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地域求職活動援助事業等に係る委託事業の実施に当たり、委託費から不正な支払を行い、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(56)−(72) 地域求職活動援助事業等に係る委託事業の実施に当たり、委託費から不正な支払を行い、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目
一般会計
労働保険特別会計
 
(組織)厚生労働本省
(労災勘定)
(雇用勘定)
(項)職業転換対策事業費
(項)労働福祉事業費
(項)雇用安定等事業費
部局等
17労働局
契約名
地域求職活動援助事業等10事業に係る委託(平成13年度〜18年度)
契約の概要
地域内に所在する事業所に係る求人情報の収集・提供、就職を容易にするための職業講習や企業説明会の実施等
契約の相手方
37団体
契約時期等
平成13年4月ほか 随意契約
支払額
1,888,451,066円
(平成13年度〜18年度)
過大になっている支払額
117,518,265円
(平成13年度〜18年度)

1 委託事業の概要

(1) 委託事業の概要

 都道府県労働局(以下「労働局」という。)では、地域の特性に即した雇用構造の改善、働きやすい快適な職場環境の形成等を図ることを目的として、都道府県内の商工会議所、経営者協会、労働基準協会等の団体に対し、地域求職活動援助事業、快適職場形成促進事業等(注1) (以下、これらを合わせて「委託事業」という。)の実施を委託している。
 このうち、地域求職活動援助事業は、地域内に所在する事業所の求人情報の収集・提供、就職を容易にするための職業講習や事業所の業務内容についての理解を深めるための企業説明会等を実施するものである。また、快適職場形成促進事業は、快適な職場環境の形成についての普及啓発を行うとともに、事業場から申請された快適職場推進計画の認定に係る技術的審査等を実施するものである。

 地域求職活動援助事業、快適職場形成促進事業等  地域求職活動援助事業、快適職場形成促進事業、65歳雇用導入プロジェクト(平成16年度以前は65歳継続雇用達成事業)、地域林業雇用改善促進事業(15年度以前は地域求職活動援助事業(地域林業雇用改善促進事業))、若年者地域連携事業、地域高齢者能力活用職域開発支援事業、若年労働者の職場定着支援事業、エイジフリー・プロジェクト地域普及啓発事業、ジュニア・インターンシップ推進事業及びインターンシップ受入企業開拓事業


(2) 委託費の交付、精算等の手続

 委託事業に係る委託費の交付、精算等の手続は、各事業の委託要綱等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 労働局は、委託事業の実施に当たり、受託者から事業実施計画書の提出を受け、その内容を審査し、適当と認めるときは、当該受託者との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕 受託者は、委託事業が終了したときは、事業の成果を記載した事業実施結果・精算報告書(以下「精算報告書」という。)を労働局に提出する。
〔3〕 労働局では、受託者から提出された精算報告書の内容を審査し、適当と認めるときは委託費の額を確定し、精算する。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、27労働局(注2) において会計実地検査を行い、13年度から18年度までの間に商工会議所等の団体に支払われた委託費を対象として、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に使用されているかに着眼し、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 17労働局では、37団体(注3) が13年度から18年度までの間に実施した委託事業について、各団体から提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計1,888,451,066円と確定し、精算していた。
 しかし、37団体では、委託費から、〔1〕不正な支払を行い、これを別途に経理するなどしたり、〔2〕委託事業の対象外の経費を支払ったり、〔3〕謝金、旅費、借料等を過大に支払ったり、〔4〕翌年度の委託事業に係る経費を支払ったりするなどして、計117,518,265円を委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。
 したがって、次表のとおり、17労働局において、37団体が13年度から18年度までの間に実施した委託事業に係る適正な委託費の額は計1,770,932,801円となり、前記の委託費の支払額計1,888,451,066円との差額計117,518,265円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。

表 地域求職活動援助事業等10事業における過大な支払額
(単位:円)
 
