インドネシア共和国においては、国家開発企画庁が、津波等災害に対して各省庁が実施機関となって取り組む全体の復旧・復興計画を立案したり、各実施機関が集約した津波等災害の需要に対する州政府からの情報を取りまとめ、我が国を含めた外国からの支援受入に関する連絡・調整をしたりしている。
我が国が援助したノンプロ無償資金協力事業の実施に当たっては、図4—1のとおり、同国政府からの要請、案件の選定、案件の実施状況の確認等を行う政府間協議会に、同国政府側からは国家開発企画庁、各実施機関、財務省など関係するすべての機関が、我が国政府側からは在インドネシア日本国大使館が、それぞれ参加している。また、JICAのインドネシア事務所は、JICAが行う緊急開発調査等に関して必要な情報交換を同大使館及びJICSと行った。
そして、本災害が大統領令により国家災害とされたこと、アチェ州内の地方行政当局が長年の国内紛争に加えて、今回の津波災害で壊滅的な打撃を受け、回復に時間を要することなどから、今後5年間にわたる今回の津波等災害に対する復旧・復興を進めるために、17年4月30日に大統領令によってアチェ・ニアス復旧・復興庁が被災地域のバンダ・アチェ市に設置された。国家開発企画庁は国家レベルの復旧・復興を担当する機関であったが、アチェ・ニアス復旧・復興庁というアチェ・ニアスの復旧・復興を担う機関が出来、これ以降は、アチェ・ニアス復旧・復興庁が、今回の津波等災害の復旧・復興の調整を担当する中央政府の機関として、国家開発企画庁とともに政府間協議会に参加することとなった。
図4—1 インドネシア共和国政府における援助受入及び実施組織
在インドネシア日本国大使館等の説明によれば、インドネシア共和国政府は次のようにして被災地における需要を把握し、ノンプロ無償資金協力事業の内容を決定している。
〔1〕 同国政府内部において、まず各実施機関が、被災地の州政府からの情報等を踏まえて担当分野における需要に関する情報を集約する。
〔2〕 次に、国家開発企画庁等は各実施機関からの情報を取りまとめ、優先順位を勘案して絞込みを行う。
〔3〕 その後、政府間協議会において協議を行い、具体的な案件及び資金配分を決定する。
〔4〕 さらにその後に、各実施機関から示された需要に関する詳細な情報に基づいて、案件ごとに各実施機関、国家開発企画庁等と同大使館との間で、より詳細な協議を行い、より具体的な案件内容を正式決定する。
〔5〕 そして、同国側が要望した内容と実際の援助の内容が異ならないように、各実施機関は調達に当たっての仕様、調達条件等について調達代理機関のJICSと協議を行い事業内容を決定する。
上記の被災地における需要の把握及び事業内容の決定に関する問題点について、外務省等では次のとおり説明している。
〔1〕 今回の災害が、大規模であったこと、被災により同国政府職員が多数犠牲になったこと、被災地が首都ジャカルタから遠隔地であったことなどから、災害後相当期間にわたって被害状況を把握することが困難であったこと
〔2〕 被害があらゆる分野にまたがり、地域的にも広範囲に及ぶものであったことから、多数の関係省庁から復旧・復興の需要を把握し事業内容として取りまとめることが困難であったこと
〔3〕 表4—10のとおり、津波等災害に対して国際社会から大規模な支援が行われ、外国政府や国際機関以外に国際NGOが多額の資金を集め参画してきたことなどから、同国政府内での調整、中央政府と地方政府との調整、支援国等の間での調整等、様々な調整に時間を要したこと
インドネシア政府自己資金
|
国際援助
|
民間支援
|
合計
|
||
国際機関
|
二国間
|
NGO
|
|||
供与額
|
1.10
|
1.68
|
1.27
|
3.70
|
7.75
|
このような状況の中で、同国政府は、津波等災害に関する国家としてのマスタープランとなる復興計画案を17年4月までに取りまとめた。一方、我が国が供与したノンプロ無償資金146億円について、外務省から提出された資料に基づき、会計検査院が把握した18年3月末現在の事業の概要を、分野(実施機関)、資金の配分(概算額)、案件名、調達品目、事業内容の別に整理して示すと、表4—11のとおりとなる。
分野
(実施機関)
|
資金の配分
(概要額)
|
案件名
|
調達品目
|
事業内容
|
医療・保健(保健省)
|
約11.2億円
|
〔1〕緊急支援物資(医薬品・医療器具)供与事業
|
医薬品、医療器具、医薬品のモニタリングに係るコンサル選定、救急車、巡回治療用車両等、研究所用ラボ機材、保健所の再建
|
医薬品及び医療器具を保健省の地方倉庫に供与する。
|
〔2〕保健所復旧事業
|
医療キットなど機材の供与と保健所の修復
|
|||
放送(通信情報技術者)
|
約10.6億円
|
〔3〕ラジオ・テレビ放送支援事業
|
ラジオ放送機材、ラジオ放送局の修復、テレビ放送機材
|
ラジオ局、テレビ局のそれぞれにつき、機材を供与し建物を修復する。
|
輸送(公共事業省)
社会基盤(公共事業省)
|
約58.3億円
|
〔4〕西海岸道路復旧事業
|
建設機械、蛇籠、コルゲートパイプ、道路復旧工事、土嚢袋、車両、移動式排水ポンプ、掘削機、小規模工事、大規模工事
|
建設機械などの機材、資材の調達と道路工事
|
〔5〕放水路(護岸工事)復旧事業
|
井戸の掘削機などの機材と堤防の修復工事
|
|||
生活(公共事業省)
|
約10.6億円
|
〔6〕水道・衛生施設復旧事業
|
建設機械、輸送役務、バキュームカー、ゴミ収集用アームロールトラック、消防車、トラック、水道管敷設工事
|
建設機械などの機材と配管の敷設工事
|
