会計名及び科目
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一般会計
道路整備特別会計
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(組織)国土交通本省
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(項)国土交通本省
(項)道路事業費
(項)沖縄道路事業費
(項)道路環境整備事業費
(項)沖縄道路環境整備事業費
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部局等
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9地方整備局等
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事業の根拠
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道路法(昭和27年法律第180号)
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事業の概要
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スマートインターチェンジ社会実験のために必要となる設備を整備するもの
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スマートICの整備箇所数及び同設備等の整備事業費
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37箇所 44億6200万円(平成16年度〜18年度)
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上記のうち帳簿に記録されていなかった物品
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(1) (2)
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スマートIC設備
増設ディスク
計
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11箇所
12箇所
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9億0269万円
3774万円
9億4044万円
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恒久化時点のスマートIC設備等の残存価額
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(1)
(2)
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18年10月恒久化箇所
19年4月恒久化箇所
計
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18箇所
13箇所
31箇所
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13億2914万円
8億8828万円
22億1742万円
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上記(1)のうち有償貸付により収受できた額
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9313万円
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国土交通省では、既存の高速自動車国道(以下「高速道路」という。)の有効活用や地域経済の活性化等を推進するため、高速道路の既存のサービスエリア(以下「SA」という。)やパーキングエリア(以下「PA」という。)等と市町村道等とを接続するスマートインターチェンジ(以下「スマートIC」という。)整備事業を実施している。スマートICは、ETC(有料道路自動料金収受システム)車載器を取り付けた車両のみ通行可能なインターチェンジ(以下「IC」という。)であり、SA等を利用した簡易な設備構造で整備することができ、料金収受員も必要ないことなどから、整備費用や整備後の管理費用が縮減できるICとされている(参考図参照) 。
ア 社会実験の実施方法等
スマートICの整備に当たっては、円滑な導入を図るため、整備箇所における導入の効果及び整備、運営上の課題等の把握を目的とした社会実験(以下「社会実験」という。) を平成16年度から実施している。
社会実験の実施に当たっては、「SA・PAに接続するスマートIC社会実験の手引き」(平成16年国土交通省制定。以下「社会実験の手引き」という。)によると、実験期間は3箇月から6箇月程度とされ、スマートICごとに国、市町村、日本道路公団(17年10月以降は東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社及び西日本高速道路株式会社。以下、これら3社を「会社」という。)等で構成される社会実験実施のための協議会(以下「協議会」という。)を設置することとされている。
そして、上記の協議会では、スマートICの採算性、運営方法、設備の設置工事等の施工区分、費用の負担等について、構成者間で協議の上、協定書等を作成し取り決めている。
イ 社会実験の費用負担
社会実験のための費用負担については、社会実験の手引きによると、国は、SA、PA等のスマートIC専用出入口の設置に伴う土木工事費、スマートIC専用のETC機器で構成される設備(以下「スマートIC設備」という。)及び料金収受機械(以下、これらを「スマートIC設備等」という。)の整備費等を負担し、市町村等は、高速道路区域境から市町村道等までの区間の道路の整備費等をそれぞれ負担することとされている。
ウ スマートIC設備等の調達
スマートIC設備は、高速道路のみに使用される特殊な機器であることから、地方整備局及び国道事務所等では、当初から開発に携わっている財団法人道路新産業開発機構(以下「新産機構」という。)との間で締結している社会実験検討等業務委託契約により新産機構を通して調達等している。また、料金収受機械及び料金収受機械の機能増強を目的としたデータ処理装置用増設磁気ディスク及び増設メモリ(以下、これらを「増設ディスク」という。)についても同様に特殊な機器であることから会社又は新産機構を通して調達している。
そして、社会実験中のスマートICの管理に当たり、地方整備局等では会社と契約を締結し、スマートIC設備等の保守管理及び利用台数を把握するなどの管理業務を委託している。
国土交通省では、社会実験の成果を踏まえ、一定の要件を満たすスマートICについて本格的に運用(以下「恒久化」という。)することとし、18年7月に「スマートインターチェンジ(スマートIC)[SA・PA接続型]制度実施要綱」(国道有第28号道路局長通知)及び同要綱の運用について定めた「スマートインターチェンジ[SA・PA接続型]制度実施要綱の運用について」(平成18年国道有第29号道路局有料道路課長通知。以下、要綱と合わせて「要綱等」という。)を制定している。
