科目
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(款)保険料収入 (項)保険料収入
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部局等
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中小企業金融公庫本店
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契約名
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包括保証保険契約
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契約の概要
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中小企業金融公庫が信用保証協会から保険料の納付を受け、保険事故の発生に際して保険金を支払うことを約するもの
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契約の相手方
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51信用保証協会
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弾力化された保険料率に基づく保険料の額
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729億7190万円
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(平成18年度新規成立分)
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上記のうち徴収過不足額
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徴収過大額
徴収不足額
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2億1347万円
9860万円
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各都道府県等に設立された52の信用保証協会(以下「協会」という。)では、信用保証協会法(昭和28年法律第196号)に基づき、中小企業の金融の円滑化を図るため、中小企業者の金融機関からの借入れについてその債務を保証する信用保証を行っている。そして、中小企業金融公庫(以下「公庫」という。)では、中小企業金融公庫法(昭和28年法律第138号)に基づき、協会の行う債務保証を包括的に保険する信用保険を実施している。これらの信用保証及び信用保険は合わせて中小企業信用補完制度と呼ばれており、公庫及び協会の主務官庁である中小企業庁が、同制度について基本となる方策の企画、立案等を行っている。
協会は、信用保証委託契約に基づき、保証金額に、保証料率、保証期間等を乗じて算定される保証料を中小企業者から徴している。協会が行った債務保証で、中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)等に基づく保険要件を備えているものは、公庫と協会との間で締結した包括保証保険契約(以下「保険契約」という。)により、原則としてすべて公庫の信用保険に付される仕組みとなっている。
公庫は、保険契約に基づき、保険金額に、中小企業信用保険法施行令(昭和25年政令第350号。以下「施行令」という。)で定める率(以下「保険料率」という。)、保険期間等を乗じて算定される保険料を毎月協会から徴している。
中小企業庁は、従来中小企業者に一律であった保証料率について、経営状況の良好な中小企業者が割高な保証料を負担するなど不公平なものとなっていたことなどから、中小企業者の信用度を考慮した保証料体系とすることとした。そして、社団法人全国信用保証協会連合会に指示して、新たな保証料体系を示した信用保証料率ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)を策定させ、平成18年3月に各協会に通知させ、同年4月1日からこれに基づき保証料を算定させることとした。
各協会では、ガイドライン等に基づき、従来一律年1.35%であった基本となる保証料率について、中小企業者の保証申込日の直前期決算における貸借対照表等(以下「決算データ」という。)を基に、経済産業省令等で定めるリスク計測モデル(注1)
(以下「計測モデル」という。)を用いて算出される保険事故の発生率(注2)
(以下「事故発生率」という。)に応じて、年0.5%から2.2%の範囲で9区分に細分化することとしている。
リスク計測モデル 中小企業者の信用リスクを判断するための財務情報データベースを利用した評価システム(モデル)
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保険事故の発生率 当該事業者が一定期間(法人は3年間、個人は1年間)に破綻先又は代位弁済先等になる確率
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一方、公庫の徴する保険料体系についても、制度間の整合性を図るために、18年3月、施行令等が改正され、同年4月1日から信用保険のうち普通保険、無担保保険及び特定社債保険(以下、これらを合わせて「弾力化保険」という。)に係る保険料率について、従来一律年0.87%であったものを事故発生率に応じて年0.15%から1.59%の範囲で9区分に細分化することとなっている。そして、上記の事故発生率は、ガイドラインに基づき協会が算定したもので、保険契約に基づき、これを協会が公庫に通知することとなっている。公庫では通知を受けた事故発生率により保険料率を決定し、前記のとおり算定した保険料を協会に請求し、翌月までに徴収している。
公庫において、18年度に、新たに上記の通知を受けて徴収した弾力化保険に係る保険料の額は、729億余円となっている。
本院は、公庫及び中小企業庁において、合規性等の観点から、弾力化された保険料率に基づく保険料の徴収が関係法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。検査は、公庫が18年度に保険契約を締結した52協会に係る信用保険のうち、同年度に保険関係が成立した弾力化保険計1,066,788件、これに係る保険料の額729億余円を対象とした。そして、公庫において、弾力化保険の実績に関する調書等の内容を、また、中小企業庁において、各協会から提出された料率算定に関する報告文書等の内容を、それぞれ調査することなどにより検査を行った。さらに、20協会については、事故発生率の算出等を行う電算システム等の運用状況を確認したり、保証案件の一部を抽出したりして、事故発生率算出の実態を実地に調査した。また、残りの32協会については、公庫に同様の調査を求め、その調査結果の内容を公庫に確認するなどの方法により検査をした。
検査したところ、52協会において、事故発生率の算出に誤りがあり、そのうち、51協会においては、次のように、誤った事故発生率に基づき公庫が保険料率を決定したことにより、保険料の徴収が過大になっていたり、不足していたりしている状況となっていた。