コミュニティ(社会省)
|
約4.1億円
|
〔7〕孤児院再建事業
|
孤児院修復・再建工事、孤児院向け備品の調達
|
政府系の孤児院その他修復、機材供与
|
産業(漁業省、商業省)
|
約5.9億円
|
〔8〕漁業支援事業
|
養殖施設向けピックアップトラック・建設機械・車両・機材の調達、養殖施設工事、漁獲総局向け漁具・漁船エンジン・漁船・ワークショップ機材・施設の建設工事・アイスプラント機材
|
魚市場に併設する冷凍装置を保管する建物の建設及び機材の供与等
|
約3.5億円
|
〔9〕市場復旧整備事
|
度量衡機材、再建工事のコンサル選定、再建工事
|
バンダ・アチェ周辺及びニアスの市場修復
|
|
教育(教育省、宗教省)
|
約16.9億円
|
〔10〕大学復旧等支援事業
|
イスラム大学向け機材、大学施設の改修・再建工事のコンサル選定、大学施設の改修・再建工事、シャクアラ大学向け教材
|
イスラム大学とシャクアラ大学に機材の供与と工事
|
教育(労働・移住省)
|
〔11〕職業訓練センター支援事業
|
移動訓練車、職業訓練機材、職業訓練センターの修復工事
|
移動訓練車を含む訓練機材と建物の修復、再建
|
|
教育(教育省、宗教省)
|
〔12〕イスラム学校等に対する支援事業
|
マドラサ・ペサントレン向け学校機材、教育省管轄学校向け教育機材、学校の修復・再建工事のコンサル選定、学校の修復・再建工事
|
公立校・イスラム校ともに教育機材を供与、公立校については建物の修復
|
|
コミュニティ(労働・移住省・国家土地庁)
|
約2.4億円
|
〔13〕土地台帳の修復事業
|
土地台帳修復のための役務、凍結乾燥機を設置する建物の建築、土地台帳を保管している冷凍庫の賃貸料の支払、台帳、地図の保管庫、デジタル保存するための機材一式
|
水没した土地権利台帳を修復するための凍結乾燥機の貸与、建物の建築、冷凍庫の保管料、デジタル化機材の調達
|
社会基盤・コミュニティ(アチェ・ニアス復旧・復興庁)
|
約19.3億円
|
〔14〕排水施設緊急復旧・モデルエリア開発事業
|
排水路・排水ポンプ場、貯水池配置、避難道路、避難塔工事に係るコンサルタントの選定・施工業者の選定
|
バンダアチェ市内に排水路、排水ポンプ場、及び貯水池を設置。ウレレ地区に避難道路・避難用塔を建設。
|
約3.1億円
|
調達代理手数料
|
上記全案件に係る調達手続の進ちょく状況に応じて随時支出される
|
||
援助額146億円
|
外務省は、これらの分野又は案件ごとに契約を締結する時期や案件を完了させる時期が具体的に定められていないこと、事業の契約手続を進める中で、入札の結果などによっては契約額が下がり資金に余裕が生じることなどのため、新たに案件が増えたり、調達品目が増えたりすることなどがあると説明している。
我が国からインドネシア共和国政府の政府口座に資金が供与された17年1月以降の、JICSの管理する調達口座への資金の移動状況及び調達口座における資金の執行状況についてみると、表4—12のとおり、調達口座に受け入れた資金146億円に対して、JICSから18年3月末までに支払われた額は29億9067万余円(20.5%)となっていた。
年月
|
政府口座から調達口座への受入金額(円)
|
調達口座での資金の執行状況
|
|||||
契約
|
支払
|
支払後の残高(円)
|
|||||
件数
|
金額(円)
|
契約締結率(%)
|
金額(円)
|
支払率(%)
|
|||
17.1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
18.1
2
3
|
0
0
0
3,765,000,000
0
8,475,000,000
0
0
0
25,000,000
0
0
2,335,059,325
0
0
|
1
0
0
0
6
10
12
4
5
14
3
23
10
11
9
|
310,784,313
0
0
0
235,006,983
400,915,255
664,407,542
80,546,072
115,213,724
781,778,944
2,719,301,933
1,803,096,482
333,288,986
510,378,842
572,240,166
|
2.1
2.1
2.1
2.1
3.7
6.5
11.0
11.6
12.4
17.7
36.4
48.7
51.0
54.5
58.4
|
0
0
0
0
0
41,187,240
116,640,850
312,542,771
155,171,252
76,581,586
199,107,360
1,193,699,831
79,097,351
429,451,394
387,192,635
|
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.3
1.1
3.2
4.3
4.8
6.2
14.3
14.9
17.8
20.5
|
0
0
0
3,765,000,000
3,765,000,000
12,198,812,760
12,082,171,910
11,769,629,139
11,614,457,887
11,562,876,301
11,363,768,941
10,170,069,110
12,426,031,084
11,996,579,690
11,609,387,055
|
合計
|
14,600,059,325
|
108
|
8,526,959,242
|
58.4
|
2,990,672,270
|
20.5
|
/
|
