ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

児童保護費等負担金の経理が不当と認められるもの


(89)−(126) 児童保護費等負担金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)児童保護費
部局等
17道県
国庫負担の根拠
児童福祉法(昭和22年法律第164号)
補助事業者(事業主体)
市36、町1、村1、計38市町村
国庫負担対象事業
保育所運営事業
国庫負担対象事業の概要
保護者の労働や疾病等により保育に欠ける児童の保育の実施を民間保育所に委託するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計
55,454,188,200円
(平成14年度〜17年度)
不当と認める国庫負担金交付額
95,699,585円
(平成14年度〜17年度)

1 負担金の概要

 児童保護費等負担金(保育所運営費国庫負担金に係る分)は、保護者の労働又は疾病等の事由により保育に欠ける児童の保育の実施を、社会福祉法人等が設置する保育所(以下「民間保育所」という。)に委託した市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、その委託に要した費用の一部を国が負担するものである。
 そして、この負担金の交付額は、次のとおり算定することとなっている。

児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものの図1

 この費用の額及び徴収金の額は、次のとおり算定することとなっている。
〔1〕 費用の額は、民間保育所の所在地域、入所定員、児童の年齢等の別に1人当たり月額で定められている保育単価に、各月の入所児童数を乗じるなどして算出した年間の額による。
 この保育単価については、民間施設給与等改善費として、当該民間保育所に勤務するすべての常勤職員(勤務形態が1日6時間以上かつ月20日以上の職員)を対象として算出した当該年度の4月1日現在における職員1人当たりの平均勤続年数に応じた加算率の区分ごとに設定された額を加算している。
 さらに、当該民間保育所が母子世帯の母等を非常勤職員(勤務形態が民間施設給与等改善費の加算率の算定の対象となる職員を除く。)として雇用し、その総雇用人員の累積年間総雇用時間が400時間以上となる場合に、入所児童(者)処遇特別加算費として、年間総雇用時間数の区分ごとに設定された額を加算している。
〔2〕 徴収金の額は、児童の扶養義務者の前年分の所得税額又は前年度分の市町村民税の課税の有無等に応じて階層別に児童1人当たり月額で定められている徴収金基準額などから算出した年間の額による。この階層区分の認定については、その児童と同一世帯に属して生計を一にしている父母及びそれ以外の扶養義務者(家計の主宰者である場合に限る。)のすべてについて、それらの者の課税額の合計額により行う。なお、児童の属する世帯が母子世帯等の場合などには、階層に応じ、徴収金の額を軽減する。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、市町村が民間保育所に委託して実施する保育事業について、合規性等の観点から、保育単価等の費用の額及び徴収金の額の算定は法令等に従って適切なものとなっているかに着眼し、22都道府県の92市町村において、事業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に事業主体に事態の詳細について報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、17道県の38事業主体では、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定していたり、保育単価の適用を誤るなどして費用の額を過大に算定していたりしていた。
 このため国庫負担対象事業費が過大に精算されていて、国庫負担金95,699,585円が不当と認められる。
 上記の徴収金の額を過小に算定していた事態及び費用の額を過大に算定していた事態について、それぞれ一例を示すと次のとおりである。

<事例1>  扶養義務者の所得税額を誤認していたもの

 A事業主体では、平成17年度に、児童B(2歳)について、その扶養義務者である母の16年分の所得税額及び16年度分の市町村民税額はないこと、母子世帯であることから、徴収金の額を0円と算定していた。しかし、実際は、母のほかに児童Bの扶養義務者として祖父がいることから、祖父の16年分の所得税額635,300円を基に算定すべきであり、これにより計算すると徴収金の額は960,000円となり、同額が過小となっていた。
 そして、A事業主体ではこのように扶養義務者の所得税額を誤認していた事態が上記を含め、15年度児童4人1,134,740円、16年度児童10人3,267,480円、17年度児童20人7,749,130円見受けられ、徴収金の額が15年度から17年度までの間において、計12,151,350円過小となっていた。

