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  • 平成18年10月

特別会計の状況に関する会計検査の結果について


(2)財政融資資金特別会計における予算の執行状況、特に予算積算との対比

ア 財政融資資金特別会計の概要等

(ア)財政融資資金特別会計の概要

 財政融資資金特別会計(以下、(2)において「財融特会」という。)は、財融特会法に基づき、財政融資資金の運用に伴う歳入歳出に関する経理を一般会計と区分して行うため設置されたものである。
 財融特会法によれば、財融特会においては、財政融資資金の運用利殖金、公債の発行収入金、財政融資資金からの受入金、附属雑収入等をもって歳入とし、財政融資資金預託金の利子、運用手数料、事務取扱費、公債の償還金及び利子、財政融資資金への繰入金、附属諸費等をもって歳出とすることとされている。
 平成16年度における財融特会の科目(項)別の予算額及び決算額は、表3―(2)―1のとおりである(便宜上、歳入における款の区分を省略した。)。

表3―(2)―1 16年度における科目(項)別歳入歳出予算額及び決算額

(単位:百万円)

歳入
歳出
科目(項)
予算額
決算額
科目(項)
予算額
決算額
運用利殖金収入
10,602,404
9,895,511
事務費
6,459
5,803
公債金
41,300,000
40,129,694
諸支出金
5,944,128
5,388,240
財政融資資金より受入
10,392,467
10,392,467
財政融資資金へ繰入
41,300,000
40,129,694
雑収入
238,253
43,671
国債整理基金特別会計へ繰入
12,033,237
11,259,528
予備費
60
合計
62,533,125
60,461,346
合計
59,283,844
56,783,268

 このように、歳入歳出とも、予算額及び決算額は科目(項)別に把握できることとなっている。

(イ)歳出予算の積算

 財融特会法によれば、内閣は、毎会計年度、財融特会の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出しなければならないとされている。そして、財務大臣は、毎会計年度、財融特会の予算に添付する「歳入歳出予定計算書」を作成し、歳出予算に関しては、その金額を事項別に区分し、必要な経費要求の説明、当該事項に対する科目(項)の金額等を示さなければならないこととなっている。
 「歳入歳出予定計算書」における財融特会の歳出予算の事項別の区分については、表3―(2)―2のとおりとなっていて、科目(項)に対し1つの事項が示されている。

表3―(2)―2 歳出予算の事項
科目(項)
事項
事務費
財政融資資金事務取扱いに必要な経費
諸支出金
預託金利子支払等に必要な経費
財政融資資金へ繰入
財政融資資金へ繰入れに必要な経費
国債整理基金特別会計へ繰入
国債整理基金特別会計へ繰入れに必要な経費
予備費
予備費

 このうち、財政融資資金事務取扱いに必要な経費が計上されている「事務費」については、予算の概算要求書、予算参考書において、科目(項)を目に区分するとともに、目を更に詳細な内訳に区分している。そして、事項についても施策別の更に詳細な内訳(以下「事項内訳」という。)に区分し、それぞれの事項内訳別・目の内訳別に、個々の経費の内容及びその金額を見積った予算積算が概算要求書、予算参考書に示されている。

(ウ)歳出予算の執行

 歳出予算の執行については、財政法第32条で、各省各庁の長は、「各項に定める目的の外にこれを使用することができない。」と規定され、歳出予算に対する国会の議決は項までとなっているが、項の目的の内容を判断するに当たっては、目や目の内訳、事項内訳も考慮する必要がある。しかし、予算の執行に当たっては、財融特会において、決算に必要な項、目や目の内訳の科目別には整理しているが、事項内訳別には整理していない。
 歳出予算科目のうち、「事務費」を除く「諸支出金」など4科目の経費は、すべて本省のみで執行される経費である。これらの経費は、金利変動等の外部要因に左右されることなどから、特に、「諸支出金」である預託金利子の支払に必要な経費については、各特別会計の積立金等の受入資金の増加等に伴い、収入金額が予算額に比して増加するときは、その増加する金額を限度として増加を認めるなどの予算執行管理が執られている。
 一方、「事務費」については、本省だけでなく各地方財務局等においても執行される経費であり、予算による執行に対する統制や執行結果に基づく歳出の合理化が特に必要な経費である。