17年1月19日に政府口座に送金された資金は、4月18日から4回にわたって調達口座に移動され、18年1月18日にはすべて移動されていた。そして、外務省の説明によれば、当該資金の移動については、政府間協議会等を通じて調達品目が確定された後に、同国政府の同意を得るなどして行われたとしている。
交換公文によれば、資金が供与された後12箇月以内に使用すること、及びその期間経過後に政府口座にある残高は日本国政府に返還することとされている。そして、12箇月以内に使用するという交換公文の規定に関しては、附属文書によれば、資金を供与した後12箇月以内に政府口座から調達口座に資金を移動することとされていることから、外務省では、上記のように資金が使用されず、調達口座に残高があったとしても、交換公文の規定に違反していることにはならないとしている。
このようにして調達口座に移動された資金は、前記の事業内容に従って各案件に係る契約が締結され、当該契約の履行に応じてJICSから業者等に支払われることになる。
これら契約の締結と資金の支払の実績を月別にみると、表4—12のとおり、JICSとの調達代理契約を除く案件に係る契約の締結は17年5月以降、また、資金の支払が行われたのは6月以降となっている。
そして、18年3月末現在の資金の執行状況についてみると、契約締結済額は108件、85億2695万余円で、資金供与額146億円に対する契約締結済額の割合である契約締結率は58.4%、また、支払済額は29億9067万余円、資金供与額146億円に対する支払済額の割合である支払率は20.5%となっている。また、施設の工事に係る契約等においては、契約後全額を支払うのではなく進ちょくに応じた分割払を行っていた。
調達口座での残高は、表4—12のとおり、18年3月末現在で、116億0938万余円となっている。
各案件に係る契約の進ちょく状況についてみると、表4—13のとおり、18年3月末現在で、予定契約件数123件のうち、契約相手方の選定を開始したものは111件、業者との契約締結を終了したものは107件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものは45件となっている。
案件名
|
予定契約件数(a)
|
契約進ちょくの段階
|
|||||
契約相手方の選定開始
|
契約締結の終了
|
契約に基づく給付の完了
|
|||||
件数(b)
|
割合(%)(b/a)
|
件数(c)
|
割合(%)(c/a)
|
件数(d)
|
割合(%)(d/a)
|
||
〔1〕 緊急支援物資(医薬品・医療器具)供与事業
|
4
|
3
|
75.0
|
3
|
75.0
|
2
|
50.0
|
〔2〕 保健所復旧事業
|
8
|
8
|
100.0
|
8
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔3〕 ラジオ・テレヒ゛放送支援事業
|
7
|
7
|
100.0
|
6
|
85.7
|
4
|
57.1
|
〔4〕 西海岸道路復旧事業
|
16
|
16
|
100.0
|
16
|
100.0
|
13
|
81.3
|
〔5〕 放水路(護岸工事)復旧事業
|
17
|
17
|
100.0
|
17
|
100.0
|
9
|
52.9
|
〔6〕 水道・衛生施設復旧事業
|
13
|
13
|
100.0
|
13
|
100.0
|
10
|
76.9
|
〔7〕 孤児院再建事業
|
4
|
3
|
75.0
|
3
|
75.0
|
0
|
0.0
|
〔8〕 漁業支援事業
|
15
|
12
|
80.0
|
12
|
80.0
|
4
|
26.7
|
〔9〕 市場復旧整備事業
|
6
|
3
|
50.0
|
3
|
50.0
|
0
|
0.0
|
〔10〕 大学復旧等支援事業
|
13
|
12
|
92.3
|
9
|
69.2
|
0
|
0.0
|
〔11〕 職業訓練センター支援事業
|
4
|
4
|
100.0
|
4
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔12〕 イスラム学校等に対する支援事業
|
7
|
6
|
85.7
|
6
|
85.7
|
1
|
14.3
|
〔13〕 土地台帳の修復事業
|
6
|
6
|
100.0
|
6
|
100.0
|
2
|
33.3
|
〔14〕 排水施設緊急復旧・モデルエリア開発事業
|
3
|
1
|
33.3
|
1
|
33.3
|
0
|
0.0
|
14案件合計
|
123
|
111
|
107
|
45
|
これを案件別にみると、予定契約件数に対して契約締結が終了した件数の割合が100%となっている案件は、14案件のうち6案件ある。また、契約に基づく給付の完了した件数の割合が100%となっている案件はなく、50%以上となっている案件は5案件あったが、〔7〕孤児院再建事業、〔9〕市場復旧整備事業、〔14〕排水施設緊急復旧・モデルエリア開発事業の施設工事に係る3案件を含む6案件は0%であった。
そして、業者からの給付が完了している契約45件の契約内訳をみると、そのうち44件は医薬品、取材車両、家具、道路建設用の車両等、機械及び資材の調達契約であった。
また、工事に係る契約で給付が完了していないものが多いことについて、外務省は、実施機関等は、工事には詳細設計が必要で、そのため日時を要したり、また契約後相応の工期を要したりするためであると説明しているとしている。
