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  • 予算経理

超過勤務手当を不適正に支給するなどしていたもの


(32)−(53) 超過勤務手当を不適正に支給するなどしていたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)都道府県労働局
(項)都道府県労働局
平成11年度は、
 
 
平成12年度は、
 
 
 
(組織)労働保護官署
(組織)職業安定官署
 
(組織)都道府県労働局
 
 
(項)労働保護官署
(項)職業安定官暑
 
(項)都道府県労働局
(項)労働官署
労働保険特別会計
 
 
 
(労災勘定)
(雇用勘定)
 
(徴収勘定)
(項)業務取扱費
(項)業務取扱費
(項)雇用安定等事業費
(項)業務取扱費
部局等
22労働局(平成11年度は都道府県、都道府県労働基準局及び都道府県女性少年室)
不適正な支出の概要
(1)職員に対する超過勤務手当
(2)職員に対する旅費
不当と認められる金額
(1)超過勤務手当の不適正支給額
  158,393,474円(平成11年度〜18年度)
(2)旅費の不正支払額
    591,700円(平成12年度〜15年度)
計 158,985,174円

1 業務の概要

(1) 都道府県労働局の概要

 都道府県労働局(平成11年度以前は都道府県、都道府県労働基準局及び都道府県女性少年室。以下「労働局」という。)は、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることなどを任務としており、その一環として、事業場に対する監督指導、職業紹介、高年齢者の雇用の確保等の業務を行っている。そして、その所掌事務の一部については、管下の公共職業安定所及び労働基準監督署(以下、これらを「安定所等」という。)に行わせている。

(2) 労働局における支出の概要

 労働局(管下の安定所等を含む。以下同じ。)では、上記業務の実施に当たり、一般会計並びに労働保険特別会計の労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定において毎年度多額の予算を執行している。このうち、職員が正規の勤務時間を超えて勤務(以下「超過勤務」という。)した場合に支給される手当については超過勤務手当、職員の出張に係る経費については職員旅費の予算科目からそれぞれ支出している。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、18年3月までに、11年度から16年度までの間に支給された超過勤務手当を対象として、全国47労働局のうち22労働局(注1) において会計実地検査を行い、合規性等の観点から、超過勤務の事実がないのに超過勤務を行ったこととして超過勤務手当が支給されていないかなどに着眼し、超過勤務等命令簿、労働局の庁舎警備を行っている警備会社の機械警備記録(以下「機械警備記録」という。)等の書類により検査した。そして、当該検査の結果等については、14労働局(注2) において超過勤務手当が不適正に支給されていた事態を平成17年度決算検査報告に掲記した。
 18年4月以降、26労働局(注3) において、合規性等の観点から、会計実地検査を行い、このうち17年次に会計実地検査を行った25労働局(注4) については、機械警備記録による検査を行っていないことから、18年3月までに検査した22労働局における検査と同様の着眼点及び方法により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

 22労働局  岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、群馬、千葉、神奈川、新潟、石川、福井、長野、静岡、愛知、滋賀、和歌山、鳥取、島根、広島、香川、高知各労働局
 14労働局  宮城、秋田、福島、栃木、群馬、神奈川、新潟、石川、長野、愛知、鳥取、島根、香川、高知各労働局
 26労働局  北海道、青森、茨城、埼玉、東京、富山、山梨、長野、岐阜、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、岡山、山口、徳島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各労働局
 25労働局  北海道、青森、茨城、埼玉、東京、富山、山梨、岐阜、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、岡山、山口、徳島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各労働局

(2) 超過勤務手当の不適正支給の事態等

 検査したところ、11年度から18年度までの間に、職員が超過勤務命令に基づき超過勤務に従事したとして支給された超過勤務手当のうち、超過勤務等命令簿に記録された超過勤務命令の終了時刻が各庁舎の機械警備による庁舎警備の開始時刻を超えているものが、22労働局(注5) において、計73,738件、74,727時間(計140,870,535円)見受けられた。
 これらの超過勤務手当は、機械警備による庁舎警備が開始された後も一部の職員が各庁舎において超過勤務に従事していたとして支給されていたものである。
 しかし、各庁舎の機械警備は、当日の最終退庁者により庁舎等の施錠が行われる際に開始されるものであるから、機械警備による庁舎警備が開始された時刻を超えて職員が各庁舎において超過勤務に従事していたとは認められない(以下、このような超過勤務等命令簿に記録された超過勤務命令の終了時刻が機械警備による庁舎警備の開始時刻を超えているのに、当該超過時間について職員に超過勤務手当が支給されている事態を「超過勤務等命令簿と機械警備記録の不整合」という。)。
 上記のような事態が見受けられたことから、22労働局の職員等計13,560人から、各年度を通じて支給された超過勤務手当の額の過不足の有無を聴取するなどして更に検査した結果(以下「聴取の結果」という。)、11年度から18年度までの間に、延べ613人について、計28,184,301円の超過勤務手当が過大に支給されていた。
 上記の2事態で重複している分を整理すると、11年度から18年度までの間に、超過勤務手当計158,393,474円が関係法令等に違反して不適正に支給されており、不当と認められる。

