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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

木質バイオマス関連事業で整備した施設について、事業計画の達成状況報告に対する評価のための基準を整備することなどにより、利用量等の達成率が低調な施設に対して適時適切に改善措置が執られるよう改善させたもの


(7) 木質バイオマス関連事業で整備した施設について、事業計画の達成状況報告に対する評価のための基準を整備することなどにより、利用量等の達成率が低調な施設に対して適時適切に改善措置が執られるよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)林野庁
(項)林業振興費
部局等
林野庁
補助の根拠
予算補助
補助事業者
7県
間接補助事業者
(事業主体)
市1、森林組合1、木材関連業者等の組織する団体6、計8事業主体
補助事業
林業・木材産業構造改革等
補助事業の概要
間伐等により森林内に放置された林地残材、製材工場の残材等の未利用木質資源である木質バイオマスを利活用する施設を整備するもの
検査対象とした木質バイオマス関連施設
39施設
上記のうち所要の改善措置が執られていない施設
8施設
上記の施設に係る事業費
19億4392万余円
(平成14年度〜16年度)
上記に対する国庫補助金交付額
8億5267万円
 

1 事業の概要

(1) 木質バイオマス関連事業

 林野庁では、森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)に基づき、林業の持続的かつ健全な発展と需要構造の変化に対応した林産物の供給・利用の確保を強力に推進することを目的として、都道府県の策定した構造改革プログラムに即して林業・木材産業構造改革事業(平成14年度以前は地域林業経営確立林業構造改善事業等。以下「林構事業」という。)を実施している。
 林構事業は、市町村、森林組合、林業者等の組織する団体等が事業主体となって、林業生産体制の確立に必要な林道・林業生産機械、木材産業活性化のための木材加工施設・木材流通施設等を整備したり、間伐等により森林内に放置された林地残材、製材工場の残材等の未利用木質資源である木質バイオマスを利活用する施設を整備したり(以下、この木質バイオマスを利活用する施設を「木質バイオマス関連施設」といい、同施設を整備する事業を「木質バイオマス関連事業」という。)などするものである。
 このうち、木質バイオマス関連事業については、従来から未利用木質資源の有効利活用の点から実施されてきたが、近年は地球温暖化の防止等ばかりでなく、林業経営や森林の適切な整備にも寄与するものであることに着目して、木質バイオマス関連施設の整備が行われている。

(2) 林構事業の実施手続

 林構事業は、林業生産流通総合対策基本要綱(平成10年10林野政第240号農林水産事務次官依命通知)、林業生産流通総合対策事業実施要領(平成10年10林野政第241号農林水産事務次官依命通知)等(以下、これらを「実施要領等」という。)に基づき、次のとおり実施することとされている。
〔1〕 事業主体は、施設の利用量及び収入で支出を賄うことを原則とする収支の数値目標(以下「計画目標値」という。)を設定するなどした事業計画を策定して(一部の事業は市町村を経由した上で)都道府県知事に提出する。
〔2〕 提出を受けた都道府県知事は、あらかじめ林野庁長官と協議した上で当該計画の承認等を行い、事業主体は、この承認を受けて事業を実施する。
〔3〕 上記の計画目標値はおおむね5年間で達成することとされているが、その間、事業主体は、事業完了後3年間の毎年度(以下「途中年度」という。)と目標年度に事業計画の達成状況を調査し、その結果を都道府県知事に報告(以下「達成状況報告」という。)する。
〔4〕 達成状況報告を受けた都道府県知事はこれを林野庁長官に報告する。
 また、都道府県知事は、計画目標値等の達成が十分でない施設については、当該施設に対して中小企業診断士等による経営指導を行い、必要に応じて事業主体に経営改善計画を作成させるなどの改善措置を行うことになっている。そして、林野庁長官はこれを指導・助言することになっている。
 なお、政府による国と地方の税財政改革(いわゆる三位一体の改革)の一環として、17年度に林構事業が補助金から交付金化され、より地域の自主性、裁量性が発揮される「強い林業・木材産業づくり交付金」の下で実施されることとなったが、達成状況報告に係る手続については従来どおりの取扱いとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、15道府県(注1) において会計実地検査を行った。そして、1県及び35市町村等計36事業主体が13年度から16年度までの間に木質バイオマス関連事業で整備した39施設(事業費計70億0792万余円、うち国庫補助金計30億9387万余円)を対象に、有効性等の観点から、これらの施設が事業計画どおり運営され、所期の効果を上げているかなどに着眼して、事業計画書、達成状況報告書等の書類及び現地確認により検査した。
 検査に当たっては、検査の対象とした各施設の18年度末時点における事業完了後の経過年数が2年から5年と区々となっており、事業計画上は途中年度の目標値が設けられていないことから、計画目標値に対する18年度末の実績値の割合(以下「達成率」という。)を用いて分析を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 木質バイオマス関連施設の運営状況について

