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委託事業の実施に当たり、非常勤職員等が委託事業に従事したとしている日数が年間を通じて委託事業に従事可能な日数を超過しているのに、当該超過日数についても人件費を支払っていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(73) 委託事業の実施に当たり、非常勤職員等が委託事業に従事したとしている日数が年間を通じて委託事業に従事可能な日数を超過しているのに、当該超過日数についても人件費を支払っていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目
一般会計
労働保険特別会計
 
(組織)厚生労働本省
(労災勘定)
(雇用勘定)
(項)職業転換対策事業費
(項)労働福祉事業費
(項)雇用安定等事業費
部局等
厚生労働本省、10労働局
契約名
(1)地域求職活動援助事業等8事業に係る委託(平成14年度〜17年度)
(2)インターンシップ受入企業開拓事業等2事業に係る委託(平成14年度〜17年度)
契約の概要
(1)地域内の事業所に係る求人情報の収集・提供、就職を容易にするための職業講習や企業説明会の実施等
(2)幅広いインターンシップ受入企業の開拓、大学等への受入企業に関する情報の提供、面談会の実施等
契約の相手方
(1)11経営者協会及び4地域労使就職支援機構
(2)東京経営者協会及び財団法人勤労者リフレッシュ事業振興財団(再委託先 13経営者協会)
契約時期等
(1)平成14年4月ほか 随意契約
(2)平成14年4月ほか 随意契約
支払額
(1) 980,442,803円(平成14年度〜17年度)
(2)2,159,557,978円(平成14年度〜17年度)
うち13経営者協会への再委託分
217,355,258円
計 3,140,000,781円
過大になっている支払額
(1) 36,221,130円
(2) 38,704,468円
計 74,925,598円
(平成14年度〜17年度)
(平成14年度〜17年度)
 

1 委託事業の概要

(1) 委託事業の概要

 厚生労働省では、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることなどを任務としており、その一環として、厚生労働本省(以下「本省」という。)自ら又は都道府県労働局(以下「労働局」という。)を通じ、以下のとおり、各種の事業の実施を各都道府県等に所在する経営者協会、各都道府県に設置されている地域労使就職支援機構、財団法人勤労者リフレッシュ事業振興財団に委託している。

ア 本省が経営者協会又は地域労使就職支援機構に委託している事業

(ア) 障害者雇用援助事業(経営者協会に委託)

 障害者の雇用の維持を図るため、障害者を雇用する企業の経営に関する相談等を実施する窓口の設置、障害者の出向・移籍のあっせん等を行うもの

(イ) 精神障害者の雇用に関する事業主向け相談支援事業(経営者協会に委託)

  精神障害者の雇用の促進を図るため、事業主向け相談窓口を設置し、相談窓口における応対、事業所訪問等を行うもの

(ウ) 地域労使就職支援事業(地域労使就職支援機構に委託)

 地域の労使団体が協力して、求人・求職ニーズの調査、離職予定者に対する早期の意向聴取、労使の連携による求人の確保等を行うもの

イ 労働局が経営者協会に委託している事業

(ア) 地域求職活動援助事業

 地域内に所在する事業所の求人情報の収集・提供、就職を容易にするための職業講習や事業所の業務内容について理解を深めるための企業説明会等を行うもの

(イ) 地域高齢者能力活用職域開発支援事業

 高齢者の能力を有効に活用できる職域開発に向けたアクションプランを策定し、広報活動等を実施しながら具体的な取組の推進等を行うもの

(ウ) ジュニア・インターンシップ推進事業

 事業所におけるジュニア・インターンシップ(注1) の実施の促進を図るため、周知・啓発活動、ジュニア・インターンシップの受入事業所の開拓等を行うもの

(エ) 若年者地域連携事業

 ジュニア・インターンシップの周知・広報やその受入事業所の開拓、若年者の採用を促すための広報、若年者採用に係る好事例の提供等を行うもの

(オ) 65歳雇用導入プロジェクト(平成16年度以前は65歳継続雇用達成事業)

