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  • 平成18年度|
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財政融資資金の貸付額が過大となっているもの


(12) 財政融資資金の貸付額が過大となっているもの

資金名
財政融資資金
部局等
関東財務局甲府財務事務所
貸付けの根拠
財政融資資金法(昭和26年法律第100号)
貸付けの概要
病院整備事業を実施する地方公共団体に対する普通地方長期資金の貸付け
貸付先
山梨県
貸付対象
県立中央病院新病院整備事業
貸付金額
387,000,000円(平成17年度)
過大貸付金額
232,438,737円(平成17年度)

1 貸付けの概要

 財務省では、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)に基づき、社会資本整備を行う地方公共団体等に財政融資資金(以下「財融資金」という。)を貸し付けている。
 財融資金のうち地方公共団体に貸し付けられる地方資金には、貸付期間が5年以上の普通地方長期資金や普通地方長期資金が貸し付けられるまでのつなぎ資金としての起債前貸などがある。そして、財務局又は財務事務所は、地方債計画に沿い、地方公共団体が総務大臣等から起債の許可(平成18年度以降は同意等)を得た事業について、貸付けの審査を行い、貸付額及び諸条件を決定して地方資金を貸し付けている。
 また、公営企業金融公庫(以下「公営公庫」という。)では、公営企業金融公庫法(昭和32年法律第83号)に基づき、地方公共団体が行う病院事業などの公営事業に必要な資金のうち、地方債計画に沿い、地方公共団体が総務大臣等から起債の許可(18年度以降は同意等)を得た事業について、借入申込書類の審査を行い、貸付けの可否及び貸付額を決定して、公営企業金融公庫資金(以下「公庫資金」という。)を貸し付けている。
 総務省が財務省と協議の上、定めた地方債の許可方針等によると、地方公共団体が起債する病院事業債については、地方公共団体等が行う病院、診療所、その他の医療施設等を対象とし、対象事業費から補助金などの特定財源を控除した額まで起債できることとされている。
 地方公共団体が行う事業でその履行に数年度を要するものについては、地方自治法(昭和22年法律第67号)により、予算で経費の総額及び年割額を定め、数年度にわたって支出することができる継続費の制度がある。また、同法施行令(昭和22年政令第16号)によると、継続費の年割額に係る歳出予算の金額のうち、その年度内に支出を終えなかったものは、当該継続費の継続終了年度まで逓次繰り越して使用すること(以下「逓次繰越」という。)ができることとされている。そして、事業費が繰り越された場合における地方債の取扱いについては、旧自治省が地方公共団体等に発した「予算繰越された事業費に対する地方債の取扱いについて」(昭和44年地方債課長内かん)によると、確定した繰越財源なしに事業費の繰越しをすることは予算の制度上認められず、既に財源が確保された事業費については、繰り越された年度に起債許可は行わないこととされている。
 山梨県では、県立中央病院新病院整備事業(事業実施期間8年度〜17年度)を継続費の逓次繰越制度を用いて実施しており、事業終了年度の17年度においては、中央病院建設建築工事等6工事等を継続費によって実施し、中央病院外構工事等4工事等を単年度事業として実施していた。17年度に実施した同事業について、同県は事業費のうち631,854,000円を起債対象事業費として起債の申請を行い、18年3月に同額を借入限度額とする総務大臣の許可を受け、財融資金387,000,000円及び公庫資金244,000,000円計631,000,000円を借り入れていた。
 本件貸付けに当たり、関東財務局甲府財務事務所(以下「甲府事務所」という。)では、財政融資資金の管理及び運用の手続に関する規則(昭和49年大蔵省令第42号)等に基づき、山梨県に書類を提出させて、その内容を審査して財融資金を貸し付けたとしていた。また、公営公庫では、公営企業金融公庫貸付規程(昭和34年公企規程第4号)等に基づき、山梨県に借入申込書類を提出させて、その内容を審査して公庫資金を貸し付けたとしていた。

2 検査の結果

 本院は、山梨県、甲府事務所及び公営公庫において会計実地検査を行った。そして、甲府事務所及び公営公庫が、山梨県から前記県立中央病院新病院整備事業の借入申込みを受けて審査を行い、18年3月に貸し付けた17年度の財融資金387,000,000円及び公庫資金244,000,000円を対象として、合規性等の観点から、貸付額が事業費を基に適正に算定されているか、特に前年度からの逓次繰越が適切に処理されているかなどに着眼して、起債関係書類等により検査したところ、次のような事態となっていた。
 本件事業においては、12年度から毎年度逓次繰越が発生しており、各年度の逓次繰越事業費は、繰越事由が発生した当該年度の起債対象事業費に含めて起債許可を受けていた。そして、16年度においても、17年度へ逓次繰越した事業費381,127,800円を含めた8,861,000,000円について起債許可を受けていた。
 甲府事務所では、山梨県の16年度財融資金の借入申込みに基づき、17年3月に16年度財融資金の起債前貸を行い、18年3月に当該起債前貸の借換え分と上記の逓次繰越事業費を合わせた事業費相当額5,405,000,000円の貸付けを行った。公営公庫においても、山梨県の16年度公庫資金の借入申込みに基づき、17年3月に16年度公庫資金3,456,000,000円の貸付けを行った。
 しかし、17年度における本件事業の起債借入れに当たっては、既に前年度の起債の対象となっている逓次繰越事業費381,127,800円を起債対象事業費から控除する必要があるのに、山梨県では、17年度の借入申込みに当たり、これを控除していなかったため、17年度起債対象事業費631,854,000円のうち381,127,800円が過大となっていた。
 なお、中央病院外構工事費には過小計上分があったことから、これを加算するなどして事業費を精査した結果、財融資金と公庫資金を合わせた適正な貸付額は252,010,742円となり、これを両資金の貸付額の割合によりあん分すると、財融資金154,561,263円及び公庫資金97,449,479円となる。
 したがって、本件17年度の貸付額については、財融資金貸付額232,438,737円及び公庫資金貸付額146,550,521円が過大に貸し付けられていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、主として山梨県において、予算の執行管理及び決算の年度管理が適切になされないまま、病院事業の起債の許可を受けて借入れが行われたことによるが、甲府事務所及び公営公庫において、審査資料の簡素化等の中で、本件事案を予防するための書類等を徴していないなど十分な貸付審査が行われていなかったことなどにもよると認められる。
 なお、本件の過大な貸付金額については、財融資金が19年7月に、公庫資金が19年8月に繰上償還の措置が執られた。