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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成18年10月

特別会計の状況に関する会計検査の結果について


5 各特別会計の財政統制の状況

 上記の1から4までの検査結果からみた各特別会計における財政統制上の課題は、次のとおりである。

(1)特別会計における透明性について

 国の会計の財務等に関し、その情報を積極的に国民に提供し、財政の透明性を高めていくことは、国の会計に対する財政統制を有効に機能させるための前提となるものであるが、特別会計の財務等に関する財政情報は分量も膨大で内容も多岐にわたることから、必要な情報の有無を把握しにくい場合がある。
 そこで、特別会計の財政状況の透明性に関し、今回検査したところ、次のとおり、透明性の確保は必ずしも十分には図られていない状況となっている。
〔1〕 一般会計繰入率について、率という形で明示した情報は定期的に提供されていない。また、特定財源のうち一般会計経由分については、一般財源による繰入額と合わせて「一般会計より受入」として科目表示されるため、予算書・決算書からはその額は把握できない。
〔2〕 歳入歳出予定計算書では科目別のほか事項別にも区分することとされているが、歳入歳出決定計算書では事項別に区分することとされていないため、一般会計と同様、予算書・決算書上で事項別の対比を行うことは困難となっている。
〔3〕 繰越額・不用額について、年度ごとの推移が一覧できる形で示されておらず、また、ほとんどの積立金等については保有規模に関する基準が示されていない。
〔4〕 同一の出資法人に対して、一般会計又は他の特別会計から出資等が行われている場合、それらを集計した形での情報は示されていない。
〔5〕 一般会計と特別会計間、特別会計間、特別会計と積立金等の間など国の内部の資金の動きの全体が分かるものは示されていない。
〔6〕 一般会計と同様な主要経費別分類を示す科目コードが付されていないため、重点施策等への資源配分の状況が把握できない。また、一般会計からの繰入金、積立金等の残高、出資額等について、各特別会計を横並びで一覧できるものを定期的に示しているものはない。

(2)繰越額・不用額について

 特別会計の中には、各年度とも同種の事由により、多額の繰越額・不用額が継続して発生しているものがあり、繰越しが継続している科目の中には、繰越額の全額又は相当額を、翌年度の決算においてそのまま不用額として処理しているものも見受けられる。
 繰越額・不用額の発生は、予算の執行上、当然その発生は想定されるものではあるが、その額が多額かつ継続的に発生していながら見直しがなされていない特別会計については、当該特別会計の事業の性格上やむを得ないものを除き、繰越しを例外的に認めている制度の趣旨及び決算の予算への的確な反映という要請からみて財政統制が十分に機能しているとは必ずしもいえない状況にあると認められる。

(3)決算剰余金について

 特別会計の中には、当該特別会計の事業の性格上やむを得ないものもあるが、各年度とも同種の事由により、多額の決算剰余金が継続して発生しているものが見受けられる。また、決算剰余金の処理として翌年度の歳入に繰り入れられる金額の中には、その有効活用を図るなど決算剰余金を縮減する措置の検討対象とすることが特に重要と考えられる部分も少なからずある。
 多額の決算剰余金が継続して発生する背景については、上記の繰越額・不用額の継続的な発生のほか、特別会計によっては、歳出規模に連動せず直入される特定財源があることがその要因の一つになっているものもあり、財政資金の効率的活用を図る上で、財政統制が機能しにくい状況となっている。
 なお、農業経営基盤強化措置、電源開発促進対策両特別会計の決算剰余金について平成16年度決算検査報告に掲記されているが、前者に関しては、18年に一般会計への繰入額の算定に必要な政令が制定され、活用見込みのない決算剰余金の一部を一般会計へ繰り入れる措置等が講じられており、また、後者に関しては、18年財特法に基づいて一般会計への繰入れが行われているほか、行政改革推進法に基づき、電源開発促進税(特定財源)の直入を見直すこととされている。他方、特別会計によっては、こうした一般会計の繰入額の算定に必要な政令を制定していないものも見受けられる。

(4)積立金等について

 特別会計に設置されている積立金等の主な財源は、決算剰余金、一般会計からの繰入金等であり、その残高は16年度末現在、財政融資資金及び外国為替資金を除く31資金で200兆円を超えている。
 積立金等の保有量については、設置目的、使途、特別会計の事業規模等に応じ、それぞれ適正規模があると考えられるが、ほとんどの資金においては、そのような基準を具体的に定めていない。このため、積立金等の残高が適正な水準であるかどうかを判断できず、資金の有効活用を図る上での財政統制が機能しにくい状況となっている。
 なお、積立金等の規模縮小に関しては、財政融資資金特別会計の積立金について、18年財特法に基づき、その一部を国債整理基金特別会計に繰り入れる措置が18年度に講じられている。

(5)予算積算と執行状況の対比について

 電源開発促進対策、財政融資資金両特別会計における予算積算と執行状況をみたところ、継続して支出率が低率となっている科目があったり、予算積算されているが執行実績がなかったり、執行実績はあるが予算積算がされていなかったりしているものなどが見受けられた。また、現行の予算、決算においては、予算と執行実績とを科目別に対比することはできるものの、事項又は事項内訳別については対比が困難となっているものもある。
 予算の執行に当たっては、予算成立後の状況変化に応じ、執行を見合わせる必要が生じたり、より効率的な執行が可能となったりして、予算積算とかい離が生じる場合があることは考えられる。しかし、特段の事情がない限り、執行実績と予算積算とがかい離している状態が継続すること、また、予算積算と執行実績とが対比できない事態が継続することは、財政統制が働きにくくなるおそれがある。

(6)出資法人への出資の状況について

 産業投資特別会計の産業投資勘定から研究開発法人への出資状況をみると、17年度末出資残高は3428億円となっているが、出資法人の財務状況をみると、ほとんどの勘定は繰越欠損金を抱えており、その合計額は2641億円(産業投資勘定出資相当分2416億円)に上っている。
 また、電源開発促進対策特別会計の出資先である核燃料サイクル開発機構における解散時の財務状況をみると、国の出資残高は2兆9225億円であるが、欠損金は2兆5657億円(特別会計からの出資金等に関する会計に係る分は1兆1868億円)に上っている。そして、核燃料サイクル開発機構等の権利義務を承継して設立された独立行政法人日本原子力研究開発機構に対する核燃料サイクル開発機構に係る国の出資金は、その承継に伴い、5004億円と大幅に減額された。
 科学技術の研究開発に係る法人に対する国からの出資に関して、国は、出資法人に対し、新規事業の採択の適正性、財務状況等について常に注視し、適切な管理を行う要がある。