会計名及び科目
|
一般会計
|
(組織)厚生労働本省
|
(項)職業転換対策事業費
|
部局等
|
厚生労働本省
|
||
契約名
|
地域労使就職支援事業委託(平成15年度〜17年度)
|
||
契約の概要
|
求人・求職ニーズ調査、各種の就職支援事業及び地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業の実施
|
||
契約の相手方
|
17機構
|
||
契約時期等
|
平成15年4月ほか 随意契約
|
||
支払額
|
1,896,856,904円
|
(平成15年度〜17年度)
|
|
過大になっている支払額
|
47,361,171円
|
(平成15年度〜17年度)
|
厚生労働本省(以下「本省」という。)では、地域の労使団体が協力し、労使の創意工夫により就職支援のための事業を効果的に行うことにより、地域の雇用の改善を図ることを目的として各都道府県に設置された都道府県地域労使就職支援機構(以下「機構」という。)に対し、地域労使就職支援事業(以下「委託事業」という。)の実施を委託している。
委託事業の内容は、求人・求職ニーズ調査、各種の就職支援事業及び地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業の実施となっている。
平成14年12月の政労使雇用対策会議において「雇用問題に関する政労使合意」が成立し、労使団体は「相互理解に立って経営の安定と雇用の維持・確保に一致協力して取り組む」こととされた。そして、各都道府県に、都道府県レベルの民間の経営者団体及び労働者団体を構成員とした機構が設立され、国は、機構に対し、15年度から委託事業の実施を委託し、効果的な地域の雇用改善を図ることとした。
機構には、委託事業に関する事務を行うために事務局が設置されており、当該事務局には、事業の企画及び実施並びに関係行政機関及び関係団体との連絡調整等に当たる者としてコーディネーターが置かれている。
委託事業に係る委託費の交付、精算等の手続は、地域労使就職支援事業委託要綱(平成15年3月厚生労働事務次官通知)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 本省は、委託事業の実施に当たり、機構から事業実施計画書の提出を受け、その内容を審査し、適当と認めるときは、当該機構との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕 機構は、委託事業が終了したときは、事業の成果を記載した地域労使就職支援事業実施結果・精算報告書(以下「精算報告書」という。)を本省に提出する。
〔3〕 本省では、機構から提出された精算報告書の内容を審査し、適当と認めるときは委託費の額を確定し、精算する。
委託費の対象経費は、〔1〕委託事業に従事するコーディネーターや事務補助者の人件費(通勤手当、超過勤務手当等は除く。)、旅費、物品購入費、事務所借料等の管理費、〔2〕各種セミナーの実施に係る会場費、講師謝金、テキスト・ポスター等の作成費、広告料等の事業費となっている。
そして、15年度から17年度までの間に、本省において機構から精算報告書の提出を受け、これに基づき確定した委託費の支払額は、計6,148,119,847円となっている。
本院は、本省等において会計実地検査を行い、15年度から17年度までの間に22機構(注1) に支払われた委託費を対象として、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に使用されているかに着眼し、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省等に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
本省では、17機構(注2)
が15年度から17年度までの間に実施した委託事業について、各機構から提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計1,896,856,904円と確定し、精算していた。
しかし、17機構では、委託費から、不正な支払を行ってこれを別途に経理したり、懇親会に係る経費を支払ったりするなどして、計47,361,171円を委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。
これを態様別に示すと、次のとおりである。
ア 業者に水増し請求を行わせ、委託費から業者に支払った代金の一部を不正に返金させ、これを別途に経理して委託事業の目的外の用途に使用するなどしていたもの
4機構 7,013,326円
A機構では、平成17年度に、チラシ等の印刷に係る代金として2,949,555円を委託費から印刷業者に支払っていた。しかし、実際には、同機構では印刷代金に1,000,000円を水増しして当該業者に請求させた上、当該水増し代金を当該業者から協賛金の名目で不正に返金させていた。また、同機構では、調査票等を郵送するために郵券821,460円を委託費から購入したとしていたが、実際には当該郵券は購入していなかった。
このように、A機構では、業者に水増し請求等を行わせるなどして、15年度から17年度までの間に、委託費から計5,426,937円を不正に支払うなどし、これによりねん出した資金を別途に経理して、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。
イ 職員の懇親会に係る飲食費、土産品代等を委託費から支払っていたもの
12機構 4,395,247円
B機構では、平成15年度に、セミナーの開催に係る会場費を2,376,847円であるとし、これを委託費から支払っていたが、この会場費の中には、委託事業の対象外の経費であるセミナーの打合せ等に係る懇親会費196,278円が含まれていた。
B機構では、このように会場費等に懇親会に係る経費を含めて支払い、15年度から17年度までの間に、計603,698円を委託事業の目的外の用途に使用していた。
ウ 機構が使用するコピー機のリース料を支払ったこととして、実際には機構以外の団体が使用したコピー機のリース料に充てたり、コーディネーター等に対し旅費を支払ったこととして、実際には委託事業では認められていない通勤手当を支給したりするなどし、委託費から委託事業の対象外の経費を支払うなどしていたもの
13機構 22,521,099円
エ 機構が使用する事務所の借料について、適正な単価を上回る単価で支払額を算定したり、コーディネーターに対する謝金について、勤務の実態が認められない日も含めて支払額を算定したりするなどしていて、委託費から借料・謝金等を過大に支払っていたもの
9機構 10,175,389円
オ 前年度に生じた経費を当該年度の経費として委託費から支払っていたもの
3機構 3,256,110円
したがって、次表のとおり、17機構が15年度から17年度までの間に実施した委託事業に係る適正な委託費の額は計1,849,495,733円となり、前記の委託費の支払額計1,896,856,904円との差額計47,361,171円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、機構において、委託事業の適正な執行及び委託費の適正な会計経理に関する認識が十分でなく、事実と異なる内容の精算報告書を作成して本省に提出するなどしていたこと、また、本省において、精算報告書の内容の審査が十分でないまま委託費の額を確定していたことなどによると認められる。
22機構 北海道、青森県、茨城県、群馬県、千葉県、東京都、富山県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都、大阪府、兵庫県、奈良県、岡山、山口、香川県、長崎県各地域労使就職支援機構、福岡県、大分県両労使就職支援機構及び沖縄県労使就職促進支援機構
|
|
17機構 青森県、茨城県、群馬県、千葉県、東京都、富山県、山梨県、岐阜県、静岡県、京都、大阪府、兵庫県、奈良県、香川県、長崎県各地域労使就職支援機構、大分県労使就職支援機構及び沖縄県労使就職促進支援機構
|
年度
|
委託費の支払額
|
適正な委託費の額
|
過大な支払額
|
平成
15
|
679,566,312
|
663,958,977
|
15,607,335
|
16
|
697,865,766
|
678,867,500
|
18,998,266
|
17
|
519,424,826
|
506,669,256
|
12,755,570
|
計
|
1,896,856,904
|
1,849,495,733
|
47,361,171
|