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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第14 環境省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国立公園内の集団施設地区における土地使用料の債権管理事務等を適切に行うよう改善させたもの


国立公園内の集団施設地区における土地使用料の債権管理事務等を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(部)雑収入
(款)国有財産利用収入
  (項)国有財産貸付収入
部局等
環境本省、7地方環境事務所
事業の概要
国立公園内の集団施設地区における環境省所管の国有地に係る使用許可及び使用許可に伴い発生する債権の管理
滞納となっている土地使用料に係る債権
220件
2億0470万円
(平成19年6月末現在)
不納欠損処理した債権
94件
1億1241万円
(平成14、15、17各年度)

1 事業の概要

(1) 集団施設地区及び土地使用許可の概要

 環境省では、自然公園法(昭和32年法律第161号)第29条の規定に基づき、国立公園の利用のための宿泊施設、野営地、園地等を集団的に整備するため、全国に所在する29国立公園のうち25国立公園の区域内に、集団施設地区(119地区)を指定している。そして、集団施設地区内の行政財産である土地(環境省所管地約1,014ha)を国以外の者に使用又は収益させる場合には、国有財産法(昭和23年法律第73号)、「国立公園集団施設地区等土地使用に関する取扱について」(平成6年環境庁自然保護局長通知)等に基づき、次のとおり行うこととしている。
ア 集団施設地区内で旅館業等を営むため土地を使用しようとする者は、国有財産使用許可申請書を自然保護官事務所を経由して土地の管理者である地方環境事務所長(平成17年度以前は自然環境局長)に提出する。
イ 地方環境事務所長は、上記の申請書を審査の上、記載内容が適切であると認める場合は、環境大臣の承認及び財務省財務局長等の同意を得た上で、申請者に対しその使用を許可する。その許可期間は、原則1年以内(堅固な施設の用に供し1年以内とすることが著しく実情に添わない場合は3年以内等)となっている。
ウ 地方環境事務所長は、使用許可に当たって、所定の方法により算定した使用料(以下「土地使用料」という。)を土地使用者が納付することなどを許可条件としており、土地使用料を納付しないなど許可条件に違反した場合には、使用許可を取消し又は変更をすることができる。

(2) 土地使用料に係る債権管理事務

 環境省では、土地使用料に係る債権管理事務を、会計法(昭和22年法律第35号)、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)、環境省債権管理事務取扱規則(平成13年環境省訓令第24号)等に基づき次のとおり行うこととしている。

ア 債権発生通知から債権の取立てまでの事務

(ア) 地方環境事務所長は、土地の使用許可を行った場合は、遅滞なく債権発生通知書を歳入徴収官である地方環境事務所長(17年度以前は環境省大臣官房会計課長。以下「歳入徴収官」という。)に送付する。
(イ) 歳入徴収官は、債権発生通知書の送付を受けた後、遅滞なく、債務者の住所及び氏名、債権金額、履行期限とともに債務者の資産又は業務の状況に関する事項なども調査確認し、必要事項を債権管理簿に記載する。そして、記載内容に変更があった場合は、その都度遅滞なく調査確認等を行う。
(ウ) 歳入徴収官は、調査確認及び徴収決定(以下「調査決定」という。)を行った日から20日以内において適宜の納付期限を定め、債務者に対して納入の告知を行う。
(エ) 土地使用料が履行期限までに納付されない場合、歳入徴収官は債務者に督促を行い、督促後、相当の期間を経過してもなお履行されない場合には、原則として強制履行の請求等の措置を執らなければならない。

イ 債権保全の措置

 歳入徴収官は、債権を保全するため、法令又は契約の定めるところに従い、債務者に対し担保の提供や保証人の保証等を求めるなどの措置を執らなければならない。また、債権が時効(5年)によって消滅するおそれがあるときは、債務確認書を徴求するなど時効を中断するために必要な措置を執らなければならない。

ウ 債権管理事務の体制

 17年度以前は環境省大臣官房会計課(以下「官房会計課」という。)が上記の債権管理事務を行っていたが、17年10月に地方環境事務所が設置されたことに伴い、各地方環境事務所が18年4月以降に発生した債権の管理を行っている。