イ 検査の対象等

 17年11月に財政制度等審議会から財務大臣に報告された「特別会計の見直しについて―制度の再点検と改革の方向性―」では、特別会計のすべての歳出の中身について点検し、「事務費」についても厳格に精査することが要望されている。
 また、「事務費」については、前記のとおり、予算による執行に対する統制や執行結果に基づく歳出の合理化が特に必要な経費である。
 そこで、財融特会における前記歳出科目(項)のうち「事務費」を対象として、14年度から16年度までの予算額と決算額を科目(目)別に対比するなどして予算の執行状況について検査した。特に、予算積算との対比に関しては、16年度を中心に、予算積算がないまま執行されている経費はないか、予算積算をしているものの未執行となっている経費はないか、決算額と事項内訳の対応関係が明確なものとなっているかなどについて検査した。
 検査に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき提出された財融特会の支出計算書、証拠書類等と、予算積算の内容が記載された予算参考書等により、予算額と決算額における個々の経費の内容を科目(目)別、事項内訳別に対比するなどした。また、「事務費」の予算を執行している財務本省並びに地方財務局のうち関東財務局及び近畿財務局において、予算額と決算額との関連などについて説明を聴取した。

ウ 「事務費」の執行状況、特に予算積算との対比

(ア)予算額と決算額の対比

 14、15、16各年度における「事務費」の予算額と決算額を科目(目)別に対比すると、表3―(2)―3のとおりとなっている。

表3―(2)―3 「事務費」の科目(目)別予算額、決算額等の推移

(単位:千円、%)

科目 (目)
14年度
15年度
16年度
予算額(A)
不用額
(A)-(B)
支出率
(B)/(A)
予算額(A)
不用額
(A)-(B)
支出率
(B)/(A)
予算額(A)
不用額
(A)-(B)
支出率
(B)/(A)
決算額(B)
決算額(B)
決算額(B)
職員基本給
1,786,465
117,731
93.4
1,745,898
97,672
94.4
1,735,424
102,129
94.1
1,668,733
1,648,225
1,633,294
職員諸手当
916,319
97,071
89.4
882,682
87,385
90.1
853,237
44,541
94.8
819,247
795,296
808,695
超過勤務手当
197,711
1,355
99.3
190,260
942
99.5
187,441
405
99.8
196,355
189,317
187,035
委員手当
1,777
0
99.9
2,087
920
55.9
2,114
92
95.6
1,776
1,166
2,021
非常勤職員手当
51,559
13,672
73.5
37,886
休職者給与
411
411
0.0
411
411
0.0
411
411
0.0
公務災害補償費
196
196
0.0
196
196
0.0
196
196
0.0
退職手当
248,109
178,237
28.2
205,925
143,566
30.3
246,630
219,339
11.1
69,871
62,358
27,290
児童手当
8,026
3,356
58.2
8,400
3,360
60.0
11,425
5,915
48.2
4,670
5,040
5,510
諸謝金
13,986
13,261
5.2
13,862
5,763
58.4
14,344
3,656
74.5
724
8,098
10,687
職員旅費
18,168
5,405
70.2
18,251
5,745
68.5
18,236
6,330
65.3
12,762
12,505
11,905
融資先調査及検査旅費
85,469
37,255
56.4
85,113
34,773
59.1
81,634
30,823
62.2
48,213
50,339
50,810
研修旅費
5,970
1,630
72.7
5,970
1,813
69.6
5,969
1,612
73.0
4,339
4,156
4,356
赴任旅費
13,719
3,496
74.5
13,721
3,705
73.0
12,463
1,703
86.3
10,222
10,015
10,759
外国旅費
7,106
6,101
14.1
7,402
502
93.2
7,378
1,604
78.2
1,004
6,899
5,773
委員等旅費
5,761
5,567
3.4
6,152
5,248
14.7
1,475
1,472
0.2
193
903
2
庁費
1,101,985
336,958
69.4
1,595,029
387,973
75.7
1,829,659
121,474
93.4
765,026
1,207,055
1,708,184
通信専用料
18,746
2
99.9
24,926
1
99.9
34,134
367
98.9
18,743
24,924
33,766
電子計算機等借料
736,998
70,266
90.5
702,168
44,319
93.7
812,863
84,784
89.6
666,731
657,848
728,078
消費税
5
5
0.0
5
5
0.0
5
5
0.0
国家公務員共済組合負担金
550,552
15,358
97.2
552,384
18,462
96.7
548,345
14,903
97.3
535,193
533,921
533,441
賠償償還及払戻金
300
293
2.0
300
300
0.0
300
300
0.0
6
貨幣交換差減補填金
100
67
32.8
32
一般会計へ繰入
5,614
84
98.5
5,796
559
90.4
4,285
100.0
5,529
5,237
4,285
合計
5,723,393
894,047
84.4
6,066,938
843,629
86.1
6,459,627
655,809
89.8
4,829,345
5,223,308
5,803,817
(注)
 予算額、決算額及び不用額の「―」は0円、支出率の「―」は予算額及び決算額が0円のものである。