<事例2>  入所児童(者)処遇特別加算費の加算を誤っていたもの

 C事業主体では、平成17年度に、社会福祉法人Dが設置するE保育園が母子世帯の母を非常勤の清掃員として雇用していたことから、その年間総雇用時間数の区分に該当する額を入所児童(者)処遇特別加算費として保育単価に加算し、同園に係る費用の額に1,015,920円加算していた。
 しかし、当該職員は1日6時間以上かつ月20日以上の勤務形態であり、非常勤職員に該当しないため、入所児童(者)処遇特別加算費の対象とならないことから、同園に係る費用の額が1,015,920円過大となっていた。
 そして、C事業主体ではこのように入所児童(者)処遇特別加算費の加算を誤っていた事態が上記を含め、14年度1保育所1,015,630円、15年度2保育所2,031,860円、16年度4保育所4,064,220円、17年度4保育所4,064,350円見受けられ、費用の額が14年度から17年度までの間において、計11,176,060円過大となっていた。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において徴収金の額及び費用の額の算定に当たっての調査確認が十分でなかったこと、また、県において適正な事務処理の執行についての指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを道県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

 
道県名
事業主体
年度
国庫負担対象事業費
左に対する国庫負担金
不当と認める国庫負担対象事業費
不当と認める国庫負担金
摘要
 
 
 
 
千円
千円
千円
千円
 
(89)
北海道
札幌市
15〜17
26,699,990
13,349,995
3,919
1,959
保育単価の適用を誤っていたもの
(90)
茨城県
水戸市
16、17
2,274,835
1,137,417
7,946
3,973
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(91)
高萩市
17
234,291
117,145
1,036
518
(92)
那珂市
17
189,491
94,745
1,235
617
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(93)
東茨城郡城里町
17
136,375
68,187
1,379
689
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(94)
那珂郡東海村
17
165,886
82,943
1,602
801
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(95)
群馬県
伊勢崎市
17
1,710,888
855,444
2,692
1,346
扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(96)
沼田市
17
217,755
108,877
2,430
1,215
保育単価の適用を誤っていたものなど
(97)
藤岡市
17
745,233
372,616
1,025
512
保育単価の適用を誤っていたもの
(98)
埼玉県
熊谷市
16、17
1,886,102
943,051
6,590
3,295
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(99)
深谷市
17
911,834
455,917
1,872
936
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(100)
入間市
16、17
983,614
491,807
8,143
4,071
扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(101)
鶴ヶ島市
17
220,275
110,137
2,305
1,152
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(102)
神奈川県
平塚市
17
1,007,209
503,604
1,129
564
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(103)
鎌倉市
17
299,121
149,560
2,024
1,012
扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(104)
新潟県
新潟市
16、17
7,174,104
3,587,052
2,829
1,414
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(105)
魚沼市
17
116,678
58,339
2,415
1,207
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(106)
福井県
福井市
14〜17
8,887,022
4,443,511
11,466
5,733
保育単価の適用を誤っていたもの
(107)
越前市
16、17
1,562,523
781,261
3,479
1,739
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(108)
山梨県
甲斐市
16、17
670,107
335,053
2,819
1,409
(109)
長野県
長野市
16、17
3,608,058
1,804,029
10,331
5,165
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(110)
上田市
17
452,555
226,277
1,813
906
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(111)
愛知県
春日井市
17
314,575
157,287
1,242
621
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(112)
津島市
17
308,287
154,143
1,688
844
(113)
三重県
津市
15〜17
3,610,872
1,805,436
13,237
6,618
保育単価の適用を誤っていたものなど
(114)
四日市市
17
702,141
351,070
4,874
2,437
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(115)
伊勢市
16、17
1,071,239
535,619
4,932
2,466
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(116)
鈴鹿市
15〜17
3,955,772
1,977,886
21,425
10,712
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(117)
尾鷲市
17
231,799
115,899
1,713
856
扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(118)
奈良県
奈良市
16、17
2,105,119
1,052,559
8,992
4,496
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(119)
桜井市
16、17
362,367
181,183
3,996
1,998
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(120)
広島県
福山市
14〜17
13,684,867
6,842,433
16,227
8,113
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(121)
愛媛県
新居浜市
17
761,187
380,593
2,484
1,242
扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(122)
長崎県
五島市
17
717,257
358,628
1,474
737
扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(123)
南島原市
17
1,176,789
588,394
1,896
948
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(124)
宮崎県
宮崎市
14〜17
18,141,435
9,070,717
16,749
8,374
保育単価の適用を誤っていたものなど
(125)
小林市
15〜17
2,416,437
1,208,218
7,470
3,735
扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(126)
沖縄県
うるま市
17
1,194,267
597,133
2,503
1,251
扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(89)−(126)の計
110,908,376
55,454,188
191,399
95,699