(3) 土地使用料の滞納及び不納欠損の状況

 環境省で管理している土地使用料に係る債権(以下「土地使用料債権」という。)のうち、19年6月末現在で滞納となっているものは、220件2億0470万余円に上っており、これに係る延滞金も土地使用料が長期間滞納となっていることなどから7951万余円となっている。
 また、環境省の14年度から18年度までの歳入決算のうち(目)土地及水面貸付料の不納欠損額は14年度2件122万余円、15年度6件6951万余円及び17年度86件4167万余円、計94件1億1241万余円に上っており、これらはすべて集団施設地区内の土地使用料に係るものである。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 環境省では、多額の土地使用料債権を管理しており、土地使用料に係る滞納額、不納欠損額がそれぞれ多額に上っていることから、合規性等の観点から、土地使用料に係る債権管理事務等が適切になされているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、環境省及び7地方環境事務所(注) が管理している土地使用料債権のうち、19年6月末現在で滞納となっている債権220件2億0470万余円及び14年度から18年度までに不納欠損処理した債権94件1億1241万余円、計314件3億1712万余円について、環境省及び5地方環境事務所において、債権発生通知書、督促状、債務確認書等の書類により会計実地検査を行い、残りの中国四国及び九州両地方環境事務所が管理する18年度分の債権については債権発生通知書等の書類を本省に提出させ検査した。

 7地方環境事務所  北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州各地方環境事務所


(検査の結果)

 検査したところ、債権発生通知及び調査決定に関する事務、債権の取立てに関する事務、債権保全の措置に関する事務等について次のような事態が見受けられた。

(1)土地使用料に係る債権管理事務

ア 債権発生通知及び調査決定に関する事務

 検査した債権314件のうち、債権発生通知書等の資料が保存されていた債権182件1億6497万余円中177件1億6466万余円は、使用許可期間が開始しているのに債権発生通知書を速やかに作成しなかったことから、歳入徴収官が調査決定するまでに3箇月以上を要していた。そして、歳入徴収官は調査決定時に債務者が旅館業等を営業中であることを確認しているものの、財務諸表等により債務者の資産や業務の状況に関する事項を調査していないなどしていて、適切な債権管理手続がなされていなかった。
 また、残りの債権132件については、債権発生通知書や調査決定決議書等を確認できなかった。

イ 債権の取立てに関する事務

 環境省では、歳入及び債権管理に関する事務等を官庁会計事務データ通信システム(以下「ADAMS」という。)を用いて処理しており、ADAMSでは、滞納が発生すると自動的におおむね翌々月までに2回まで督促状を債務者に送付して督促(以下「ADAMSによる督促」という。)が行われ、ADAMSによる督促が行われた後も土地使用料が納付されない場合には、歳入徴収官事務規程(昭和27年大蔵省令第141号)第21条の規定により、原則として、所定様式の督促状を作成し、これを債務者に送付することにより督促(以下「個別督促」という。)が行われる。
 検査した債権314件のうち、所定様式の督促状等の資料が保存されていた債権106件4930万余円についてみると、歳入徴収官が履行期限経過後1年以内に個別督促を行ったものはわずか5件(4.7%)であり、それ以外の101件はADAMSによる督促が行われているものの履行期限経過後1年以内に個別督促が行われておらず、その後長期間経過してから個別督促が行われており、督促手続の適正な執行がなされていなかった。また、残りの債権208件については、個別督促の状況を確認できなかった。
 なお、環境省では、個別督促以外にも債務者に対して電話による督促、訪問時の口頭による督促、使用許可時の督促を行っているとしているものの、債務者との交渉等の記録などこれを確認できる資料はなかった。
 また、歳入徴収官は、督促を行ってもなお相当の期間債務者が債務を履行しない場合は、強制履行の請求等の措置を執らなければならないが、強制履行の請求等の措置を執る判断基準が明確でないことなどから、これらの措置を執ったことがなかった。

ウ 債権保全の措置に関する事務

 歳入徴収官は、債権を保全するために、時効中断の措置を一部の債権で講じていたものの、債務者に対し担保の提供や保証人の保証等を求めるなどの債権保全の措置を執る判断基準が明確でないことなどから、これらの措置を執ったことがなかった。
 検査した債権314件のうち債務確認書、支払計画書等の資料が保存されていた債権168件1億8788万余円については、履行期限後5年を経過して債務確認書等を徴求していたものが9件(5.4%)あり、また、直近の債務確認書等を徴求した後5年を経過していたものが5件(3.0%)含まれており、これらはその間その他の時効中断の措置を執っておらず既に時効が完成していると思料される。残りの146件については債務確認書、支払計画書等の資料を確認できなかった。

