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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

河川改修の実施に伴い河川区域の一部が廃止されるなどして普通財産となった土地について、土地の実態を適宜確認することなどによりその管理等を適切に行うよう改善させたもの


(1) 河川改修の実施に伴い河川区域の一部が廃止されるなどして普通財産となった土地について、土地の実態を適宜確認することなどによりその管理等を適切に行うよう改善させたもの

会計名
一般会計
部局等
6地方整備局
国有財産の概要
行政財産の用途を廃止し又は新たに取得した一般会計所属の普通財産
検査の対象とした国有財産
6地方整備局において、国有財産台帳の整備等を行っている一般会計所属の普通財産
上記に係る面積及び台帳価格
99,185m2
8億9804万余円
(平成19年2月末)
所要の手続を経ることなく土地が使用されているもの
29,183m2
5億4243万円
(平成19年2月末)
土地の実態が国有財産台帳に反映されていないもの
41,953m2
9866万円
(平成19年2月末)

1 国有財産の概要

(1) 普通財産の概要

 国土交通省では、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、一般会計所属の普通財産である土地の管理等を行っている。
 国有財産法では、財務大臣が普通財産の管理又は処分を行うこととなっており、行政財産の用途を廃止した場合又は普通財産を取得した場合においては、各省各庁の長は、政令で定める特別会計に属するもの及び引き継ぐことを適当としないものとして政令で定めるものを除き、財務大臣に引き継がなければならないこととなっている。したがって、財務大臣に引き継ぐまでの間の普通財産、引き継ぐことが不適当とされた普通財産などは、各省各庁が当該財産を管理することになる。
 国土交通省が普通財産として管理等を行っている土地は、河川改修の実施に伴い河川区域の一部が廃止され普通財産となったもの又は宿舎用地の用途が廃止され普通財産となったものなどであり、〔1〕 国土交通省が自ら直接管理を行っているものと、〔2〕 法定受託事務(注1) として都道府県が管理を行っているものとがある。
 これらの土地のうち、〔2〕 については、従前は機関委任事務(注2) として都道府県が管理及び国有財産の台帳(以下「国有財産台帳」という。)の整備等を行っていたが、平成12年4月に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号。以下「地方分権一括法」という。)が施行されて以降は、国有財産法に基づき、都道府県が法定受託事務として行っている。ただし、国有財産台帳の整備及び国有財産増減及び現在額報告書等の調製は国土交通省の各地方整備局等が行うことになっている。

(2) 法定受託事務における国有財産の増減等の異動報告

 国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)では、法定受託事務により都道府県が行うこととされている事務は国有財産の取得、維持、保存、運用及び処分となっている。一方で、国有財産台帳の整備等については、上記のように、各地方整備局等が行うことになるため、国土交通省では、13年5月に、都道府県に対し、国有財産の増減等の異動があった場合には、速やかに各地方整備局等に報告するよう求めた内容の通知を発している。

(3) 普通財産の譲与等

 国有財産法では、普通財産は無償・有償の貸付け、交換、売払い、あるいは譲与等を行うことができることとなっている。
 そして、道路法(昭和27年法律第180号)では、普通財産である国有財産は、都道府県道又は市町村道の用に供する場合においては、国有財産法の規定にかかわらず、当該道路の道路管理者である地方公共団体に無償で貸し付け、又は譲与することができるとされている。
 また、上記のほか、国有財産特別措置法(昭和27年法律第219号)では、河川法(昭和39年法律第167号)、下水道法(昭和33年法律第79号)及び道路法が適用されない河川、下水道(以下「河川等」という。)及び道路の用に供されている国土交通大臣の所管に属する土地(法定外公共物である水路及び里道)について、国が当該用途を廃止した場合において、市町村が河川等又は道路の用に供するときは当該市町村へ譲与することができるとされている。

 法定受託事務  国が果たすべき責務に係る事務であるが、事務処理の効率性や利用者である国民の利便性を考慮して、地方公共団体で処理するように法律や政令などで特に定めた事務で、国が地方公共団体に処理を委託する。
 機関委任事務  国の事務等であって法律又はこれに基づく政令により地方公共団体の長等に委任された事務

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点) 

 前記のとおり、地方分権一括法が施行されて以降、国土交通省所管の一般会計所属の普通財産である土地のうち、法定受託事務として都道府県が管理するものについては、各地方整備局等が国有財産台帳の整備等を行うことになっている。
 そこで、本院は、国有財産台帳の整備等を行っている6地方整備局(注3) において、正確性、合規性等の観点から、その管理が適切に行われているか、国有財産台帳の内容が土地の実態を反映したものとなっているかなどに着眼し、会計実地検査を行った。

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、上記の6地方整備局又は10府県(注4) 管理の一般会計所属の普通財産である土地(以下「土地」という。)49件(総面積99,185m2 、台帳価格の総額898,043,363円、19年2月末)を対象として、国有財産台帳等を基に管理状況等について聴取し、また、直接現地に赴くなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、1地方整備局及び7府県(注5) が管理していて、6地方整備局が国有財産台帳の整備等を行っている土地において、次のような事態が見受けられた。

