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  • 平成18年10月

財投機関における財政投融資改革後の財務状況と特殊法人等改革に伴う財務処理の状況について


3 検査の対象及び方法

(1)検査の対象

 12年度報告において検査対象とした財投機関45法人は図1のとおりであり、その後、これらは特殊法人等整理合理化計画に基づき事業及び組織形態の見直しが進められた。このうち財政融資資金を原資として資金運用を行う法人で、他の財投機関とは財政投融資に係る資金(以下「財投資金」という。)の使途が異なっている簡易保険福祉事業団及び年金福祉事業団並びに16年10月に完全民営化され会計検査院の検査対象ではなくなった電源開発株式会社の3法人を除く42法人(注2) の財投事業を経理していた55勘定(注3) の異動状況は表1のとおりである。すなわち、法人の組織形態の変更等が行われず異同のなかった勘定や新規に設立された法人に事業がそのまま承継された勘定もある一方、法人の統廃合に伴って、廃止された勘定や、他の勘定と統合されたり、複数の勘定に分割されたりして新規に設立された法人に承継された勘定もあり、16年度末において35法人50勘定となっている。
 今回の検査に当たっては、上記の35法人50勘定のほか、16年度末において財投事業を経理している財投事業の勘定として、会計検査院法第22条に規定する検査対象である7法人(うち5法人は35法人に含まれている。)に係る8勘定(表1参照) を加えた37法人58勘定を分析の対象とし、これら37法人について、主として13年度から16年度までの財務状況について検査を行った。また、16年度末までに財投事業を廃止するなどして財投機関ではなくなった日本下水道事業団及び独立行政法人国際協力機構の2法人並びに財投事業が廃止されるなどした6勘定(表1参照) については、財投資金等の回収や財投事業の廃止に伴う損失処理の状況等について検査を行った。これら検査対象とした財投機関計39法人は図2のとおりである。
 なお、上記のうち道路関係4公団(注4) については17年10月に民営化されており、また、住宅金融公庫については19年4月に独立行政法人化が、国民生活金融公庫ほか7公庫等については前記のとおり、今後組織形態の抜本的改革がそれぞれ予定されている。

(注2)
 以下「42法人」という場合は、12年度報告において検査対象とした45法人から簡易保険福祉事業団、年金福祉事業団及び電源開発株式会社の3法人を除いた法人を指す。
(注3)
 勘定を設けずに事業を経理している法人については1勘定としている。また、勘定区分については、原則として法令により区分された経理単位のうち、財務諸表が作成されている経理単位を1勘定として分析の対象としている。
(注4)
 道路関係4公団 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団

図1 12年度報告において検査対象とした45法人

■公団
■事業団
 
日本道路公団
首都高速道路公団
緑資源公団
水資源開発公団
阪神高速道路公団
地域振興整備公団
新東京国際空港公団
石油公団
本州四国連絡橋公団
日本鉄道建設公団
都市基盤整備公団
 
中小企業総合事業団
労働福祉事業団
簡易保険福祉事業団
金属鉱業事業団
環境事業団
日本下水道事業団
国際協力事業団
年金福祉事業団
社会福祉・医療事業団
科学技術振興事業団
運輸施設整備事業団
日本私立学校振興・共済事業団
■公庫等
■その他
 
国民生活金融公庫
住宅金融公庫
農林漁業金融公庫
中小企業金融公庫
公営企業金融公庫
沖縄振興開発金融公庫
日本政策投資銀行
国際協力銀行
 
商工組合中央金庫
日本育英会
電源開発株式会社
奄美群島振興開発基金
情報処理振興事業協会
通信・放送機構
新エネルギー・産業技術総合開発機構
関西国際空港株式会社
基盤技術研究促進センター
生物系特定産業技術研究推進機構
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構
帝都高速度交通営団
産業基盤整備基金
雇用・能力開発機構

