局等では、本院の検査結果を受けて、防衛施設局等で保管しているすべての工事費内訳明細書(16年度契約件数264件、17年度同227件)について、誤字脱字等の類似を中心に再点検を行った。その結果、表12のとおり、131件の入札において誤字、脱字等の類似が見受けられた。
 工事費内訳明細書の内容の確認は、入札した全業者から提出された膨大な量の単価等について行うことが望まれるが、限られた時間の中で行わなければならないことから、発注者に係る負担も大きいものとなっている。しかし、この確認により、上記のように公正な入札を執行できるかどうか疑義があるなどの事態を発見できる場合があることから、防衛施設庁においては、今後も積極的に入札者に工事費内訳明細書の提出を求め、効果的に活用することが必要である。

表12 工事費内訳明細書の再点検結果

(単位:件)

年度
再点検した契約
左のうち誤字、脱字等の類似
16
264
91
17
227
40
合計
491
131

オ 設備工事等における予定価格の積算

 防衛施設局等では、電気、機械及び通信の設備工事等の予定価格について、公共建築工事積算基準(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)等により積算している。
 そして、防衛施設局等では、これらの設備工事等のうち、発電装置、無停電電源装置、昇降機設備、クレーン設備等の特別な機器類を設置等する工事については、専門工事業者から総額の見積りを徴し、この見積価格を参考にして積算しており、工事種類別の件数、金額は表13のとおりとなっている。

表13 工事費総額を見積りにより積算している工事

(単位:件、円)

工事種類
件数
金額
建築
4
437,115,000
土木
0
0
電気
16
6,753,132,750
機械
9
1,778,910,000
通信
1
273,000,000
合計
30
9,242,157,750

 これらの見積りを徴する際の手続及び積算についてみると、防衛施設局等では、入札に当たって当該工事の施工可能な業者を指名した後にその指名業者からのみ見積りを徴し、各業者と価格交渉を行った結果の最低価格を積算価格としたり、定価と実勢価格の2回の見積りを徴し、これにそれぞれの査定率(注6) を乗じて、最も低い価格を積算価格としたりなどしていた。
 このように指名通知後に指名業者からのみ見積りを徴して予定価格を積算しているのは、特に16年6月から17年12月までの間は、指名業者名を指名後速やかに公表していたことから業者間で互いに情報交換が容易であり、当該工事の積算価格を推定し得ることになることから、適切とは認められない。

 査定率 平成16年10月以降、防衛施設庁建設部設備課が、防衛施設局等において発注実績が多数ある装置工事について、過去の装置又は設備の種類ごとに順次、定価ベースの見積額に対する落札額の率(当初査定率)、実勢価格ベースの見積額に対する落札額の率(最終査定率)を算出して防衛施設局等に示している。防衛施設局等では、これらを参考に当該装置工事の実状を勘案の上、適宜査定率を判断して使用している。


 防衛施設庁では、今回の談合事件発覚後の18年3月発注分から、次のような取扱いとすることとしている。
〔1〕 見積りは、原則として応募又は指名業者の決定がなされる前に行う。
〔2〕 当該局への業者登録をしており、当該機器を製作しているメーカー又は官民を含め当該機器の納入実績のあるメーカー並びにこれらのメーカーと特約店契約を締結している業者に広く見積りを依頼する。
〔3〕 配管、配線工事や共通費など各防衛施設局等で積算できる部分は見積りによらない。
〔4〕 見積りの徴収は一回限りとし、価格交渉によらず見積りを査定する。
 本院においても、上記のような新たな見積り方法が効果的に機能しているか、今後検証していく必要がある。

カ 追加工事に係る違約金

(ア)起訴事実の対象となった事案の追加工事

 防衛施設局等では、前記のとおり、15年6月11日以降に入札手続を開始する建設工事(追加工事を含む。)から、違約金に関する特約条項を請負契約締結時に付することとしている。
 今回の起訴事実の対象となった11件の建設工事のうち、予算上の都合から建設している施設の一部工事を追加工事として分割して発注しているものが、表14のとおり、東京、広島両防衛施設局において3件ある。そして、両防衛施設局では、これらの追加工事は前工事と密接不可分の工事で一貫した施工が要求されるとして、予決令第102条の4第4号イに基づき、前工事の請負業者に随意契約で発注している。

