ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの


(158)−(160) 介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)老人医療・介護保険給付諸費
部局等
厚生労働本省(交付決定庁)
3都県(支出庁)
交付の根拠
介護保険法(平成9年法律第123号)
交付先
市2、町1、計3市町(保険者)
普通調整交付金の概要
65歳以上の者に占める75歳以上の者の割合等の市町村間における格差による介護保険財政の不均衡を是正するため、市町村に交付するもの
上記に対する交付金交付額の合計
627,635,000円
(平成17年度)
不当と認める交付金交付額
4,071,000円
(平成17年度)

1 交付金の概要

(1) 介護保険の財政調整交付金

 介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(以下「第1号被保険者」という。)等を被保険者として、加齢による疾病等の要介護状態等に関し、保健医療サービス及び福祉サービスの給付を行う保険である。
 介護保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村が行う介護保険財政が安定的に運営され、もって介護保険制度の円滑な施行に資することを目的として、各市町村における介護給付等に要する費用の総額の5%に相当する額を国が負担し、それを各市町村に交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金とがある。

(2) 普通調整交付金の概要

 普通調整交付金(以下「交付金」という。)は、市町村における第1号被保険者の総数に占める75歳以上の者の割合(以下「後期高齢者加入割合」という。)及び所得段階の区分(第1段階から第5段階)ごとの第1号被保険者の分布状況(以下「所得段階別加入割合」という。)が、市町村間で格差があることによって生じる介護保険財政の不均衡を是正するために交付するものである。

(3) 交付金の算定方法

 交付金の交付額は、次により算定することとなっている。

交付金の交付額は、次により算定することとなっている。


(注1)
 調整率  当該年度に交付する普通調整交付金の総額と市町村ごとに算定した普通調整交付金の総額とのかい離を調整する割合


上記のうち、調整基準標準給付費額及び普通調整交付金交付割合については、次のとおりとされている。
〔1〕 調整基準標準給付費額は、当該市町村における前年度の1月から当該年度の12月までにおいて、国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)が審査決定した居宅介護サービス費、施設介護サービス費等、市町村が支払決定した高額介護サービス費等の支給を行う介護給付に要した費用及び居宅支援サービス費等の支給を行う予防給付に要した費用(以下、これらの費用を「介護給付費等」という。)等の合計額とする。
〔2〕 普通調整交付金交付割合は、後期高齢者加入割合補正係数と所得段階別加入割合補正係数を用いるなどして算出した割合とする。後期高齢者加入割合補正係数は、当該市町村において、介護保険事業状況報告(月報)により報告することとされている前年度の1月報告分(12月末の人数)から当該年度の12月報告分(11月末の人数)までの後期高齢者数を基に算出される後期高齢者加入割合を、国から示されるすべての市町村における後期高齢者加入割合と比較した係数である。また、所得段階別加入割合補正係数は、当該市町村において、毎年4月1日(賦課期日)における標準的な所得段階の区分ごとの第1号被保険者数を基に算出される所得段階別加入割合を、国から示されるすべての市町村における所得段階別加入割合と比較した係数である。

(4) 交付手続

 交付金の交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び実績報告書を提出し、これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生労働省に提出し、厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、24都道府県の289市町村において、合規性等の観点から、平成16、17両年度に交付された交付金の交付額の算定が適切に行われているかに着眼して、実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、交付額の算定が適切でないと思われる事態があった場合には、更に市町村に事態の詳細について報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 3都県の3市町において、交付金交付額計627,635,000円のうち計4,071,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

ア 調整基準標準給付費額を過大に算出しているもの

1町 1,212,000円

イ 普通調整交付金交付割合を過大に算出しているもの

2市 2,859,000円


 このような事態が生じていたのは、市町において制度を十分に理解していなかったこと、都県において実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを都県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

ア 調整基準標準給付費額を過大に算出しているもの

 
都県名
交付先
(保険者)
年度
交付金交付額
左のうち不当と認める額
 
 
 
 
千円
千円
(158)
群馬県
群馬郡榛名(注2)
17
101,067
1,212

 平成18年10月1日以降は高崎市


 榛名町では、平成17年度の調整基準標準給付費額の算出に当たり、17年1月から12月までに国保連合会が審査決定した介護給付費等の額で算出すべきところ、誤って、同期間に同町が支払った介護給付費等の額(16年12月から17年11月までに国保連合会が審査決定した介護給付費等の額に相当するもの)で算出するなどしていたため、調整基準標準給付費額が過大に算出されていた。
 したがって、適正な調整基準標準給付費額に基づいて交付金の交付額を算定すると99,855,000円となり、1,212,000円が過大に交付されていた。

イ 普通調整交付金交付割合を過大に算出しているもの

(159)
東京都
稲城市
17
17,267
1,352
(160)
長野県
飯田市
17
509,301
1,507
イの計
 
 
 
526,568
2,859

 上記の2市では、普通調整交付金交付割合の算出に当たり、後期高齢者加入割合補正係数の算出を誤るなどしていたため、普通調整交付金交付割合が過大に算出されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 稲城市では、平成17年度の後期高齢者加入割合補正係数及び所得段階別加入割合補正係数を算出するに当たり、後期高齢者数については、17年1月報告分(16年12月末の人数)から12月報告分(11月末の人数)までの人数、第1号被保険者数については、4月1日(賦課期日)における標準的な所得段階の区分ごとの人数を基に算出すべきところ、誤って、後期高齢者数については、17年1月から12月までの各月末の人数、第1号被保険者数については、7月8日(同市における被保険者の年間保険料の決定時)における標準的な所得段階の区分ごとの人数を基に算出していたため、普通調整交付金交付割合が過大に算出されていた。
 したがって、適正な普通調整交付金交付割合に基づくなどして交付金の交付額を算定すると15,915,000円となり、1,352,000円が過大に交付されていた。

ア、イの計
 
 
 
627,635
4,071