〔4〕西海岸道路復旧事業及び〔6〕水道・衛生施設復旧事業の2案件は、工事に係る案件であるが、給付の完了している契約件数の割合がそれぞれ81.3%及び76.9%となっている。これについては、建設機械などの機材調達契約が多く含まれており、我が国からの支援による工事以外の災害復旧作業にもこれらの機材を使用することができるように、工事契約に先立って機材調達契約を優先的に締結したためであるとしている。
また、機材に係る案件である〔1〕緊急支援物資(医薬品・医療器具)供与事業や〔2〕保健所復旧事業が、案件の進ちょくに時間を要している。これについては、緊急支援物資である医薬品及び医療器具は、当初から複数回に分けて調達する計画であり、保健所に配置する車両、医療キット等は需要把握と支援調整を終えた上で、事業の具体化を行ったためであるとしている。
これら14案件に係る契約の実施状況について、18年3月末現在、締結された契約107件の契約内容等を契約別に整理して示すと、別表4—1
のとおりとなる。
モルディブ共和国においては、同国外務省が総合調整窓口となり漁業・農業省等の実施機関との調整を、国家開発計画省が国家計画の調整とモニタリングを、また、財務省が予算監理、予算配分、及び支援国等をも含めた案件調整を、それぞれ行うこととなっている。
我が国が援助したノンプロ無償資金協力事業の実施に当たっては、図4—2のとおり、同国政府からの要請、案件の選定、案件実施状況の確認等を行う政府間協議会が設置されている。そして、政府間協議会には、同国政府側からは外務省、各実施機関など関係機関が、我が国政府側からは同国を所轄する在スリランカ日本国大使館が、それぞれ参加している。また、JICAのスリランカ事務所は、緊急開発調査に関連した調査・設計等に関する専門的知見を提供した。
そして、案件の選定については、政府間協議会がプロジェクトの妥当性の検討、具体的な案件の選定を行うこととなっている。
図4—2 モルディブ共和国政府における援助受入及び実施組織
在スリランカ日本国大使館等の説明によれば、モルディブ共和国政府は次のようにして被災地における需要を把握し、ノンプロ無償資金協力事業の内容を決定している。
〔1〕 同国政府内部において、まず各実施機関が、被災地域からの情報等を踏まえて担当分野における需要に関する要望を取りまとめる。
〔2〕 その後、政府間協議会において協議を行い、具体的な案件及び資金配分を決定する。
同国政府は、同国における津波復旧・復興事業の基礎となる国家復旧・復興計画を17年3月に取りまとめた。一方、我が国が供与したノンプロ無償資金20億円について、外務省から提出された資料に基づき、会計検査院が把握した18年3月末現在の事業の概要を、分野(実施機関)、資金の配分(概算額)、案件名、調達品目、事業内容の別に整理して示すと、表4—14のとおりとなる。
分野(実施機関)
|
資金の配分(概算額)
|
案件名
|
調達品目
|
事業内容
|
漁業(漁業・農業省)
|
約5億円
|
〔1〕漁業関連設備整備計画
|
無線機、GPS、魚網、エンジン、発電機、ポンプ、漁船修理用機材、漁船用エンジンオーバーホール用スペアパーツ、漁船用プロペラ及びシャフト、85フィート漁船
|
漁船積載用無線機の調達、漁船積載用各種漁具の調達、津波にて被災した漁船のエンジン、スペアパーツ、プロペラ・シャフト等の調達、カツオ一本釣り用漁船(新造)の現地調達
|
社会基盤・行政
(環礁開発省、運輸省、環境・エネルギー・水省)
|
約12億円
|
〔2〕公共施設・設備整備計画
|
ガン島行政合同庁舎建設、フォナドゥー島行政事務所再建、行政事務所用太陽光発電システム、コーズウェイの復旧と再建、ラームアトール配電網復旧計画、下水処理システム改善計画
|
コーズウェイ建設、多目的防災ビル建設、アイランドオフィス建設、配電設備設置、下水システム整備
|
農業(漁業・農業省)
|
約2.4億円
|
〔3〕農業関連機材供与
|
トラクター、ピックアップトラック、背負い式スプレーヤー、シュレッダー、温室冷却システム、太陽光乾燥機、船舶、発電機、芝刈り機、スペアパーツ等
|
津波で被災した農業機材の調達
|
約0.6億円
|
調達代理手数料
|
上記全案件に係る調達手続の進ちょく状況に応じて随時支出される
|
||
援助額20億円
|
外務省は、これらの分野又は案件ごとに契約を締結する時期や案件を完了させる時期が具体的に定められていないこと、事業の契約手続を進める中で、入札の結果などによっては契約額が下がり資金に余裕が生じることなどのため、新たに案件が増えたり、調達品目が増えたりすることなどがあると説明している。
我が国からモルディブ共和国政府の政府口座に資金が供与された17年1月以降の、JICSの管理する調達口座への資金の移動状況及び調達口座における資金の執行状況についてみると、表4—15のとおり、調達口座に受け入れた資金20億円に対して、JICSから18年3月末までに支払われた額は6億0420万余円(30.2%)となっていた。
年月
|
政府口座から調達口座への受入金額(円)
|
調達口座での資金の執行状況
|
|||||
契約
|
支払
|
支払後の残高(無単位は円、$は米ドルを示す)
|
|||||
件数
|
金額(円)
|
契約締結率(%)
|
金額(円)
|
支払率(%)
|
|||
17.1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
18.1
2
3
|
0
0
2,000,002,235
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
|
1
0
0
1
1
0
1
4
2
5
3
1
0
0
1
|
59,628,543