表14 起訴された11件のうち追加工事を発注している工事

防衛施設局
前工事
予定価格(円)
落札金額(円)
落札率(%)
契約日
工期
特約条項
追加工事
東京
三宿(16)病院新設空調工事(その1)
1,394,743,350
1,155,000,000
82.8
16.11.22
16.11.23
〜18.3.15
三宿(16)病院新設空調(その1)追加工事
1,388,682,750
1,365,000,000
98.2
17.11.7
17.11.8
〜19.6.30
東京
三宿(16)病院新設空調工事(その2)
1,093,064,700
1,050,000,000
96.0
16.12.1
16.12.2
〜18.3.15
三宿(16)病院新設空調(その2)追加工事
1,078,027,650
1,050,000,000
97.4
17.11.7
17.11.8
〜19.6.30
広島
岩国飛行場(16)港湾施設新設土木工事
909,148,800
871,500,000
95.8
17.3.14
17.3.15
〜18.3.15
岩国飛行場(16)港湾施設新設土木追加工事
735,686,700
735,000,000
99.9
17.3.28
17.3.29
〜18.6.30

 岩国飛行場(16)港湾施設新設土木追加工事の契約書に、違約金に関する特約条項が付されていないのは、広島防衛施設局において、追加工事は随意契約であるから競売入札妨害等が行われることがないと判断したためとしている。


(イ)追加工事の違約金

 防衛施設局等が発注する建設工事の中には、契約締結後、設計が変更されたことにより契約が変更されるものも見受けられる。
 防衛施設局等では、設計変更の原因は基本的には工事開始後の工事内容の精査によるものであるとしている。しかし、当初は予算が不足するために契約に含められなかった工事内容について、その後、他の工事に予算の余剰が生じた場合などに、その金額分を充当して、設計変更として当初契約に追加したものがあり、これは、実質的には追加工事と差がないものであると認められる。
 そして、設計変更と追加工事の違約金に関する特約条項の取扱いについて比較すると、前工事において競売入札妨害等の刑が確定するなどしたときの違約金は、設計変更の場合には設計変更した部分を含めて違約金が算定され請求できるのに対し、追加工事の場合には前工事とは別の契約であるとして違約金を請求できない。
 しかし、前記3件の追加工事は、いずれも前工事と一貫した施工が要求されることから随意契約として同一業者に発注していること、追加工事の工事費の積算は前工事を含めて一体工事として積算していること、落札率は1者のみの見積り合わせによった結果、前工事よりも高率であることなどをかんがみると、前工事に競売入札妨害等による国の損害が生じた場合には、同様に追加工事にも国の損害が生じていると思料される。
 したがって、前記のように、予算上の都合から分割して発注せざるを得ないものなどを追加工事として前工事の請負業者に随意契約で発注する場合には、違約金を請求することができるような方策も検討する必要があると認められる。

<事例2>

 B防衛施設局では、滑走路の沖合移設に伴い防波堤の桟橋を新設するため、平成17年3月15日に桟橋の下部工等の建設工事を前工事としてj社に871,500,000円で発注し、同月28日に上部工等の建設工事を追加工事としてj社と随意契約により735,000,000円で発注している。
 これらの工事を分割発注としたのは、当初一括して発注する計画であったところ、別の防波堤工事に追加の工事費が必要になったため、桟橋新設のための予算が減額されたことによるものである。
 そして、B防衛施設局では、前工事については、官製談合事件による競売入札妨害(談合)の刑が確定したため、契約変更後の請負代金額の10分の1に相当する110,764,500円を違約金として徴収している。
 一方、追加工事については、工事費の積算は前工事を含めて一体工事として積算するなどしていたのに、前工事とは別契約であるため違約金算定の対象となっていない。

