会計名及び科目
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一般会計
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(組織)国土交通本省
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(項)急傾斜地崩壊対策等事業費
(項)海岸事業費
(項)住宅建設等事業費
(項)都市計画事業費
(項)河川等災害復旧事業費
(項)河川等災害関連事業費
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平成13年1月5日以前は、
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(組織)国土庁
(組織)運輸本省
(組織)建設本省
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(項)離島振興事業費
(項)海岸事業費
(項)急傾斜地崩壊対策等事業費
(項)海岸事業費
(項)住宅建設等事業費
(項)市街地整備事業費
(項)都市計画事業費
(項)河川等災害復旧事業費
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道路整備特別会計
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(項)道路事業費
(項)離島道路事業費
(項)道路環境整備事業費
(項)地方道路整備臨時交付金
(項)街路事業費(平成15年度まで)
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治水特別会計(治水勘定)
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(項)河川事業費
(項)河川総合開発事業費
(項)砂防事業費
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港湾整備特別会計(港湾整備勘定)
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(項)港湾事業費
(項)離島港湾事業費
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部局等
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国土交通本省(平成13年1月5日以前は国土庁、運輸本省及び建設本省) 16府県
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事業主体
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県10、市13、計23事業主体
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違約金等の概要
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談合等があった場合に、事業主体が、これによる損害の回復を図るため契約額の一定割合などを受注者に請求し、その返還を受けるもの
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指摘の対象となった違約金等収納済額
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18億7847万余円
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(平成15年度〜18年度)
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未返還となっている上記に係る国庫補助金相当額
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8億3156万円
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違約金等の請求を行っていない契約額
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171億6082万余円
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(平成9年度〜15年度)
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上記に係る国庫補助金相当額
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81億3838万円
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国土交通省では、国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備等を図るため、多数の事業を実施してきており、その一環として、道路、河川、下水道等の建設に係る公共工事等を行う地方公共団体に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
これら地方公共団体を事業主体として発注される公共工事等において、工事等の受注者及び受注者以外の入札参加業者等(以下「受注者等」という。)が、入札に当たり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し、談合を行ったとして公正取引委員会から排除措置命令等を受けたり、刑法(明治40年法律第45号)第96条の3に規定する競売入札妨害罪、談合罪などの容疑で逮捕等されたりする事態(以下、法律の規定に違反するこれらの行為を「談合等」という。)が数多く発生している。
