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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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空港用大型化学消防車の調達に当たり、仕様書等に基づく承諾事務等が十分でなかったため、シャシフレームの所要の強度が確保されていない状態になっているなどしているもの


(294) 空港用大型化学消防車の調達に当たり、仕様書等に基づく承諾事務等が十分でなかったため、シャシフレームの所要の強度が確保されていない状態になっているなどしているもの

科目
(款)建設仮勘定
(項)空港事業
部局等
関西国際空港株式会社本社
契約名
(1)
(2)
空港用大型化学消防車(12,500L級型)(調達)
空港用12500立級化学消防車4台(調達)
契約の概要
空港等において発生する航空機火災の消火等を行う大型化学消防車を調達するもの
契約の相手方
シデス社(フランス)
契約
(1)
(2)
平成17年1月19日 公募型指名競争契約
平成17年5月24日 公募型指名競争契約
契約額
(1)
(2)
128,877,000円
367,752,000円
496,629,000円
支払
(1)
(2)
平成18年5月
平成17年7月、18年11月 2回
不当と認められる契約額
(1)
(2)
128,877,000円
367,752,000円
496,629,000円

1 空港用大型化学消防車の概要

(1) 調達の概要

 関西国際空港株式会社(以下「関空会社」という。)では、平成6年開港以降1期島に配備している空港用化学消防車(8,500L型2台及び4,500L型2台)の更新及び今後見込まれる世界最大級のエアバス社製のA380型航空機の就航に対応した消防体制の強化を図るために、空港用大型化学消防車(12,500L型。以下「大型消防車」という。)を3台、また、19年8月に限定供用した2期島に配備するために大型消防車を2台、計5台調達している。
 上記の大型消防車の調達は、外国企業の受注機会の拡大を図るための「大型公共事業への参入機会等に関する我が国政府の追加的措置について」(平成3年7月26日閣議了解)の対象となる契約であることから、関空会社では、公募型指名競争契約により実施している。そして、大型消防車5台のうち1台については、17年1月にフランスのシデス(以下「シデス社」という。)と128,877,000円で契約(以下「第1契約」という。)し、18年4月に完成検査を行い引渡しを受けている。また、残りの4台についても17年5月にシデス社と367,752,000円(1台当たり91,938,000円)で契約(以下「第2契約」という。)し、18年9月から10月にかけて完成検査を行い引渡しを受けている。
 シデス社は、仕様書により、大型消防車の製作、検査等に関する詳細な打合せを関空会社と行い、その協議結果に基づき、承諾図書として詳細設計図書、強度検討書等を提出して、関空会社の承諾を受けることとされており、また、納入後には完成図書として製作図面、強度検討書等を提出することとされている。
 そして、シデス社は、仕様書により、不具合等が発生し部品交換等の必要が生じた場合には、48時間以内に必要な部品を供給することができるよう、日本国内に必要な部品を保管することとされている。
 関空会社が定めている「契約事務取扱に関する達」(昭和60年制定)によれば、上記の承諾事務等に関し、関空会社の係員は、契約の履行が計画に従い適正に行われるよう設計図書等に基づき的確に監督しなければならず、また、検査員は、契約の履行が適正に行われたかを設計図書等に基づき的確に検査しなければならないとされている。

(2) 大型消防車のシャシの構造

 大型消防車のシャシ(注) の構造は、仕様書により、ディーゼル機関による総輪駆動、前輪又は総輪かじ取り式の堅牢なフレーム構造のものとされている。そして、積車状態におけるシャシフレームの強度については、その最大曲げ応力点の所要破壊安全率が、次の計算式のとおり、社団法人自動車技術会制定の自動車負荷計算基準に基づく計算式に繰返し上下負荷倍数を加味して計算した結果で2.5以上必要であるとしている。

(所要破壊安全率の計算式)

(所要破壊安全率の計算式)


 シャシ  自動車の骨格となるシャシフレーム(車枠)に機関、走行用動力伝達装置、かじ取り装置、制動装置及び懸架装置等を組み込んだ自動車の基本構成部分をいう。


2 検査の結果

 本院は、関空会社本社において、合規性等の観点から、承諾事務等は適正に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件大型消防車の調達について、仕様書、承諾図書、完成図書等の書類により検査したところ、次のとおり、適正とは認められない事態が見受けられた。
 関空会社では、第1契約の承諾事務に当たり、承諾図書のうちシャシフレームなどの所要の強度が確保されているかを示す図書の提出を受けていないのに、シデス社から仕様書の規定を満足し所要の強度を確保している旨の説明を受けて、17年7月に承諾していた。また、第2契約でも同様に、上記の承諾図書の提出を受けていないのに、同年10月に承諾していた。
 そして、第1契約及び第2契約において提出された完成図書によると、積車状態におけるシャシフレームの最大曲げ応力点の所要破壊安全率は7.03となっていて、シデス社は、仕様書で規定する所要破壊安全率2.5以上を確保しているとしていた。
 しかし、上記の完成図書における所要破壊安全率は、繰返し上下負荷倍数を加味していないだけでなく、前記の計算式にある負荷倍数も考慮しておらず、正しく計算されているものではなかった。そこで、前記の計算式に基づき改めて所要破壊安全率を計算すると、1.87となり、本件シャシフレームは仕様書に規定する所要の強度を確保していないものとなっていた。
 また、関空会社では、シデス社が日本国内に必要な部品を保管していないのに、第1契約及び第2契約において完成検査を了として契約代金を支払っていた。
 このような事態が生じていたのは、シデス社において、仕様書等に基づいた履行を行っていなかったことにもよるが、関空会社において、本件大型消防車の調達に当たり、仕様書等に基づく承諾事務等が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件大型消防車の調達に当たり、シャシフレームにおいて仕様書に定められた所要の強度が確保されていない状態になっているなどしており、契約額計496,629,000円(第1契約128,877,000円及び第2契約367,752,000円)が不当と認められる。