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  • 平成18年度|
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次世代育成支援対策交付金の経理が不当と認められるもの


(127)−(139) 次世代育成支援対策交付金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)児童保護費
部局等
厚生労働本省
交付の根拠
次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)
補助事業者(事業主体)
13市
交付対象事業
次世代育成支援対策事業
交付対象事業の概要
市町村が策定した行動計画により実施する地域の子育て支援、母性及び乳幼児の健康の確保・増進等に資する事業
上記に対する交付金交付額の合計
817,119,000円(平成17年度)
不当と認める交付金交付額
50,871,000円(平成17年度)

1 交付金の概要

(1) 次世代育成支援対策交付金

 次世代育成支援対策交付金(以下「交付金」という。)は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づき、地域における子育ての支援、母性及び乳幼児の健康の確保等の次世代育成支援対策の着実な推進を図ることを目的として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が5年を一期として策定する次世代育成支援対策の実施に関する計画により、毎年度策定する事業計画に掲げる延長保育促進事業や育児支援家庭訪問事業等の事業を対象とし、これらの事業の実施に要する経費について、その一部を国が交付するものである。
 なお、上記の交付対象事業であっても、国が別途定める国庫補助金等の交付の対象となる事業やこれまでに国庫補助金等の改革で一般財源化された事業は、交付金の交付の対象にならないこととなっている。

(2) 延長保育促進事業の概要

 交付対象事業のうち延長保育促進事業は、国が少子化社会対策のため策定した「子ども・子育て応援プラン」において重点的に推進する事業の一つであり、市町村が、就労形態の多様化等に伴う延長保育の需要に対応するため、保育所の通常の開所時間である11時間を超えて、更に延長保育を実施するなどのものである。
 この事業には、次の二つの事業がある。
〔1〕 延長保育推進事業
 延長保育を行う保育所が、11時間の開所時間の始期及び終期前後の保育需要増に対応するため、11時間の開所時間内に児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)及びその他の補助金等の配置基準の規定により最低限配置しなければならない保育士のほかに、別途保育士を1名以上配置する事業
〔2〕 延長保育事業
 延長保育を行う時間帯に保育士を2名以上配置する事業
 そして、市町村が自ら設置する保育所(以下「公立保育所」という。)で延長保育促進事業を実施する場合には、上記〔1〕の延長保育推進事業は平成17年度に一般財源化されたことから交付金の交付対象とならなくなり、上記〔2〕の延長保育事業に要する延長保育時間帯に係る保育士の人件費等の経費のみが交付対象事業費となる。

(3) 交付金の算定方法

 交付金の交付額は、市町村が事業計画に掲げる事業について、事業量に応ずるなどして事業毎に定められた基準点数により算出された合計点数を基に厚生労働大臣が認めた額と、市町村が実施した各事業の総事業費の合計額から寄付金その他の収入額の合計額を控除した額に2分の1を乗じた額(以下「国庫補助基本額」という。)とを比較して、少ない方の額とすることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、交付金の算定が適切に行われているかに着眼し、17都道府県の68市町村において、事業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、17年度に交付金を交付された7道県の13市において、公立保育所の延長保育促進事業の事業費を算定するに当たり、交付の対象とならない通常の開所時間内の人件費を含めていたことなどから、事業費が過大となっていた。
 このため国庫補助基本額が過大に算定されていて、適正な国庫補助基本額に基づいて交付金の交付額を算定すると、交付金交付額計817,119,000円のうち計50,871,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 札幌市では、市立A保育所において、7時から18時までの通常の開所時間に加えて、18時から19時までの延長保育を実施し、延長保育を行った常勤保育士1名と非常勤保育士1名の人件費の合計額等を基に、当該保育所の延長保育促進事業の事業費を7,555,246円と算定していた。
 しかし、実際は、上記の2名は18時から19時までの延長保育だけでなく通常の開所時間内の保育も行っていた。
 したがって、延長保育に係る人件費を、延長保育に従事した時間数と通常の開所時間の保育に従事した時間数とであん分するなどし、適正な事業費を算出すると1,648,500円となり、5,906,746円が過大となっていた。
 そして、札幌市ではこのように延長保育促進事業の事業費の算定を誤っていた事態が上記を含め10箇所の市立保育所について見受けられ、総事業費が51,937,404円過大となっていた。

 このような事態が生じていたのは、事業主体において延長保育促進事業の事業費の算定についての理解が十分でなかったこと、また、厚生労働省において事業主体から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを道県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

  道県名 事業主体 国庫補助
基本額
厚生労働
大臣が認
めた額
交付金 不当と認
める交付
対象事業
適正な国
庫補助基
本額
適正な交
付金
不当と認
める交付
      千円 千円 千円 千円 千円 千円 千円
(127) 北海道 札幌市 449,035 445,741 445,741 51,937 423,066 423,066 22,675
(128) 旭川市 64,060 64,030 64,030 3,171 62,474 62,474 1,556
(129) 室蘭市 20,387 14,650 14,650 16,738 12,018 12,018 2,632
(130) 茨城県 水戸市 84,372 70,940 70,940 29,948 69,398 69,398 1,542
(131) 土浦市 66,817 24,430 24,430 92,250 20,691 20,691 3,739
(132) 常総市 15,798 11,770 11,770 10,497 10,549 10,549 1,221
(133) 神奈川県 小田原市 64,772 64,768 64,768 5,223 62,160 62,160 2,608
(134) 山梨県 甲斐市 30,239 12,110 12,110 41,329 9,574 9,574 2,536
(135) 兵庫県 洲本市 13,297 11,080 11,080 8,173 9,211 9,211 1,869
(136) 川西市 35,365 32,700 32,700 13,216 28,757 28,757 3,943
(137) 福岡県 春日市 33,251 33,120 33,120 6,380 30,061 30,061 3,059
(138) 朝倉市 18,900 17,460 17,460 7,471 15,164 15,164 2,296
(139) 宮崎県 日南市 16,278 14,320 14,320 6,305 13,125 13,125 1,195
(127)−(139)の計 912,577 817,119 817,119 292,645 766,254 766,248 50,871