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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 裁判所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

裁判員制度広報用映画制作に係る請負契約において取得した35mmフィルムについて、具体的な使用計画を検討するなどして有効に利用するよう改善させたもの


裁判員制度広報用映画制作に係る請負契約において取得した35mmフィルムについて、具体的な使用計画を検討するなどして有効に利用するよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)裁判所
(項)最高裁判所
部局等
最高裁判所
裁判員制度広報用映画制作に係る請負契約の概要
裁判員制度における評議、選任等の手続を国民に周知するための映画を製作し、これを所定の規格、数量の各種媒体に記録して納品等するもの
契約の相手方
2会社
契約
企画競争による随意契約
契約件数及び金額
2件
1億3887万余円
(平成17、18両年度)
有効に利用されていない34mmフィルムの数量及び取得価格相当額
3本
1714万余円
(平成17、18両年度)

1 裁判員制度広報用映画の制作物の概要

(1) 裁判員制度広報用映画制作の概要

 最高裁判所では、平成21年5月までに実施される裁判員制度について、制度に対する国民の理解を深めていくことが不可欠であるとして、様々な広報業務を実施している。そして、裁判員制度における評議、選任等の手続を分かりやすく、効果的に国民に周知することを目的として、17年度に株式会社博報堂と、18年度に株式会社ジェイアール東日本企画と、それぞれ裁判員制度広報用映画制作に係る請負契約を締結しており、契約金額は17年度6999万余円、18年度6888万円、計1億3887万余円となっている。

(2) 裁判員制度広報用映画制作に係る請負契約の制作物

 上記の両契約は、17年度は「評議」、18年度は「裁判員選任」をそれぞれ題材とした映画を制作し、制作した映画を所定の規格、数量の各種媒体に記録して納品等するものであり、最高裁判所は、これらの制作物の納品を受け、取得している。
 そして、17年度契約では、マスターテープ(1本)、35mmフィルム(1本)、DVD(400枚)、VHSビデオテープ(3,180本)及び映画宣伝用チラシ(20,000枚)を制作させ取得している。また、18年度契約では、マスターテープ(本編、予告編各1本、計2本)、35mmフィルム(本編、予告編各1本、計2本)、DVD(20,600枚)、VHSビデオテープ(4,000本)、映画宣伝用チラシ(20,000枚)等を制作させ取得している。
 最高裁判所の説明によれば、上記制作物のうち、マスターテープは高画質の映像が記録されたもので、主としてDVD等を複製するために取得したとしていた。また、DVD、VHSビデオテープ等は、全国の裁判所に配布し、裁判員制度の出張講義や説明会を行う際に使用したり、裁判所から市町村等の関係機関に送付し、図書館に備え付けて住民の閲覧に供したりするためなどに取得したとしていた。
 一方、35mmフィルム3本(取得価額相当額17年度577万余円、18年度1136万余円、計1714万余円)は、DVD等に対応する機器が設置されておらず35mmフィルムしか使用できない公民館等の会場や、35mmフィルムの使用に適した大規模会場における映画の上映で使用したり、これらの会場での上映用に貸し出したりするために、映画制作に併せて取得したとしていた。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、最高裁判所が締結した、前記の17、18両年度の裁判員制度広報用映画制作に係る請負契約2件、契約金額計1億3887万余円を対象として、最高裁判所において会計実地検査を行った。
 検査に当たっては、制作物の記録媒体が多岐にわたっていることから、有効性等の観点から、それぞれの記録媒体の制作物が有効に利用され、取得の目的が達成されているかなどに着眼して、制作物の使用及び管理の状況を確認するなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、制作物については、17年度契約分は18年3月に、18年度契約分は19年2月に、それぞれすべて最高裁判所に納入された後、DVD、VHSビデオテープ等は全国の裁判所に所定の数量が配布され、マスターテープ及び35mmフィルムは最高裁判所内で保管されていた。
 そして、DVD、VHSビデオテープ等については、各裁判所が市町村等の関係機関に送付し、図書館で貸し出すよう依頼しているほか、裁判員制度の出張講義や説明会(18年度は延べ1,671回実施、約103,800人が参加)で映画を上映する場合に使用している状況であった。
 しかし、35mmフィルムについては、最高裁判所に対する会計実地検査を行った19年7月現在、17年度契約に係る35mmフィルムが最高裁判所庁舎内で行われた試写会(18年3月実施)において一度使用されたのみで貸出しの実績はなく、18年度契約に係る35mmフィルムは、本編、予告編のいずれも使用及び貸出しの実績が全くなかった。
 そこで、35mmフィルムの取得に至る経緯及び35mmフィルムに係る周知の状況について検査したところ、以下のとおりとなっていた。