 企業において65歳までの高年齢者雇用確保措置の円滑な導入を図るための実行計画を策定し、企業に対する周知・指導、相談等を行うもの

ウ 本省が団体に委託し、当該団体が事業の一部について更に経営者協会に再委託している事業

(ア) インターンシップ受入企業開拓事業

 この事業は、大学生等の職業意識の育成や企業側の学生採用意欲の喚起を図るため、幅広いインターンシップ受入企業の開拓、大学等への受入企業に関する情報の提供、面談会等を行うものである。そして、本省では、この事業の実施を東京経営者協会に委託しており、同協会では、東京都を除く各道府県内における事業については各道府県等の経営者協会に再委託している。

(イ) 勤労者リフレッシュ推進事業

 この事業は、リフレッシュ休暇制度を中小企業に普及促進するため、企業に対する啓発活動、ボランティア活動に関する情報提供、相談等を行うものである。そして、本省では、この事業の実施を勤労者リフレッシュ事業振興財団に委託しており、同財団では、そのうち当該事業の一部については、都府県の経営者協会に再委託している。

 これらの各委託事業では、各委託事業の委託要綱等に基づき、事業の実施に必要なコーディネーター、プロジェクトマネージャー、推進員等の非常勤職員等(以下「職員」という。)を置いている。

 ジュニア・インターンシップ  高校生又は中学生を対象に、在学中に生徒が就業体験を通じて自らの適性と職業とのかかわりを深く考える契機とするもの

(2) 委託費の交付、精算等の手続

 本省及び労働局における委託費の交付、精算等の手続は、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 受託者から事業実施計画書の提出を受け、その内容を審査し、適当と認めるときは、当該受託者との間で委託契約を締結し、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕 委託事業が終了したときは、受託者から委託事業費精算報告書(以下「精算報告書」という。)等の提出を受け、その内容を審査し、適当と認めるときは、委託費の額を確定し、委託費を精算する。
 また、インターンシップ受入企業開拓事業の再委託及び勤労者リフレッシュ推進事業の再委託についても、上記と同様に、受託者が再委託先から精算報告書等を提出させ、内容を審査し、適当と認めるときは、再委託による事業の実施に要した支払額を確定するなどして委託費を精算することとなっている。

(3) 委託事業における職員の人件費の支払

 委託事業における職員の人件費は、一人の職員が一つの委託事業に一日又は一箇月従事したことに対して支払われるものであり、人件費の支払に当たっては、所定の日額又は月額の単価に、委託事業に従事した日数又は月数を乗じて算定することとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、本省及び10労働局(注2) において会計実地検査を行った。そして、本省又は10労働局が14年度から17年度までの間に15経営者協会等(注3) (以下「15受託者」という。)に委託した地域求職活動援助事業等8事業(注4) (以下「8事業」という。)に係る委託費を対象として、合規性等の観点から、これらの事業を実施するために委嘱された職員に対する人件費が適正に支払われているかなどに着眼し、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省及び10労働局に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
 また、本省が14年度から17年度までの間に東京経営者協会又は勤労者リフレッシュ事業振興財団に委託して実施したインターンシップ受入企業開拓事業又は勤労者リフレッシュ推進事業に係る委託費のうち、両団体が更に13経営者協会(注5) (以下「13再委託先」という。)に再委託した事業(以下「再委託事業」という。)に係る委託費についても同様に検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 本省又は10労働局では、15受託者が14年度から17年度までの間に実施した8事業について、各団体から提出された精算報告書等に基づき、委託費の支払額を計980,442,803円と確定し、精算していた。また、本省では、東京経営者協会又は勤労者リフレッシュ事業振興財団が14年度から17年度までの間に実施したインターンシップ受入企業開拓事業又は勤労者リフレッシュ推進事業について、両団体から提出された精算報告書等に基づき、委託費の支払額を計2,159,557,978円と確定し、精算していた。そして、この確定額のうち、再委託事業に係る委託費の支払額については、計217,355,258円となっていた。
 しかし、15受託者及び13再委託先では、次のとおり、委託費の支払が過大となっていた。
 すなわち、15受託者及び13再委託先では、一部の職員について、複数の委託事業の職員としての職務を同一の者に委嘱していた。そして、これらの職員が各委託事業の職務に従事したとされている日数を合計すると、年間を通じて委託事業の職務に従事可能な日数(年間365日又は366日から土曜日、日曜日及び祝日等を除いた日数で、年間243日から246日。以下「年間従事可能日数」という。)を大幅に超過している状況となっていた。しかし、前記のとおり、各委託事業における人件費は、一人の職員が一つの委託事業に一日又は一箇月従事したことに対して支払われるものである。したがって、一人の職員が各委託事業に従事したとされている日数の合計が年間従事可能日数を超過している場合に、当該職員がこれらの委託事業にすべて従事していたとして当該超過日数についても人件費を支払うことは、適正を欠いていると認められる。
 このように、一人の職員が各委託事業に従事したとされている日数の合計が年間従事可能日数を超過しているのに、当該超過日数に対し人件費として支払われた委託費計74,925,598円(8事業分計36,221,130円、再委託事業分計38,704,468円)については、適正なものとは認められない。