各協会では、以前から債務者の決算データを入力して、審査に活用する審査支援システムを使用していたことから、18年4月1日以降、同システムに計測モデルを導入するためのプログラム等(以下「導入プログラム」という。)を組み込んで運用を始めた。しかし、40協会では、貸借対照表を作成していない債務者の取扱いや弾力化保険の適用開始時期等について、ガイドラインの内容を誤って理解していたり、導入プログラムに対する検証が十分でなかったりなどしたため、誤った導入プログラムを開発して事故発生率を算出し、これを公庫に通知していた。
施行令、ガイドライン等によれば、貸借対照表を作成していない債務者については、事故発生率を算出不能として処理し、その保険料率は従来どおり年0.87%とすることとなっている。しかし、A協会では、以前から貸借対照表を作成していない債務者の経営に関する情報を審査等に利用するため、参考として損益計算書等を基に事故発生率を計算していた。そして、同協会は導入プログラムを開発する際、誤って、参考として計算した事故発生率を、保険料算定のための事故発生率として公庫に通知するよう支援システムに組み込んで、公庫に通知していた。
各協会では、協会の入力担当職員等が決算データを入力し、審査担当職員等が入力されたデータを確認している。しかし、43協会では、入力する決算データについて、金額の桁数を誤ったり、勘定科目を誤ったりするなどして、誤った事故発生率を算出し、これを公庫に通知していた。
以上のとおり、公庫の保険料徴収業務において、適正な保険料が算定されておらず、徴収額に過不足が生じている事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
適正に徴収されていなかった保険料を態様別に示すと、次表のとおりであり、計3億1208万余円が適正に徴収されていなかったと認められた。
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件数
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保険料
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(1)システム上のプログラムに関する誤りによるもの(40協会)
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20,143
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249,293
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徴収過大(a)
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16,363
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183,704
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徴収不足(b)
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3,780
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65,589
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(2)決算データの入力等に関する誤りによるもの(43協会)
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3,754
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62,793
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徴収過大(c)
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1,870
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29,773
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徴収不足(d)
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1,884
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33,019
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徴収過大計(a)+(c)
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18,233
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213,477
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徴収不足計(b)+(d)
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5,664
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98,609
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徴収過不足合計(51協会)
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23,897
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312,087
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このような事態が生じていたのは、協会が、施行令等の改正内容及びガイドラインの内容について十分理解していなかったことなどにもよるが、主として次のようなことによると認められた。
ア 公庫において、協会から通知される事故発生率について誤りが発生していたことを把握していたにもかかわらず、その実態についての十分な確認作業を行っていなかったこと
イ 中小企業庁において、新制度の導入に伴い、公庫、協会等に対して電算システムの導入プログラムが適正であるか検証させる必要があるのに、これを実施させていなかったこと、また、ガイドライン等について、その内容が具体性に欠けており、関係機関に対する周知徹底が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、公庫及び中小企業庁では、運用している電算システムに対する検証作業を19年6月までに完了させ、誤ったプログラムの是正を図るとともに、保険料の徴収に過不足が生じていたものについては同年11月までに追徴することなどとした。そして、同年9月に、次のような処置を講じた。
ア 公庫において、協会における事故発生率の算出及び公庫への通知が適正に行われていることを確認するため、定期的に案件を抽出して、事故発生率について電算システムを検証するなど協会に対しての現地調査等を実施することとした。
イ 中小企業庁において、将来の計測モデルの変更等に当たって、公庫、協会等に対して電算システムの検証作業を行わせる体制を整備した。また、ガイドライン等を具体的なものに改訂し、協会の担当者等への研修を実施するなど関係機関に周知徹底を図った。