表1 検査対象勘定等の改廃状況

12年度検査対象42法人(勘定)名
左の法人(勘定)の16年度末の状況
特殊法人等改革等による措置状況
社会資本整備法人(計22勘定)
日本道路公団
同左
17年10月に6株式会社及び1独立行政法人に組織変更
首都高速道路公団
同左
阪神高速道路公団
同左
本州四国連絡橋公団
同左
新東京国際空港公団
成田国際空港株式会社
16年4月株式会社化
関西国際空港株式会社
同左
変更なし
都市基盤整備公団
(鉄道勘定)
独)都市再生機構
(鉄道勘定)16年9月に勘定廃止
16年7月独立行政法人へ資産承継
帝都高速度交通営団
東京地下鉄株式会社
16年4月に株式会社化
都市基盤整備公団
(都市基盤整備勘定)
独)都市再生機構
(都市再生勘定)
16年7月独立行政法人へ資産承継
地域振興整備公団
(地方都市開発整備等事業勘定)
地域振興整備公団
(工業再配置等事業勘定)
独)中小企業基盤整備機構
(工業再配置等業務特別勘定)26年3月末までに廃止予定
16年7月独立行政法人へ資産承継(3勘定に分割)
独)中小企業基盤整備機構
(施設整備等勘定)
独)中小企業基盤整備機構
(一般勘定)※他分類と重複掲記
地域振興整備公団
(産炭地域振興事業勘定)
 