 木質バイオマス関連施設は、木質バイオマスを原料として製品を製造する施設(以下「製品製造施設」という。)と木質バイオマスを熱源とするエネルギー供給施設に分類することができる。この施設種別ごとの達成率をみると次表のとおりとなっており、達成率50%未満の施設が39施設中10施設と全体の25.6%を占めていた。そして、このうち8施設が製品製造施設となっていた。

表 木質バイオマス関連施設の施設種別の達成率
(単位:施設数)
施設種別
達成率
合計
10%未満
10%以上20%未満
20%以上30%未満
30%以上40%未満
40%以上50%未満
50%以上60%未満
60%以上70%未満
70%以上80%未満
80%以上90%未満
90%以上100%未満
100%以上
製品製造施設
1
5
1
1
 
4
2
 
1
 
2
17
エネルギー供給施設
 
 
 
 
2
4
2
2
3
2
7
22
合計
1
5
1
1
2
8
4
2
4
2
9
39

 また、製品製造施設は製造した製品の売上収入等で当該施設の運転等に係る支出を賄うことを原則としており、エネルギー供給施設は木材加工施設等の付帯的施設として機能し、当該施設単体の収支を区分経理することが困難なものである。このことから、製品製造施設については、事業計画において収支の数値目標を設定し、その達成状況も報告することとされている。
 そこで、製品製造施設17施設の経営状況についてみたところ、17施設中12施設(事業費計25億6824万余円、うち国庫補助金計12億3896万余円)と過半数の施設において損失が生じており、前述の達成率が50%未満の8施設はすべて損失が生じている状況となっていた。
上記の事態について事例を示すと以下のとおりである。

<事例1>

 A組合では、平成15年度に、丸太加工屑等を破砕して加工した木質チップ圧縮生成ボードを製造するための施設を事業費2億6554万余円(国庫補助金1億2645万円)で整備している。事業計画では年間33,000m2 のボードを製造販売するとしていたが、その実績は16年度12,700m2 (達成率38.4%)、17年度7,371m2 (同22.3%)となっており、17年8月から19年3月までの1年8箇月間は生産を休止していた。また、その販売量も16年度3,846m2 (同11.6%)、17年度8,039m2 (同24.3%)、18年度3,814m2 (同11.5%)にとどまっていた。そして、事業計画では操業開始後2年度目の17年度から利益を計上し、18年度までの3箇年度に合計128万余円の利益を見込んでいたが、実際には3箇年度連続して損失を計上し、その累計は6792万余円に上っていた。
 これは、操業開始後に生じた製品の品質上の問題や販売価格が高価であることなどから販路が確保できなくなったことなどによると認められた。

<事例2>

 B組合では、平成15年度に、廃棄された木製パレット(荷物の保管、構内作業、輸送のために使用される敷台)を熱源として木材を燻煙乾燥加工するための施設を事業費6813万余円(国庫補助金3406万余円)で整備している。事業計画では年間35,000枚の木製パレットを熱源として1,866m3 の薫製加工された床材等を製造販売するとしていたが、その実績は16年度143m3 (達成率7.6%)、17年度93m3 (同4.9%)、18年度206m3 (同11.0%)となっていた。そして、事業計画では18年度までの3箇年度に合計2181万余円の利益を見込んでいたが、実際には3箇年度連続して損失を計上し、その累計は2636万余円に上っていた。
 これは、木製パレットの調達先の会社が実施した操業調整に伴いその廃棄量が減少したため、熱源となる木製パレットを安定的に調達できなくなったことなどによると認められた。