(1) 所要の手続を経ることなく土地が使用されているもの

12件 総面積29,183m2 、 台帳価格の総額542,437,762円

国の管理  1件
府県管理 11件

 これらの土地は、国有財産法等に基づく貸付けや譲与などの所要の手続を経ることなく、管理を行っている府県等に無断で市道等の道路敷や市の施設用地として使用されていたり、個人により車の保管場所として使用されていたりなどしている。

<事例1>

 A府が管理しているB市所在の土地69m2 は、昭和45年3月の廃川告示により河川区域が廃止され普通財産となったものであるが、国有財産法による貸付け等の手続を経ないまま近隣の住民等によって私的に車の保管場所として使用されていた。

<事例2>

 C県が管理しているD市所在の土地5,171m2 の一部3,414m2 は、D市が昭和46年9月から同県の河川部局から河川法に基づく占用許可を受けて公園等として使用しており、以降3年から10年ごとの許可期間をもって更新していた(現在は平成11年4月1日から21年3月31日までの許可期間中となっている。)。
 しかし、当該土地は、昭和51年2月の廃川告示により河川区域が廃止され普通財産となっていることから、これ以降は河川法による占用許可では使用できないものであり、国有財産法による貸付け等の手続を経る必要があったものである。

(2) 土地の実態が国有財産台帳に反映されていないもの

15件 総面積41,953m2 、台帳価格の総額98,665,929円

(県管理 15件)


 これらの土地は、国有財産法、道路法又は国有財産特別措置法に基づいて地方公共団体に譲与されるなどしていて、既にその全部又は一部が国有財産ではなくなっているのに、国有財産台帳に登録され、毎年、財務大臣に対し、当該土地に係る現在額等の報告が行われていたり、行政財産として管理すべきものが普通財産として管理されていたりしているものである。

<事例3>

 E県が管理しているF市所在の土地は、昭和51年3月の廃川告示により河川区域が廃止され普通財産となったものであり、国有財産台帳上の面積は900m2 となっているが、当該土地の一部379m2 は55年1月に引継不適当財産とされ、同年2月に、国有財産法第28条の規定に基づいてE県へ譲与されていた。
 したがって、900m2 のうち、379m2 についてはE県へ譲与された時点で国有財産ではなくなっているのに、それ以降も国有財産として国有財産台帳に登録されていた。

<事例4>

 G県が管理しているH市所在の土地5,342m2 は、昭和50年3月の廃川告示により河川区域が廃止され普通財産となったものであるが、その後、同県が土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づいて実施したほ場整備事業の事業区域に編入され、平成6年4月に換地処分が行われた結果、当該土地すべてが公共物である河川敷となっていた。
 したがって、公共物への編入が行われた以降は河川法に基づいて行政財産として管理すべきであるのに普通財産として管理されていた。

 以上のように、国土交通省所管の土地が無断で使用されていたり、既に国有財産でなくなっているものが国有財産台帳に登録されていたり、あるいは、行政財産として管理すべきものが普通財産として管理されていたりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 地方整備局及び府県において、土地が無断で使用されているのに関係法令等に基づく所要の手続を執るなどの処置を講じていなかったこと
イ 府県において、国有財産の増減等の異動があった際は、速やかに地方整備局に報告を行うことについての認識が十分でなかったこと
ウ 地方整備局及び府県において、土地の実態を十分に把握していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、19年9月に、6地方整備局及び7府県に対し通知を発し、地方整備局が国有財産台帳の整備等を行っている地方整備局又は府県管理の土地について、その管理等が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。
ア 所要の手続を経ることなく土地が使用されるなどしているものについては、関係法令等に基づいて速やかに所要の手続を執るなどの処置を講ずるよう、地方整備局に対し指導するとともに、府県においても同様の処置を講ずるよう求めた。
イ 土地の増減等の異動があった場合には、府県は地方整備局に対し速やかに報告等を行うよう、府県に対し周知徹底を図るとともに、土地の実態が国有財産台帳に反映されていないものについては、地方整備局において、それぞれの事由に基づいて国有財産台帳の訂正等を行うよう指導した。
ウ 地方整備局において、法定受託事務を執り行う府県に対し、必要な資料及び報告を求め、土地の実態を適宜確認するよう指導するとともに、府県においても、土地の実態を十分に把握しておくよう求めた。
 なお、国有財産台帳の訂正等が必要な土地41,953m2 (台帳価格の総額98,665,929円)のうち7,597m2 (台帳価格の総額78,230,358円)については、19年3月に国有財産台帳の訂正が行われ、その結果は18年度の国有財産増減及び現在額報告書等に反映されている。

 6地方整備局  関東、北陸、中部、近畿、中国、九州各地方整備局
 10府県  大阪府、茨城、群馬、千葉、神奈川、長野、鳥取、岡山、大分、鹿児島各県
 1地方整備局及び7府県  関東地方整備局、大阪府、茨城、群馬、神奈川、長野、鳥取、大分各県