要綱等によると、スマートICを整備することによる増収が、管理、運営費用を上回っていることなどが恒久化のための要件とされている。また、恒久化した後、当該設備は会社に無償で貸し付けることとされ、更新については会社の負担で行うこととされている。
国の負担において整備した社会実験のためのスマートIC設備等については、国の物品の取得、保管及び処分等について定めている物品管理法(昭和31年法律第113号)等に基づき、物品管理簿へ必要事項を記録するなど国の物品として管理することとなり、これらの事務はスマートICが設置されている地域を管轄する国道事務所等で行っている。
また、国土交通省では、物品の管理については、「国土交通省所管物品管理事務取扱規則」(平成13年訓令第63号。以下「取扱規則」という。)によることとし、この取扱規則においては、物品の分類及び細分類に関すること、物品管理簿を取得価格50万円以上の機械器具(以下「重要物品」という。)、仮設物及びそれ以外の3種類とすること、重要物品の物品管理簿(以下「重要物品管理簿」という。)には取得年月日、異動数量、取得価格等を記録し管理することなどが規定されている。
そして、毎年度、国土交通大臣が財務大臣に報告する物品増減及び現在額報告書は重要物品管理簿に基づいて作成され、同報告書に基づいて内閣から国会に物品現在額等が報告されている。
スマートICの整備は、多額の国費を投入して行うものであり、恒久化が始まった18年度以降、全国の市町村等からの整備の要望が多数に上っており、今後も引き続き、道路整備事業における重要施策の一つとして多数のスマートICが整備され、社会実験が実施されることが見込まれている。そこで、正確性、経済性等の観点から、スマートIC設備等の整備及び管理並びに国の財産としての取扱いが適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。
本院は、9地方整備局等(注1) (以下「地方整備局等」という。)及び管内の25国道事務所等(注2) において会計実地検査を行った。そして、社会実験を開始した16年度から18年度までの間に整備したスマートIC37箇所、これに係るスマートIC設備等整備事業費44億6200万余円を対象として、地方整備局等と会社等との間で締結された協定書及び地方整備局等から徴した協定に関する調書等により検査し、必要に応じて現場に赴き現地の状況を検査した。
上記のスマートIC37箇所のうち、18箇所については18年10月に、13箇所については19年4月に恒久化しており、残りの6箇所のうち4箇所については社会実験終了後撤去しており、また、2箇所については19年4月現在社会実験を実施中となっていた。これらの状況も踏まえ、検査した結果は次のとおりである。
整備した37箇所のスマートIC設備等の管理状況についてみると、スマートIC設備等は通常の物品購入契約ではなく、業務委託契約において調達されていた。そして、スマートICを担当する国道事務所等の担当部署から物品管理担当部署への物品取得の請求を行わずに業務委託契約が締結されており、恒久化後は会社に無償で貸し付ける取扱いとなっていた。
このため、社会実験により整備した11箇所のスマートIC設備9億0269万余円及び12箇所の料金収受機械に接続した増設ディスク3774万余円が重要物品管理簿に記録されていない事態となっており、物品の管理上適切とは認められない。
国土交通省では、スマートIC設備等について、要綱等において、恒久化後、更新時期が到来するまでは会社に無償で貸し付けることとしており、これに基づき、国道事務所等では、スマートIC制度が本格的に導入された18年度以降に恒久化したスマートIC設備等を会社に無償で貸し付けていた。
しかし、社会実験終了後に恒久化せず撤去された4箇所のスマートIC設備等は、他の社会実験箇所で引き続き使用されており、長期にわたり使用することが可能であること、また、スマートICの恒久化に当たっては、原則として、会社が負担するスマートIC設備等に係る費用以上の増収が見込まれることが要件とされていて、このことは社会実験の結果でも実証されていることなどから、スマートIC設備等は長期にわたり相当の財産価値及び有用性等を有しているものである。
したがって、恒久化後、スマートIC設備等を、次の更新時期が到来するまで会社に無償で貸し続けることとしていて、実質的に無償で譲渡しているのと同様の取扱いとなっているのは、スマートIC設備等の財産価値及び有用性等にかんがみて適切な取扱いとは認められない。
上記(1)、(2)のとおり、スマートIC設備等が、重要物品管理簿に記録されていなかったり、更新時期が到来するまで会社に無償で貸し続けることとしていたりするなどの事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
恒久化した31箇所のスマートIC設備と料金収受機械は、会社所有のETC機器と料金収受機械と機能が近似していることから、その耐用年数をスマートIC設備は9年、料金収受機械は7年として、恒久化した時点でのスマートIC設備等の残存価額を計算すると、18年10月に恒久化した18箇所のスマートIC設備等の残存価額は13億2914万余円、19年4月に恒久化した13箇所のスマートIC設備等の残存価額は8億8828万余円となる。
そして、このうち18年10月に恒久化した18箇所のスマートIC設備等についての残存価額は、6箇月経過後の18年度末では12億3600万余円となり、この間財産価値が9313万余円減少しており、恒久化した時点で有償貸付の取扱いとしていた場合、この額を貸付料として収受できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、地方整備局等及び国道事務所等において、業務委託契約で調達したスマートIC設備等に対する物品管理上の認識が十分でなかったこと、国土交通省において、恒久化後のスマートIC設備等の取扱いが国の財産管理上適切なものとなっていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、19年9月に、地方整備局等及び北海道開発局等に対して通知を発し、スマートIC設備等について、物品管理法等の趣旨に基づき適切に管理し、社会実験終了後の同設備の取扱いについて適正を期すため、次のような処置を講じた。
ア 業務委託契約で調達する社会実験で使用する機器について、物品管理法等に基づき、適切に管理等が行われるよう手続、記録方法等について明確にすることとした。
イ 社会実験終了後のスマートIC設備等について、スマートICを恒久化する場合には、原則として有償とし、既に恒久化している31箇所(19年4月現在)のスマートIC設備等については、有償とするよう会社と協議を速やかに行うこととした。
9地方整備局等 東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、内閣府沖縄総合事務局
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25国道事務所等 仙台河川、山形河川、福島河川、郡山、常陸河川、宇都宮、高崎河川、大宮、甲府河川、長野、新潟、長岡、高田河川、富山河川、金沢河川、岐阜、静岡、浜松河川、名四、北勢、福井河川、徳島河川、福岡、南部各国道事務所、中国幹線道路調査事務所
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(参考図)