 「事務費」全体では、支出率は14年度84.4%、15年度86.1%、16年度89.8%で推移している。また、不用額は、14年度8億9404万円、15年度8億4362万円、16年度6億5580万円となっていて、翌年度繰越額は3箇年度ともない。
 これを科目(目)別にみると、上記24科目(目)のうち、「休職者給与」、「公務災害補償費」、「退職手当」、「委員等旅費」、「消費税」及び「賠償償還及払戻金」の6科目(目)については、3箇年度継続して支出率が0%ないし50%未満となっていた。
 財務省の説明によれば、これらのうち、「休職者給与」、「公務災害補償費」、「消費税」及び「賠償償還及払戻金」の4科目(目)については、その事実が発生した場合には支払義務が発生する経費であり、予め立目しておかないと新たに予算措置されるまで一切の支払ができなくなるほか、流用等にも即時に対応できなくなることから、予算措置が必要なものとして最低限の金額が計上され、その事実が発生しない場合は不用額になるとしている。
 また、「退職手当」については、職員の退職時期の予測が困難な面があることや、概算要求段階では人事院勧告も出ていないことなどから、便宜的に前年度予算額に昇給率等を勘案するなどして予算要求が行われている。しかし、財融特会で人件費を負担することになっている職員の退職が見込みより少なかったことなどのため、支出率が低率となり、残額は不用額となっている。
 さらに、「委員等旅費」については、財政制度等審議会財政投融資分科会、検討会等に委員が出席するために必要な旅費として、同分科会等の予定開催回数等に合わせて不足が生ずることのないように予算要求が行われている。しかし、委員が財融特会以外の会計が所管する会議の委員も兼務しており、当該会計が旅費を支給しているために財融特会での旅費の支給が不要であったり、本来、旅費支給の対象となる委員が欠席したりしたことなどのため、支出率が低率となり、残額は不用額となっている。
 なお、16年度の不用額のうち、主なものには、前記「退職手当」の2億1933万円のほか、「庁費」の1億2147万円、「職員基本給」の1億0212万円がある。

(イ)「事務費」の執行実績

 16年度における「事務費」について、すべての執行実績が当該予算科目(目及び目の内訳)に即して執行されているか、予算参考書に示されている予算積算に照らし、証拠書類に添付されている支出決定決議書、契約書、請求書等により個々の経費の内容等を確認した。
 その結果、予算科目の目的に沿わない執行は見受けられなかったが、執行実績と予算積算を対比すると、予算積算がないまま執行されている経費や、予算積算をしているものの未執行となっている経費が一部見受けられた。

(ウ)執行実績と予算積算の対比

 予算の執行に当たっては、予算成立後の状況の変化に応じて執行を見合わせたり、効率的な執行が行われたりしたことなどの結果として、年度によっては、想定した予算積算に沿って執行が行われない場合もある。
 そこで、今回の検査では、予算積算に沿った執行が行われていない16年度の状況が継続していたかどうか、その傾向をみるため14年度分までさかのぼることとした。
 その結果、予算積算がないまま執行が継続している経費は、表3―(2)―4のとおりである。

