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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

被保護者の介護保険料等について代理納付等の活用を図ることなどにより、生活保護費負担金の交付の目的が達成されるよう改善させたもの


(2) 被保護者の介護保険料等について代理納付等の活用を図ることなどにより、生活保護費負担金の交付の目的が達成されるよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)生活保護費
部局等
厚生労働本省、14都道府県
国庫負担の根拠
生活保護法(昭和25年法律第144号)
補助事業者
(事業主体)
都、道、府1、県2、市81、特別区9、計95事業主体
国庫負担対象事業
生活保護事業
国庫負担対象事業の概要
生活に困窮する者に対し最低限度の生活を保障するため、その困窮の程度に応じて必要な保護を行うもの
支給に係る被保護者等の延べ人数等
(1)介護保険料
(2)公営住宅家賃
(3)学校給食費
151,425人
93,144世帯
56,233人
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)
上記のうち介護保険料等が未納となっていた被保護者等の数
(1)介護保険料
(2)公営住宅家賃
(3)学校給食費
6,857人
8,828世帯
1,882人
 
上記の被保護者等に係る未納となっていた介護保険料等の額
(1)介護保険料
(2)公営住宅家賃
(3)学校給食費計
 計
6553万円
4億4955万円
4200万円
5億5709万円
 
上記に係る国庫負担金相当額
(1)介護保険料
(2)公営住宅家賃
(3)学校給食費計
 計
4914万円
3億3716万円
3150万円
4億1781万円
 

1 事業の概要

(1) 制度の概要

 生活保護は、生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)等に基づき、生活に困窮する者に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、その最低限度の生活の保障及び自立の助長を図ることを目的として行われるものである。
 厚生労働省では、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「事業主体」という。)が保護を受ける者(以下「被保護者」という。)に支弁した保護に要する費用(以下「保護費」という。)の一部(国庫負担率4分の3)について生活保護費負担金(以下「負担金」という。)を交付しており、全国における負担金の交付額は平成17年度で1兆9715億余円、18年度で2兆0040億余円に上っている。

(2) 保護費の支給基準

 保護は、厚生労働大臣の定める「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年厚生省発社第123号厚生事務次官通知)等により、保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として算定される生活費の額(以下「最低生活費」という。)から被保護世帯における就労収入、年金受給額等を基に収入として認定される額を控除して決定された保護費の額を支給することとなっている。そして、保護の基準は最低限度の生活の需要を過不足なく満たすものでなければならないこととなっている。
 保護費は、その内容によって、生活扶助費、教育扶助費、住宅扶助費等の8種類に分けられている。
 そして、〔1〕生活扶助費のうち介護保険料加算(介護保険の第1号被保険者が納付書等によって保険者に納付すべき介護保険料を加算するもの)、〔2〕教育扶助費のうち保護者が負担すべき学校給食費等、〔3〕住宅扶助費のうち家賃等については、原則として、その実費を認定することとなっており、それぞれ使途が特定されたものとなっている。

(3) 介護保険料等の代理納付等

 保護の方法として、生活扶助費及び住宅扶助費は原則として被保護世帯の世帯主等に交付されるものであることから、介護保険料加算及び住宅扶助費についても被保護者に交付し、被保護者本人が介護保険料、家賃等を納付することとされている。しかし、被保護者が介護保険料加算及び住宅扶助費を他の用途に費消し、介護保険料、家賃等を納付しないことがあれば法の趣旨及び目的に反することなどになる。このため、保護の方法の特例として、従来から介護保険料及び住宅扶助費のうち家賃については、保護の目的を達するために必要があるときは被保護者に代わり事業主体が介護保険の保険者、公営住宅の管理者に納付すること(以下、これらを「代理納付」という。)ができることとなっている。そして、介護保険料に係る代理納付については、被保護世帯に生活扶助費として介護保険料加算相当額以上が支給されていること、被保護者の同意を得て委任状を徴することが要件となっていたが、法改正により、18年4月からは委任状を徴することは要しないこととなっている。
 また、学校給食費等の教育扶助費については、被保護者、その親権者等への交付のほかに、法制定当初より、未納防止等の観点から、被保護者の通学する学校の長に対して交付すること(以下「学校長払い」という。)ができることとなっている(以下、代理納付と学校長払いを合わせて「代理納付等」という。)。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 生活扶助費のうち介護保険料加算の受給者数は17年度では約30万人となっており、高齢化の進展に伴い年々増加している。また、住宅扶助費の受給世帯のうち借家世帯は17年度で約81万世帯(被保護世帯約101万世帯の80.3%)となっており、その世帯数は年々増加していて、このうち公営住宅に居住する世帯は約18万世帯で、借家世帯の23.3%を占めている。さらに、教育扶助費の受給者数は17年度で約13万人と年々増加している。
 そこで、有効性等の観点から、保護費のうち介護保険料、公営住宅に入居している被保護世帯の家賃(以下「公営住宅家賃」という。)及び学校給食費(以下、これらを「介護保険料等」という。)について、納付指導、代理納付等の活用が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、14都道府県(注1) の96事業主体の126福祉事務所において、会計実地検査を行った。そして、これらの福祉事務所(以下「検査実施事務所」という。)の生活扶助費支給対象者のうち介護保険料加算対象者17、18両年度延べ151,425人、住宅扶助費支給対象世帯のうち都道府県営及び市区町村営の公営住宅入居世帯17、18両年度延べ93,144世帯、教育扶助費支給対象者のうち学校給食費支給対象者17、18両年度延べ56,233人について、介護保険料加算、公営住宅家賃及び学校給食費等の認定状況、介護保険料等の納付状況等を事業実績報告書、都道府県等の関係機関を通じて徴した資料等の書類により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、介護保険料等について、未納が生じているのに納付指導や市区町村等の関係部署との連携が十分でなく、代理納付等の活用による未納防止が十分に図られていない事態が次のとおり見受けられた。