事業主体では、上記のように、公共工事等の入札において談合等があった場合には、談合等によって形成された落札価格と純然たる競争状態で形成されたであろう価格との間に生じる差額を、受注者等の不法行為によって生じた損害あるいは受注者の不当利得であるとして、損害賠償又は不当利得返還請求の訴訟を提起してきたところであり、これにより裁判所が損害を認定した判例の蓄積も進んでおり、認定された損害額は契約額の5%、7%、10%などとなっている。
そして、近年では、すべての都道府県や政令指定都市で、談合等があった場合に生じた損害の回復を容易にするとともに、談合等に対する抑止効果を期待して、契約書等に、独占禁止法第3条の規定に違反するとして公正取引委員会から排除措置命令又は課徴金納付命令を受け、これらが確定したときなどには、受注者は契約額の一定割合を違約金として支払わなければならないとする条項(以下「違約金条項」という。)をあらかじめ設定しており、その他の事業主体でも違約金条項を導入するものが増えてきている。これにより、実際に、談合等の事実が確定するなどした場合には、上記のような訴訟を提起することなく、契約額の一定割合を受注者に違約金として請求し、その返還を受けている状況である。この違約金の額は契約額の10分の1から10分の2の額となっているものが一般的であるが、事業主体によってはこれ以上に引き上げている事例も見受けられる。
また、契約書等に違約金条項がない場合でも、受注者等の談合等を理由として、損害額の調査を行い、談合等が行われていた期間と談合等が行われなくなった後の期間の平均落札率の差を損害率と考えることなどによって算定された額(以下、違約金条項によらず請求する損害額を「損害金」という。)を請求している事業主体も見受けられる(以下、違約金と損害金を合わせて「違約金等」という。)。
この違約金等については、談合等の事実が確定することを条件に請求しているものが一般的である。
これらの請求によって事業主体に収納される違約金等は、談合等があったと認定される期間が数年間に及び、請求の対象とされる公共工事等が百件以上に上る場合も見受けられ、この場合、対象となる受注者数が数十社以上となることなどから、その金額は多額なものとなっている。
国土交通省では、所管する国庫補助事業において、違約金等が事業主体に収納された場合、これに係る国庫補助金相当額は過大な交付であるとして、当該事業主体から自主的な返還の申出を受けた場合に、国庫補助金相当額の国への返還を受けているところである。
この返還について、同省が把握している平成13年度から18年度までの実績をみると、毎年度、公共下水道、都市公園、港湾整備等の事業について返還の実績があり、その合計は8事業主体による14件(国へ返還された国庫補助金相当額1億9382万余円)となっている。
国庫補助事業については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)において、各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当たっては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が公正かつ効率的に使用されるように努めなければならないとされている。
また補助事業者等も、補助金等が貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し、法令の定め及び補助金等の交付の目的に従って誠実に国庫補助事業を行うように努めなければならないとされている。
この国庫補助事業において、談合等の事実が確定するなどした場合、事業主体は、受注者等に対し、これによって被った損害の回復等を図ることとして違約金等を請求することになるが、違約金等を収納した場合、当該国庫補助事業の実施に要した費用は、実質的に、収納した違約金等の額に相当する分が減少することから、交付を受けた国庫補助金は過大に交付されていることとなる。そこで、国庫補助金が違約金等に係る国庫補助金相当額分だけ過大に交付されていると認識した一部の事業主体においては、これを申し出て自主的に国へ返還しており、前記のとおりの実績となっているところである。
以上のことから、経済性等の観点から、国庫補助事業の事業主体において、談合等に係る違約金等を速やかに収納し、これに係る国庫補助金相当額を速やかに国に返還しているかなどに着眼して検査した。
20都道府県(注1)
における30事業主体が発注した国土交通省所管の国庫補助に係る工事及び測量、設計等の委託業務(以下「工事等」という。)に関し、受注者等が談合等を行ったとして、14年度から18年度までの間に、独占禁止法に違反し公正取引委員会から排除措置命令(排除勧告)若しくは課徴金納付命令を受けたり、刑法の競売入札妨害罪、談合罪の容疑で逮捕若しくは起訴されたりしていて、19年3月末時点において、受注者等の談合等の事実が確定している計1,859工事等、契約額計720億4985万余円(国庫補助金相当額336億1073万余円)を検査の対象とした。
そして、上記の事業主体において会計実地検査を実施した。検査に当たっては、事業主体に国庫補助金の受給状況、入札・契約状況等に関する調書の作成を依頼し、提出を受けた調書の内容を確認するなどして、契約書等における違約金条項の有無や違約金等の収納の状況、これに係る国庫補助金相当額の取扱い等について検査した。
検査したところ、16府県(注2) における23事業主体の計1,314工事等、契約額計560億3926万余円(国庫補助金相当額262億1722万余円)において、次のような事態が見受けられた。