表3―(2)―4 予算積算がないまま執行が継続している経費

(単位:千円)

科目
執行実績の内容
決算額
(目)
(目の内訳)
14年度
15年度
16年度
庁費
借料及損料
ネットワーク管理システム賃借料
771
1,490
3,046
雑役務費
合同庁舎保安警備業務ほか
5,767
5,849
4,425
その他
734
614
317
7,273
7,954
7,789
(注)
 「その他」は、16年度の当該決算額が1科目(目の内訳)当たり100万円未満のものを集計している。


 財務省の説明によれば、これらの経費については、既存の予算額の枠内((目)庁費の予算額内)で執行できたことから、予算積算の措置を講じてこなかったことなどによるものであるとしている。
 一方、予算積算をしているものの未執行が継続している経費は、表3-(2)-5のとおりである。

表3―(2)―5 予算積算をしているものの未執行が継続している経費

(単位:千円)

科目
予算積算の内容
予算額
(目)
(目の内訳)
14年度
15年度
16年度
庁費
消耗品費
官庁会計事務データ通信システム経費
1,099
1,304
1,327
地方公営企業年鑑
2,421
2,549
2,549
借料及損料
パーソナルコンピュータ
63,829
63,829
18,819
雑役務費
財政投融資問題研究会調査事項等説明資料作成
6,514
6,514
6,514
その他 (諸謝金、庁費)
1,981
1,773
1,728
75,844
75,969
30,937
(注)
 「その他」は、16年度の事項内訳における「予算積算の内容」の予算額が1件当たり100万円未満のものを集計している。


 財務省の説明によれば、これらの経費については、各年度において、予算作成時点で執行段階の明確な見通しが立たなかったことや、予算成立後の状況変化により、必ずしも予算積算どおりの執行がなされなかったことなどによるものであるとしている。

エ 決算額と事項内訳の対応関係

 16年度歳出予算における「事務費」について、事項内訳と科目(目)の関係は、表3―(2)―6のとおりとなっている。

表3―(2)―6 16年度歳出予算における「事務費」に係る事項内訳と科目(目)の関係

(単位:千円)

(事項) 財政融資資金事務取扱いに必要な経費
科目
事項内訳
事務費
金額
職員基本給
職員諸手当
超過職務手当
委員手当
非常勤職員手当
休職者給与
公務災害補償費
退職手当
児童手当
諸謝金 ※
職員旅費 ※
融資先調査及検査旅費 ※
研修旅費 ※
赴任旅費
外国旅費 ※
委員等旅費 ※
庁費 ※
通信専用料
電子計算機等借料
消費税
国家公務員共済組合負担金
賠償償還及払戻金
貨幣交換差減補填金
一般会計へ繰入
管理経費
人件費
3,571,684
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
人当庁費
51,991
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一般管理経費
123,760
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
融資事務研修に必要な経費
4,072
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
管理経費 計
3,751,507
業務経費
一般運営経費
297,298
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
地方資金借入要領等説明会経費
5,749
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
公営企業調査等経費
3,865
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
周知宣伝経費
21,915
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
財務局例規等充実経費
3,396
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
財政制度等審議会財政投融資分科会経費
4,633
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
財政投融資問題調査研究経費
26,356
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
電子計算機関係経費
2,175,161
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
財務局事務簡素化経費
71,631
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
運用体制等整備経費
95,962
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
外国債運用調査等経費
2,154
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
業務経費 計
2,708,120
合計
6,459,627
注(1)
 ○印は、該当する事項内訳に係る科目(目)の経費の見積りがあるものである。
注(2)
 「金額」欄は、16年度予算額である。
注(3)
 「目」欄の※印は、科目(目)が複数の事項内訳に存在するものである。

