会計名及び科目
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港湾整備特別会計(港湾整備勘定)
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(項)港湾事業費
(項)離島港湾事業費
(項)沖縄港湾事業費
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部局等
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直轄事業
補助事業
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4地方整備局等
2地方整備局等
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事業及び補助の根拠
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港湾法(昭和25年法律第218号)
離島振興法(昭和28年法律第72号)
沖縄振興特別措置法(平成14年法律第14号)
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事業主体
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直轄事業
補助事業
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4地方整備局等
2県、3市、1管理組合
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事業の概要
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港湾事業の実施に当たり、漁業権等の先行補償に要した費用を支払うもの
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補償費相当額
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直轄事業
補助事業
(国庫補助金相当額
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11億1671万円
14億4646万円
5億3017万円)
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(平成14年度〜18年度)
(平成14年度〜18年度)
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上記のうち利子支払相当額
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直轄事業
補助事業
(国庫補助金相当額
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3億1852万円
4億3941万円
1億2713万円)
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利子支払額を基に試算した場合との開差額
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直轄事業
補助事業
(国庫補助金相当額
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9476万円
6269万円
1928万円)
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(平成14年度〜18年度)
(平成14年度〜18年度)
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国土交通省では、港湾事業の実施に伴い漁業権等の消滅又は制限の必要が生じたときは、漁業権者である漁業協同組合等に対し、その損失を補償している。
この漁業権等の消滅又は制限に対する損失補償については、「直轄事業の施行に伴い漁業権等を先行補償する場合の取扱いについて」(昭和47年港管第760号港湾局長通達。以下「通達」という。)等により、地方公共団体等は、漁業権者から、港湾計画に予定されている事業区域に係る一括全面補償要求が行われた場合等に、港湾事業の実施に先行して当該事業区域に係る漁業補償(以下「先行補償」という。また、先行補償を行う者を「先行補償者」という。)を一括して行うことができるとされている(参考図参照)
。
そして、国が実施する直轄事業の場合は地方整備局長(北海道にあっては北海道開発局長、沖縄県にあっては沖縄総合事務局長)と先行補償者との間で、地方公共団体等が実施する補助事業の場合は補助事業者と国土交通大臣との間で、それぞれあらかじめ先行補償の対象となる漁業権等の範囲等及び事業執行時期等について協議するものとされている。これらの事業者は、国の直轄事業、国庫補助事業又は地方公共団体等の単独事業として個々に港湾事業を実施しており、これら事業の実施に要する事業期間は、先行補償が行われた年度以降数十年に及ぶ場合もある。
港湾事業を行う事業者は、先行補償が行われた事業区域のうち個々の事業実施区域に係る補償費、先行補償のための事務費及びこれらの費用に有利子の資金が充てられた場合の利子支払額(以下「利子支払相当額」という。)の合計額(以下「補償費相当額」という。)を先行補償者に支払うこととされている。このため、国が事業者となる場合は国が先行補償者に、地方公共団体等が補助事業者となる場合は補助事業者が先行補償者に、それぞれ補償費相当額を支払うことととなり、補助事業者はこの補償費相当額を補助対象額として補助金の交付申請を行い交付を受けている。
一方、先行補償者は、先行補償に要した費用の全額又は一部の額を金融機関等から調達し、償還条件に基づきその元金及び利子を金融機関等に返済していて、事業者から補償費相当額の支払を受けるまで当該補償費相当額を一時的に負担することとなる(参考図参照)
