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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

大学院の研究科における教育研究活動状況に係る調書の記入方法を明確にすることなどにより、私立大学等経常費補助金(私立大学教育研究高度化推進特別補助)の算定が適正に行われるよう改善させたもの


(1) 大学院の研究科における教育研究活動状況に係る調書の記入方法を明確にすることなどにより、私立大学等経常費補助金(私立大学教育研究高度化推進特別補助)の算定が適正に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)文部科学本省
(項)私立学校助成費
部局等
文部科学本省
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
補助事業者(事業主体)
43学校法人
補助事業
私立大学経常費補助(私立大学教育研究高度化推進特別補助)
上記の補助事業のうち、調整率を乗じて補助する額を算出する補助金の概要
私立大学等における教育研究の高度化を図るもののうち、優れた教育研究を実践する卓越した大学院を重点支援するもの
上記に係る国庫補助金交付額
59億5811万余円(平成16、17両年度)
過大に交付されていた国庫補助金交付額
6349万円(平成16、17両年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金の交付目的

 文部科学省は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「私立大学等」という。)を設置する学校法人に「私立大学等経常費補助金(私立大学教育研究高度化推進特別補助)」(以下「補助金」という。)を交付している。この補助金は、私立大学等の経常的経費を対象として補助を行い、私立大学等における教育研究の高度化を図るものであり、このうち優れた教育研究を実践する卓越した大学院への重点支援については、補助金の算定において教育研究活動状況に基づき傾斜配分を行っている。

(2) 補助金の算定方法

 文部科学省は、「私立大学等経常費補助金・政府開発援助私立大学等経常費補助金交付要綱」(昭和52年文部大臣裁定)に基づき、「私立大学等経常費補助金(私立大学教育研究高度化推進特別補助)配分基準」(以下「配分基準」という。)を定め、補助金の額を算定している。
 配分基準においては、教育研究拠点大学院重点経費等の項目(以下「補助項目」という。)が設けられていて、それぞれの補助項目ごとに補助する額を算出することとしている。
 そして、大学院を対象とした補助項目のうち、教育研究拠点大学院重点経費等については、専任教員等の数に所定の単価を乗じるなどして得られた補助基準額に、大学院の研究科における教育研究活動状況による調整率(以下「調整率」という。)を乗じて補助する額を算出している。
 調整率は、傾斜配分に係る調整事項(以下「調整事項」という。)の区分ごとの点数の合計点に応じ、0%から200%と算出することとなっている。

(3) 補助金を算定するための資料

 文部科学省は毎年、学校法人から、調整事項である「専任教員数に対する科学研究費補助金採択件数の割合」等を調査するため、「教育研究拠点大学院重点経費計画書(個人別表)」(以下「個人別表」という。)、「教育研究拠点大学院重点経費−研究科の教育・研究活動状況調書」(以下「活動状況調書」という。)等の調書の提出を受けている。
 上記調書のうち活動状況調書は、調整率を算出するための基本的な調書であり、科学研究費補助金採択件数、国際学会でのゲストスピーカーの人数、特許の申請件数、特許の取得件数、外部評価実施の有無などの調査事項を記入することとなっている。
 このうち、科学研究費補助金採択件数、国際学会でのゲストスピーカーの人数については、私立大学等経常費補助金「私立大学教育研究高度化推進特別補助」計画書記入要領(以下「記入要領」という。)によれば、個人別表に記入した教員による過去3年間の活動状況によることとされている。また、特許の申請件数及び取得件数については、当該大学が特許を出願したものに係る件数を記入すること、外部評価実施の有無については、評価結果を公表している場合に「有」とすることとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、文部科学省及び同省が平成16年度又は17年度に補助金を交付している582学校法人のうちの49学校法人において会計実地検査を行い、このうち43学校法人(注) について合規性等の観点から、調整率の算出が適正に行われているかに着眼して、活動状況調書等により検査した。そして、調整率の算出が適正でないと思われる事態があった場合には、同省にその詳細な報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記43学校法人のうち21学校法人では、活動状況調書を誤って記入していて、このうち更に7学校法人では調整率を過大に算出していたため、補助金計6349万円が過大に交付されていた事態が見受けられた。
 これを態様別に示すと、次のとおりである。

(1) 科学研究費補助金採択件数等を誤ったもの

 4学校法人では、活動状況調書に個人別表に記入されていない教員に係る科学研究費補助金採択件数及び国際学会でのゲストスピーカーの人数についても記入していたため、調整率が過大に算出されていて補助金の額が計584万余円過大になっていた。
 このほか、調整率が過大に算出される事態に至らないものの、個人別表に記入されていない教員に係る科学研究費補助金採択件数等を記入しているものが、13学校法人で見受けられた。

