部局等
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日本郵政公社(平成19年10月1日以降は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構、日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険)
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受変電設備等の概要
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郵政総合情報通信ネットワークの大型コンピュータ等に電力の供給などをする設備
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不用となった受変電設備等の正味資産価額
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20億6548万円
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上記の受変電設備等に係る日本郵政公社有資産所在市町村納付金の納付額
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計
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2234万円
1908万円
4143万円
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(平成17年度)
(平成18年度)
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日本郵政公社(平成19年10月1日以降は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構、日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険。以下「公社」という。)では、日本郵政公社会計規程(平成15年郵財経第3011号)、日本郵政公社資産管理手続(平成15年郵財調第3014号。以下「資産管理手続」という。)等により、固定資産の管理を行うため、本社、支社、貯金事務センター、郵便局等の各施設に資産管理責任者を配置し、固定資産の取得、処分等を行っている。そして、本社には本社の施設の管理だけでなく公社における固定資産の管理の総括に関する事務を行う施設部門を、また、全国を7地域に区分しその地域に所在する固定資産の管理の総括に関する事務を行うネットワークセンターをそれぞれ設置している。
資産管理責任者は、資産管理手続に基づき、施設部門又はネットワークセンターが作成した固定資産台帳により、所管する固定資産の管理を行うこととなっている。固定資産台帳には、固定資産の所在場所や管理に必要な数量等を記録するとともに、固定資産の取得、処分等に際して行われた会計処理の状況を記録することとなっている。そして、公社では、この記録により資産の現物管理を行うほか、貸借対照表作成等の決算処理を行ったり、日本郵政公社有資産所在市町村納付金(以下「市町村納付金」という。)の納付を行ったりしている。また、資産管理責任者は、所管する固定資産の有無、数量、設置場所、使用状況等について、固定資産(不動産等)配備現況調査(以下「現況調査」という。)等を行い、その結果をネットワークセンターに報告し、固定資産台帳にその結果を反映させることとなっている。
公社では、固定資産が事業の用に供されなくなった場合には、施設部門又はネットワークセンターが、資産管理手続等に基づき、当該固定資産を管理している資産管理責任者や支社の関係事業部長等に意見を聞くなどして不用の決定をすることとなっている。そして、不用の決定をした固定資産について、取壊し等により撤去した場合は、固定資産台帳から当該固定資産を除却することとなっており、不用の決定をした事業年度内に取壊し等の予定がない場合は、中間期末又は期末時点で有姿除却(注1) することとなっている。
公社では、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和31年法律第82号)及び地方税法(昭和25年法律第226号)に基づき、市町村納付金を固定資産の所在する市町村に納付している。そして、その納付額(注2)
は、前年度の1月1日現在における固定資産の取得価額から減価償却累計額を控除した正味資産価額に基づき算定されることとされており、17年度計108億9041万余円、18年度計100億4900万余円に上っている。
なお、19年10月の民営・分社化後に公社の業務を承継した各会社は、市町村納付金に代えて固定資産税(注3)
を納付することとなっている。
納付額 固定資産の正味資産価額×1/2×1.4%(固定資産税の標準税率)で算出される。
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固定資産税 民営・分社化後の各会社は固定資産税を課税標準額に基づき納付することとなるが、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社は民営化後5年間に限り課税標準額が2分の1となる。
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公社では、郵便、郵便貯金及び簡易生命保険の各事業を実施するため、各種の情報システムを整備して運用している。これらの情報システムのうち主なものには、ゆうちょ総合情報システム、簡易保険総合情報システム及び郵政総合情報通信ネットワーク(以下、これらの情報システムを「3システム」という。)がある。公社では、3システムを整備するため、郵便貯金、簡易生命保険等の業務を実施する各関係事業総本部等が情報システムの導入を決定し、本社、支社、貯金事務センター、郵便局等の各施設に大型コンピュータ、大型パケット交換機、通信機等を設置するとともに、これらに電力を供給するなどのため、施設部門又はネットワークセンターが、受変電設備、自家発電設備、空気調和設備等の設備(以下「受変電設備等」という。)を設置している。そして、3システムは、情報通信技術の急速な進歩や新たなニーズに対応するため、これまでにそれぞれ整備後2回又は3回更新されており、その都度、ほとんどの機器が新設されている。
公社は、受変電設備等を建物附属設備等として固定資産の管理をしており、これらの正味資産価額は18年度末で2652億余円となっている。
公社は、前記のとおり、固定資産台帳に基づき、資産の現物管理を行うほか、貸借対照表作成等の決算処理を行ったり、市町村納付金の納付を行ったりするため、固定資産の現況を固定資産台帳に正確に反映させる必要がある。また、民営・分社化時までに、公社が、事業の用に供されていない固定資産を除却しなければ、公社から事業を承継した各会社等がその固定資産をそのまま引き継ぐこととなり、これに係る固定資産税を納付しなければならなくなることから、公社は、民営・分社化後の各会社等に固定資産を適正に承継する必要がある。
そこで、本院は、正確性、経済性等の観点から、3システムについて、事業の用に供されておらず使用の見込みもないのに固定資産台帳に登載されたままとなっている機器がないかなどに着眼して、本社、13支社、2貯金事務計算センター、10貯金事務センター、5簡易保険事務センター、117郵便局等において、固定資産台帳を基に現地確認をするなどの方法で会計実地検査を行ったほか、他の郵便局等について公社に報告を求め、その報告の内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
3システムは、2回又は3回の更新後、更新前の機器はほとんど使用されていなかった。しかし、更新前の機器のうち、大型コンピュータ、大型パケット交換機等は各施設から撤去されていたが、使用の見込みのない受変電設備等が設置されたまま固定資産台帳に登載されている事態が、下表のとおり、330箇所の施設で見受けられ、その正味資産価額の合計額は20億6548万余円となっていた。
設置箇所名
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受変電設備等
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使用停止(可能)年月
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正味資産価額(千円)
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東京貯金事務センター
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平成7
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355,074