(2)委託業務について

ア 入札・契約方式の適用状況

 本庁等が実施した16年度又は17年度に契約期間がかかる委託業務について、入札・契約方式別に示すと表15のとおりであり、技術協会への委託はすべて随意契約であるのに対し、技術協会以外への委託は、多様な入札・契約方式によっている。
 技術協会は、防衛施設に関する正しい理解と知識を広めること、防衛施設の建設技術などの調査研究と技術の向上のための奨励・助成を行うことなどを目的に設立された公益法人で、防衛施設に係る技術的事項等に関する調査研究や、防衛施設の整備に関する技術業務の受託などの事業を行っている。
 そして、本庁等では、業務を委託するに当たり、技術協会は、防衛施設等の建設に関する各種技術分野の専門知識、技術力及び各種データに関する広範な知識を有し、さらに、公平中立な立場で調査・研究を行い得る唯一の公益法人であるとの理由から、随意契約を締結している。

表15 入札・契約方式の適用状況

(単位:件、百万円)

入札・契約方式
技術協会
技術協会以外
合計
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
件数
金額
平均落札率
一般競争
0
0
0
標準プロポーザル等(注)
0
230
5,024
93.6%
230
5,024
93.6%
公募型競争等
0
140
5,153
87.7%
140
5,153
87.7%
指名競争
0
361
6,622
93.7%
361
6,622
93.7%
随意契約
110
2,963
98.5%
50
2,803
97.6%
160
5,767
98.2%
合計
110
2,963
98.5%
781
19,604
92.9%
891
22,568
93.6%

 建設コンサルタント業務等(測量、調査等)のうち、防衛施設局等の建設部長が技術的に高度なもの又は専門的な技術を要するものとして定めるものについて、あらかじめ当該業務に係る技術提案書(プロポーザル)の提出を求め、これを審査の上、当該業務について技術的に最適な技術提案書を提出した者を特定する方式。その概算額により標準、公募型、簡易公募型、公募・簡略審査型の各方式がある。


 また、技術協会に対する委託業務110件について、現場技術業務、調査業務等の種類別に内訳を示すと表16のとおりとなっている。

表16 技術協会に委託している現場技術業務、調査業務等の種類別内訳

(単位:件、円)

業務の種類
件数
金額
対象工事に関する支援業務(総合調整業務)
51
2,017,365,000
施工体制の点検補助業務
19
117,705,000
設計支援業務
7
439,530,000
施設現況調査,施設整備のための基本検討業務等
33
389,235,000
合計
110
2,963,835,000

 51件中、施工体制の点検補助業務を兼ねるものが8件、415,905,000円ある。


イ 再委託

(ア)一括再委託の禁止等

 国が随意契約の方法により調査・研究等を委託した場合の再委託については、「随意契約の方法による委託契約に関する事務の取扱いについて」(平成17年財計第408号。以下「主計局長通知」という。)において、一括再委託の禁止及び再委託する場合の承認の義務付けが規定されている。
 そして、本庁等が業務委託する際の各業務委託契約書においても、再委託については「乙は、業務の全部又は一部を第三者に委託してはならない。ただし、あらかじめ、甲の承諾を得た場合は、この限りでない。」と定めている。また、同契約書では、技術協会が業務を履行する技術者を定めたときは、その氏名、経験等を発注者である本庁等に通知して承諾を得ることとされている。