独)中小企業基盤整備機構
(産炭地域経過業務特別勘定)26年3月末までに廃止予定
16年7月独立行政法人へ資産承継
水資源開発公団
独)水資源機構
15年10月独立行政法人へ資産承継
緑資源公団
(林道勘定)
独)緑資源機構
(林道等勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
緑資源公団
(農用地整備勘定)
日本鉄道建設公団
(一般勘定)
独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(建設勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
環境事業団
(一般業務勘定)
独)環境再生保全機構(承継勘定)14年4月以降新規事業着手を中止
16年4月独立行政法人へ資産承継
運輸施設整備事業団
(船舶勘定)
独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(船舶勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
日本下水道事業団
(建設業務勘定)
同左 16年3月事業廃止
15年10月地方共同法人化
石油公団
(石油備蓄勘定)
独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
(石油天然ガス勘定)
15年4月及び16年2月に国へ石油備蓄資産を資産承継、16年2月独立行政法人へ資産承継
金属鉱業事業団
(一般勘定)
独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
(金属鉱業備蓄・探鉱融資等勘定)
16年2月独立行政法人へ資産承継(2勘定に分割)
独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
(金属鉱業一般勘定)
緑資源公団
(造林勘定)
独)緑資源機構(造林勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
運輸施設整備事業団
(鉄道勘定)
独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(助成勘定)*
15年10月独立行政法人へ資産承継
国の機関
独)国立病院機構*
16年4月国立病院等を改組、独立行政法人化
政策金融法人(計18勘定)
国民生活金融公庫
同左
20年度に新政策金融機関へ統合の予定
住宅金融公庫
同左
19年4月独立行政法人化の予定
農林漁業金融公庫
同左
20年度に新政策金融機関へ統合の予定
中小企業金融公庫
同左(融資勘定)・16年度より勘定を区分
20年度に新政策金融機関へ統合の予定
沖縄振興開発金融公庫
同左
24年度以降に新政策金融機関へ統合の予定
国際協力銀行
(海外経済協力勘定)
同左
20年度に国際協力機構へ事業承継の予定
労働福祉事業団
(融資勘定)
独)労働者健康福祉機構
・勘定区分なし 13年4月新規貸付業務の廃止
16年4月独立行政法人へ資産承継
社会福祉・医療事業団
(一般勘定のうちの一般経理)
独)福祉医療機構(一般勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
日本育英会
(特別勘定)
独)日本学生支援機構
・勘定区分なし
16年4月独立行政法人へ資産承継
雇用・能力開発機構
(雇用促進融資勘定)
独)雇用・能力開発機構
(一般勘定)14年4月新規貸付業務の廃止
16年3月独立行政法人へ資産承継
雇用・能力開発機構
(勤労者財産形成促進事業勘定)
独)雇用・能力開発機構
(財形勘定)
16年3月独立行政法人へ資産承継
公営企業金融公庫
同左
20年度に廃止の予定
日本政策投資銀行
同左
20年度から完全民営化のための措置を予定
国際協力銀行
(国際金融等勘定のうちの一般勘定)
同左
(国際金融等勘定)・名称変更
20年度に新政策金融機関へ統合の予定
日本私立学校振興・共済事業団
(助成勘定のうちの一般経理)
同左
15年10月独立行政法人会計基準に変更
中小企業総合事業団
(高度化、新事業開拓促進及び指導研修勘定のうちの高度化融資経理)
独)中小企業基盤整備機構
(一般勘定)※再掲、主分類は社会資本整備法人としている。
16年7月独立行政法人へ資産承継
奄美群島振興開発基金
(融資出資勘定)
独)奄美群島振興開発基金・勘定区分なし※再掲、主分類は無償資金型法人としている。
16年10月独立行政法人へ資産承継
商工組合中央金庫
同左
20年度から完全民営化のための措置を予定
(16年度事業開始)
中小企業金融公庫(証券化支援買取業務勘定)*
20年度に新政策金融機関へ統合の予定
(13年度事業開始)
独)福祉医療機構
(年金担保貸付勘定)*
15年10月社会福祉・医療事業団から資産承継
国の機関
独)国立大学財務・経営センター
(施設整備勘定)*
16年4月国の機関を改組、独立行政法人化
無償資金型法人(計15勘定)
基盤技術研究促進センター
独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(鉱工業承継勘定)26年3月までに廃止予定
15年4月特殊法人へ資産を分割して承継、その後独立行政法人化
独)情報通信研究機構(通信・放送承継勘定)25年3月までに廃止予定
15年3月一部事業廃止
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(研究振興勘定)
独)医薬品医療機器総合機構
(承継勘定)36年3月までに廃止予定
16年4月独立行政法人へ資産承継(2勘定に分割) 17年4月独)医薬基盤研究所へ資産承継
独)医薬品医療機器総合機構
(研究振興勘定)
生物系特定産業技術研究推進機構
(民間研究促進業務勘定)
独)農業・生物系特定産業技術研究機構
(民間研究促進業務勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
情報処理振興事業協会
(地域事業出資業務勘定)
独)情報処理推進機構
(地域事業出資業務勘定)
16年1月独立行政法人へ資産承継
通信・放送機構
(研究開発出資勘定)
独)情報通信研究機構
(出資勘定)
16年4月独立行政法人へ資産承継
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(産業技術研究基盤出資勘定)
独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
(研究基盤出資経過勘定)18年4月に廃止予定
15年10月独立行政法人へ資産承継 18年4月勘定廃止
中小企業総合事業団信用保険部門
(中小企業信用保険事業・融資事業)
中小企業金融公庫
(中小企業信用保険事業・融資事業)16年7月財投事業終了
16年7月中小企業金融公庫へ資産承継
奄美群島振興開発基金
(保証勘定)
独)奄美群島振興開発基金
・勘定区分なし ※他分類と重複掲記
16年10月独立行政法人へ資産承継
産業基盤整備基金
(出資特別勘定)
独)中小企業基盤整備機構(出資承継勘定)13年4月以降新規出資停止
16年7月独立行政法人へ資産承継
科学技術振興事業団
(文献情報提供勘定)
独)科学技術振興機構(文献情報提供勘定)
15年10月独立行政法人へ資産承継
国際協力事業団
独)国際協力機構15年10月財投事業終了
15年10月独立行政法人へ資産承継
通信・放送機構
(衛星所有勘定)
廃止
16年4月勘定廃止
情報処理振興事業協会
(振興業務勘定)
独)情報処理推進機構(特定プログラム開発承継勘定)20年1月までに廃止予定
16年1月独立行政法人へ資産承継(3勘定に分割。うち1勘定については財投対象外)
独)情報処理推進機構(事業化勘定)
情報処理振興事業協会
(技術事業勘定)
16年1月事業廃止
16年1月勘定廃止
情報処理振興事業協会
(地域事業推進業務勘定)
独)情報処理推進機構
(地域ソフトウェア教材開発承継勘定)16年3月事業廃止
16年1月独立行政法人へ資産承継
(13年度事業開始)
独)情報通信研究機構
(基盤技術研究促進勘定)*
16年4月独立行政法人へ資産承継
(13年度事業開始)
独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
(基盤技術研究促進勘定)*
15年10月独立行政法人へ資産承継
産業基盤整備基金(再生資源利用等特別勘定のうちリサイクル等経理)
独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
(特定事業活動等促進経過勘定)業務終了時に勘定廃止予定*
16年7月に独立行政法人へ資産承継

