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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

不要漁船・漁具処理対策事業において残存漁業者等が助成金を公正に分担したり、休漁推進支援事業の実施中に減船が行われる場合における助成金の額を適切に算定したりするよう改善させたもの


(8) 不要漁船・漁具処理対策事業において残存漁業者等が助成金を公正に分担したり、休漁推進支援事業の実施中に減船が行われる場合における助成金の額を適切に算定したりするよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)水産庁
(項)水産業振興費
部局等
水産庁
補助の根拠
予算補助
補助事業者
社団法人大日本水産会
間接補助事業者
(事業主体)
北部太平洋まき網漁業協同組合連合会
補助事業
(1)
(2)
不要漁船・漁具処理対策
休漁推進支援
補助事業の概要
(1)
資源水準に見合った漁業の体制を構築するため、漁船及び漁具のスクラップ処分等を行った者に対し助成金を交付するもの
(2)
漁業資源を回復するため、休漁を行った者に対し助成金を交付するもの
不要漁船・漁具処理対策事業において、残存漁業者等が助成金を公正に分担していなかったのに支払われた事業費(助成金)
(1)
28億4274万余円
(平成15、16両年度)
休漁推進支援事業において節減できた事業費(助成金)
(2)
1億7652万余円
(平成15年度〜18年度)
上記に対する国庫補助金相当額
(1)
(2)
12億6344万円
5884万円
 

1 事業の概要

 水産庁では、我が国周辺水域における漁業資源の状況が悪化していることにかんがみ、資源水準に見合った漁業の体制を構築するなどのため、不要漁船・漁具処理対策事業(以下「減船事業」という。)及び休漁推進支援事業(以下「休漁事業」という。)を実施している。
 これらの事業の実施に当たり、水産庁では、資源回復推進等再編整備事業費補助金交付要綱(平成14年13水漁第2926号農林水産事務次官依命通知)等(以下「要綱等」という。)に基づき、社団法人大日本水産会(以下「水産会」という。)に対して国庫補助金を交付している。そして、水産会は、減船事業においては漁船及び漁具のスクラップ処分等(以下「減船」という。)を自主的に行った者(以下「減船者」という。)に、また、休漁事業においては休漁を自主的に行った者(以下「休漁者」という。)に、それぞれ助成金を交付する漁業協同組合連合会等の事業主体に対して、上記の国庫補助金と同額の事業資金助成金を交付している。各事業主体は、当該事業資金助成金のほか、残存漁業者(注) 、地方公共団体等が拠出する拠出金により、減船者等に対して交付する助成金に充てるため事業資金を造成することとなっている。
 このうち、減船事業における事業資金の造成割合は、漁業者が営む漁業の許可等の区分に応じ、残存漁業者等の拠出金が事業資金の9分の5、水産会の事業資金助成金が事業資金の9分の4以内などとされており、助成金についてもそれぞれ同じ割合で負担することになる。
 また、休漁事業において休漁者に交付する助成金の額は、漁業共済事業における不漁等により漁獲金額が減少した場合の補償額の算定方法を準用して船舶維持経費等の固定経費相当額とされており、要綱等では、休漁者の休漁前5箇年のうち、漁獲金額が最高の年と最低の年を除いた3箇年の平均漁獲金額の64%を固定経費相当額とすることとなっている。
 事業主体は、これらの事業の実施に当たり、助成総額、助成金の交付に充てる事業資金の負担者、負担金額等を記載した事業計画を水産庁に提出し、同庁は、次の要件等が満たされている場合に事業計画を承認することとされている。
ア 減船者又は休漁者が受け取る助成金の額が減船又は休漁を実施する上で適切な金額となっていること
イ 減船事業については、残存漁業者等が負担する助成金の額が減船を実施する上で適切な金額となっており、かつ、残存漁業者等の間で公正に分担されていること
ウ 休漁事業については、助成対象経費として、休漁者が休漁期間中に負担する船舶維持経費等の固定経費相当額が計上されていること

 残存漁業者  漁業協同組合連合会等が作成する事業計画の対象漁業を営む漁業者のうち当該漁業から撤退する者以外の者


2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 減船事業及び休漁事業により減船者等に交付される助成金は毎年度多額に上っている。また、減船事業については、上記のとおり残存漁業者等の間で助成金が公正に分担されていることが事業計画を承認する要件となっているが、具体的な分担方法は定められていない。
 そこで、減船事業については、合規性等の観点から、残存漁業者等がどのように助成金を分担しているかに着眼して、また、休漁事業については、経済性等の観点から、助成金の額の算定に当たり固定経費相当額が適切に算定されているかに着眼して、それぞれ検査を行った。

(検査の対象及び方法)

 本院は、水産庁本庁、水産会及び北部太平洋まき網漁業協同組合連合会(以下「連合会」という。)において会計実地検査を行った。そして、事業主体である連合会が平成15年度から18年度までの間に実施した16減船者に係る22隻の減船事業(助成金28億4274万余円、事業資金助成金12億6344万余円、国庫補助金同額)及び21休漁者に係る29船団の休漁事業(助成金56億2538万余円、事業資金助成金18億7512万余円、国庫補助金同額)を対象として、助成金の交付申請書等の書類により検査を行った。

(検査の結果)