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郵便貯金栃木センター
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平成7
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16,709
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名古屋貯金事務センター
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平成9.2
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128,870
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金沢貯金事務センター
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平成13.3
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92,681
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四国支社
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平成13.6
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67,516
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広島貯金事務センター
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平成13
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35,829
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東京簡易保険事務センター
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平成14
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59,818
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小樽貯金事務センター
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(平成15.1)
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96,911
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東日本貯金事務計算センター
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平成15.3
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445,189
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京都簡易保険事務センター
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平成15.3
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14,902
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長野貯金事務センター
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平成15.5
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74,948
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仙台貯金事務センター
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平成15.8
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142,514
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九州支社長崎県本部
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平成16.1
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3,409
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札幌簡易保険ビル
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平成17.3
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8,192
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316郵便局
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平成14.5〜16.1
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522,918
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計330箇所
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−
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2,065,487
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上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
四国支社では、平成8年1月に郵政総合情報通信ネットワーク用の大型パケット交換機等や受変電設備等を同支社内に設置したが、11年度から13年度までに行われた更新に伴い、大型パケット交換機等は13年6月に撤去されていた。しかし、受変電設備等は使用の見込みがないのに不用の決定が行われず設置されたままとなっていた。このため、受変電設備等は5年以上にわたり使用されることなく、同支社の固定資産台帳に登載されていた(正味資産価額6751万余円)。
そして、これらの固定資産に係る市町村納付金の納付額を試算すると、17年度2234万余円、18年度1908万余円となり、市町村納付金は17、18両年度で計4143万余円過大に納付されていたこととなる。
このように、事業の用に供されておらず使用の見込みもない多くの固定資産を固定資産台帳に登載したままにしていたことは、市町村納付金を過大に納付することとなるばかりか、民営化後の各会社等に固定資産が適正に引き継がれず、固定資産税を過大に納付させることとなり、適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 関係事業総本部等において、固定資産が事業の用に供されなくなり使用の見込みもない場合に、不用の決定を行うべき施設部門やネットワークセンターに通知するようになっていなかったこと
イ 資産管理責任者において、固定資産が事業の用に供されなくなり使用の見込みもない場合のネットワークセンターへの報告が十分でなかったこと
ウ 施設部門及びネットワークセンターにおいて、固定資産が事業の用に供されなくなり使用の見込みもない場合に、早急に関係事業総本部等と調整して、不用の決定を行う必要があることについて認識が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、公社では、使用の見込みのない受変電設備等を18年度決算時までに除却したほか、19年2月に通知を発するなどして、固定資産が事業の用に供されなくなり、使用の見込みもない場合には、速やかに除却するよう、次のような処置を講じた。
ア 関係事業総本部等が施設部門又はネットワークセンターに当該固定資産について速やかに通知するよう体制を整備した。
イ 当該固定資産について資産管理責任者からネットワークセンターへの報告が徹底されるよう実施要領等を作成し、19年度に実施した現況調査から適用した。
ウ 施設部門及びネットワークセンターにおいて、当該固定資産について早急に関係事業総本部等と調整して不用の決定を行い、撤去するなどして除却するか有姿除却をするよう周知・徹底した。