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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
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  • 平成18年10月

高速道路の建設事業に係る入札・契約制度の見直しの状況等について


3 検査の状況

(1)入札・契約方式の推移

 各公団等が、工事の発注に当たって適用している入札・契約方式の主なものの推移は表2に示したとおりであり、各方式における手続の流れは、図1に示したようになっている。

表2 入札・契約方式の推移

表2入札・契約方式の推移

(注)
 土木工事における入札・契約方式を記載した。なお、工事種別によって、予定価格の金額区分が異なる場合がある。


図1 各競争入札の手続の概要

図1各競争入札の手続の概要

注(1)
 官報による公募は政府調達協定適用案件の場合に行う。
注(2)
 会社の営業所等の所在に関する資料等は政府調達協定が適用されない案件の場合に提出させる。

ア 見直し前の入札・契約方式

 各公団における見直し前の入札・契約方式については、従来、入札・契約方式の中心であった指名競争入札(以下「従来型指名競争入札」という。)に加えて、一般競争入札(政府調達協定適用)及び公募型指名競争入札が、前記の「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」等に基づき6年から導入され、その内容は、次のようになっていた(表2参照)
(ア)一般競争入札(政府調達協定適用)は、入札参加希望者を公募する入札・契約方式であり、会社の経営規模等に基づく評価点数や同種工事の施工実績等による入札参加資格を満たす者すべてが入札に参加できる入札・契約方式でもあり、政府調達協定に基づき予定価格が1500万SDR以上の工事に適用されていた。
(イ)公募型指名競争入札は、入札参加希望者を公募する入札・契約方式であるが、工事内容等に応じて定めた入札参加資格を有する者の中から発注者が入札者を指名する点が一般競争入札(政府調達協定適用)と異なり、一般的には発注に要する事務負担等を勘案して発注者が指名業者数を制限している場合が多い。そして、道路公団、首都公団及び阪神公団では、予定価格が1500万SDR未満の工事のうち、例えば土木工事では予定価格がそれぞれ7億円以上、1億円以上及び5000万円以上の工事に適用し、道路公団では10社以上(実際には10社程度)の入札者を指名し、首都公団及び阪神公団では、原則として参加する資格があると認められる者は全員指名していた。
(ウ)従来型指名競争入札は、あらかじめ登録された者の中から、発注者が一定数の入札者を指名する入札・契約方式である。そして、道路公団、首都公団及び阪神公団では、予定価格が250万円を超える工事のうち、例えば土木工事では予定価格がそれぞれ7億円未満、1億円未満及び5000万円未満の工事に適用し、道路公団及び首都公団では10社以上(実際には10社程度)の入札者を、阪神公団では20社以上(実際には20社程度)の入札者をそれぞれ指名していた。
(エ)随意契約は、特定の者と契約を締結しなければ契約の目的を達することができない特殊な工事、予定価格が250万円以下の工事等に競争入札の例外として適用されていた。
 なお、前記1(4)イで記述したとおり、首都公団及び阪神公団においては、今回の見直し以前にも入札・契約方式の適用方法等の変更を行っているが、これらは、首都公団では9年に、阪神公団では14年に、それぞれの発注工事に関連して発生した談合等を契機として行われた入札・契約制度の見直しなどによるものである。

イ 見直し後の入札・契約方式

 各公団における入札・契約方式の見直し策の内容は、次のようになっている(表2参照)
(ア)一般競争入札(政府調達協定適用)は、予定価格が1500万SDR以上の工事について、従来と同様に適用する。
(イ)公募型指名競争入札を適用することとしていた予定価格の範囲の工事は、道路公団及び首都公団ではすべて一般競争入札へ見直された。また、阪神公団では2億円以上の工事は一般競争入札に見直され、公募型指名競争入札は5000万円以上2億円未満の工事に適用範囲が縮小されている。これにより、道路公団では、従来、公募型指名競争入札を適用していた工事は、指名行為の廃止による透明性、競争性の確保を図るものとされている。また、首都公団及び阪神公団では、従来から公募型指名競争入札で原則的に全員を指名していて実質的には制限がなかったため、一般競争入札に見直された工事は、指名行為手続の廃止により、透明性の確保を図るものとされている。
(ウ)従来型指名競争入札を適用することとしていた予定価格の範囲の工事は、道路公団及び首都公団ではすべて一般競争入札へ見直されている。これにより、従来型指名競争入札を適用していた工事は、公募することによる受注意欲の高い業者の参加と、上記(イ)と同様に指名行為の廃止による透明性、競争性の確保を図るものとされている。一方、阪神公団では、15年度に予定価格が5000万円未満の工事に適用範囲を縮小し、指名数を10社から20社程度まで拡大した上で適用してきているが、今回の見直し後も適用することとしている。
(エ)随意契約は、各公団とも、従来と同様に競争入札の例外として適用できることとしている。

(2)見直し前後の入札・契約方式の適用状況

 各公団等において14年度から17年度の間に入札・契約を実施した工事の件数及び金額を、適用した入札・契約方式ごと、年度ごとに示すと、表3—1及び3—2のとおりとなる。

表3—1 入札・契約方式の適用状況(全工事)

表3—1入札・契約方式の適用状況(全工事)

(注)
 契約金額が1億円以上の契約を対象としているため、阪神公団等において従来型指名競争入札が適用された契約は対象外となることから、各表で記載欄を省略している。


表3—2 入札・契約方式の適用状況(鋼橋工事)

表3—2入札・契約方式の適用状況(鋼橋工事)