(1) 減船事業における助成金の分担について

 減船事業における助成金の分担状況について検査したところ、減船者が減船後も引き続き大中型まき網漁業を営んでいる16減船者に係る22隻の減船事業(助成金28億4274万余円、事業資金助成金12億6344万余円、国庫補助金同額)において、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、減船事業における残存漁業者等の助成金の分担方法については、要綱等には具体的に定められていないが、減船により、将来、資源回復の利益を受ける残存漁業者が、必要に応じて業界団体等と共同して、残存漁業者数、残存漁業者の漁獲高に応じるなど公正に分担した額によることが前提とされていた。そして、水産会が事業主体に対して交付する事業資金助成金は、残存漁業者等の負担の軽減措置として交付されるものであった。
 しかし、連合会では、減船者が減船後も引き続き漁業を営む場合は残存漁業者にも該当することから、残存漁業者等が負担することとされている事業資金の9分の5の額を当該減船者が全額負担しても残存漁業者等が公正に分担する旨の要綱等の規定には違反しないと判断し、事業資金の造成等を次のように行っていた。
ア 15減船者の減船事業について、連合会は、それぞれの減船者が事業資金の9分の5の額を連合会から借り入れたとする借用証書を減船者から徴した上で、同額を金融機関から借り入れ、いったん各県のまき網漁業協同組合に送金し、同日付けで拠出金として連合会に送金させていた。そして、連合会はこの拠出金と水産会から交付を受けた事業資金助成金(事業資金の9分の4の額)により事業資金を造成し、造成額の全額を助成金として減船者に交付した後、減船者から借用証書の額の返済を受け、金融機関に返済していた。
イ 1減船者の減船事業について、連合会は、減船者が事業資金の9分の5の額から県及び市の拠出金額を控除した額を借り入れたとする借用証書を減船者から徴した上で、借用証書の額を金融機関から借り入れ、いったん県のまき網漁業協同組合に送金し、同日付けで拠出金として連合会に送金させていた。そして、連合会はこの拠出金、県及び市からの拠出金及び水産会から交付を受けた事業資金助成金(事業資金の9分の4の額)により事業資金を造成し、造成額の全額を助成金として減船者に交付した後、減船者から借用証書の額の返済を受け、金融機関に返済していた。
 このため拠出金を拠出しているのは、アにおいては助成金の交付を受けた減船者、イにおいては助成金の交付を受けた減船者、県及び市であり、当該減船者以外の残存漁業者は一切負担をしていないと認められた。
 したがって、これらの減船事業においては、残存漁業者等による助成金の公正な分担がなされていないと認められた。
 そして、水産会では、事業実施後に事業主体から提出される事業資金交付終了報告書の様式が拠出金を拠出した残存漁業者等の内訳を記載するものとなっていないことから、本件事業における実際の拠出者を確認していなかった。

(2) 休漁事業における助成金の額の算定について

 休漁事業における助成金の額の算定について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、連合会では、15年度以降の各年度において休漁事業を実施した21休漁者、29船団に係る助成金の額を要綱等により算定した船団ごとの1日当たりの固定経費相当額に休漁日数を乗じて算定していた。そして、上記21休漁者、29船団の中には、休漁事業開始時まで網船1隻、探索船1隻及び運搬船2隻で船団を構成していたが、休漁事業開始後に運搬船1隻を減船事業により減船したものが6休漁者、6船団あり、連合会では、これらの休漁者に対して減船前と同額の1日当たりの固定経費相当額により助成金の額を算定していた。
 しかし、船団の固定経費に当たる船舶維持経費等を減船前後で比較したところ、減船後の船舶維持経費等は減船前の85%程度となっており、減船後の休漁事業に係る助成金の額の算定に当たっては、減船による船舶維持経費等の減少を考慮すべきであると認められた。
 したがって、1日当たりの固定経費相当額に上記の調査結果による0.85を乗じるなどして、6休漁者、6船団に係る運搬船減船後の休漁事業の助成金の額を算定すると、助成金計11億7683万余円は、計10億0030万余円となり、1億7652万余円(事業資金助成金5884万余円、国庫補助金同額)節減できたと認められた。
 このように、連合会が実施した16減船者に係る減船事業において、助成金が残存漁業者等により公正に分担されているとは認められないのに、残存漁業者等の負担の軽減措置のための事業資金助成金が交付されていたり、6休漁者に係る休漁事業において、減船により船舶維持経費等が減少しているのに、減船前と同額の助成金が交付されていたりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(1) 減船事業における助成金の分担について

水産庁において、
ア 残存漁業者等が助成金を公正に分担することの重要性を十分に認識していなかったことから、公正な分担方法の内容を要綱等に具体的に規定していなかったこと
イ 残存漁業者等が助成金を公正に分担しているかどうかの確認方法を要綱等に規定していなかったため、水産会においてその確認を行っていなかったこと
ウ 事業主体に対する指導及び監督が十分でなかったこと

(2) 休漁事業における助成金の額の算定について

 水産庁において、休漁事業実施中に減船が行われる場合の船団の固定経費相当額の検討が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、水産庁では、19年3月に要綱等を改正して、減船事業における助成金を残存漁業者等に公正に分担させるとともに、休漁事業の実施中に減船が行われる場合における助成金の額の算定を適切なものとするよう、次のような処置を講じた。

(1) 減船事業における助成金の分担について

ア 残存漁業者等による助成金の公正な分担方法を要綱等に具体的に列挙するなどして規定するとともに、規定の内容を事業主体等に周知徹底することとした。
イ 残存漁業者等が実際に助成金を公正に分担しているかどうかの確認方法を要綱等に規定するとともに、これを水産会に行わせることとした。
ウ 事業主体に対する指導及び監督を十分に行うこととした。

(2) 休漁事業における助成金の額の算定について

 休漁事業の実施中に減船が行われる場合の助成金の額については、減船前の船団の固定経費相当額から減船した船舶に係る分を控除したものとすることとした。