ア 介護保険料の未納について、代理納付の活用等による未納防止が十分に図られていないもの

 検査実施事務所における介護保険料加算対象者151,425人のうち、14都道府県(注1) の81事業主体の110福祉事務所における17、18両年度の延べ6,857人は、被保護者において支払うべき介護保険料6553万余円(うち負担金相当額4914万余円)が未納となっており、介護保険料加算対象者のうち未納となっている被保護者の割合(以下「介護保険料の未納者率」という。)は、17年度は3.7%、18年度は5.3%となっていた。これらの福祉事務所においては、市区町村の介護保険を担当する部署との連携が十分でなく被保護者の未納状況が把握できていないなどの状況となっていた。
 そして、検査実施事務所における代理納付の状況についてみると、代理納付の対象となる被保護者又は被保護世帯のうち代理納付を実施している被保護者等の割合(以下「代理納付率」という。)は、平均で17年度は88.2%、18年度は90.7%となっていた。また、福祉事務所別の18年度の代理納付率についてみると、代理納付率100%は20事務所、80%以上100%未満は73事務所、80%未満は28事務所、未実施は5事務所となっており、被保護者全員に一律に適用している福祉事務所がある一方、本人納付を原則として、未納者等一部の被保護者について実施したり、全く実施していなかったりする福祉事務所があり、福祉事務所によって代理納付の取扱いが区々となっていた。
 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A福祉事務所では、介護保険料の代理納付について、被保護者から申出があった場合にのみ実施しており、介護保険料の代理納付率は、平成17年度80.9%、18年度85.1%となっていた。
 そして、本人納付については、介護保険担当部署との連携が十分でなく、被保護者の介護保険料の未納について把握しておらず、未納となっている被保護者に対して納付指導及び代理納付の適用が十分行われていなかったなどのため、介護保険料が17年度151人(介護保険料の未納者率12.9%)103万余円、18年度126人(介護保険料の未納者率11.6%)107万余円未納となっていた。

イ 公営住宅家賃の未納について、代理納付の活用等による未納防止が十分に図られていないもの

 検査実施事務所における公営住宅入居世帯93,144世帯のうち、14都道府県(注1) の95事業主体の123福祉事務所における都道府県営及び市区町村営の公営住宅の17、18両年度の延べ8,828世帯は、被保護世帯において支払うべき公営住宅家賃4億4955万余円(うち負担金相当額3億3716万余円)が未納となっており、公営住宅に入居している被保護世帯のうち未納となっている世帯の割合(以下「未納世帯率」という。)は17年度は8.3%、18年度は10.5%となっていた。これらの福祉事務所においては、都道府県又は市区町村の公営住宅を担当する部署との連携が十分でなく、被保護世帯の未納状況について把握できていないなどの状況となっていた。
 そして、検査実施事務所における公営住宅の代理納付率についてみると、平均で17年度は36.4%、18年度は39.0%となっており、各福祉事務所の18年度における代理納付率についてみると、代理納付率100%は2事務所、80%以上100%未満は9事務所、80%未満は85事務所、未実施は30事務所となっており、福祉事務所によって代理納付の取扱いが区々となっていた。また、都道府県営の公営住宅の代理納付率は17年度18.0%、18年度20.3%であり、市区町村営の公営住宅の代理納付率17年度46.8%、18年度49.9%と比較して低くなっていた。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 B福祉事務所では、公営住宅家賃の代理納付に関し、県住宅担当部署と連携しておらず、平成17、18両年度とも県営住宅家賃について代理納付を実施していなかった。また、市営住宅家賃については、市住宅担当部署より個別に要請のあった被保護世帯について実施しており、代理納付率は、17年度8.6%、18年度19.4%となっていた。
 そして、本人納付については、公営住宅の担当部署との連携が十分でなく、公営住宅家賃の未納について把握が十分でなかったなどのため、被保護者に対する納付指導及び代理納付の適用の検討が十分に行われていなかった。このため、公営住宅家賃が県営住宅については17年度12世帯(未納世帯率9.5%)26万余円、18年度14世帯(未納世帯率10.4%)29万余円、市営住宅については17年度22世帯(未納世帯率5.1%)279万余円、18年度108世帯(未納世帯率24.7%)606万余円未納となっていた。