注(1)
 12年度検査対象法人は、12年度報告において表記した法人(勘定)の順となっている。
注(2)
 法人名の「独立行政法人」は表において「独)」と表記している。
注(3)
 網掛け欄は平成16年度末までに廃止した財投事業等を示す。
注(4)
 「左の法人(勘定)の16年度末の状況」欄において*印がついている法人(勘定)は今回検査対象に加えた7法人8勘定であり、各事業類型の勘定数の計には含まれていない。

図2 検査対象とした39法人

■公団
■独立行政法人
 
日本道路公団
首都高速道路公団
阪神高速道路公団
本州四国連絡橋公団
 
都市再生機構
中小企業基盤整備機構
水資源機構
緑資源機構
国際協力機構
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
環境再生保全機構
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
労働者健康福祉機構
福祉医療機構
日本学生支援機構
雇用・能力開発機構
情報通信研究機構
新エネルギー・産業技術総合開発機構
医薬品医療機器総合機構
農業・生物系特定産業技術研究機構
情報処理推進機構
科学技術振興機構
奄美群島振興開発基金
国立病院機構
国立大学財務・経営センター
■公庫等
 
国民生活金融公庫
住宅金融公庫
農林漁業金融公庫
中小企業金融公庫
公営企業金融公庫
沖縄振興開発金融公庫
日本政策投資銀行
国際協力銀行
■事業団
 
日本私立学校振興・共済事業団
■その他
 
商工組合中央金庫
関西国際空港株式会社
成田国際空港株式会社
東京地下鉄株式会社
日本下水道事業団

 12年度報告では、各法人の基本的な債務償還システム又は収支構造の特徴に着目して、社会資本整備法人、政策金融法人及び無償資金型法人の3つの事業類型に大別して分析を行っている。そこで、今回もこの事業類型に従って、検査対象39法人を分類(注5) して分析を行うこととした。これらの事業類型の概要及び各類型に該当する法人は以下のとおりである。

〔社会資本整備法人〕

有償資金を財源として事業資産を取得し、施設利用料や譲渡代金等を償還原資とする事業スキームの法人。将来の債務償還は、収益性又は資産価格の変動などのリスクに影響される。

日本道路公団(注6) 、首都高速道路公団(注7) 、阪神高速道路公団(注8) 、本州四国連絡橋公団(注9) 、関西国際空港株式会社、成田国際空港株式会社、東京地下鉄株式会社、独立行政法人緑資源機構、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人水資源機構、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人環境再生保全機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人都市再生機構、日本下水道事業団(計16法人)

〔政策金融法人〕

有償資金を財源として貸付けを行い、回収元利金等を償還原資に充てる事業スキームの法人。将来の債務償還は、貸倒損失や繰上償還による金利リスクなどの影響を受ける。

国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本私立学校振興・共済事業団、商工組合中央金庫、独立行政法人福祉医療機構、独立行政法人雇用・能力開発機構、独立行政法人労働者健康福祉機構、独立行政法人日本学生支援機構、独立行政法人国立大学財務・経営センター(計15法人)

〔無償資金型法人〕

重要な意義、高い公共性を有する一方、リスクも大きい事業であることから、国の資金助成を主な財源とする事業スキームの法人。収支構造上、債務償還の問題はないが、出資先会社における欠損金の累積等の問題を抱えている。

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(注10) 、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、独立行政法人科学技術振興機構、独立行政法人情報処理推進機構、独立行政法人情報通信研究機構、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、独立行政法人奄美群島振興開発基金、独立行政法人国際協力機構(計8法人)
(以下、各法人の名称中「独立行政法人」は記載を省略する。)

(注5)
 法人の分類に当たっては、原則として12年度報告における分類に従うとともに、複数の類型に該当する事業を有する法人については、財政投融資計画における資金の種類、対象事業を考慮して分類している。
(注6)
 平成17年10月1日以降は、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
(注7)
 平成17年10月1日以降は、首都高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
(注8)
 平成17年10月1日以降は、阪神高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
(注9)
 平成17年10月1日以降は、本州四国連絡高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
(注10)
 平成18年4月1日以降は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

(2)検査の方法

 検査に当たっては、上記の39法人すべてについて、決算関係資料等の提出を受け、説明の聴取等を行うとともに、各法人の本部等において実地検査を実施した。