ア 違約金等は収納されているが、これに係る国庫補助金相当額の国への返還が行われていないもの
16事業主体 計925工事等 違約金等収納済額計18億7847万余円
(これに係る未返還分の国庫補助金相当額8億3156万余円)
13府県(注3) の16事業主体では、各事業主体が発注した国庫補助事業に係る計925工事等、契約額計388億7844万余円(国庫補助金相当額180億7883万余円)において、談合等の事実が確定したことを受け、違約金条項に基づく違約金の請求を行ったり、損害金の調査、算定及び請求を行ったりして、談合等によって被った損害を回復している。しかし、これらの事業主体においては、収納された違約金等計18億7847万余円に係る国庫補助金相当額8億3156万余円の国への返還が行われていない。
A市では、B県に所在する建築業者が、遅くとも平成11年4月以降から、公正取引委員会が審査を開始した14年10月まで、A市住宅都市局が公募型指名競争入札又は指名競争入札において指名し発注した建築工事において、共同して受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしたとして、16年3月、公正取引委員会から計91建築業者が課徴金の納付命令を受け、同命令が確定したことから、同年7月、これら業者に対して、同市の工事請負契約約款等に基づいて違約金等の請求を行っている。その後、請求に応じなかった業者に対する訴訟の提起や、地方裁判所による和解案の提示などを経て、19年3月末時点で、国庫補助事業に係るもの計63工事分の違約金等計8億3714万余円が、同市の一般会計の雑入として収納されている状況である。
しかし、これに係る国庫補助金相当額4億1168万余円の国への返還は行われていない。
イ 違約金等の請求を行っていないもの
7事業主体 計389工事等 契約額計171億6082万余円
(これに係る国庫補助金相当額81億3838万余円)
6県(注4) の7事業主体では、各事業主体が発注した国庫補助事業に係る計389工事等、契約額計171億6082万余円(国庫補助金相当額81億3838万余円)について、談合等の事実が確定しているが、これについて違約金等の請求を行っていない。これらの工事等は、契約書等に違約金条項の記載がなく、談合等によって被った損害金の調査、算定及び請求も行っていないものや、違約金条項を設けているのにこれに基づく違約金の請求を行っていないものである。
C市では、平成16年2月に同市が発注した国庫補助事業である道路改良工事において、17年2月に、この工事を受注した同市に所在する土木建設会社の役員等が、競売入札妨害罪等で起訴される事態が発生し、17年5月までに全員の刑が確定している。しかし、同市では、本件のような事態が発生した場合には、「賠償金として、この契約による請負代金額の10分の1に相当する額を指定する期間内に支払わなければならない」とする違約金条項が当該工事の工事請負契約書に規定されていたにもかかわらず、違約金の請求を行っていない状況である。
仮に本件における違約金を契約額1億1397万余円の10%として算定した場合、違約金相当額は1139万余円となり、これに係る国庫補助金相当額は、569万余円となる。
以上のように、違約金等が収納されているのに、これに係る国庫補助金相当額を国へ返還していなかったり、違約金条項などに基づく損害の回復を図っておらず、国庫補助金相当額の国への返還も行っていなかったりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、事業主体である地方公共団体において、収納した違約金等については、結果として、国庫補助金が過大に交付された事態になっていることについての認識及び国庫補助事業について談合等の事実が確定するなどした場合には、その損害の回復に努めることがより一層求められているのに、このことについての認識が十分でなかったこと、また、国土交通省において、違約金等に係る国庫補助金相当額の返還等の取扱いについて定めがなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、19年8月都道府県等に対して通知を発し、談合等があった場合の同省所管の国庫補助事業における損害額については、その回復に努めることがより一層求められていることを周知するとともに、談合等を行った受注者等から事業主体が違約金等を収納した場合には、当該違約金等に係る国庫補助金相当額について、当該補助事業に係る完了実績報告書を再提出し、当該国庫補助金相当額を返還することなど補助金等の返還に係る取扱いを定めて、その周知徹底を図り、違約金等に係る国庫補助金相当額の国への返還が的確に実施されるよう処置を講じた。
20都道府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、山形、埼玉、千葉、神奈川、長野、静岡、愛知、三重、兵庫、奈良、鳥取、香川、高知、福岡、長崎各県
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16府県 京都府、青森、山形、埼玉、千葉、神奈川、長野、静岡、愛知、三重、兵庫、奈良、香川、高知、福岡、長崎各県
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13府県 京都府、青森、山形、埼玉、千葉、神奈川、静岡、愛知、三重、兵庫、奈良、福岡、長崎各県
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6県 埼玉、長野、香川、高知、福岡、長崎各県
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