<事例1>

 A学校法人では、活動状況調書に科学研究費補助金採択件数を平成16年度22件と記入しており、これに基づいて文部科学省では、調整率を40%と算出し、同学校法人に対する補助金を3825万余円と算定していた。
 しかし、この科学研究費補助金採択件数には、個人別表に記入されていない教員に係るもの14件が含まれており、これを除外すると調整率が20%に下がるため、補助金が283万余円過大に交付されていた。

(2) 特許の申請件数、特許の取得件数等を誤ったもの

 3学校法人では、活動状況調書に当該大学ではなく、教員又は教員から特許を受ける権利を譲渡された者(以下「教員等」という。)が出願した特許の申請件数及び取得件数を記入していたり、評価結果を公表していないのに外部評価の実施を「有」と記入していたりしたため、調整率が過大に算出されて補助金の額が計5764万余円過大になっていた。
 このほか、調整率が過大に算出される事態に至らないものの、教員等が出願した特許の申請件数及び取得件数を記入しているものなどが、4学校法人で見受けられた。

<事例2>

 B学校法人では、平成16、17両年度の活動状況調書に、C研究科等において大学が特許を申請した件数及び取得した件数があったとしてそれぞれ記入していた。これらに基づいて、文部科学省では、C研究科に対する調整率を16年度120%、17年度100%と算出するなどして、同学校法人に対する補助金を16年度2億5593万余円、17年度2億6089万余円と算定していた。
 しかし、上記C研究科等の特許の申請件数及び取得件数は、教員等が特許を出願した件数であり、当該大学が出願した件数ではなかった。
 したがって、「特許の申請の有無」及び「特許の取得の有無」について、これらを無しとして調整率を算出するとC研究科に対する調整率が16年度80%、17年度60%に下がるなどして、補助金が16年度1962万円、17年度1890万余円過大に交付されていた。

 このように、学校法人において、個人別表に記入されていない教員に係る科学研究費補助金採択件数を記入したり、当該大学ではなく教員等が出願した特許の申請件数及び取得件数を記入したりなどしていて、調整率が過大に算出されたため補助金が過大に算定されている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

ア 文部科学省において

(ア) 記入要領において、調整率の算出の基礎になる活動状況調書の数値等の記入方法が必ずしも明確でないこと
(イ) 活動状況調書の記入欄と記入要領とが明確に対応しておらず、記入に当たって誤解が生じやすくなっていること
(ウ) 学校法人に対して活動状況調書作成上の留意点に関する十分な指導を行っていないこと

イ 学校法人において

 教育研究活動状況に係る活動状況調書に記入した数値等が補助金の算定に反映されるという認識が十分でなく、記入要領を十分に理解せず活動状況調書を作成していたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、過大に交付されている補助金6349万円について返還措置を講じることとするとともに、補助金の算定が適正に行われるよう次のような処置を講じた。
ア 19年3月に、記入要領において、活動状況調書の記入方法を明確にする一方、同調書について、記入欄の改善を行い、誤りを生じやすい事項については注意書きを付すなどして、適切に記入できるものにした。
イ 19年度から日本私立学校振興・共済事業団が学校法人に補助金を交付することとなったことから、19年4月1日以降は同省の講じた処置を同事業団に継承し、以下の処置を講じさせた。

(ア) 19年5月に、私立大学等経常費補助金事務担当者研修会等において、調整率を用いる補助項目等について補助する額の算出が適正に行われるよう、活動状況調書作成上の留意点について、学校法人に周知した。
(イ) 19年9月に、ホームページの補助金申請用の「電子窓口」を通じ活動状況調書を作成するときの具体的な注意点やポイント等を学校法人に周知した。

 43学校法人  栴檀学園、東北学院、東北芸術工科大学、晴川学舎、足利工業大学、学文館、獨協学園、青山学院、大妻学院、学習院、五島育英会、工学院大学、國學院大學、国士舘、駒澤大学、上智学院、成蹊学園、大乗淑徳学園、大東文化学園、中央大学、東京医科大学、東京農業大学、日本医科大学、明治学院、明星学苑、明治薬科大学、田村学園、文京学園、桐蔭学園、岐阜済美学院、名古屋女子大学、愛知医科大学、龍谷大学、大阪工大摂南大学、大阪産業大学、塚本学院、広島国際学院、安田学園、福山大学、広島文化学園、四国大学、村崎学園、高知工科大学