0
0
481,328
43,746,125
0
102,304,000
107,054,272
51,217,802
185,830,600
1,175,007,036
148,596,805
0
0
82,802,775
|
3.0
3.0
3.0
3.0
5.2
5.2
10.3
15.7
18.2
27.5
86.3
93.7
93.7
93.7
97.8
|
0
0
0
0
0
16,715,537
0
0
20,744,314
14,449,006
199,702,220
311,835,398
1,506,157
34,554,007
4,702,084
|
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.8
0.8
0.8
1.9
2.6
12.6
28.2
28.2
30.0
30.2
|
0
0
2,000,002,235
2,000,002,235
2,000,002,235
1,983,286,698
1,983,286,698
1,983,288,013
1,962,543,699
1,948,094,693
147,304,001
$13,342,403.94
147,304,001
$10,743,775.62
147,304,001
$10,731,224.31
136,066,407
$10,543,396.94
136,066,407
$10,504,212.91
|
合計
|
2,000,002,235
|
20
|
1,956,669,286
|
97.8
|
604,208,723
|
30.2
|
/
|
17年1月19日に政府口座に送金された資金は、3月8日に調達口座にすべて移動されていた。そして、外務省の説明によれば、当該資金の移動については、政府間協議会等を通じて調達品目が確定された後に同国政府の同意を得るなどして行われたとしている。
交換公文によれば、資金が供与された後12箇月以内に使用すること、及びその期間経過後に政府口座にある残高は日本国政府に返還することとされている。そして、12箇月以内に使用するという交換公文の規定に関しては、附属文書によれば、資金を供与した後12箇月以内に政府口座から調達口座に資金を移動することとされていることから、外務省では、上記のように資金が使用されず、調達口座に残高があったとしても、交換公文の規定に違反していることにはならないとしている。
これら契約の締結と支払の実績を月別にみると、表4—15のとおり、JICSとの調達代理契約を除く案件に係る契約の締結は17年4月以降、また、資金の支払が行われたのは6月以降となっている。契約の締結の開始が4月になったのは、実施機関の説明等によると、案件内容を特定するのに必要なニーズアセスメントなどの事前調査が完了していなかったためであるとしている。
そして、18年3月末現在の資金の執行状況についてみると、契約締結済額は20件、19億5666万余円で、資金供与額20億円に対する契約締結済額の割合である契約締結率は97.8%、また、支払済額は6億0420万余円、資金供与額20億円に対する支払済額の割合である支払率は30.2%となっている。また、施設の工事に係る契約等においては、契約後全額を支払うのではなく進ちょくに応じた分割払を行っていた。
各月別の契約実績をみると、17年11月分の金額が11億7500万余円と他の月よりも非常に多くなっているが、これは契約金額の大きな施設の工事に係るものが締結されたためである。
また、調達口座での残高は、表4—15のとおり、18年3月末現在で、1億3606万余円及び10,504,212.91米ドル(邦貨換算額12億6050万余円)、計13億9657万余円となっている。
各案件に係る契約の進ちょく状況についてみると、表4—16のとおり、18年3月末現在で、予定契約件数19件のうち、契約相手方の選定を開始したものは19件、業者との契約締結を終了したものは19件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものは8件となっている。
案件名
|
予定契約件数(a)
|
契約進ちょくの段階
|
|||||
契約相手方の選定開始
|
契約締結の終了
|
契約に基づく給付の完了
|
|||||
件数(b)
|
割合(%)(b/a)
|
件数(c)
|
割合(%)(c/a)
|
件数(d)
|
割合(%)(d/a)
|
||
〔1〕漁業関連設備整備計画
|
9
|
9
|
100.0
|
9
|
100.0
|
6
|
66.7
|
〔2〕公共施設・設備整備計画
|
5
|
5
|
100.0
|
5
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔3〕農業関連機材供与
|
5
|
5
|
100.0
|
5
|
100.0
|
2
|
40.0
|
3案件合計
|
19
|
19
|
19
|
8
|
これを案件別にみると、すべて契約締結が終了しており、また、予定契約件数に対して契約に基づく給付の完了した件数の割合が、〔1〕漁業関連設備整備計画では66.7%となっている一方、〔2〕公共施設・設備整備計画では0%であった。
そして、業者からの給付が完了している契約8件の内容をみると、無線機、GPS、漁船用スペアパーツ、機械及び資材の調達契約であった。
また、工事に係る契約で給付が完了したものがないことについて、外務省は、JICSは、工事契約には詳細設計等が必要でそのため日時を要したり、相応の工期を要したりするためであると説明しているとしている。