 上記表3―(2)―6のとおり、24科目のうち「職員基本給」など17科目については、単独の事項内訳に存在しているため、決算額と事項内訳との対応関係が明確となっていて、16年度における決算額40億1209万円は事項内訳に区分できる。
 また、「諸謝金」、「職員旅費」、「融資先調査及検査旅費」、「研修旅費」、「外国旅費」、「委員等旅費」及び「庁費」の7科目については、複数の事項内訳に存在しているが、これら16年度における決算額17億9171万円のうち、4億7506万円については、複数の事項内訳のものを一体として執行しているなどのため、決算額を事項内訳に区分できず、その対応関係が明確になっていなかった。これを科目(目)別にみると、表3―(2)―7のとおりとなっている。

表3―(2)―7 決算額と事項内訳の対応関係

(単位:千円)

区分
科目(目)
決算額
左のうち、複数の事項内訳のものを一体として執行しているなどのため、決算額を事項内訳に区分できず、その対応関係が明確になっていなかったもの
諸謝金
10,687
10,625
職員旅費
11,905
11,905
融資先調査及検査旅費
50,810
50,810
研修旅費
4,356
外国旅費
5,773
5,773
委員等旅費
2
2
庁費
1,708,184
395,948
1,791,719
475,066

 「諸謝金」など6科目の4億7506万円は、それぞれの事項内訳ごとに執行することとして予算積算されているが、実際の執行に当たっては、調査・研究、出張等のように、複数の事項内訳のものが一体として執行されていたり、電話料、郵便料等のように、事項内訳ごとに区分された支払となっていなかったりしていることにより、決算額と事項内訳の対応関係が明確になっていないものである。
 一例を挙げると、表3―(2)―8のとおりである。

表3―(2)―8 複数の事項内訳のものを一体として執行している経費

<科目(目)諸謝金(目の内訳)調査謝金>

執行実績の内容
決算額
事項内訳
予算積算の内容
予算額
 
地方公共団体向け財政融資のあり方に関する検討会
(計8回)
 単価19,700円×60人(延)
 単価17,600円×2人(延)
千円
1,217
 
財政投融資問題調査研究経費
 
財政投融資問題に関する検討経費
(年12回開催予定)
・座長
単価25,200円
 (1人)
計 254千円
・委員
単価21,800円
 (12人)
計 2,110千円
・参考人
単価19,700円
 (2人)
計 318千円
千円
2,682
財政投融資の諸問題について、調査及び研究を行い、制度の充実を図るために必要な経費
 
第9回政策コスト分析等
検討会(計1回)
 単価19,700円×5人
 
98
 
 
 
運用体制等整備経費
 
財政融資資金調査研究会
(年12回開催予定)
・座長
単価25,200円
 (1人)
計 254千円
・委員
単価21,800円
 (6人)
計 1,055千円
・参考人
単価19,700円
 (3人)
計 477千円
 
1,786
財政融資資金の調査及び運用等のあり方について調査研究を行い、また、運用体制の整備を行うことにより、財政融資資金の収支の安定を図るための経費
 
欧米における財政投融資類似制度の最新動向についての調査に関する委嘱契約
 
7,902
 
地方公共団体の財務分析等の調査手法の開発に係る経費
 
8,000
9,218
12,468

 16年度の諸謝金(調査謝金)における事項内訳の「財政投融資問題調査研究経費」は財政投融資に関する諸問題について、「運用体制等整備経費」は財政融資資金に関する運用のあり方等について、それぞれ研究会や検討会を開催するなどの方法により調査・研究するために必要な経費として予算積算されたものである。
 一方、その執行状況についてみると、調査・研究に関する調査謝金の支払の対象となった検討会、委嘱調査は、財政投融資、財政融資資金のいずれにも関わる調査・研究となっており、2つの事項内訳が一体として執行されているため、当該決算額をこれらの事項内訳に区分できず、その対応関係が明確となっていなかった。

