会計名
|
一般会計
|
部局等
|
陸上幕僚監部、63部隊等
|
重機関銃の概要
|
地上又は戦闘車両に搭載し、対空、対地用自衛火器として使用するもの
|
34部隊等から過小に報告されていた地上用銃の数量及び価格
|
73丁 3億6815万円(平成17年度末)
|
29部隊等から過大に報告されていた地上用銃の数量及び価格
|
59丁 2億9754万円(平成17年度末)
|
陸上自衛隊では、対空、対地用自衛火器として、12.7mm重機関銃M2(以下「重機関銃」という。)を多数配備している。重機関銃は、普通科部隊や戦車部隊などの部隊等に配備される重要な装備品で、国産品のほか、アメリカ合衆国から無償又は有償で供与されたもの(以下「供与品」という。)がある。
重機関銃は、手動により使用する旋回式と主に遠隔操作により使用する砲塔式等に区分されており、上記の国産品、供与品の区分と併せて、七つの品目に区分され、品目ごとに物品番号が付与されている。
また、重機関銃は、その使用方法によって架台等を用いて地上で使用されるもの(以下「地上用銃」という。)と90式戦車等の戦闘車両に搭載して使用されるもの(以下「搭載用銃」という。)とに区別されているが、両者の仕様は同一であり、物品番号による区分はされていない。
陸上自衛隊では、物品管理法(昭和31年法律第113号。以下「法」という。)、陸上自衛隊補給管理規則(昭和52年陸上自衛隊達第71−5号。以下「補給管理規則」という。)等の規定に基づき、重機関銃の物品管理を行っており、駐屯地等における連隊長、大隊長等が分任物品管理官に、中隊長等が物品の補給管理の事務を行う取扱主任に指定されている。
一方、各部隊等は、陸上自衛隊服務細則(昭和35年陸上自衛隊達第24−5号)等の規定により、地上用銃と搭載用銃を合わせて武器庫に保管しており、地上用銃の場合は、訓練時に武器庫から出庫し訓練に使用した後再び武器庫に入庫し、搭載用銃の場合は、武器庫から出庫した後、訓練場で車両に取り付け、使用後は取り外し、再び武器庫に入庫している。また、武器庫の開閉等は、鍵の保管責任者が行うこととなっている。
分任物品管理官である連隊長等は、補給管理規則に基づき、物品の納入、供用等のあった都度、物品管理簿に数量、価格の増減等を記録することとなっている。記録に当たっては、物品番号が付与された品目ごとに行うこととなっているが、車両等の構成品については、当該車両等に含めて記録することにしている。
そして、防衛大臣は、法及び物品管理法施行令(昭和31年政令第339号)の規定に基づき、物品増減及び現在額報告書(以下「物品報告書」という。)を毎年度終了後に作成し財務大臣に報告することとなっており、物品管理官である陸上幕僚長は、防衛省所管物品管理取扱規則(平成18年防衛庁訓令第115号)の規定に基づき、物品報告書を作成するために必要な資料(以下「物品報告書資料」という。)を防衛大臣に提出することとなっている。
分任物品管理官は、物品報告書に記載する物品について、毎年度、当該年度の数量の増減等を記載した「物品管理計算証明等のための資料」(以下「物品管理資料」という。)を作成し、陸上幕僚長に報告している。
物品報告書に記載する物品は、装備訓練に必要な機械及び器具で取得価格300万円以上のものとされていて、重機関銃の場合、供与品はすべて300万円未満となっているため物品報告書に記載しないが、国産品はすべて取得価格が300万円以上となっているため物品報告書に記載することになっている。
本院は、18駐屯地において、正確性等の観点から、物品管理簿への記録は適切に行われているか、物品報告書資料及び物品管理資料への記載は適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、重機関銃を保有する378部隊等を対象として、物品管理簿等の書類により検査するとともに、陸上幕僚監部に対して各部隊等が保有する重機関銃の数量等について報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
各部隊等では、武器庫における重機関銃の保管を、日々現物を点検簿と突合するなどして厳格に行っていた。そして、重機関銃の物品管理簿への記録方法についてみると、地上用銃については、各部隊等とも品目ごとに区分して物品管理簿に記録していた。
しかし、搭載用銃については、北部、東北、西部各方面隊においては、車両の構成品として取り扱い、物品管理簿には記録しないことを原則としていた。一方、東部、中部両方面隊及び防衛庁長官(平成19年1月9日以降は防衛大臣)直轄部隊においては、地上用銃と同様に物品管理簿に記録するのを原則としていた。また、各方面隊の隷下部隊等には、それぞれの方面隊の原則によらない記録方法を採っている部隊等も見受けられ、記録方法は区々となっていた。
前記の378部隊等では、陸上幕僚監部の指示により、物品管理簿の記録等に基づき、国産品の地上用銃に係る物品管理資料を作成し、陸上幕僚長に報告していたが、このうち63部隊等では誤った報告をしていた。すなわち、34部隊等では、地上用銃を搭載用銃として誤認したことなどにより73丁(価格3億6815万余円)を過小に報告し、また、29部隊等では、搭載用銃を地上用銃として誤認したことなどにより59丁(価格2億9754万余円)を過大に報告していた。この結果、物品報告書において、国産品の地上用銃の17年度末の数量、価格が、差し引き14丁、7060万円過小になっていた。
また、陸上幕僚監部では、物品報告書資料の作成に当たり、国産品の地上用銃については、分任物品管理官から報告を受けた物品管理資料の数量及び価格を重機関銃として計上していたが、搭載用銃については、搭載車両と一対のものと考え、数量及び価格とも重機関銃として計上せず、価格のみを搭載車両の一部として計上していた。
しかし、各部隊等が搭載用銃及び搭載車両の現物確認をしたところ、搭載用銃の数量は、国産品と供与品を合わせて搭載車両数よりも63丁少なくなっていた。したがって、搭載用銃は搭載車両と一対であるとして作成した物品報告書資料は、搭載車両の価格が過大に計上されていると認められた。
このように、物品報告書資料が重機関銃の数量等を正確に表示していなかったことから、これを基に作成された物品報告書も重機関銃の数量等を正確に表示していないものとなっていた。
以上のように、重機関銃の物品管理簿への記録方法が区々となっているため、物品報告書等が実際に管理している数量を正確に表示していないなどの事態は、国の物品、特に重要な装備品の物品管理を行う上で適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、分任物品管理官に対して、重機関銃の物品管理簿への記録に当たり地上用銃及び搭載用銃について統一した取扱いを示していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部では、19年8月に各方面総監等に対して通達を発し、重機関銃の物品管理簿への記録方法を統一してすべての重機関銃を記録することとし、これを基に物品管理資料を作成することとするなどの処置を講じた。