会計名及び科目
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一般会計
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(組織)国土交通本省
(項)地域再生推進費
(項)揮発油税等財源都市環境整備事業費
(項)都市環境整備事業費
(項)都市計画事業費
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道路整備特別会計
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(項)景観形成事業推進費
(項)道路環境整備事業費
(項)地方道路整備臨時交付金
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部局等
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5府県
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補助の根拠
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下水道法(昭和33年法律第79号)、電線共同溝の整備等に関する特別措置法(平成7年法律第39号)等
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補助事業者
(事業主体)
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70県市町
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補助事業の概要
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道路を掘削し、下水道管又は電線管を敷設した後、土砂で埋め戻すなどの管路敷設工事
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新品の砂を使用することとしてる工事費
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(1)
(2)
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再生砂を利用すれば経済的となるもの
181億7062万余円(平成17、18両年度)
(国庫補助金交付額82億3414万余円)
再生砂の利用が現状のままでは経済的とならないもの
193億3241万余円(平成17、18両年度)
(国庫補助金交付額89億2275万余円)
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埋戻し材費の積算額
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(1)
(2)
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2億1426万円(平成17、18両年度)
(国庫補助金相当額 1億1152万円)
2億0784万円(平成17、18両年度)
(国庫補助金相当額 1億0761万円)
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低減できた埋戻し材費の積算額
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4279万円(平成17、18両年度)
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上記に対する国庫補助金相当額
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2218万円
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国土交通省では、都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、公共用水域の水質の保全に資することを目的として下水道事業を、また、道路の構造の保全を図りつつ、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的として電線共同溝事業を実施しており、これらの事業の一環として、下水道事業及び電線共同溝事業を実施する地方公共団体に、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
そして、これらの事業では、開削工法により道路を掘削し、下水道管又は電線管を敷設した後、土砂で埋め戻すなどの管路敷設工事を施工している(参考図参照)
。
近年、最終処分場の不足や不法投棄の多発などの様々な問題が生じており、国では、このような問題の解決のため、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律第104号。以下「建設リサイクル法」という。)、「循環型社会形成推進基本法」(平成12年法律第110号)等の法体系の整備をはじめ様々な取組を進めてきている。
国土交通省では、これらを踏まえ、建設リサイクルの推進を図り、国、地方公共団体、建設工事施工者、建設廃棄物処理業者等の関係者が再資源化及び再生資材の利用推進等に積極的に取り組むことが重要であるとして、「公共建設工事における再生資源活用の当面の運用について」(平成14年国官技第42号、国官総第126号、国営計第27号、国総事第22号)、「公共建設工事における「リサイクル原則化ルール」の策定について」(平成18年国官技第47号、国官総第130号、国営計第37号、国総事第20号)(以下、これらを「リサイクル原則化ルール」という。)を策定している。
そして、リサイクル原則化ルールでは、国土交通省の直轄工事において、経済性にかかわらず、次のことを行うなどとしている。
ア コンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊の建設副産物については、工事現場から再資源化施設に搬出すること
イ 再生資源の利用については、工事現場から40kmの範囲内に、コンクリート塊を破砕するなどして製造された再生砕石、再生砂などの再生骨材等を製造する再資源化施設がある場合、工事目的物に要求される品質等を考慮した上で、原則として、再生骨材等を利用すること
また、国土交通省では、都道府県等に対し、環境への負荷を低減した循環型社会経済システムを構築するよう、リサイクル原則化ルール等を策定の都度、これを参考として送付し、管内の市町村に対しても周知徹底するよう通知しており、都道府県等では、前記の法令、リサイクル原則化ルール等に沿って、それぞれ建設リサイクル計画等を策定するなどして積極的に再生骨材等を使用することとしている。
