会計名及び科目
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一般会計
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(組織)厚生労働本省
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(項)厚生労働本省
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部局等
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厚生労働本省
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契約名
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労働関係調査委託(平成13年度〜18年度)
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契約の概要
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労働情勢一般に関する動向の調査等
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契約の相手方
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労働問題に精通した者(平成13年度〜18年度 計13名)
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支払額
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177,504,000円(平成13年度〜18年度)
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不適正支払額
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177,504,000円(平成13年度〜18年度)
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厚生労働省(以下「本省」という。)では、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)第4条等の規定に基づき、労働組合その他労働に関する団体に係る連絡調整、労働関係の調整等に関する事務(以下「労政事務」という。)を所管している。
そして、本省では、労政事務の一環として、労働問題に精通した者に対し、労働情勢一般に関する動向の調査等を委託する労働関係調査委託事業(以下「調査委託事業」という。)を実施している。
調査委託事業に係る委託調査の実施及び調査委託費の交付、精算等の手続は、労働関係調査委託費交付要領(以下「交付要領」という。)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 本省では、各年度の開始前に、調査委託事業を委託するのに適当と思料される労働問題に精通した者を受託者として選定した上、各受託者に対し、新年度における調査委託事業の実施について委託する旨を文書をもって通知する。
〔2〕 本省では、所定の委託契約書により、各受託者との間で、当年度における調査委託事業の実施について委託契約を締結し、所定の調査委託費を交付する。
〔3〕 受託者は、調査委託事業に係る調査の結果収集した情報(以下「収集情報」という。)については、適宜の方法により、速やかに本省に直接報告するとともに、後日、文書により報告する。
〔4〕 受託者は、委託期間が終了したときは、速やかに精算報告書を作成し、本省にこれを提出して調査委託費を精算する。
また、委託契約書によると、受託者は、委託費の出納管理に当たっては、出納簿を作成し、必要書類を整え、委託調査に要した費用の出納を明らかにするものとされている。
平成13年度から18年度までの間における調査委託費の予算・決算額及び受託者数の推移は、次表のとおりとなっている。
年度
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予算額
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補正予算額
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受託者数
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決算額
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平成
13
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円
60,378,000
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円
53,189,000
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人
10
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円
48,000,000
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14
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41,478,000
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37,124,000
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9
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37,124,000
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15
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41,478,000
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37,124,000
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9
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37,124,000
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16
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41,421,000
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37,076,000
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9
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37,076,000
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17
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39,545,000
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35,481,000
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8(4)
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15,680,000
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18
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9,299,000
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8,662,000
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4
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2,500,00
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計
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233,599,000
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208,656,000
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実数13名
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177,504,000
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本院は、本省において、13年度から18年度までの間に受託者に支払われた調査委託費を対象として、合規性等の観点から、その会計経理が適正に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行い、委託契約書等の書類により検査した。そして、18年7月の会計実地検査において適正でないと認められる事態があったことから、更に本省に対し調査、報告及び関係資料の提出を求めるなどして検査した。
検査の結果、次のような事態が見受けられた。
ア 調査委託費の出納及び使途の状況等について
前記のとおり、委託契約書によると、受託者は、出納簿を作成し、必要書類を整え、委託調査に要した費用の出納を明らかにするものとされている(以下、受託者に作成・整備が義務付けられているこれらの書類を「出納関係書類」という。)。
しかし、18年7月及び19年3月の本省会計実地検査の結果、本省では、受託者が調査委託費を受領した旨の受領書等については保有していたものの、調査委託費の交付、精算等に当たり、受託者の出納関係書類の作成・整備の状況等については確認したことがなく、また、これらの関係書類(写しを含む。)の提出を受けたこともなかったことが判明した。
そこで、本省を通じ、13年度から18年度までの間の受託者13名のうち既に死亡している1名を除く12名(実数)に対し、調査委託費の出納及び使途の状況、出納関係書類の作成・整備の状況その他調査委託事業の実施状況等に関する聴き取り調査を実施するなどして検査した。
その結果、いずれの受託者も、交付された調査委託費についてはその全額を使用し、収集情報について報告していたとする一方で、出納関係書類については一切作成・整備したことがない旨を回答した。
以上のことから、各受託者における調査委託費の出納及び使途の状況、調査委託事業の実施状況等について、これを出納関係書類等により確認することはできなかった。
イ 収集情報に関する報告等について
前記のとおり、委託契約書及び交付要領によると、受託者は、収集情報については、適宜の方法により、速やかに本省に直接報告するとともに、後日、文書により報告するものとされている。
しかし、前記アの本省会計実地検査及び聴き取り調査の結果、本省では、収集情報については、各受託者から直接報告を受けていたとしているものの、文書による報告は受けていなかった。
また、前記アの会計実地検査時に、本省において各受託者から収集情報について直接報告を受けたとしている事項の具体的な内容等を記録した資料(以下「記録資料」という。)の保有状況等についても併せて検査したところ、本省では、ごく一部を除き、そのような記録資料を保有していなかった。
以上のことから、各受託者における収集情報に関する報告の有無等、調査委託事業の実施状況等について、これを記録資料により確認することはほとんどできなかった。
上記ア及びイのような状況から、本省では、出納関係書類、記録資料等により、各受託者における調査委託費の出納及び使途の状況、収集情報に関する報告の有無等の状況その他調査委託事業の実施状況について十分に把握して、必要かつ適切な審査等をすることのないまま、調査委託費の交付、精算等を行っていたと認められた。
このように、調査委託事業については、調査委託費の交付、精算等に係る所要の審査が行われていないなどのため、調査委託費の出納及び使途、収集情報の報告状況等について十分確認できない状況となっており、13年度から18年度までの間に支払われた調査委託費計177,504,000円に係る会計経理が著しく適正を欠いていて不当と認められる。このような事態が生じていたのは、本省において、調査委託事業の実施及び調査委託費の交付、精算等に当たり、適正な会計経理についての認識が十分でなかったことによると認められる。
なお、上記の事態を踏まえ、本省では、調査委託事業の実施に当たっての会計経理の適正性確保の必要性、近年における社会情勢及び労働情勢の変化の下におけるその委託事業としての存続の適否ないし必要性等の諸事情を勘案した結果、18年度限りで調査委託事業を廃止した。