(2) 途中年度における達成状況報告に対する評価について

 前記のとおり、林構事業において途中年度に達成状況等を事業主体から都道府県及び林野庁に報告させているのは、都道府県及び林野庁が途中年度において施設の運営状況を早期に把握し、評価することにより、必要な場合には適時適切に事業運営の改善を図り、目標年度における計画目標値の達成を期することにある。
 特に、いまだ製品の需要・普及状況や原料の供給体制が成熟途上にある木質バイオマス関連分野においては、事業計画段階で原料調達や販路確保の確実性に対して十分な審査がなされることはもとより、途中年度においても対象施設の運営状況を逐一確認し、適切な評価の下で必要なものに対しては適時適切に改善措置等を執ることが極めて重要である。
 そこで、前記の39施設が整備されている15道府県及び林野庁の途中年度における達成状況報告に対する評価等の実施状況についてみたところ、次のような状況となっていた。

ア 15道府県における評価等の実施状況

 実施要領等によれば、事業主体は毎年度都道府県知事に達成状況報告をすることとされているが、15道府県すべてにおいてこの報告に対する評価基準が定められておらず、このうち9府県(注2) においては指導・改善措置の対象とすべき達成率の範囲等についての運用上の目安も設けられていなかった。

イ 林野庁における評価等の実施状況

 実施要領等によれば、事業主体から達成状況報告を受けた都道府県知事は、これを毎年度林野庁長官に報告することとされているが、実施要領等にはこの報告に対する評価方法、評価基準等が定められておらず、運用上の指針も特に設けられていなかった。
 そして、前記の39施設については、道府県との間で達成状況報告を踏まえた指導・改善措置について協議が行われたものが一部見受けられるものの、林野庁が主体的に指導・改善措置を行ったものはなかった。

 この結果、8県(注3) における達成率が50%未満の木質バイオマス関連施設10施設に対しては、すべての施設に対して現地確認は行われているものの、会計実地検査時点(18年11月〜19年6月)において中小企業診断士等による経営指導を受けさせたり、必要に応じて事業主体に経営改善計画を作成させたりするなどの改善措置が執られていたのは製品製造施設の2施設のみという状況で、7県(注4) における8施設(事業費19億4392万余円、うち国庫補助金8億5267万円)については達成率が50%未満と低調であるにもかかわらず改善措置が執られていない状況となっていた。
 このように、木質バイオマス関連事業において、達成状況報告により道府県及び林野庁が対象施設の運営状況について把握する機会があったにもかかわらず、達成率が低調な施設に対して適時適切に改善措置等が執られていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、林野庁において、木質バイオマス関連事業における途中年度の達成状況報告に対する評価のための基準等の整備が十分ではないことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、19年9月に、途中年度の達成状況報告に対する評価のための基準等を明確に定めるなどするとともに、都道府県に対して通知を発し、達成率が低調な施設に対して適時適切に中小企業診断士等による経営指導を受けさせたり、必要に応じて事業主体に経営改善計画を作成させたりするなどの改善措置を都道府県において執らせ、その改善の効果が現れない場合には原則として事業の中止を含む検討を行わせることとする処置を講じた。

 15道府県  北海道、大阪府、岩手、山形、茨城、千葉、富山、長野、岐阜、静岡、島根、山口、徳島、大分、宮崎各県
 9府県  大阪府、岩手、山形、千葉、岐阜、島根、山口、大分、宮崎各県
 8県  岩手、山形、茨城、千葉、富山、長野、岐阜、徳島各県
 7県  岩手、山形、茨城、千葉、長野、岐阜、徳島各県