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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

河川改修工事等の河川高潮対策区間における間接工事費の算定に当たり、工種区分の選定が適切に行われるよう改善させたもの


(7) 河川改修工事等の河川高潮対策区間における間接工事費の算定に当たり、工種区分の選定が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)国土交通本省
(項)河川等災害復旧事業費
治水特別会計(治水勘定)
(項)河川事業費等
部局等
直轄事業
5地方整備局
補助事業
4都県
事業及び補助の根拠
河川法(昭和39年法律第167号)、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)、地方財政法(昭和23年法律第109号)
事業主体
直轄事業
5地方整備局
補助事業
4都県
9事業主体
工事の概要
河川改修事業等の一環として、洪水、高潮等による災害発生の防止を図るなどのために河川高潮対策区間において築堤工、護岸工等を施工するもの
工事費
直轄事業
補助事業
(国庫補助金交付額
23億7037万余円
13億7556万余円
6億8168万余円)
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)
工種区分の選定が適切でなかった間接工事費の積算額
直轄事業
補助事業
(国庫補助金相当額
5億0381万円
3億1034万余円
1億5825万余円)
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)
低減できた間接工事費の積算額
直轄事業
補助事業
(国庫補助金相当額
2860万円
3370万円
1720万円)
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)

1 工事の概要

(1) 河川高潮対策区間の概要

 国土交通省では、洪水、高潮等による災害発生の防止を図るなどのため、国が行う直轄事業又は地方公共団体が実施する国庫補助事業として、河川改修事業等を毎年度多数実施している。
 河川改修事業等の一環として実施される河川改修工事等の施行箇所は、河川高潮対策区間とそれ以外の区間に分けられる。
 このうち、河川高潮対策区間は、河川管理施設等構造令(昭和51年政令第199号)により、国土交通大臣、都道府県知事等の河川管理者が定める計画高潮位(注1) が計画高水位(注2) より高い区間とされており、この区間に築造する堤防については、必要に応じて、波返工、消波工等を施工するなどの措置を講ずるものとされている。

 計画高潮位  過去の主要な高潮及びこれらによる災害の発生状況等を勘案して定められた潮位
 計画高水位  流域の人口、資産の集積等を勘案して定められた河川整備を行う際の基本となる水位

(2) 河川改修工事等の工事費の積算

 河川改修工事等の工事費は、国土交通省が制定した「土木工事標準積算基準書」又はこの積算基準を参考にして都道府県が制定した積算の基準(以下、これらを合わせて「積算基準」という。)に基づき積算することとなっている。
 積算基準によれば、河川改修工事等の工事費は、次のとおり、直接工事費と間接工事費を合算した工事原価に一般管理費等を加算して工事価格を算定し、これに消費税相当額を加算して算定することとされている。

河川改修工事等の河川高潮対策区間における間接工事費の算定に当たり、工種区分の選定が適切に行われるよう改善させたものの図1

 このうち、間接工事費については、直接工事費に、「河川工事」、「海岸工事」、「河川・道路構造物工事」等の工種区分ごとに定められた所定の共通仮設費率又は現場管理費率を乗ずるなどして算定することとなっている。

(3) 工種区分とその工種内容

 積算基準によれば、工種区分のうち「河川工事」及び「海岸工事」に該当する工種内容は、 次表のように定められている。

表 「河川工事]及び「海岸工事」の工種内容
工種区分
工種内容
河川工事
河川工事(河川高潮対策区間の工事を除く)にあって、次に掲げる工事
築堤工、掘削工、浚渫工、護岸工、特殊堤工、根固工、水制工、水路工、河床高水敷整正工、堤防地盤処理工、河川構造物グラウト工、護岸工等の補修及びこれらに類する工事
海岸工事
海岸工事及び河川高潮対策区間の工事にあって、次に掲げる工事
堤防工、突堤工、離岸堤工、消波根固工、護岸工、樋門(管)工、河口浚渫、水(閘)門工、養浜工、堤防地盤処理工及びこれらに類する工事