(2) 債権管理の効率的な実施

 環境省では、17年度以前は全国に散在する多数の集団施設地区内の土地使用料に係る債権管理事務を官房会計課において限られた人数(17年度末で5名)で行っていた。18年度以降、債権管理事務に従事する人員が拡充(18年度当初で39名)されているが、17年度以前に滞納となった土地使用料債権190件については、引き続き官房会計課で管理していることから、1人の債務者に対し官房会計課及び地方環境事務所の二つの機関の職員がそれぞれ現地に赴くなどして督促等を行っている状況であり、効率的な債権管理体制が整備されていなかった。

(3) 使用許可の取消し又は変更

 環境省では、前記のとおり、土地使用者が土地使用料を納付しないなど許可条件に違反した場合は、使用許可を取消し又は変更をすることができるとしているのに、その基準がないことなどから、使用許可を繰り返していた。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 環境省では、日光国立公園湯元集団施設地区内において、A社に対し、平成18年度までガソリンスタンドの敷地として土地1,323.3m2 の使用を許可しているが、19年6月末時点で8年度から18年度までの土地使用料債権1246万余円が滞納となっていた。
 A社に係る債権の調査決定事務は、使用許可の開始後歳入徴収官への債権発生通知書の送付までの期間が長期間(10年度から18年度までにおいて平均222日)を要しているため遅延しており、債権の調査確認については、A社が営業中であることを確認しているものの、財務諸表等による資産の状況等の確認を行っていなかった。また、個別督促については、18年12月分が確認できただけであり、時効中断の措置については、A社に13年3月から18年12月まで5回債務確認書を提出させていたが、それ以外の債権保全の措置や強制履行の請求等については、その必要性の検討を行っていなかった。
 A社に係る土地使用許可更新時の審査は、土地使用料が滞納となっており、土地使用許可の条件に違反しているにもかかわらず、十分な検討を行うことなく使用許可を繰り返していた。
 なお、A社は12年3月に代表取締役が交替し、同年5月には社名を変更していたのに、環境省ではその事実を把握しておらず、使用許可、債務確認書の徴求等を18年度まで旧会社名、旧代表取締役名で行っていた。

 このように、土地使用料の債権管理事務等が適時適切に行われていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、環境省において、次のことなどによると認められた。
ア 債権発生通知及び調査決定に関する事務、債権の調査確認時や滞納発生時に債務者の資産又は業務の状況等の調査確認、滞納が発生した場合の債務者に対する督促を適時適切に行うという認識が十分でなかったこと
イ 強制履行の請求等や担保及び保証人の保証の徴求などの債権保全の措置を執る場合の基準、長期間土地使用料を滞納し許可条件に違反した場合の使用許可の適否についての基準をそれぞれ整備していなかったこと
ウ 18年度に発生した債権については地方環境事務所が管理事務を行い、従事する人員も拡充されている一方、17年度以前に発生した債権については、官房会計課の限られた人数で管理事務を行っていて、債権管理事務の状況に応じた債権管理の体制について検討が行われていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、環境省では、19年9月、債権管理マニュアルを定めるとともに、各地方環境事務所長あてに通知を発し、土地使用料に係る債権管理等が適切に行われるよう次のような処置を講じた。
ア 債権発生通知及び調査決定に関する事務、債権の調査確認時や滞納発生時の債務者の資産又は業務等の調査確認、滞納が発生した場合の債務者に対する督促をそれぞれ適時適切に実施することなどを周知徹底した。
イ 強制履行の請求等や担保及び保証人の保証の徴求などの債権保全の措置を執る場合の基準、長期間土地使用料を滞納し許可条件に違反した場合の使用許可の適否についての基準をそれぞれ設けた。
ウ 現在、環境省大臣官房会計課長が債権管理を行っている17年度以前に発生した土地使用料債権については、効率的な債権管理を図るため、19年度末をもって各地方環境事務所長に債権管理事務を引き継ぐこととした。