会計名及び科目
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道路整備特別会計
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(項)道路事業費
(項)北海道道路事業費
(項)離島道路事業費
(項)道路環境整備事業費
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部局等
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国土交通本省
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事業及び補助の根拠
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道路法(昭和27年法律第180号)
離島振興法(昭和28年法律第72号)
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事業主体
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国道事務所等2、県2、計4事業主体
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事業の概要
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既設のトンネルの老朽化対策、道路交通の安全対策及び地域の発展等を目的としてトンネル整備を実施するもの
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検査の対象としたトンネル工事の箇所数及び整備事業費(工事着手時に用地の取得が完了していないもの)
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直轄事業
国庫補助事業
(国庫補助金相当額
計
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30箇所
39箇所
69箇所
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679億6792万余円
822億4520万余円
434億4344万余円)
1502億1312万余円
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(平成4年度〜18年度)
(平成6年度〜18年度)
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上記のうちトンネル工事を中止している箇所数及び整備事業費
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直轄事業
国庫補助事業
(国庫補助金相当額
計
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2箇所
2箇所
4箇所
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59億8339万円
51億4464万円
30億1026万円)
111億2804万円
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(平成15年度〜18年度)
(平成8年度〜17年度)
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国土交通省では、道路交通の安全確保とその円滑化を図るため道路整備事業を実施しており、その一環として、既設のトンネルの老朽化対策、道路交通の安全対策、地域の発展等を目的としたトンネル整備事業を毎年多数実施している。
そして、近年、道路整備事業の実施箇所が比較的地形の厳しい山間部等に移ってきたことに伴い、トンネル整備事業が増加してきている。
また、経済発展に伴う道路需要の増大等により、トンネルの高さ、幅員等の規模も大きくなってきていたり、整備延長の長いトンネルが増加してきたりしていることから、トンネル整備事業に要する費用は多額になっている。
ア 道路整備事業における用地の取得等
道路整備事業の実施に当たっては、整備する路線の事業実施計画の国土交通大臣等による承認後、道路施設の設計、用地調査の結果等に基づき必要な用地の面積及び土地所有者を確定し、この土地所有者と用地取得のための交渉を行い、用地を取得した後に工事に着手することとされている。
そして、用地取得のための手続等を定めている地方整備局用地事務取扱規則(平成13年国土交通省訓令第86号)等によると、土地等の取得等が完了していない土地においては原則として工事を行ってはならないとされている。
また、国土交通省では、用地の取得が困難になった場合について、平成15年3月に「事業認定等に関する適期申請等について」(平成15年国道国第345号等。国土交通省道路局長等6局長連名通知。)を地方整備局長等に対し発している。これによると土地収用のために必要な事業認定の申請は、当該事業の完成期限等を見込んだ適切な時期に行うこととされている。そして、土地収用制度の活用に当たっては、計画担当、事業実施担当及び用地担当の各部局間での協力関係が不可欠であることに留意し、事業の計画段階から十分な連絡調整を行うこととされている。