ア 35mmフィルムの取得に至る経緯について

 最高裁判所では、17年度契約で35mmフィルムを制作物に含めることとしたのは、次の理由によるとしていた。
(ア) 前記のとおり、公民館等や大規模会場での上映の可能性があること
(イ) 35mmフィルムの制作の際にはビデオ画像をフィルム映像に変換するためにキネコ作業と呼ばれる作業を行うことになるが、この作業には映画制作者等の立会い及び確認が必要であることなどから、通常は映画の制作と切り離して行うことができないこと
 しかし、(ア)の公民館等や大規模会場での上映の可能性については、最高裁判所は、17年度においては、35mmフィルムしか上映できない公民館等がどの程度あり、そのうちどの程度の会場で裁判員制度の広報用映画を上映することになるかなどの具体的な調査・検討を十分行っていなかった。また、18年度においては、企画競争の手続を開始する直前に、17年度契約に係る35mmフィルムの貸出しについての打診が1件あったことから、年に数回程度は貸出依頼があると判断して、17年度と同様に具体的な調査・検討を十分行うことなく、35mmフィルムを制作物に含めることを決定していた。なお、上記の打診については、相手方が辞退したことにより、結局貸出しは行われなかった。
 また、(イ)のキネコ作業の際の映画制作者等の立会い等の必要性については、キネコ作業を行っている業者から本院が聴取したところ、近年はキネコ作業に係る機器の性能が向上していることから、途中段階における立会い等は不可欠な作業ではなく最終段階で行えば足り、また、必要に応じてマスターテープから35mmフィルムの製造のみを発注することも可能とのことであった。

イ 35mmフィルムの貸出しの周知の状況について

 35mmフィルムは、前記のとおり、公民館等や大規模会場で映画を上映する際に必要であるとして制作されていた。
 しかし、35mmフィルムが納入された後、最高裁判所から各裁判所に対する文書において、上映会などで35mmフィルムが必要な場合には貸出しに対応する旨を伝えていたが、各裁判所から市町村等の関係機関に対しては、35mmフィルムの貸出しについては周知されていなかった。
 このように、本件35mmフィルム3本については、このうち1本が最高裁判所庁舎内の試写会で一度使用されたのみで、貸出しの実績は全くなく、取得の目的に沿った利用がなされていない状況であり、適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 最高裁判所において、35mmフィルムを取得することについての事前の具体的な調査・検討及び取得後の使用計画の検討が十分でなかったこと
イ 35mmフィルムの貸出しなどについて、市町村等の関係機関に対する周知が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、最高裁判所では、35mmフィルムの有効な利用が図られるよう次のような処置を講じた。
ア 最高裁判所において、35mmフィルムに係る今後の使用計画を検討し、映画の上映会を実施するとともに、各裁判所で実施するミニフォーラムなどの催しに35mmフィルムを使用することとした。
イ 裁判員制度ホームページ上で、35mmフィルムの貸出しについて周知を行うとともに、地方裁判所等に対し、19年9月に事務連絡を発し、市町村等の関係機関に対して35mmフィルムを貸し出すことができる旨を周知させた。