会計名及び科目
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食糧管理特別会計(輸入食糧管理勘定)
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(款)食糧管理収入
(項)輸入食糧売払代
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部局等
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農林水産本省
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売買契約の概要
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政府米のうち、主食用、加工用等への販売が見込まれない米穀を配合飼料用として販売するもの
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契約の相手方
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全国農業協同組合連合会
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配合飼料用米穀の売渡評価額
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90億0163万余円
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(平成18年度)
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増加させることができた売渡評価額
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7575万円
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(平成18年度)
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農林水産省では、「政府所有米穀の配合飼料用販売事務取扱要領」(平成18年18総食第187号総合食料局長通知。以下「取扱要領」という。)等に基づき、政府が所有する米穀(以下「政府米」という。)のうち主食用、加工用等への販売が見込まれない米穀について、配合飼料の原料となる配合飼料用米穀(以下「飼料用米」という。)として全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)と売買契約を締結し、平成18年6月から19年3月までの間に、12年度から15年度までに輸入した外国産米37万4248tを総額80億1740万余円で販売している(以下、この販売に係る売買契約を「18年度契約」という。)。そして、全農は、買い受けた飼料用米を配合飼料製造業者の組織である配合飼料団体に販売し、配合飼料団体は、構成員である配合飼料製造業者に販売している。
農林水産省では、18年度契約以前にも、16年2月から17年4月までの間に、8年産及び9年産の国内産米32万5000t(以下、この販売に係る売買契約を「16年度契約」という。)を、また、17年4月から18年6月までの間に、9年産から11年産の国内産米38万4999t(以下、この販売に係る売買契約を「17年度契約」という。)を、それぞれ全農に飼料用米として販売している。16年度契約、17年度契約及び18年度契約による飼料用米の販売総数量は108万4248t、その販売総額は208億8537万余円となっている。
農林水産省では、全農に販売する飼料用米の政府売渡価格を3箇月ごとに改定している。
そして、1t当たりの政府売渡価格については、飼料用米に含まれているタンパク質等の養分量を評価して算定した飼料用米の評価価格(以下「売渡評価価格」という。)から、配合飼料製造業者が通常使用している配合飼料原料であるこうりゃん等を飼料用米に代替するために必要な費用を控除するなどして算定している。
飼料用米の売渡評価価格については、玄米及び精白米の種類別に次のように算定している。
〔1〕 鶏、豚及び牛の畜種別にタンパク質等の養分に対する消化率が異なることを考慮し、飼料用米から得られる養分量をこうりゃん及び大豆油かすの養分量で評価することにより、こうりゃん及び大豆油かすの1t当たりの購入価格から畜種別に飼料用米1t当たりの評価価格を算出する。
上記で算出された畜種別の評価価格については、米穀に含まれるタンパク質に対する鶏の消化率が豚及び牛に比べて高いことなどから、鶏用の評価価格が16年度契約から一貫して豚用及び牛用の評価価格に比べて高価となっている。
〔2〕 畜種別に算出した飼料用米1t当たりの評価価格を単純平均して、1t当たりの売渡評価価格を算定する。
そして、18年度契約における3箇月ごとに改定された1t当たりの売渡評価価格に、それぞれの期間の販売数量を乗じると、売渡評価額は計90億0163万余円となっている。
取扱要領等によれば、地方農政事務所長等は、飼料用米の適正な流通を確保するため、随時、職員を管内に所在する飼料工場に派遣して、立会いを行うこととなっている。そして、飼料工場が飼料用米を配合飼料原料として使用した月の翌月に、製品製造台帳等の帳簿を関係帳票等と照合して飼料用米の配合飼料原料への使用状況を確認し、その使用状況を月末までに、総合食料局長に報告することとなっている。
農林水産省では、16年2月以降、保管期間が長期化するなどして主食用等への販売が見込まれない政府米を飼料用米として販売している。そして、その販売に当たっては、配合飼料製造業者のこうりゃん等の購入価格等を基に1t当たりの政府売渡価格を決定しているため、政府米として買い入れた際の買入価格を大幅に下回る売渡価格となっている。そこで、経済性等の観点から、売渡評価価格の算定が飼料工場における飼料用米の使用実態に即して適切に行われているかなどに着眼して検査した。
16年2月から19年3月までに販売した飼料用米108万4248t(販売総額208億8537万余円)を対象として、全国の47地方農政事務所等のうち8地方農政事務所等(注) において会計実地検査を行い、担当者から飼料用米の販売状況を聴取したり、管内に所在する飼料工場に赴いて飼料用米の使用状況等を調査したりするとともに、農林水産省から飼料工場の飼料用米の使用に係る資料を徴するなどして検査した。
検査したところ、飼料用米の販売に当たって算定した売渡評価価格について、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
農林水産省では、前記のとおり、3畜種の評価価格を単純平均して売渡評価価格を算定していて、飼料工場における畜種別の飼料用米の使用実態を把握しておらず、売渡評価価格の算定に反映していなかった。
そこで、16年度契約、17年度契約及び18年度契約で販売された飼料用米を対象に、配合飼料原料に使用している全国の47製造業者の87飼料工場について、農林水産省から徴した資料により、年度別・畜種別の飼料用米の使用実態を分析したところ、16年度及び17年度については次表のとおりとなっていた。
区分
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年度
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鶏用
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豚用
|
牛用
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その他
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計
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|||||
使用量
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使用割合
|
使用量
|
使用割合
|
使用量
|
使用割合
|
使用量
|
使用割合
|
使用量
|
使用割合
|
|
16
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159,749
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54.0
|
88,599
|
29.9
|
47,170
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15.9
|
250
|
0.0
|
295,770
|
100
|
17
|
188,417
|
58.3
|
89,836
|
27.8
|
44,372
|
13.7
|
299
|
0.0
|
322,926
|
100
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そして、18年度においても、鶏用26万2445t(61.9%)、豚用11万1359t(26.2%)、牛用4万9521t(11.6%)、その他351t(0.0%)、計42万3678tとなっていて、16年度及び17年度と同様に、豚及び牛に比べて評価価格が最も高価な鶏用の使用割合が高く使用量全体の過半を占め、評価価格の安価な牛用の使用割合は10%強と低くなっていた。
上記のことから、畜種別にみて鶏用の使用割合が豚及び牛に比べて高くなっている傾向は一時的なものではなく、今後も継続していくものと認められた。そして、飼料工場における飼料用米の配合飼料原料への使用実態を適切に把握していれば、政府米の飼料用販売の開始から2年が経過した18年度契約の締結に際しては、鶏用の使用割合が他の畜種用と比べて高くなることを十分に予測することができたものと認められた。
したがって、18年度契約において、畜種別の飼料用米の使用実態を把握することなく、1t当たりの売渡評価価格の算定に当たり、畜種別の評価価格を単純平均して算定していたのは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
18年度契約における売渡評価価格について、3箇月ごとの価格改定月の前々月までの1年間の畜種別使用割合を基に修正計算すると、1t当たりの売渡評価価格が179円から288円増加することになり、前記の売渡評価額90億0163万余円は90億7738万余円となり、7575万余円増加させることができたと認められた。
このような事態が生じていたのは、農林水産省において、飼料用米の販売が継続的に実施されているにもかかわらず、政府米の配合飼料原料への使用実態の把握が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、19年8月に取扱要領等を改正して畜種別の飼料用米の使用実態を適切に把握できるようにするとともに、同年9月の政府売渡価格改定から、使用実態を反映させた畜種別の使用割合に基づいて売渡評価価格を算定することとする処置を講じた。