イ トンネル整備事業における用地の取得等
トンネル整備事業に必要な用地(以下「トンネル用地」という。)については、一般に、トンネルの掘削を開始する起点側と掘削が完了する終点側のそれぞれの坑口部分に係る範囲を取得することとし、坑口部分を除く範囲については土被りが厚く開発行為等があってもトンネルの構造に影響がないとして用地取得の対象外としている。このことから、トンネル工事ではトンネル全体からみれば一部である起点側のトンネル用地のみを取得すれば、終点側が未取得の場合でも起点側からトンネル工事に着手し、終点側のトンネル用地の直下の手前の位置まで工事を続けることが可能となる。
しかし、いったん工事に着手したトンネルは、平地部に施工する道路と異なり、工事を中止した場合、施工済み区間のみを部分的に供用させることはできない。
ウ トンネル整備事業における工事機械等
トンネル工事で使用する工事機械としては、ドリルジャンボ、コンクリート吹付機等があり、また、設備としては吹付プラント設備、濁水処理設備等がある。トンネル工事の着手に当たっては、これらの工事機械及び設備(以下「トンネル掘削機械等」という。)を施工箇所に搬入、組立てなどしてから、掘削、覆工等を行い、トンネル工事が終了する際に解体して撤去することになる。これらのトンネル掘削機械等は、大型で特殊なものが多いことから、設置及び撤去に要する費用並びに機械損料等の維持費も多額になっている。
このように、トンネル整備事業は、他の道路整備事業に比べて、〔1〕事業に要する費用が多額となっていること、〔2〕トンネル用地の一部である起点側の用地を取得すればトンネル部分の大半が施工できること、〔3〕施工済み区間のみを部分的に供用させることができないこと、〔4〕トンネル掘削機械等の設置及び撤去に要する費用等が多額であることなどの特性を持っている。
トンネル整備事業は、上記のとおり、起点側のトンネル用地を取得して掘削工に着手した後、終点側の用地取得について合意が得られていない場合には、終点側トンネル用地の直下の手前で工事を中止しなければならず、このような場合は、工事費が増加するとともに、トンネルの供用時期が遅れることにより、多額の事業費を投入した事業の効果が早期に発現しない事態となる。
そこで、トンネル整備事業について、経済性、有効性等の観点から、トンネル用地の取得が計画的に行われ、工事の進ちょくが図られ、トンネル整備事業実施の効果が早期に発現しているか、また、トンネル用地の取得が完了していない場合に十分な方策を講じているかなどに着眼して検査した。
本院は、9地方整備局等(注1) 管内の15国道事務所等(注2) 及び13道府県(注3) (以下、これらを合わせて「事業主体」という。)計28事業主体において会計実地検査を行った。そして、これらの事業主体が16年度から18年度までの間に整備事業を実施しているトンネル177箇所のうち、工事着手時にトンネル用地の取得が完了していない69箇所、これに係る事業費1502億1312万余円(直轄事業679億6792万余円、国庫補助事業822億4520万余円(国庫補助金相当額434億4344万余円))を対象として、工事請負契約書、トンネル用地の土地売買契約書等の書類により検査し、必要に応じて工事現場に赴き現地の状況を検査した。
上記のトンネル工事着手時にトンネル用地の取得が完了していない69箇所のトンネル工事のうち、19年3月末現在でトンネル工事が完了していない31箇所について、工事着手後の事業の状況をみると、次のとおりとなっていた。
トンネル工事に着手するに当たって、終点側のトンネル用地の取得が見込まれるとして工事に着手したものの、その後の用地交渉によっても土地所有者の合意が得られなかったため、トンネル工事を中止している事態が4箇所(注4) で見受けられた。
A事業主体では、延長910mのトンネル築造工事を平成15年度から17年度までに工事費2,802,450,000円で実施している。当初、事業実施担当部局では、トンネル用地についてすべては取得できていないものの、起点側の用地については取得済であり、また、用地説明会等において特段の反対意見がなく、終点側については工事着手後の必要な時期までに用地取得できるとの見込みがあるとして、16年3月に工事に着手していた。
しかし、工事に着手した時点では、用地担当部局は終点側のいずれの土地所有者とも戸別の用地交渉を行っていなかった。そして、工事着手後に用地交渉を開始したが、価格交渉が不調に終わるなどして用地取得についての合意が得られなかった。
このため、事業実施担当部局では、起点より約690mの当該土地所有者の所有地の直下の手前の位置まで掘削が到達した17年6月に掘削工を中断していた。
さらに、用地担当部局では、土地収用のための事業認定の申請をしないまま、その後も用地交渉を継続していたが、交渉の進展が見込めない状況となった。