(イ)無断で再委託されていた委託業務

 本庁等が技術協会に委託している前記110件の業務のうち、技術協会から建設コンサルタント等に対して再委託されているものが41件あり、これらはすべて契約書等に違反して本庁等に無断で再委託されていた。
 本庁等が技術協会と業務委託契約を締結した際の特記仕様書には、委託業務の目的、委託期間、委託業務の項目等の具体的な委託内容が記述されている。
 今回、この特記仕様書と、技術協会が民間会社と業務の再委託契約を締結した際の特記仕様書とを比較したところ、両者はほぼ同一内容であった。このことについて技術協会では、委託業務内容について企画立案、関係機関との調整、工程管理を行うなど主体的、実質的に関与しているので一括再委託ではないとしている。
 しかし、委託業務は、特記仕様書に基づき実施されるのであるから、両特記仕様書がほぼ一致しているということは、形式的には前記の主計局長通知又は契約書で禁止された一括再委託と同様であると認められる。
 また、技術協会では本庁等との契約前に建設コンサルタント等から見積書を徴し、本庁等との契約と同日付で再委託契約を締結していたり、協会独自で各種調査を行うための機器や解析プログラムを所持していないことから当初から建設コンサルタント等に再委託することを予定したりしている事態が見受けられた。
 これらの事態をかんがみると、本庁等が、技術協会は防衛施設等の建設に関する各種技術分野の専門知識、技術力等を有する唯一の公益法人であるとの理由により随意契約を締結しているのは合理性を欠いている。
 さらに、発注者に対して技術者の承諾を得るために技術協会が提出した技術者の通知書及び経歴書を確認したところ、41件中6件において、技術協会以外の民間の技術者であることが明示されていたのに、防衛施設局では再委託の疑念を持たずこれを看過して技術協会に対し技術者の承諾を与えている事態が見受けられた。
 今後は、技術者を承諾する際の審査を厳格に行うとともに、受託者との委託業務の連絡、調整時にも再委託を行っていないか再確認を行うなどの措置が必要であり、再委託が確認できた際には、随意契約が適正であったか改めて検討し、場合によっては契約を解除して再度競争入札に付すことも検討すべきである。

<事例3>

 C防衛施設局では、平成17年度に、米軍施設の設計に関して事案の概要、設計諸条件、設計スケジュール等について米側の確認を行うなどの支援業務を、随意契約により8,715,000円で技術協会に委託している。技術協会では、C防衛施設局との契約の翌日に4,620,000円で建設コンサルタントであるk 社に業務を無断で再委託していた。
 そして、C防衛施設局では、技術協会から通知を受けた技術者の通知書及び経歴書には、技術協会以外の上記k社の技術者であることが明示されていたのに、これを看過して技術協会に対し承諾を与えていた。

ウ 委託契約の予算執行

 仙台防衛施設局ほか2防衛施設局において、現場技術業務の委託費の一部を会計法令等に違背して誤った歳出科目から支出しているものが、表17のとおり、8件99,668,681円見受けられた。
 本件は、予算執行の基本的な誤りであり、今後同様の事態が発生しないよう内部のチェック体制の整備や職員の研修等に、一層努めるべきである。

表17 誤った歳出科目からの支出

(単位:件、円)

防衛施設局等
件数
金額
仙台
2
14,771,995
福岡
2
28,120,358
那覇
4
56,776,328
合計
8
99,668,681

(別掲不当事項参照

エ 技術協会に委託している現場技術業務の積算

 現場技術業務の積算現場技術業務の委託費の積算は、「防衛施設庁において実施する建設工事に係る現場技術業務等委託積算価格算定要領について(通知)」(平成2年施本建第60号(CCP)等に基づき行っている。
 この要領等は、防衛施設庁において実施する建設工事に係る現場技術業務等を建設コンサルタント、財団法人等に委託する場合の積算価格を算定するために必要な事項を定めたものであり、積算価格の構成は図2のとおりとなっている。