 これによれば、当該工事の施行箇所が河川高潮対策区間であって、工事内容が堤防工等に該当するものであれば、その工種区分は、「海岸工事」を選定するものとされている。また、共通仮設費率及び現場管理費率は、工事の規模によるものの、おおむね「海岸工事」の方が低率となっている。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 河川改修事業等として実施される工事には、前記のとおり適用される工種区分が複数あり、また、間接工事費の算定に係る共通仮設費率及び現場管理費率は、これらの工種区分ごとに異なる数値が設定されている。
 そこで、経済性等の観点から工種区分の選定は適切に行われているかなどに着眼して、間接工事費の算定状況について検査した。

(検査の対象及び方法)

 平成17、18両年度に河川高潮対策区間で実施した河川改修工事等のうち、直轄事業として7地方整備局管内の11事務所(注3) が施行した65工事、工事費総額113億0596万余円及び補助事業として8都府県(注4) が施行した170工事、工事費総額214億8567万余円(国庫補助金70億8191万余円)を検査の対象として、上記の11事務所及び8都府県の事務所等において、各工事の設計計算書と積算基準を突合するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、直轄事業として5地方整備局管内の6事務所(注5) が施行した15工事、工事費総額23億7037万余円及び補助事業として4都県(注6) が施行した19工事、工事費総額13億7556万余円(国庫補助金6億8168万余円)において、工事の施行箇所が河川高潮対策区間であること及び工事内容を踏まえると、工種区分「海岸工事」の共通仮設費率及び現場管理費率を適用して間接工事費を算定すべきであったのに、工種区分「河川工事」を選定して間接工事費の算定を行っている事態が見受けられた。

<事例>

 A地方整備局管内のB事務所では、平成17年度に同事務所管内で施行したC川D地区築堤工事(工事費9208万余円、工事施行延長102m)の間接工事費の算定に当たり、工事名が築堤工であることから、工種区分「河川工事」の共通仮設費率8.14%、現場管理費率23.63%を適用して、間接工事費を2023万余円と算定していた。
 しかし、当該工事の施行箇所が河川高潮対策区間であり、高潮対策として波返工を整備したものであることを踏まえると、当該工事に係る間接工事費は、工種区分「海岸工事」の共通仮設費率7.91%、現場管理費率20.35%を適用して算定すべきであった。これによれば、間接工事費は1793万余円となり、本件間接工事費は約230万円低減できたと認められた。
 このように、河川高潮対策区間における河川改修工事等の間接工事費の算定に当たり、工種区分の選定を「海岸工事」とすべきものを「河川工事」としていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事において工種区分を「海岸工事」として間接工事費を算定すると、積算額を直轄事業分で約2860万円、補助事業分で約3370万円(国庫補助金相当額約1720万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、地方整備局及び都県において工種区分の選定に対する理解が十分でなかったことにもよるが、国土交通省及び都県において、積算基準の河川高潮対策区間で工種区分「海岸工事」を適用すべきか、工種区分「河川工事」を適用すべきかを必ずしも明確に示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、19年9月に各地方整備局等及び都道府県等に対して通知を発し、河川改修工事等の河川高潮対策区間における間接工事費の算定に当たり、工種区分の選定においては、「河川・道路構造物工事」、「河川維持工事」のみに該当する工事を除き、原則として「海岸工事」を適用することを明確にする処置を講じた。

 11事務所  仙台河川国道、荒川下流河川、沼津河川国道、木曽川下流河川、淀川河川、大和川河川、和歌山河川国道、岡山河川、徳島河川国道、筑後川河川、熊本河川国道各事務所
 8都府県  東京都、大阪府、愛知、三重、兵庫、山口、香川、大分各県
 6事務所  仙台河川国道、荒川下流河川、淀川河川、大和川河川、岡山河川、熊本河川国道各事務所
 4都県  東京都、愛知、三重、香川各県