これら3案件に係る契約の実施状況について、18年3月末現在、締結された契約19件の契約内容等を契約別に整理して示すと、別表4—2
のとおりとなる。
スリランカ共和国政府においては、財務計画省が、交換公文の署名に係る業務を行うほか、各実施機関の取りまとめを行う援助調整機関となっている。
我が国が援助したノンプロ無償資金協力事業の実施に当たっては、図4—3のとおり、同国政府からの要請、案件の選定、案件実施状況の確認等を行う政府間協議会が設置されている。そして、政府間協議会には、同国政府側からは財務計画省、各実施機関など関係機関が、我が国政府側からは在スリランカ日本国大使館が、それぞれ参加している。また、JICAのスリランカ事務所は、緊急開発調査に関連した調査・設計等に関する専門的知見を提供した。
そして、案件の選定については、政府間協議会がプロジェクトの妥当性の検討、具体的な案件の選定を行うこととなっている。
図4—3 スリランカ共和国政府における援助受入及び実施組織
在スリランカ日本国大使館等の説明によれば、スリランカ共和国政府は次のようにして被災地における需要を把握し、ノンプロ無償資金協力事業の内容を決定している。
〔1〕 同国政府内部において、まず各実施機関が、被災地域からの情報等を踏まえて担当分野における需要に関する要望を取りまとめる。
〔2〕 その後、政府間協議会において協議を行い、具体的な案件及び資金配分を決定する。
同国政府は、同国における津波復旧・復興事業の基礎となる復興計画を17年5月に取りまとめた。一方、我が国が供与したノンプロ無償資金80 億円について、外務省から提出された資料に基づき、会計検査院が把握した18年3月末現在の事業の概要を、分野(実施機関)、資金の配分(概算額)、案件名、調達品目、事業内容の別に整理して示すと、表4—17のとおりとなる。
分野(実施機関)
|
資金の配分(概算額)
|
案件名
|
調達品目
|
事業内容
|
衛生・生活(都市開発・水供給省)
|
約16億円
|
〔1〕中古バキュームカーの輸送及び高圧洗浄機の購入計画
|
バキュームカーの輸送、スペアパーツ、高圧洗浄機、技術者の派遣、し尿処理施設
|
被災地住民の衛生管理
|
生活(都市開発・水供給省、電力省、住宅建設工業省)
|
〔2〕給水車および貯水タンクの購入計画
|
給水車、貯水タンク
|
被災地住民の生活用水確保
|
|
〔3〕上水道の再整備(水管橋他の整備)
|
水管橋、メーター、パイプ
|
被災地住民の飲料水供給体制の整備
|
||
〔4〕発電機(100台)購入計画
|
発電機配布・設置
|
被災地住民の電力改善
|
||
〔5〕被災者用住宅
|
住宅
|
被災地住民の住宅供給改善
|
||
輸送(ハイウェイ省、住宅建設工業省)
|
約16億円
|
〔6〕建設用重機械及び既存機械のスペアパーツの購入計画
|
建設機械スペアパーツ、建設機械
|
被災地域の道路等の改善
|
〔7〕橋梁工事計画(Galle-Matara)
|
南部5橋梁等修復工事に関する役務
|
被災地域の橋梁等復旧
|
||
治安(警察庁)
|
約3億円
|
〔8〕警察署建設計画(6箇所)
|
建設工事、施工監理
|
被災地域の警察署復旧
|
教育(教育省)
|
約15億円
|
〔9〕小中学校再建計画(14校)
|
再建に関する役務
|
被災地域の学校復旧
|
漁業(漁業水産資源省)
|
約21億円
|
〔10〕漁業用資機材購入計画
|
船外機用コンテナワークショップ、コンテナタイプ製氷機、冷蔵庫、漁船補修材料、漁具、船外機、漁船、船外機スペアパーツ、漁船補修人件費、港湾施設、日本型訓練船、現地型マルチデーボート
|
被災地域の漁業改善
|
医療(保健省)
|
約2億円
|
〔11〕医療関連機材購入計画
|
病院機材、回診車、狂犬病対策用機材
|
被災地の医療レベルの回復及び向上
|
行政(行政・国内問題省)
|
約2億円
|
〔12〕津波被災地巡回車両調達計画
|
ピックアップ(4WD)、ピックアップ(4WD)アクセサリー、ピックアップ(4WD)レンタカー借上げ
|
被災地域の復興活動支援
|
治安(警察庁)
|
約2億円
|
〔13〕災害時緊急通報用機材調達計画
|
車載用サイレン、メガホン、救命胴衣
|
今後の災害時における緊急通報機能の改善
|
生活(住宅建設工業省)
|
約1億円
|
〔14〕住宅等建設検査用機材調達計画
|
掘削機、コンクリート圧縮試験機、モルタル振動器、クロマトグラフ、他
|
被災地の住宅建設技術の向上と品質の確保
|
約1.99億円
|
調達代理手数料
|
上記全案件に係る調達手続の進ちょく状況に応じて随時支出される
|
||
援助額80億円
|
外務省は、これらの分野又は案件ごとに契約を締結する時期や案件を完了させる時期が具体的に定められていないこと、事業の契約手続を進める中で、入札の結果などによっては契約額が下がり資金に余裕が生じることなどのため、新たに案件が増えたり、調達品目が増えたりすることなどがあると説明している。
我が国からスリランカ共和国政府の政府口座に資金が供与された17年1月以降の、JICSの管理する調達口座への資金の移動状況及び調達口座における資金の執行状況についてみると、表4—18のとおり、調達口座に受け入れた資金80億円に対して、JICSから18年3月末までに支払われた額は34億2364万余円(42.8%)となっていた。
年月
|
政府口座から調達口座への受入金額(円)
|
調達口座での資金の執行状況
|
|||||
契約
|
支払
|
支払後の残高(円)
|
|||||
件数
|
金額(円)
|
契約締結率(%)
|
金額(円)