図2 委託業務に係る積算価格の構成

図2委託業務に係る積算価格の構成

 そして、直接人件費等については、次のとおり定めている。
〔1〕 直接人件費は、当該事務処理に従事する技術者の人件費のことである。技術者は、技師(B)、技師(C)及び助手の中から、業務の規模及び内容に応じて必要な人数を定める。なお、技師長、主任技師、技師(A)は、技術者の指導監督及び高度な技術力を必要とする場合に計上することができる。
〔2〕 諸経費は、業務処理に要する業務管理費及び企業経営に要する一般管理費等であり、直接人件費に所定の率を乗じることにより算定する。
〔3〕 技術経費は、建設コンサルタント等における平素の技術能力の高度化に要する費用であり、直接人件費と諸経費の和に所定の率を乗じることにより算定する。
 このように、現場技術業務の積算価格の算定に当たって、直接人件費が重要な要素となることから、積算価格は、技術者の職階に応じて大きく変動する特徴がある。

<参考>設計業務委託に係る技術者単価の例(積算資料2006年3月号より)

(単位:円)

技術者の職階
基準日額
技術者の職階
基準日額
主任技術者
57,300
技師(B)
31,300
理事,技師長
53,800
技師(C)
25,100
主任技師
47,700
技術員
21,200
技師(A)
42,100

 また、上記の要領等によるほか、現場技術業務のうち施工体制の点検補助業務の業務費の積算は、「施工体制の点検補助業務委託積算要領の試行について(通知)」(平成16年施本建企第4号(CCP))に基づき行っており、積算価格の構成は基本的に上記と同様であるが、特に、技術者の職階は技師(B)相当とすると具体的に定めている。

(イ)対象工事に関する支援業務の積算

 現場技術業務のうち、対象工事に関する支援業務は、前記の表16のとおり計51件、20億1736万余円である。その委託内容は、防衛施設局等が発注する建設工事が的確かつ円滑に実施されるよう、〔1〕対象工事に関わる資料収集、問題点及び検討項目等の抽出、〔2〕対象工事の工程等の総合調整、〔3〕工事の安全と品質確保のため諸施策の提案及び工事請負業者への助言、〔4〕現地部隊及び自治体関係機関との連絡調整など、比較的高度な技術や豊富な経験を必要とする業務を補完する業務であり、技術協会の技術者が基本的には現場に常駐することとしている。
 本件委託業務費の積算価格についてみると、51件中48件で、技師(A)のみが1名から3名で積算されており、3件は技師(A)と技師(C)の組み合わせにより積算されていた。
 防衛施設局等では、本件業務の積算は前記の点検補助業務の積算と異なり技術者の職階の基準を設けておらず人員についても特段定めていないため、業務に必要な技術者の職階及び人員を技術協会の見積りにより決定している。
 このように、防衛施設局等において予定価格の積算を技術者の職階及び人員も明示することなく、技術協会からの見積りによっている事態は、技術協会の技術者数等の事情に左右されかねず、業務に応じた適切な職階の技術者が適切な人数見積もられているかどうか疑義がある。そもそも、防衛施設局等においては、支援業務を必要とする対象工事及び対象となる業務を特定して技術協会に委託するのであるから、必要な技術者の職階及び人員は防衛施設局等において自ら適切に判断すべきである。
 そして、前記の要領等によると、技術者については、技師(B)、技師(C)及び助手の中から業務の規模及び内容に応じて必要な人数を定めることとされており、技師(A)については、技術者の指導監督及び高度な技術力を必要とする場合に計上することができることとされていることから、技師(A)に相当する防衛施設局等の職員が常駐している現場などにも、本件業務のように一律に技師(A)に相当する技術者を配置するとして積算しているのは適切とは認められない。

<事例4>

 D防衛施設局では、課長相当職の職員を甲地区の建設工事の統括工事監督官(注7) として現場に常駐させているにもかかわらず、別途、平成16年度に甲地区の建設工事16件について、対象工事に関する支援業務及び技術検討補助業務を行わせるため、25,410,000円で技術協会に業務を委託し、技術協会は現場に技師(A)に相当する技術者1名を常駐させている。

 統括工事監督官 支出負担行為担当官等は、工事規模、工期及び複雑性を総合的に勘案して防衛施設庁長官が指定する大規模工事現場に1名指名することができる。統括工事監督官は当該工事現場に係る工事監督官を指揮監督する。