 各公団等において入札・契約制度の見直し後に入札を行った工事については、表3—1のとおり、従来どおり予定価格が1500万SDR以上の工事に一般競争入札(政府調達協定適用)が適用され、予定価格が1500万SDR未満の工事のほとんどは一般競争入札とされた。なお、道路公団等及び首都公団等において従来型指名競争入札によって契約された4件は、施工期間が非出水期(注4) に限定される中で緊急に工事を施工しなければならないなど時間的制約のある工事となっている。
 また、大規模で工事費が多額に上る構造物を構築することが多い鋼橋工事については、表3—2に示したように、入札を行う場合には従来から一般競争入札(政府調達協定適用)及び公募型指名競争入札が主体となっていたが、今回の見直し策により公募型指名競争入札を適用して入札者数を制限していた工事は一般競争入札を適用することとされ、入札参加資格を有していれば入札に参加できることとなった。
 随意契約については、14年度以降、表3—1のとおり、道路公団等で年間20件から30件程度、首都公団等で年間20件から50件程度、阪神公団等で年間数件程度の契約が締結されている。
 各公団では、収入支出予算の予算総則において、当該事業年度に債務を負担することができる年限(以下「債務負担行為の年限」という。)等を定めており、このうち高速道路建設事業等に係る年限については通常4箇年度以内とされていた。このため、トンネル工事のように工事目的物の完成に要する期間が債務負担行為の年限である4箇年度を超過し、1つの契約で工事が完了しない場合には、まず4箇年度分の工事を競争入札によって発注し、その後、当該工事の契約者に残工事を随意契約で追加発注することとしている。そして、この債務負担行為の年限に起因する随意契約は、表4のとおり、道路公団等、首都公団等及び阪神公団等において、それぞれ随意契約全体の88.0%、89.7%及び100%を占めている状況である。
 特に、首都公団等及び阪神公団等で発注されている工事は、トンネル工事のように一連の長大な構造物を施工するものが多く、また、都市部での工事であるため施工上の制約が多いことから、1つの契約で工事が完了しない場合が多く、これらの工事を債務負担行為の年限に起因する随意契約で発注しているため、全契約件数に占める随意契約の比率が高くなっている。
 随意契約を適用した主な理由については、表4に示したとおり、「施工上の経験及び知識を特に必要とする場合等や、現に契約履行中の工事に直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利である場合」に該当するとしているものが、道路公団等では95.0%、首都公団等及び阪神公団等ではそれぞれ100%となっている。

(注4)
 非出水期 集中豪雨、台風等の降雨や融雪等により河川が増水する可能性が低い時期


表4 随意契約の適用理由及び債務負担行為の年限を超えるため随意契約された工事
分類
道路公団等
首都公団等
阪神公団等
随意契約とした理由
 
随意契約とした理由
 
随意契約とした理由
 
うち債務年限に起因するもの
うち債務年限に起因するもの
うち債務年限に起因するもの
特殊な技術、機器又は設備等を必要とする工事等で、特定の者と契約を締結しなければ契約の目的を達することができない場合
2件
2.0%
施工上の経験及び知識を特に必要とする場合等や、現に契約履行中の工事に直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利である場合
95件
88件
136件
122件
22件
22件
95.0%
92.6%
100%
89.7%
100%
100%
随意契約によるときは、時価に比べて著しく有利な価格をもって契約をすることができる見込みがある場合
3件
3.0%
100件
88件
136件
122件
22件
22件
88.0%
89.7%
100%
注(1)
 道路公団等に係る数値では、1契約で3つの「随意契約とした理由」を有するものが1件あるため、これを重複計上している。
注(2)
 「随意契約とした理由」の欄の下段の数値は、「計」の欄の件数に占める割合を示している。
注(3)
 「うち債務年限に起因するもの」の欄の下段の数値は、「随意契約とした理由」の欄の件数に占める割合を示している。

 不落随契(入札・契約方式の分類では随意契約としては整理せず、当初の入札・契約方式により分類している。)の状況についてみると、表5のとおり、道路公団等では見直し前までは毎年相当数あったものが、見直し後は災害復旧時の緊急性があるなどやむを得ない場合を除き廃止することとされており、現在までのところ締結の実績はない。一方、首都公団等及び阪神公団等では、15年度に原則として廃止しており、これ以降、首都公団等では例外的な実績はあるが、阪神公団等では締結の実績がない状況である。
 そして、見直し後に不落となった入札は、表6のとおり、道路公団等及び首都公団等でそれぞれ6件及び3件あり、これらについては、その後改めて入札を行うなどとしており、このうち道路公団等では3件、首都公団等では2件、17年度中に再入札を行っている。

表5 不落随契の実施状況
(単位:件、百万円)

発注者
14年度
15年度
16年度
17年度
17年度
見直し前
見直し後
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
道路公団等
44
17,247
40
43,422
19
18,747
17
14,944
8.5%
4.2%
8.0%
8.9%
4.9%
3.6%
8.8%
5.3%
首都公団等
5
5,433
3
695
2
909
2
780
6.6%
4.8%
4.7%
0.9%
2.4%
0.8%
4.3%
2.0%
阪神公団等
1
1,627
3.1%
7.9%
(注)
 各欄の下段の数値は、各発注者が各年度に行った契約全体に占める割合を示したものである。


表6 入札・契約制度見直し後に不落となった入札の状況
(単位:件、百万円)

発注者
件数
予定価格
左のうち、17年度中に再入札を実施した件数
道路公団等
6
6,018
3
 
うち東日本会社分
3
1,878
1
うち中日本会社分
2
2,274
2
うち西日本会社分
1
1,865
首都公団等
3
591
2
阪神公団等
9
6,610
5