労働局名
委託先数
委託事業名
年度
委託費の支払額
適正な委託費の額
過大な支払額
摘要
(56)
北海道
3団体
快適職場形成促進事業等
平成13〜17
153,207,953
151,683,380
1,524,573
〔2〕〔4〕
(57)
茨城
3団体
若年者地域連携事業等
14〜18
163,462,758
158,822,155
4,640,603
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕
(58)
群馬
2団体
地域求職活動援助事業等
15〜18
120,989,229
117,580,521
3,408,708
〔3〕〔4〕
(59)
千葉
2団体
65歳雇用導入プロジェクト等
14〜16
85,767,159
82,290,310
3,476,849
〔1〕〔2〕〔3〕
(60)
東京
1団体
快適職場形成促進事業
13〜17
53,325,000
49,908,279
3,416,721
〔2〕
(61)
山梨
2団体
地域求職活動援助事業等
14〜17
88,191,784
80,766,681
7,425,103
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕
(62)
静岡
1団体
快適職場形成促進事業
13〜17
45,659,808
37,992,220
7,667,588
〔2〕〔3〕
(63)
大阪
2団体
地域求職活動援助事業等
14〜18
452,220,136
410,371,157
41,848,979
〔1〕〔3〕
(64)
兵庫
4団体
65歳雇用導入プロジェクト等
13〜18
146,772,693
126,241,879
20,530,814
〔2〕〔3〕〔4〕
(65)
岡山
3団体
地域求職活動援助事業等
14〜17
251,321,736
240,560,066
10,761,670
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕
(66)
山口
2団体
快適職場形成促進事業等
14〜17
18,479,115
16,624,885
1,854,230
〔2〕〔3〕
(67)
徳島
2団体
地域林業雇用改善推進事業等
14〜18
42,560,514
39,914,888
2,645,626
〔3〕
(68)
香川
2団体
65歳雇用導入プロジェクト等
14、15
17、18
32,796,635
29,461,883
3,334,752
〔3〕
(69)
福岡
3団体
65歳雇用導入プロジェクト等
14〜18
40,665,611
39,478,078
1,187,533
〔2〕〔3〕
(70)
熊本
1団体
快適職場形成促進事業
13〜17
51,596,000
50,886,697
709,303
〔2〕〔3〕
(71)
大分
3団体
地域求職活動援助事業等
14〜17
89,581,068
88,551,887
1,029,181
〔3〕
(72)
宮崎
1団体
地域林業雇用改善推進事業
14〜17
51,853,867
49,797,835
2,056,032
〔2〕〔3〕
 
17局
37団体
 
合計
1,888,451,066
1,770,932,801
117,518,265
 
(注)
 摘要欄の〔1〕〜〔4〕は、検査の結果の態様に対応する。


 上記の事態について、態様別に事例を示すと、次のとおりである。

〔1〕 委託費から不正な支払を行い、これを別途に経理するなどしていたもの

<事例1>

 A労働局では、平成14年度から17年度までの間に、B経営者協会に対し、地域求職活動援助事業、若年者地域連携事業等の実施を委託している。
 そして、同協会では、15年度及び17年度に、委託事業で使用するガイドブック等の印刷代金として計2,715,615円を委託費から印刷業者に支払っていた。
 しかし、実際には、同協会では、印刷代金に1,147,650円を水増しして当該業者に請求させた上、当該水増し代金を当該業者から協賛金の名目で不正に返金させ、これを別途に経理し、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。

<事例2>

 C労働局では、平成14年度から18年度までの間に、D商工会議所に対し、地域求職活動援助事業、65歳雇用導入プロジェクト等の実施を委託している。
 そして、同会議所では、委託事業で使用するリーフレット等の印刷物を郵送するために計26,630,490円分の郵券を委託費で購入し、これを当該印刷物の郵送に使用したとしていた。
 しかし、実際には、同会議所では、印刷物の発送部数を水増しするなどして、上記郵券のうち12,115,140円分を別途に管理し、これを会報の発送等、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。
 なお、同会議所では、総勘定元帳等を改ざんした上、これらの改ざん後の関係書類をC労働局及び本院に提示するなどして、上記の事態を隠ぺいしようとした。