4 本院の所見

 防衛施設庁においては、防衛施設を取得し、その安定的な運用の確保を図ることなどを任務として、従来から訓令等に基づき、毎年度多額の事業費を投入して各自衛隊及び在日米軍が使用する防衛施設等の各種建設工事を実施している。そして、今後も在日米軍の再編などに伴う大規模な施設の建設等のために多額の事業費が見込まれ、これに伴い建設コンサルタント等に委託する調査、施工監理などの委託業務も増加することが見込まれる。このため、今後の入札・契約制度についても更に透明性、競争性を確保することにより、談合の防止を図るとともに、経済的な予算執行にも寄与することが求められている。
 今回、防衛施設庁の入札・契約状況について検査したところ、次のような状況が見受けられた。

(1)建設工事について

ア 平均落札率については、18年2月までは95%程度であったものが防衛施設庁が措置を執った18年3月には86.4%となり約10ポイント程度下がっていた。
イ 複数回入札が行われた場合、最初に1位で応札した業者が落札に至るまで1位不動のものが98.5%に上っており、一般競争入札等の業者の受注意欲を反映できる入札・契約方式においても同様の傾向がみられた。
ウ 工事費内訳明細書については、複数の業者において、名称、単位等に共通の誤字があったり、各社の直接工事費に対する共通仮設費等の率がほぼ同率であったりするなどの不自然な規則性が見受けられた。
エ 特別な機器類を設置する設備工事等の予定価格の積算については、当該工事の施工可能な業者を指名した後にその指名業者からのみ見積りを徴し、各業者と価格交渉を行った結果の最低価格を積算価格とするなどしていた。
オ 違約金に関する特約条項については、追加工事は随意契約として同一業者に発注し、一体工事として積算していることなどから、追加工事にも国の損害が生じていると思料されるのに、追加工事では前工事において競売入札妨害等に関して刑が確定するなどしても違約金を請求することができない不合理な事態が見受けられた。

(2)委託業務について

ア 入札・契約の状況については、技術協会との契約はすべて随意契約で、技術協会以外の契約は多様な入札・契約方式であった。
イ 再委託については、技術協会が防衛施設庁に無断で再委託していたものが多数見受けられた。
ウ 委託契約の予算執行については、3防衛施設局において会計法令等に違背して誤った歳出科目から支出しているものが見受けられた。
エ 現場技術業務の積算については、必要な技術者の職階及び人員も明示することなく技術協会からの見積りによっていた。
 防衛施設庁においては、今回の官製談合事件によって失った国民の信頼を回復するためには、国が被った損害の回復に努めるとともに、検討会報告書にまとめられた新たな入札手続等を確実に実施していくことが必要であるが、今回の検査結果を踏まえ、以下のような対応を図っていくことが必要と考えられる。

(1)建設工事について

ア 一般競争入札方式等の適用拡大を図るとともに、総合評価方式の実施に当たっては、目的に沿った効果が得られるよう実施方法等にも十分に配慮して適用していくこと
イ 工事費内訳明細書については、公正な入札を執行できるかどうか疑義があるなどの事態を発見できる場合があることから、防衛施設局等の事務負担も考慮した上でより効果的な活用方法を検討すること
ウ 予定価格の積算については、指名業者決定前に広く業者から見積りを徴することとしているが、今後これを確実に実施していくこと
エ 追加工事における違約金については、随意契約の理由にもかんがみながら、前工事において競売入札妨害等の刑が確定するなどした場合には、違約金を請求することができるような方策も検討すること

(2)委託業務について

ア 技術協会は自主解散が予定されており、技術協会に随意契約で委託していた現場技術業務は今後競争契約となることから、委託方法、積算方法等を検討すること
イ 再委託については今回の検査でも契約書に違反して無断で再委託している事態が多数見受けられたことから、このような事態の防止などについて検討すること

 本院としては、今後とも上記のことが確実に実施され、新たな入札・契約手続の効果が十分発現しているか、実施状況等を把握し検査していくこととする。