 22労働局  北海道、青森、茨城、埼玉、東京、山梨、長野、岐阜、大阪、兵庫、奈良、岡山、山口、徳島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各労働局

 また、上記のほか、岡山労働局管下の児島公共職業安定所及び山口労働局管下の7公共職業安定所(注6) では、12年度から15年度までの間に、虚偽の内容の旅行命令簿、旅費請求書等を作成するなどし、出張の事実がないのに職員を出張させたこととして、旅費計58件、591,700円を不正に支払い、これを別途に経理するなどしていた。このような事態は、会計法令等に違反し、著しく適正を欠いていて不当と認められる。

 山口労働局管下の7公共職業安定所  山口、宇部、防府、萩、徳山、岩国、柳井各公共職業安定所

 なお、18年12月に実施した長野労働局に対する会計実地検査において、本院が一部の安定所等における超過勤務等命令簿と機械警備記録の不整合の事態について指摘すると、同労働局では、その直後に、同労働局長が各安定所等において保有する当該不整合の事態に関する文書を廃棄するよう指示していたなどの事実が判明している。
 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。

ア 厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省)において

(ア) 各労働局の予算執行に対する実態把握が不十分であり、また、その適正な執行に十分注意を払っていなかったこと
(イ) 会計経理の適正化、公務員倫理の徹底及び綱紀の保持を図るなどの指導監督が著しく欠けていたこと

イ 前記の22労働局において

(ア) 予算の執行は会計法令等の定めるところに従い適正に行わなければならないとの認識に著しく欠けていたこと
(イ) 労働局の内部及び安定所等に対する統制が十分機能していなかったこと
(ウ) 超過勤務手当はその支給に関する法令等の定めるところに従い各職員ごとに適正に算定した額を支給しなければならないとの認識に著しく欠けていたこと

 前記の超過勤務手当の不適正支給の事態等を各労働局ごとに示すと、次のとおりである。

 
労働局名
超過勤務手当ての不適正支給
旅費の不正支払(円)
合計(円)
年度
不適正支給額(円)
超過勤務等命令簿と機械警備記録の不整合
聴取の結果
件数
時間
金額(円)
延べ人数
過大支給額(円)
(32)
北海道
平成11〜18
6,700,689
2,764
2,726
4,969,206
28
2,132,276
6,700,689
(33)
青森
11〜18
2,087,461
557
228
427,710
38
1,694,867
2,087,461
(34)
茨城
16
384,455
121
171
384,455
384,455
(35)
埼玉
11〜18
3,553,825
846
751
1,812,316
24
1,747,723
3,553,825
(36)
東京
11〜17
41,147,160
21,370
18,704
40,555,551
16
655,949
41,147,160
(37)
山梨
11〜17
12,342,840
5,842
6,618
11,851,858
29
720,617
12,342,840
(38)
長野
12〜16
840,309
471
456
696,232
4
270,443
840,309
(39)
岐阜
12、14〜17
83,750
69
46
83,750
83,750
(40)
大阪
11〜18
7,108,859
3,082
2,694
5,867,394
27
1,274,693
7,108,859
(41)
兵庫
17、18
200,177
93
26
66,245
44
191,083
200,177
(42)
奈良

11、12、16〜18

762,442
496
421
762,442
12
123,965
762,442
(43)
岡山
13〜15
3,969,266
1,111
1,458
3,969,266
437,410
4,406,676
(44)
山口
11〜17
2,860,048
426
342
594,924
17
2,265,124
154,290
3,014,338
(45)
徳島
11〜18
565,912
604
345
565,912
565,912
(46)
愛媛
11〜17
4,050,433
2,367
1,671
3,421,394
25
860,360
4,050,433
(47)
福岡
13、15
344,567
346
208
344,567
344,567
(48)
佐賀
12〜17
4,021,207
2,253
1,986
3,862,828
36
1,063,606
4,021,207
(49)
長崎
13〜18
1,073,787
105
83
200,089
17
873,698
1,073,787
(50)
熊本
11〜18
9,333,690
3,573
3,600
7,624,933
28
1,929,671
9,333,690
(51)
宮崎
11〜16
29,010,736
14,341
13,995
28,667,687
165
7,695,224
29,010,736
(52)
鹿児島
12〜17
12,793,347
4,372
4,315
9,001,210
96
4,434,599
12,793,347
(53)
沖縄
13〜18
15,158,514
8,529
13,871
15,140,566
7
250,403
15,158,514
 
合計
 
158,393,474
73,738
74,727
140,870,535
613
28,184,301
591,700
158,985,174