(参考図) 各委託事業に従事したとされている日数と年間従事可能日数との関係

(参考図)各委託事業に従事したとされている日数と年間従事可能日数との関係

 したがって、次表のとおり、15受託者が14年度から17年度までの間に実施した8事業について、上記の適正とは認められない支払額を控除した委託費の額は計944,221,673円となり、委託費の支払額計980,442,803円との差額計36,221,130円が過大に支払われていた。また、同様に、東京経営者協会又は勤労者リフレッシュ事業振興財団が14年度から17年度までの間に実施したインターンシップ受入企業開拓事業又は勤労者リフレッシュ推進事業について、上記の適正とは認められない支払額を控除した委託費の額は計2,120,853,510円となり、委託費の支払額計2,159,557,978円との差額計38,704,468円が過大に支払われていた。
 このため、これら差額の合計額74,925,598円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。

表 地域求職活動援助事業等8事業、インターンシップ受入企業開拓事業及び勤労者リフレッシュ推進事業における過大な支払額
(単位:円)
年度
委託事業名
委託費の支払額
適正とは認められない支払額を控除した委託費の額
過大な支払額
平成
14
地域求職活動援助事業等8事業
123,369,510
119,734,910
3,634,600
インターンシップ受入企業開拓事業及び勤労者リフレッシュ推進事業
700,614,454
690,749,454
9,865,000
15
地域求職活動援助事業等8事業
368,931,201
356,724,752
12,206,449
インターンシップ受入企業開拓事業及び勤労者リフレッシュ推進事業
723,301,093
711,031,125
12,269,968
16
地域求職活動援助事業等8事業
273,999,081
263,807,420
10,191,661
インターンシップ受入企業開拓事業及び勤労者リフレッシュ推進事業
361,926,450
354,377,950
7,548,500
17
地域求職活動援助事業等8事業
214,143,011
203,954,591
10,188,420
インターンシップ受入企業開拓事業及び勤労者リフレッシュ推進事業
373,715,981
364,694,981
9,021,000
地域求職活動援助事業等8事業
980,442,803
944,221,673
36,221,130
インターンシップ受入企業開拓事業及び勤労者リフレッシュ推進事業
2,159,557,978
2,120,853,510
38,704,468
合計
3,140,000,781
3,065,075,183
74,925,598

