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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(75) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定)
(項)失業等給付費
部局等
厚生労働本省(支給庁)
137公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方
393人
失業等給付金の支給額の合計
求職者給付
就職促進給付
246,899,912円
17,931,260円
264,831,172円
(平成14年度〜19年度)
(平成16年度〜18年度)
 
不適正支給額
求職者給付
就職促進給付
69,466,959円
17,931,260円
87,398,219円
(平成16年度〜19年度)
(平成16年度〜18年度)
 


1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者とし、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合などに、その生活及び雇用の安定を図るなどのため失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち、
(ア) 基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。
(イ) 特例一時金は、被保険者であって季節的に雇用される者等が失業した場合に支給される。

イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。

 受給資格者  被保険者が、離職し労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者


(3) 失業等給付金の支給

 上記の手当等は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。
ア 基本手当及び特例一時金については、受給資格者等から提出された失業認定申告書等に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認し、失業の認定を行った上、支給決定を行う。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47労働局の468公共職業安定所(平成19年3月末現在)のうち、24労働局管内の235公共職業安定所に係る会計実地検査を行い、14年度から19年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)のうち12,910人を選定し、合規性等の観点から、これらの受給者に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査したところ、24労働局の137公共職業安定所管内における14年度から19年度までの間の受給者393人に対する失業等給付金(支給額264,831,172円)のうち、87,398,219円が適正に支給されておらず、不当と認められる。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 136公共職業安定所管内の受給者389人に対する基本手当及び特例一時金(支給額246,899,912円)のうち、69,466,959円(基本手当68,721,759円、特例一時金745,200円)が適正に支給されていなかった。

 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職していながらその事実を失業認定申告書等に記載していないなどのため、同申告書等の内容が事実と相違するなどしていたのに、上記の136公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

イ 就職促進給付

 59公共職業安定所管内の受給者72人に対する再就職手当の支給額17,931,260円全額が適正に支給されていなかった。

 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、上記の59公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A公共職業安定所では、受給資格者Bから、平成17年6月から就職することとした失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の提出を受け、これに基づき、基本手当500,670円及び再就職手当300,402円の支給決定を行っていた。
 しかし、実際には、受給資格者Bは5月から就職していたことから、上記の基本手当の一部200,268円及び再就職手当300,402円、計500,670円が適正に支給されていなかった。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
公共職業安定所
本院の調査に係る受給者数
不適正受給者数
左の受給者に支給した失業等給付金
左のうち不適正失業等給付金
 
 
千円
千円
北海道
札幌
稚内
小計
等6
等2
434
61
21
2
11,865
588
12,454
4,131
588
4,720
山形
山形
山形
小計
等3
 
219
48
6
1
3,561
76
3,638
1,610
76
1,686
群馬
前橋
前橋
小計
等5
等4
184
86
11
7
9,130
1,862
10,992
1,851
1,862
3,713
埼玉
大宮
 
小計
等4
 
234
7
5,258
5,258
1,096
1,096
千葉
千葉
船橋
小計
等5
等2
282
55
6
2
3,391
264
3,656
1,896
264
2,160
東京
飯田橋
品川
小計
等12
等5
880
185
27
6
18,825
1,725
20,550
4,611
1,725
6,336
富山
富山
高岡
小計
等5
等2
328
36
12
2
11,127
716
11,844
817
716
1,534
山梨
甲府
鰍沢
小計
等3
 
262
18
11
1
8,355
131
8,486
3,890
131
4,021
長野
長野
長野
小計
等8
等4
582
98
33
6
24,145
1,686
25,831
4,104
1,686
5,791
岐阜
岐阜
岐阜
小計
等5
等5
395
177
11
5
4,985
737
5,723
1,353
737
2,091
静岡
浜松
三島
小計
等3
 
270
26
6
2
3,599
420
4,019
470
420
891
愛知
名古屋中
名古屋中
小計
等7
等7
369
169
22
11
14,711
3,107
17,818
6,454
3,107
9,561
滋賀
大津
彦根
小計
等5
 
484
36
11
1
7,894
149
8,043
2,153
149
2,302
京都
京都西陣
伏見
小計
等7
等2
389
48
21
2
10,683
427
11,111
5,163
427
5,591
大阪
大阪東
大阪東
小計
等9
等3
442
81
18
3
10,699
464
11,164
4,852
464
5,317
兵庫
神戸
明石
小計
等7
等2
255
32
20
2
8,596
203
8,799
3,889
203
4,093
奈良
奈良
桜井
小計
等5
等2
330
46
15
2
9,325
505
9,831
1,721
505
2,227
岡山
岡山
 
小計
等4
 
325
12
9,846
9,846
1,946
1,946
山口
山口
 
小計
等4
 
281
10
3,241
3,241
1,284
1,284
福岡
福岡中央
福岡中央
小計
等5
 
324
47
12
1
7,686
161
7,847
2,328
161
2,489
長崎
長崎
長崎
小計
等6
等5
465
90
26
5
16,020
1,392
17,413
4,239
1,392
5,632
熊本
熊本
熊本
小計
等5
等3
350
91
20
3
18,013
774
18,788
3,248
774
4,022
大分
大分
大分
小計
等7
等3
531
93
27
4
12,153
1,153
13,307
2,917
1,153
4,070
宮崎
延岡
日向
小計
等6
等3
470
57
24
4
13,780
1,380
15,160
3,432
1,380
4,812
求職者給付計
136箇所
9,085
389
246,899
69,466
就職促進給付計
59箇所
1,580
72
17,931
17,931
合計
264,831
87,398
注(1)
 上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)
 公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ137箇所、393人である。