そこで、事業実施担当部局では、17年10月、掘削工の中断後も実施していた覆工工も中断していた。そして、トンネル掘削機械等については、存置しておくと維持費が生ずることから、段階的に撤去等を行い、18年3月にはトンネル工事を中止していた。
これらの4箇所におけるトンネル整備事業は、トンネル工事の中止に伴い、当該トンネルの供用時期が遅れることから事業実施の効果が早期に発現しないものとなっており、これに係る整備事業費は、18年度末までで直轄事業59億8339万余円(2事業主体)、国庫補助事業51億4464万余円(国庫補助金相当額30億1026万余円)(2事業主体)計111億2804万余円に上っている。また、この整備事業費には、トンネル工事に着手するに当たって必要なトンネル掘削機械等の設置費用計7551万余円と中止に伴い必要となった撤去費用計3923万余円が含まれている。そして、トンネル工事を再開した場合には、残余の掘削に必要なトンネル掘削機械等の編成等は必ずしも同じではないが、これらの再設置、再撤去に伴う費用が発生することになる。
上記(1)の4箇所を除く27箇所においては、終点側のトンネル用地の取得が完了しないまま工事に着手し、現在も施工中であるが、これらのトンネル用地の取得状況をみると、19箇所についてはトンネル用地の取得が完了しており、5箇所については、用地取得が完了していないものの、当該トンネル用地が国有林であったり、土地所有者との間で用地取得について合意が得られていたりしていて、トンネル工事の進ちょくに支障はない状況であった。
しかし、残りの3箇所については、トンネル坑口付近に接続する工事用道路が工事中であるなど当面掘削工事に着手する予定がないとして、用地交渉については特段急ぐ必要がないなどと判断し用地取得を完了していなかった。
これら3箇所のトンネル工事は、いずれも19年3月に契約が締結されたばかりではあるが、用地取得について、確実に取得が見込めないまま推移したとすると、トンネル工事の進ちょくに支障が生ずるおそれがあると思料される。
したがって、トンネル整備事業の実施に当たり、その円滑な推進に必要な、事業の特性に配意した用地取得に対する認識が十分でなく、このため工事が中止されるなどしていて、多額の費用を投入して整備するトンネル整備事業実施の効果が早期に発現していないなどの事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア トンネル工事に着手するに当たり、事業実施担当、用地担当等各部局間及び関係機関との間で相互に十分な連絡調整が行われなかったこと
イ トンネル用地について、終点側の土地所有者の意向を十分に把握しないまま工事に着手したこと
ウ 取得が困難と見込まれるトンネル用地について事業認定の申請を適期にしていないなど土地収用制度の効果的な運用が図られていなかったこと
前記の「事業認定等に関する適期申請等について」により、土地収用のための事業認定の申請を事業の完成期限等を見込んだ適切な時期に行うことなどについて、事業主体に対して周知しているものの、トンネル整備事業の特性に配意した取扱いが必要であることについて十分に周知していなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、19年9月、トンネル整備事業の進行管理の適正化を図るため、トンネル整備事業の特性に配意し、各地方整備局等に対しトンネル整備を効率的に実施する旨の通知を発し、事業実施の効果が早期に発現するよう次のような処置を講じた。
ア 工事着手時点までに、必要な用地の確定、工事着手及び用地取得の見込み等について、事業実施部局、用地担当部局等の関係部局間及び関係機関との間で緊密に連絡調整を行うこととした。
イ トンネル用地の取得が完了しないまま工事に着手する場合には、他事業にも増してより一層、土地所有者の意向等を把握することとした。
ウ 取得が困難と見込まれるトンネル用地について「事業認定等に関する適期申請等について」等に則り、適期に事業認定の申請をするなど土地収用制度を効果的に運用することとした。
エ 上記アからウの各事項について、都道府県等に対しても同様に周知することとした。
9地方整備局等 東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局
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15国道事務所等 岩手河川、三陸、福島河川、長野、横浜、紀勢、長岡、奈良、福山河川、中村河川、鹿児島各国道事務所、小樽、函館、札幌、釧路各開発建設部
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13道府県 北海道、京都府、岩手、新潟、岐阜、愛知、和歌山、山口、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分各県
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4箇所 新ワッカケトンネル(北海道余市町所在)、太島内2号トンネル(北海道石狩市所在)、当麻トンネル(新潟県阿賀町所在)、御嶽トンネル(長崎県対馬市所在)
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