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労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(31) 労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目
労働保険特別会計(徴収勘定)
 
(款)保険収入
 (項)保険収入
部局等
17労働局
保険料納付義務者
徴収不足があった事業主数 364事業主
徴収過大があった事業主数 175事業主
徴収過不足額
徴収不足額
徴収過大額
346,818,107円
95,273,282円
(平成16年度〜19年度)
(平成16年度〜19年度)

1 保険料の概要

(1) 労働保険

 労働保険は、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険を総称するものである。このうち、〔1〕労災保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対する療養補償給付等を行う保険であり、原則として、事業所に使用されるすべての労働者が対象となる。また、〔2〕雇用保険は、労働者の失業等に対する失業等給付、雇用安定事業等を行う保険であり、常時雇用される一般労働者のほか、事業所で雇用されるいわゆるパートタイム労働者等のうち1週間の所定労働時間が20時間以上で引き続き1年以上雇用されることが見込まれるなどの要件を満たす労働者などが被保険者となる。

(2) 保険料の徴収

 保険料は、〔1〕労災保険分については事業主が負担し、〔2〕雇用保険分については、失業等給付に充てる部分を労働者と事業主とが折半して負担し、雇用安定事業等に充てる部分を事業主が負担して、〔1〕と〔2〕のいずれも事業主が納付することとなっている。
 保険料の納付は、原則として次のとおり行われることとなっている。
ア 毎年度の初めに、事業主は、都道府県労働局に対し、その年度の労働者に支払う賃金総額の見込額に保険料率(注) を乗じて算定した概算保険料を申告し、納付する。
イ 次の年度の初めに、事業主は、都道府県労働局に対し、前年度に実際に支払った賃金総額に基づいて算定した確定保険料申告書を提出する。
ウ 都道府県労働局は、この申告書の記載内容を審査し、その結果に基づき保険料の過不足分が精算される。
 この労働保険の保険料の平成18年度の収納済額は4兆0576億余円に上っている。

 保険料率  労災保険率と雇用保険率に分かれており、それぞれ次のとおりである。
〔1〕 労災保険率は、労災保険の適用を受けるすべての事業の過去3年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率等を考慮して定められており、事業の種類ごとに平成16、17両年度の場合は最低1000分の5から最高1000分の129、18年度以降の場合は最低1000分の4.5から最高1000分の118となっている。
〔2〕 雇用保険率は、失業等給付、雇用安定事業等に要する費用を考慮して定められており、16年度の場合は1000分の17.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の19.5、建設の事業は1000分の20.5)、17、18両年度の場合は1000分の19.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の21.5、建設の事業は1000分の22.5)、19年度の場合は1000分の15(ただし、農林、水産等の事業は1000分の17、建設の事業は1000分の18)となっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 近年、事業所で雇用されるいわゆるパートタイム労働者等が増加していることから、本院は、全国47労働局のうち、17労働局において会計実地検査を行い、管内の事業主のうち、これらの労働者を雇用している割合が高いと思われる事業主等775事業主を選定し、合規性等の観点から、当該事業主の雇用する労働者の保険加入が適正になされているかなどに着眼して、16年度から19年度までの間における各労働局の保険料の徴収の適否について、事業主から提出された確定保険料申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 徴収過不足の事態

 検査したところ、上記775事業主のうち、364事業主について徴収額が346,818,107円不足しており、175事業主について徴収額が95,273,282円過大となっていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主が確定保険料申告書を提出するに当たり、制度を十分理解していなかったり、計算誤りをしたりなどしていて、賃金総額の記載が次のように事実と相違するなどしていたのに、前記の17労働局において、これに対する調査確認が十分でなかったことによると認められる。
ア 雇用保険分の保険料の算定において、同保険の加入要件を満たすパートタイム労働者等を保険加入させていなかったため、その賃金が算入漏れとなっていた。
イ 労災保険分の保険料の算定において、事業所に使用されるすべての労働者に支払われた賃金により保険料を算定すべきところ、パートタイム労働者等に支払われた賃金が算入漏れとなっていた。
 上記アの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A労働局では、小売業を営む事業主Bから、平成17年度の労働保険の保険料について、雇用保険の被保険者95人に対して支払った賃金総額は327,627千円、その雇用保険料は6,388,726円であるとした確定保険料申告書の提出を受け、これに基づき、当該雇用保険料額を徴収していた。
 しかし、事業主Bは、雇用保険加入要件を満たすパートタイム労働者等40人を雇用保険に加入させておらず、確定保険料申告書において、これらの者に対して支払った賃金118,321千円を賃金総額に算入していなかった。このため、雇用保険料2,307,260円が徴収不足となっていた。

 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は還付決定の処置が執られた。これらの徴収不足額及び徴収過大額を都道府県労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
本院の調査に係る事業主数
徴収不足があった事業主数
徴収過大があった事業主数
徴収不足額
徴収過大額(△)
 
 
 
千円
北海道
52
31
15
22,998
△2,560
山形
32
13
6
4,245
△564
埼玉
50
18
9
20,868
△2,218
東京
118
58
28
97,263
△13,438
神奈川
80
36
23
60.376
△41.156
富山
27
13
3
4,216
△831
山梨
32
24
5
13,995
△357
長野
44
17
12
4,331
△3,067
岐阜
35
14
11
8,213
△7,008
静岡
46
26
8
18,936
△2,869
愛知
39
19
7
13,960
△2,349
滋賀
33
18
7
14,292
△1,342
京都
48
15
9
8,620
△2,703
大阪
79
39
18
45,765
△7,342
岡山
12
8
1
3,933
△490
熊本
29
10
10
2,705
△6,627
宮崎
19
5
3
2,093
△344
775
364
175
346,818
△95,273