科目
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営業経費
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部局等
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商工組合中央金庫本店及び82支店
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契約の概要
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商工組合中央金庫が所有する営業店舗等に対して火災保険を付保するもの
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契約の相手方
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10損害保険株式会社等
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契約
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平成16年4月〜19年3月 随意契約
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火災保険料の支払額
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5750万余円
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(平成16年度〜18年度)
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節減できた火災保険料
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1130万円
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(平成16年度〜18年度)
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商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)では、所有する営業店舗、研修施設、職員宿舎、保養所等の建物等に対して火災保険を付保している。そして、これらの建物等の付保について、保険金額、対象となる物件の範囲、保険期間、特約条項等の取扱いを「金庫所有物件等に対する損害保険の付保基準」(昭和58年54庶管第6号。以下「基準」という。)で定め、これを建物等を管理する本店及び82支店(以下「本支店」という。)あてに通知している。本支店では、この基準に基づき計159の物件についてそれぞれ火災保険契約を損害保険会社等と締結し、次表のとおり、平成16年度から18年度までの間に計57,503,885円の火災保険料を支払っている。
契約店舗
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対象物件数
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支払保険料
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計
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16年度
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17年度
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18年度
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本店
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16
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5,328,990
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7,862,510
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9,045,650
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22,237,150
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82支店
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143
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12,738,893
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12,697,812
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9,830,030
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35,266,735
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計
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159
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18,067,883
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20,560,322
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18,875,680
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57,503,885
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企業向けの火災保険は、10年7月の損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年法律第193号)の一部改正に伴い、料率や適用条件などその内容が自由化された。その結果、損害保険会社等は、新たな割引を新設し、顧客である企業の要望に応じて様々な内容の保険商品を提供している。
上記の新設された割引のうち、補償の水準を維持したまま保険料の節減につながる割引には、損害保険会社等によって割引率や適用条件が異なるものの、次のようなものがある。
〔1〕 多構内特殊包括
1契約により複数の物件をまとめて付保するもの。物件ごとに付保する場合に比べて、保険料が低廉となる。
〔2〕 支払限度額設定
離れた地域に所在する複数の建物等が同時に被災する可能性は低いことから、まとめて付保した物件の中で最も資産価値の高い物件が被災した場合を想定して、1事故当たりの支払限度額となる保険金額を設定するもの。すべての物件が被災した場合を想定して物件ごとの保険金額の合計額を保険金額として設定する場合に比べて、保険料が低廉となる。
商工中金は、19年5月に成立した株式会社商工組合中央金庫法(平成19年法律第74号)により、20年10月に同法に基づく株式会社となり、その後おおむね5年から7年を目途として完全民営化されることとなった。このため、商工中金は、完全民営化に向けて、より一層の経営の効率化を図ることが求められている。
そこで、経済性等の観点から、火災保険契約の締結に当たり割引を十分に利用しているか、契約の相手方の選定方法は適切かなどに着眼して、16年度から18年度までの間の火災保険契約(対象物件159、保険価額715億8461万円、保険料計57,503,885円)を対象に、本店及び1支店において火災保険契約書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
商工中金では、基準に基づき、本支店がそれぞれ火災保険契約を締結することにしており、また、契約更新の際の相手方の選定に当たり、契約を締結しようとする損害保険会社等の見積額が常識的にみて高すぎると判断したときを除いて、通常は他社との比較を行わない取扱いとしていた。
このため、本支店では、複数の損害保険会社等から見積りを徴して比較することなく、同一の損害保険会社等とそれぞれ物件ごとに火災保険契約を更新していたり、商工中金として、物件をまとめることにより多構内特殊包括及び支払限度額設定の割引を利用することが可能であるのにこれらの割引を受けていなかったりしていた。
このように、自由化以降、保険商品は料率、適用条件等様々な内容となっているのに、本支店において契約更新に当たり複数の損害保険会社等から見積りを徴して商品の比較検討を行っておらず、商工中金として付保する物件をまとめて多構内特殊包括及び支払限度額設定による割引を利用していないことは適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
前記の159物件に係る火災保険契約について、商工中金を通じて複数の損害保険会社から、付保する物件をまとめることにより多構内特殊包括及び支払限度額設定の割引を利用した場合と、現状の契約と同様に本支店でそれぞれの物件ごとに付保した場合との2種類の見積りを徴したところ、前者の保険料は後者のそれに比べて平均約20%低い額となっていた。
この結果、付保する物件をまとめることにより多構内特殊包括及び支払限度額設定の割引を受けていたとすると、16年度から18年度までの間に支払った火災保険料計5750万余円は4613万余円となり、差し引き約1130万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、商工中金において、前記のとおり火災保険契約の内容が自由化されて、様々な割引が新設されているにもかかわらず、その内容について理解が十分でなく、割引を利用するための基準の見直しを行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、商工中金では、より有利な条件で契約を締結するため、19年8月に基準を改正し、これまで本支店がそれぞれ物件ごとに付保することとしていた火災保険を、原則として本店でまとめて付保することとし、また、複数の損害保険会社から多構内特殊包括、支払限度額設定等による割引を利用した見積りを徴することとするなどの処置を講じた。