〔2〕 委託費から委託事業の対象外の経費を支払っていたもの

<事例3>

 E労働局では、平成13年度から17年度までの間に、F労働基準協会連合会に対し、快適職場形成促進事業の実施を委託している。
 そして、同連合会では、年間を通して委託事業の業務に専念し、従事することを前提として常勤アドバイザーを置いており、その人件費として計27,032,888円を委託費から支払っていた。
 しかし、このアドバイザーは、委託事業以外の業務にも従事しており、上記の人件費には、当該委託事業以外の業務に係る人件費計5,315,153円が含まれていた。

〔3〕 委託費から謝金、旅費、借料等を過大に支払っていたもの

<事例4>

 G労働局では、平成14年度から17年度までの間に、H中小企業団体中央会に対し、地域求職活動援助事業の実施を委託している。
 そして、同中央会では、委託事業を実施するための事務所として、自らの事業を実施するために賃借している事務所と同じ建物の1室を賃借し、事務所借料として計9,331,560円を委託費から支払っていた。
 しかし、この借料は、同中央会が自らの事業を実施するための事務所の借料と比較して割高であり、使用面積等に基づき、適正と認められる借料の額を算定すると6,709,625円となることから、計2,621,935円が過大に支払われていた。

〔4〕 委託費から翌年度の委託事業に係る経費を支払うなどしていたもの

<事例5>

 I労働局では、平成15年度から18年度までの間に、J経営者協会に対し、地域求職活動援助事業及び65歳雇用導入プロジェクトの実施を委託している。
  そして、同協会では、15、16両年度に、委託事業で使用するリーフレット等の印刷代金として計1,774,500円を委託費から支払っていた。
 しかし、上記の印刷物は納品されておらず、同協会では、当該支払金を預け金として業者に保有させ、翌年度にこれを利用して、契約した印刷物とは異なる印刷物を納入させていた。

 このような事態が生じていたのは、受託者において、委託事業の適正な執行及び委託費の適正な会計経理に関する認識が十分でなく、事実と異なる内容の精算報告書を作成して労働局に提出するなどしていたこと、また、労働局において、精算報告書の内容の審査が十分でないまま委託費の額を確定していたことなどによると認められる。

 27労働局  北海道、青森、山形、茨城、群馬、千葉、東京、富山、山梨、岐阜、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、奈良、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄各労働局
 37団体  社団法人北海道労働基準協会連合会、社団法人北海道雇用開発協会、社団法人北海道造林協会、特定非営利活動法人雇用人材協会、土浦商工会議所、つくば市商工会、社団法人群馬県経営者協会、前橋商工会議所、船橋商工会議所、社団法人千葉県経営者協会、社団法人東京労働基準協会連合会、山梨県経営者協会、山梨県地域労使就職支援機構、社団法人静岡県労働基準協会連合会、東大阪商工会議所、関西経営者協会、兵庫県鉄工建設業協同組合、社団法人兵庫労働基準連合会、財団法人兵庫県雇用開発協会、財団法人兵庫県営林緑化労働基金、岡山県中小企業団体中央会、財団法人岡山県林業振興基金、社団法人岡山県雇用開発協会、社団法人山口県労働基準協会、社団法人山口県雇用開発協会、財団法人徳島県林業労働力確保支援センター、徳島県中小企業団体中央会、善通寺商工会議所、坂出商工会議所、福岡県経営者協会、福岡県中小企業団体中央会、社団法人福岡県労働基準協会連合会、社団法人熊本県労働基準協会、財団法人大分県総合雇用推進協会、社団法人大分県労働基準協会、大分県経営者協会及び社団法人宮崎県林業労働機械化センター