オ 財務省における見直し

 17年11月に財政制度等審議会から財務大臣に報告された「特別会計の見直しについて―制度の再点検と改革の方向性―」では、「予算執行実績を的確に把握し、その結果を適切に予算へ反映させることは重要である。」とし、「特別会計予算についても、個々の経費の積算内訳にまで踏み込んだ見直しを行い、予算積算と執行実績とのかい離の是正を一層進めていくべきである。」としている。
 これを受けて、財務省では、執行実績に比して過大な予算要求や予算措置が行われている事務事業、何年間にもわたり執行実績のない事務事業等の洗い直しを行うとともに、18年度の予算編成に当たって、改めて個々の経費の積算内訳にまで踏み込んだ見直しを行い、その結果を反映させることとした。また、18年度予算要求に当たっては、概算要求書に記載されている内容に対応する執行実績が把握できるような単位により事項内訳を整理し直すこととされた。
 財融特会においても、18年度予算で、過去の実績を踏まえて予算額を減額するなどの見直しを行うとともに、表3―(2)―9のとおり、概算要求書に記載されている内容に対応する執行実績が把握できるような単位により事項内訳を整理し直すこととした。
 なお、18年度予算では、前記の「ウ「事務費」の執行状況、特に予算積算との対比」における検査結果のうち、「予算積算をしているものの未執行が継続している経費」について、予算措置が必要なものなど特段の事情がある場合を除き、予算計上しないこととしていた。

表3―(2)―9 18年度における「事務費」に係る事項内訳と科目(目)との関係

(単位:千円)

(事項) 財政融資資金事務取扱いに必要な経費
科目
事項内訳
事務費
金額
職員基本給 ※
職員諸手当 ※
超過職務手当 ※
委員手当
非常勤職員手当
休職者給与
公務災害補償費
退職手当
児童手当
諸謝金 ※
職員旅費
融資先調査及検査旅費
研修旅費 ※
赴任旅費
外国旅費
委員等旅費 ※
庁費 ※
通信専用料 ※
電子計算機等借料
消費税
国家公務員共済組合負担金 ※
賠償償還及払戻金
貨幣交換差減補填金
一般会計へ繰入
管理経費
人件費
既定定員に伴う経費
3,328,972
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
増員に伴う経費
2,832
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一般管理経費
70,551
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
管理経費 計
3,402,355
業務経費
一般運営経費
855,465
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
財政制度等審議会財政投融資分科会経費
3,884
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
調査研究等経費
6,478
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
電子計算機関係経費
2,395,278
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
業務経費 計
3,261,105
合計
6,663,460
注(1)
 ○印は、該当する事項内訳に係る科目(目)の経費の見積りがあるものである。
注(2)
 「金額」欄は、18年度予算額である。
注(3)
 「目」欄の※印は、科目(目)が複数の事項内訳に存在するものである。

カ 検査のまとめ

 以上、財融特会の「事務費」の執行状況をみたところ、一部の科目(目)において、継続して支出率が0%ないし50%未満の低率となっていた。また、予算科目の目的に沿わない執行は見受けられなかったが、執行実績と予算積算を対比したところ、予算積算がないまま執行が継続している経費や、予算積算をしているものの未執行が継続している経費が一部見受けられた。さらに、複数の事項内訳のものを一体として執行しているなどのため、決算額を事項内訳に区分できず、その対応関係が明確になっていない経費が見受けられた。
 予算の執行に当たって、予算成立後の状況の変化に応じて執行を見合わせたり、効率的な執行が行われたりしたことなどの結果として、年度によっては、支出率が低率となったり、想定した予算積算に沿って執行が行われなかったりする場合もある。しかし、予め立目しておく必要性があるものなど特段の事情がある場合を除き、執行実績と予算積算がかい離している状態が継続すること、また、予算の科目及び事項内訳別に積算された内容と決算額との関連が的確に把握できない状態にあることは、予算による執行に対する統制や執行結果に基づく歳出の合理化が困難となるおそれがある。
 財融特会については、18年度予算で、過去の実績を踏まえて予算額を減額するなどの見直しを行うなどしたところであるが、今後とも、歳出の合理化に向けた予算執行管理の徹底を図るとともに、決算の内容を次年度以降の予算へ適切に反映させていくことが重要である。