ウ 学校給食費の未納について、学校長払いの活用等による未納防止が十分に図られていないもの

 検査実施事務所における学校給食費支給対象者56,233人のうち、13都道府県(注2) の62事業主体の70福祉事務所における17、18両年度の延べ1,882人は、被保護者において支払うべき学校給食費4200万余円(うち負担金相当額3150万余円)が未納となっており、学校給食費支給対象者のうち未納となっている被保護者の割合(以下「学校給食費の未納者率」という。)は17年度は2.9%、18年度は3.7%となっていた。これらの福祉事務所においては、市区町村の学校給食を担当する部署との連携が十分でなく、被保護者の未納状況について把握できていないなどの状況となっていた。
 そして、検査実施事務所における学校給食費を認定した被保護者のうち、学校長払いを実施している被保護者の割合(以下「学校長払い率」という。)についてみると、平均で17年度は56.1%、18年度は56.9%となっていた。また、各福祉事務所の18年度における学校長払い率についてみると、学校長払い率100%は34事務所、80%以上100%未満は9事務所、80%未満は45事務所、未実施は35事務所となっており、福祉事務所によって学校長払いの取扱いが区々となっていた。
 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 C福祉事務所では、学校等と連携しておらず、平成17、18両年度とも学校長払いを実施していなかった。
 そして、本人納付については、学校給食費の未納について把握していなかったなどのため、被保護者に対する納付指導及び学校長払いの検討が十分に行われていなかった。このため、学校給食費が17年度93人(学校給食費の未納者率12.7%)236万余円、18年度110人(学校給食費の未納者率15.9%)300万余円未納となっていた。

 以上のように、介護保険料等が未納となっているのに代理納付等の活用等による未納防止が十分に図られていない事態は、被保護者が保護費を他の用途に費消して被保護者の最低限度の生活の需要を上回る保護費を処分することが可能となるもので、生活保護制度の趣旨からみて適切とは認められない。したがって、被保護者の日常生活状況等を把握した上で、適切な納付指導を行い、代理納付等がふさわしいものについて、その活用を図り、負担金の交付の目的を達成することができるよう改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、被保護者において介護保険料等の支払義務に対する意識が希薄な場合があることなどにもよるが、次のことなどによると認められた。
ア 事業主体において、被保護者に対する介護保険料等の適正納付についての指導が十分に行われておらず、また、介護保険料等の徴収を担当する都道府県、市区町村の部署との連携が十分でなかったため、被保護者の介護保険料等の未納状況を把握していなかったり、代理納付等の適切な活用が行われていなかったりしたこと
イ 厚生労働省において、被保護者における介護保険料等の未納状況や代理納付等の実施状況を把握しておらず、事業主体に対して未納を防止するための具体的な指示等を十分に行っておらず、また、介護保険料等を所管する厚生労働省の担当部局、国土交通省、文部科学省との連携が不足していたこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、19年10月に都道府県等に通知を発するなどして介護保険料等について代理納付等の適切な活用を図るよう次のような処置を講じた。
ア 事業主体と介護保険料等の徴収を担当する都道府県、市区町村の部署との間の連携を図り、被保護者の介護保険料等の納付状況を把握し、未納となっている被保護者に対しては適切な納付指導及び代理納付等の活用を行い未納状況の改善を図るなどの取組を行うよう指導した。
イ 代理納付等の実施状況を把握するとともに、全国会議等の場において代理納付等が的確に行われている事業主体の事例を紹介し、また、厚生労働省及び都道府県等が実施する指導監査の際に、介護保険料等の代理納付等の活用状況を確認し、福祉事務所に対して指導を徹底することとした。
ウ 介護保険料等を所管する厚生労働省の担当部局、国土交通省、文部科学省に対し、代理納付等の適切な活用等について協力依頼を行った。

 14都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、宮城、茨城、神奈川、新潟、愛知、兵庫、広島、愛媛、福岡、長崎各県
 13都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、宮城、茨城、神奈川、新潟、愛知、兵庫、広島、福岡、長崎各県