。
補償費相当額のうち利子支払相当額は、通達等によると、補償費及び事務費に有利子の資金が充てられた場合の利子支払額で、港湾局長が定める利率で6箇月ごとの複利により計算した額を限度とするとされている。そして、事業者は「直轄事業の施行に伴い漁業権等を先行補償する場合の取扱いの運用について」(昭和48年港管第535号港湾局長通達)に基づき、利子支払相当額を算定するため、先行補償者に利子支払額計算表を作成させており、借入先、借入年月日、金額及び金利を記載させるとともに、借入金融機関等の証明書を添付させている。
漁業権等先行補償の実施概念図
本院は、国土交通本省並びに直轄事業及び国庫補助事業を実施している事務所等において、合規性、経済性等の観点から、18先行補償者(注1) が昭和56年3月から平成13年4月までの間に行った先行補償計24件939億2203万余円に対し、19事業者(注2) が14年度から18年度までの間に補償費相当額を支払うなどした52件68億5205万余円(うち利子支払相当額12億0520万余円)について、利子支払相当額の算定が適切になされているかに着眼し、利子支払額計算表等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、上記52件の利子支払額計算表における利子支払相当額の算定方法は、次のとおりとなっていた。
すなわち、52件のうち17件については、事業者は、元金を借入期間中は返済することなく固定したものとして利子支払相当額を算定しており、先行補償者も実際に元金が借入期間中固定される期日一括償還の方法により借り入れるなどしていた。
一方、35件については、事業者は、元金を固定したものとして利子支払相当額を算定していたが、先行補償者は、実際には、元金均等償還又は元利均等償還の方法や、期日一括償還であっても借換え時に元金を減額させる方法により元金及び利子を支払っており、利子支払相当額の算定方法と先行補償者の実際の償還方法とが合致していなかった。
A先行補償者(県)は、B港の港湾計画に予定している事業区域に係る一括全面補償に要する費用の一部を平成8年5月に金融機関から借り入れている。
そして、C補助事業者は、18年度に港湾防波堤築造等工事の実施に当たり、先行補償者に支払う補償費2,484,000円を利子計算の対象額として、8年5月から18年3月までの9年10箇月間にわたり当該対象額を固定させて利子支払相当額を833,592円と算定していた。
しかし、A先行補償者(県)は、金融機関に対し元金均等半年賦の方式で毎期元金及び利子を支払っていたため、これに応じて毎期残元金及び利子支払額が減少しており、上記の利子支払相当額とA先行補償者(県)の利子支払額に開差が生ずることとなる。
このように、利子支払相当額の算定が実際に要した利子支払額に基づいて行われていないものが見受けられる事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
利子支払相当額は、通達によれば、補償費及び事務費に有利子の資金が充てられた場合の利子支払額とされており、明示されていないものの、先行補償制度の趣旨から、実際に先行補償者が金融機関へ支払う利子支払額により算定されるべきものである。
そこで、先行補償が行われた事業区域内で実施されたすべての事業に係る借入金は先行補償者が金融機関等へ支払う定期償還金等により、事業ごとの借入金の割合に応じて減額されることとし、補償費相当額の支払時点までに実際に要した利子支払額を基にして利子支払相当額を試算した。その結果、実際に要した利子支払額に基づいた利子支払相当額の算定を行っていなかった前記35件のうち、直轄事業13件4事業者(注3)
で9476万余円(補償費相当額11億1671万余円、うち利子支払相当額3億1852万余円)の開差が、また、補助事業16件6事業者(注4)
で6269万余円(国庫補助金相当額1928万余円)(補償費相当額14億4646万余円、うち利子支払相当額4億3941万余円)の開差が、それぞれ生ずることとなる。
このような事態が生じていたのは、港湾事業を実施する各事業者において、先行補償制度における利子支払相当額の算定の趣旨に対する理解が十分でなかったことにもよるが、国土交通省において、利子支払相当額の算定方法を具体的に定めていないことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、19年9月に、先行補償者の調達資金に係る償還状況等を聴取するなどして実際に発生している利子支払額を正確に把握し、適切な利子支払相当額の算定を行うよう、港湾事業の事業者等に対し、通知を発するとともに、利子支払相当額の算定の趣旨について周知徹底を図るなどの処置を講じた。
18先行補償者 秋田、石川、和歌山、山口、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県、釧路、根室、呉、下関、北九州、福岡、宮古島(平成17年9月以前は平良)各市、那覇港管理組合(14年3月以前は那覇市)
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19事業者 東北、北陸、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局、山口、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県、呉、下関、北九州、福岡、宮古島(平成17年9月以前は平良)各市、那覇港管理組合
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4事業者 東北、北陸、九州各地方整備局、沖縄総合事務局
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6事業者 宮崎、沖縄両県、下関、福岡、平良各市、那覇港管理組合
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