<事例>

 A経営者協会では、平成14年度に、B労働局から地域求職活動援助事業の委託を受け、職員Cに職場体験就業を受け入れる企業の開拓等を行う推進員の職務を委嘱し、Cが当該委託事業に年間180日間従事したとして人件費計1,386,000円を委託費から支払っていた。また、同年度に、本省が東京経営者協会に委託したインターンシップ受入企業開拓事業について、A経営者協会では東京経営者協会から再委託を受け、Cにインターンシップを受け入れる企業の開拓等を行うコーディネーターの職務を委嘱し、Cが当該委託事業に年間計240日間従事したとして人件費計2,400,000円を委託費から支払っていた。
 この結果、Cが同年度において上記の両委託事業に従事したとされている日数は年間で計420日となり、同年度の年間従事可能日数である245日を175日超過していた。
 このような事態を踏まえ、それぞれ委託事業に従事したとして人件費を支払うことが適正とは認められない日数を算定すると、地域求職活動援助事業で75日、インターンシップ受入企業開拓事業で100日となり、両委託事業において人件費として支払われた委託費577,500円、1,000,000円、計1,577,500円が過大な支払となっていた。

 このような事態が生じていたのは、受託者において、再委託先から提出された精算報告書等の内容を十分に審査しないまま再委託に係る支払額を確定し精算していたこと、委託費の適正な会計経理に対する認識が十分でなかったため事実と異なる内容の精算報告書等を作成し本省又は労働局に提出していたこと、本省又は労働局において、これらの内容の審査が十分でないまま委託費の額を確定していたことなどによると認められる。

 10労働局  茨城、栃木、山梨、岐阜、大阪、兵庫、奈良、広島、香川、長崎各労働局
 15経営者協会等  山形県地域労使就職支援機構、社団法人茨城県経営者協会、社団法人栃木県経営者協会、栃木県地域労使就職支援機構、山梨県経営者協会、山梨県地域労使就職支援機構、社団法人岐阜県経営者協会、関西経営者協会、兵庫県経営者協会、尼崎経営者協会、奈良県経営者協会、広島県経営者協会、広島県地域労使就職支援機構、香川県経営者協会及び長崎県経営者協会
 地域求職活動援助事業等8事業  地域求職活動援助、障害者雇用援助、精神障害者の雇用に関する事業主向け相談支援、地域労使就職支援、地域高齢者能力活用職域開発支援、ジュニア・インターンシップ推進、若年者地域連携の各事業及び65歳雇用導入プロジェクト(平成16年度以前は65歳継続雇用達成事業)
 13経営者協会  社団法人山形県経営者協会、社団法人茨城県経営者協会、社団法人栃木県経営者協会、山梨県経営者協会、社団法人岐阜県経営者協会、関西経営者協会、兵庫県経営者協会、尼崎経営者協会、奈良県経営者協会、広島県経営者協会、山口県経営者協会、香川県経営者協会及び長崎県経営者協会

 これを部局別に示すと、次のとおりである。

部局名
年度
事業数
委託費の支払額
適正とは認められない支払額を控除した委託費の額
過大な支払額
 
 
 
本省
14〜17
5
2,450,307,639
2,402,464,895
47,842,744
茨城労働局
15
1
2,402,859
1,841,219
561,640
栃木労働局
14〜16
1
114,731,680
112,899,160
1,832,520
山梨労働局
15〜17
2
64,548,758
58,676,069
5,872,689
岐阜労働局
16、17
1
82,435,321
79,641,497
2,793,824
大阪労働局
15、16
1
149,234,588
146,597,481
2,637,107
兵庫労働局
14〜17
4
239,926,308
231,476,014
8,450,294
奈良労働局
15
1
4,195,016
3,702,856
492,160
広島労働局
14〜17
2
18,968,241
16,152,221
2,816,020
香川労働局
17
1
6,486,119
5,515,019
971,100
長崎労働局
17
1
6,764,252
6,108,752
655,500
 
 
3,140,000,781
3,065,075,183
74,925,598