以上のような取組を行っている中で、再生骨材等のうち再生砂の利用量は、国土交通省における建設副産物実態調査の結果によれば、必ずしも増加傾向とはいえない状況となっている。
平成12年の建設リサイクル法制定後5年以上が経過した今日、多くの再生資材が利用されており、特に再生砕石、再生砂についてみると、再生砕石については、既に道路の路盤等に多く利用されているものの、再生砂については、同じ都道府県内の事業主体であっても山、川等から採取した砂(以下「新品の砂」という。)の使用と再生砂の利用とが区々となっている場合がある。
このため、本院は、6県市(注1)
において、経済性等の観点から、建設リサイクル法等の趣旨に沿って、環境への負荷の低減に資するため、再生砂の利用が図られ、かつ、経済的な設計、積算を行っているかなどに着眼して会計実地検査を行った。
6県市では、17、18両年度に、管路敷設工事を計616工事(工事費総額375億0303万余円、国庫補助金総額171億5690万余円)実施している。これらの工事では、設計に当たり、各種の設計基準等により、管路を保護するため、掘削底面部から管上10cmまでなどの埋戻し材については、新品の砂を使用することなどとしており、その埋戻し材の材料費(積算額計4億2211万余円、以下「埋戻し材費」という。)も多額に上っている。このため、埋戻し材費を対象として、設計図書等の書類により工事内容を把握するとともに、再生砂の利用の可否について検査した。
6県市では、埋戻し材費の積算に当たり、各県市がそれぞれ定めた単価表等を用いて積算している。
検査したところ、前記の616工事について以下のような状況となっていた。
(1)再生砂を利用すれば経済的となるのに、利用していなかったもの
6県市 274工事 埋戻し材費の積算額 2億1426万余円
(国庫補助金相当額 1億1152万余円)
6県市においては、単価表に再生砂の単価が定められていなかったり、設計基準等に再生砂の利用方法について特段の定めがなかったりしたことなどから、新品の砂を使用することとしていて、再生砂の供給状況や単価の調査を十分に行っていなかった。
しかし、再生砂の単価については、刊行されている積算参考資料に掲載されていたり、同一地域の他の事業主体においては、再生砂の品質等に支障がないとして単価の調査を外部に依頼して単価を定めていたりなどしていたことから、新品の砂と再生砂の単価の比較が可能であった。そして、これらを比較したところ、274工事(埋戻し材の数量計68,394m3
)においては、再生砂の方が安価となることから、より経済性に優れた再生砂を利用すべきであったと認められた。
A県では、同県が適用している管路敷設工事の設計基準等において、埋戻し材に新品の砂を使用することとしており、同県制定の単価表により1m3
当たりの単価を平成17年度3,700円から6,700円、18年度3,900円から6,600円とし、これにより積算していた。
しかし、同県の建設リサイクル計画等では、工事現場から40kmの範囲内に再資源化施設がある場合は、再生砂などの再生骨材等を利用するなどして再生資源の利用及び再資源化施設の活用を図ることとしている。そこで、今回、会計実地検査時に、同県管内の工事現場から40kmの範囲内において再生砂を製造している再資源化施設の有無について調査したところ、複数の市に再資源化施設が所在していた。そして、このうち1市では、下水道工事において、再生砂は品質等に支障はないとして、同市制定の単価表に、1m3
当たりの単価を、17年度2,500円、18年度2,500円又は2,600円と定め、再生砂を利用することとして設計、積算していた。
上記のことから、同県及び管内市町が実施した21の管路敷設工事の工事現場は、再資源化施設から40kmの範囲内にあり、再資源化施設から工事現場までの運搬費を加えた再生砂の1m3
当たりの単価は2,692円から3,933円となり、新品の砂の単価よりも安価となることから、再生砂を利用すべきであったと認められた。
(2)再生砂の利用が現状のままでは経済的とならないもの
3県(注2) 342工事 埋戻し材費の積算額 2億0784万余円
(国庫補助金相当額 1億0761万余円)
616工事のうち、上記の274工事を除いた3県の342工事(埋戻し材の数量計73,154m3
)については、以下の理由により再生砂を埋戻し材に利用することが現状のままでは経済的とならないため、利用できないとしていた。
ア 再生骨材等を製造する再資源化施設は所在するものの、再生砂を製造する設備が整っている施設が比較的近い距離に所在しないこと
イ 上記アのため、再生砂を製造している再資源化施設からの運搬費等を考慮すると単価が新品の砂より割高になること
しかし、今回、A県内の再生砂を製造していない再資源化施設を調査したところ、製造設備に簡易な改造を行うことで再生砂の製造が可能となり、また、管路敷設工事を施工している地方公共団体等の事業主体が、再生砂を利用することを設計図書等に明記することなどによって利用数量が増加すれば、再生砂の製造を行いたいとの意向を示している再資源化施設も見受けられた。
また、国土交通省では、再生資材の利用推進等を図るため、「公共建設工事における分別解体等・再資源化等及び再生資源活用工事実施要領(土木)について」(平成14年国官技第44号、国官総第127号。以下「再資源活用工事実施要領」という。)により、設計図書等に再生資材名を記載することなどとしている。
これらのことから、3県において発注する工事の設計図書等に再生砂を利用することを明記するなどすれば、再資源化施設において再生砂の製造設備の整備が図られ、再生砂の供給量が増大するとともに再生砂が経済的になるなどし、利用の促進が図られることが見込まれる。
したがって、前記のように、6県市の管路敷設工事において、埋戻し材に再生砂でなく新品の砂を使用していることは、経済的なものになっていなかったり、環境への負荷を低減することになっていなかったりなどしていて適切とは認められず、また、設計図書等に再生砂を利用することを明記していないことは、積極的な再生砂の利用の促進が図られていないと認められることから、改善を図る必要があると認められた。
前記(1)のとおり、埋戻し材に新品の砂に代えて再生砂を利用することとして修正計算すると、埋戻し材費は計1億7147万余円となり、積算額2億1426万余円を4279万余円(国庫補助金相当額2218万余円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省においてリサイクル原則化ルール及び再資源活用工事実施要領を都道府県等に送付しているのに、各事業主体においてその趣旨が徹底されていなかったり、再生砂に対する認識が十分でなかったりしていることなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、コンクリート塊の再生利用を促進することの必要性にかんがみ、19年10月に、都道府県等に対して、再生砂の積極的な利用を図る旨の通知を発するなどの処置を講じた。