|
支払率(%)
|
|||
17.1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
18.1
2
3
|
0
0
8,000,009,316
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
|
0
2
14
5
5
6
11
6
7
11
7
10
0
1
1
|
0
193,749,430
176,541,376
377,535,876
235,616,377
330,411,199
2,221,225,803
184,634,444
1,018,080,012
696,027,925
310,143,594
1,522,903,073
0
69,810,747
170,063,434
|
0.0
2.4
4.6
9.3
12.3
16.4
44.2
46.5
59.2
67.9
71.8
90.8
90.8
91.7
93.8
|
0
0
0
3,051,583
116,928,023
133,248,835
283,134,162
666,834,761
233,520,494
296,584,053
371,582,055
524,355,556
297,187,831
225,489,861
271,732,012
|
0.0
0.0
0.0
0.0
1.5
3.2
6.7
15.0
18.0
21.7
26.3
32.9
36.6
39.4
42.8
|
0
0
8,000,009,316
7,996,957,733
7,880,029,710
7,746,780,875
7,463,646,713
6,796,816,773
6,563,296,279
6,266,712,226
5,895,130,171
5,370,774,615
5,073,586,784
4,848,096,923
4,576,364,911
|
合計
|
8,000,009,316
|
86
|
7,506,743,290
|
93.8
|
3,423,649,226
|
42.8
|
/
|
17年1月19日に政府口座に送金された資金は、3月10日に調達口座にすべて移動されていた。そして、外務省の説明によれば、当該資金の移動については、政府間協議会等を通じて調達品目が確定された後に、同国政府の同意を得るなどして行われたとしている。
交換公文によれば、資金が供与された後12箇月以内に使用すること、及びその期間経過後に政府口座にある残高は日本国政府に返還されることとされている。そして、12箇月以内に使用するという交換公文の規定に関しては、附属文書によれば、資金を供与した後12箇月以内に政府口座から調達口座に資金を移動することとされていることから、外務省では、上記のように資金が使用されず、調達口座に残高があったとしても、交換公文の規定に違反していることにはならないとしている。
これら契約の締結と支払の実績を月別にみると、表4—18のとおり、JICSとの調達代理契約を除く案件に係る契約の締結は17年2月以降、また、資金の支払いが行われたのは4月以降となっている。
そして、18年3月末現在の資金の執行についてみると、契約締結済額は86件、75億0674万余円で、資金供与額80億円に対する契約締結済額の割合である契約締結率は93.8%、また、支払済額は34億2364万余円、資金供与額80億円に対する支払済額の割合である支払率は42.8%となっている。また、施設の工事に係る契約等においては、契約後全額を支払うのではなく進ちょくに応じた分割払を行っていた。
各月別の契約実績をみると、17年7月、9月及び12月分の金額が他の月よりも非常に多くなっているが、これは契約金額の大きな施設の工事に係るものが締結されたためである。
また、調達口座での残高は、表4—18のとおり、18年3月末現在で、45億7636万余円となっている。
各案件に係る契約の進ちょく状況についてみると、表4—19のとおり、18年3月末現在で、予定契約件数94件のうち、契約相手方の選定を開始したものは85件、業者との契約締結を終了したものは85件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものは26件となっている。
案件名
|
予定契約件数(a)
|
契約進ちょくの段階
|
|||||
契約相手方の選定開始
|
契約締結の終了
|
契約に基づく給付の完了
|
|||||
件数(b)
|
割合(%)(b/a)
|
件数(c)
|
割合(%)(c/a)
|
件数(d)
|
割合(%)(d/a)
|
||
〔1〕中古バキュームカーの輸送及び高圧洗浄機の購入計画
|
8
|
8
|
100.0
|
8
|
100.0
|
4
|
50.0
|
〔2〕給水車及び貯水タンクの購入計画
|
2
|
2
|
100.0
|
2
|
100.0
|
2
|
100.0
|
〔3〕上水道の再整備(水管橋他の整備)
|
4
|
4
|
100.0
|
4
|
100.0
|
2
|
50.0
|
〔4〕発電機(100台)購入計画
|
2
|
2
|
100.0
|
2
|
100.0
|
1
|
50.0
|
〔5〕被災者用住宅
|
5
|
5
|
100.0
|
5
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔6〕建設用重機械及び既存機械のスペアパーツの購入計画
|
4
|
4
|
100.0
|
4
|
100.0
|
4
|
100.0
|
〔7〕橋梁工事計画(Galle-Matara)
|
4
|
4
|
100.0
|
4
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔8〕警察署建設計画(6箇所)
|
12
|
12
|
100.0
|
12
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔9〕小中学校再建計画(14校)
|
22
|
22
|
100.0
|
22
|
100.0
|
2
|
9.1
|
〔10〕漁業用資機材購入計画
|
14
|
14
|
100.0
|
14
|
100.0
|
6
|
42.9
|
〔11〕医療関連機材購入計画
|
3
|
3
|
100.0
|
3
|
100.0
|
0
|
0.0
|
〔12〕津波被災地巡回用車両調達計画
|
5
|
5
|
100.0
|
5
|
100.0
|
5
|
100.0
|
〔13〕災害時緊急通報用機材調達計画
|
3
|
0
|
0.0
|
0
|
0.0
|
0
|
0.0
|
〔14〕住宅等建設検査用機材
|
6
|
0
|
0.0
|
0
|
0.0
|
0
|
0.0
|
14案件合計
|
94
|
85
|
85
|
26
|
これを案件別にみると、予定契約件数に対して、契約締結が終了した件数の割合が100%となっている案件は、14案件のうち12案件あった。また、契約に基づく給付の完了した件数の割合が100%となっている案件は3案件あったものの、〔5〕被災者用住宅、〔7〕橋梁工事計画、〔8〕警察署建設計画(6箇所)の施設の工事に係る3案件など6案件は0%であった。
そして、業者からの給付が完了している契約26件の内容をみると、そのうち24件は中古バキュームカーの輸送、バキュームカースペアパーツ、高圧洗浄機、給水車、機械及び資材の調達契約であった。
また、工事に係る契約で給付が完了していないものが多いことについて、外務省は、実施機関等は、施設の工事案件に関しては基本設計を行う必要があり、日時を要したり、また契約後相応の工期を要したりするためであると説明しているとしている。
これら14案件に係る契約の実施状況について、18年3月末現在、締結された契約85件の契約内容等を契約別に整理して示すと、別表4—3
のとおりとなる。
エ 外務省におけるノンプロ無償資金協力事業の実施に関する中間評価
外務省では、緊急援助のうちのノンプロ無償資金協力事業についてモニタリングを主体とした中間評価を行い、その結果を「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害2国間無償資金協力に係る中間評価報告書」(以下「報告書」という。)として取りまとめ、津波等災害の発生から1年後の17年12月26日に発表を行った。
外務省はこの中間評価の実施に当たって、中間評価実施ガイドラインを定めている。これによれば、この評価は、17年12月末を節目として、本件支援によって計画されている案件又は既に実施された案件の実施状況、実施中の案件の現状、事業完了後の効果の発現状況等について確認を行い、その上で、必要に応じて適切な改善措置を検討するとともに、評価の結果を将来の案件形成、計画策定及び実施に反映することを企図するものである。また、評価結果を公表することで、国民に対する説明責任を果たすことも目的としている。
援助の対象として決定された案件については、次のように実施される。すなわち、調査・設計等を含む事前調査、機材の技術的仕様や価格に関する調査が行われ、施設案件では、用地の取得、測量等が実施される。そして、機材の調達や施設の工事の契約に当たっては、JICSが、入札参加者に示す入札図書等を作成し、参加者の募集のための入札公告を行い、入札図書等を配布して、契約者を選定するための入札を行うなどして、契約手続を進め、その後、落札者等と契約が締結される。契約の相手方は、機材の製造、輸送、通関及び国内配布を行ったり、施設の工事を行ったりして、機材の納入や施設のしゅん功によって事業が完成し、JICSが契約履行の完了の確認を行った上で、契約金額が支払われる。
また、供与された資金で調達した機材や建設した施設の維持管理については、これらの機材や施設の供与を受けた実施機関等が維持管理責任を持つことになっている。
これら一連の事業の実施については、NGO、コンサルタント等本件事業の実施に直接関与していない第三者機関が評価の実施主体となって、対象事業に係る関連文書や調査報告書の調査、対象案件への直接の視察、相手国実施機関や受益者等からの聞き取り調査を行った。そして、現地の各大使館がこれらの評価内容を取りまとめた上で、さらに、外務本省が支援対象となった3箇国分を一つの報告書として取りまとめ、公表したものである。
報告書では、各案件について、案件の進ちょく状況、案件の妥当性、施設及び機材の活用度、案件完了後に期待される効果等について評価を行うとともに、提言、教訓等を記述している。
案件の進ちょく状況については、全体的な進ちょく状況、他の支援国等との比較、案件の進ちょくの遅れの原因、再入札などの入札プロセスとの関連等に関して、また、施設及び機材の活用度については、引き渡されている機材に関して、それぞれ評価を行っている。そして、提言及び教訓については、災害復興を迅速に行うための枠組みの整備、迅速な案件形成、着実な施工管理及びモニタリングを行うための体制作りの重要性、変化する被災地のニーズを把握し、時宜に適った調達・事業を行うことの重要性等を挙げている。
なお、外務省においては、今後とも各事業の完了後、数箇月以内を目途に事後評価を行うとしている。