科目
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郵便業務区分 営業原価
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部局等
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日本郵政公社(平成19年10月1日以降は郵便事業株式会社等)
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ポストの美観保持作業の概要
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ポストの美観を維持するなどのため、郵便切手類販売所等にポストの清掃等の作業を委託し協力謝礼金を支払うもの
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上記に係る謝礼金の支払額
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2億9105万円
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(平成17、18両年度)
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日本郵政公社(平成19年10月1日以降は郵便事業株式会社等。以下「公社」という。)では、郵便法(昭和22年法律第165号)等に基づき全国に郵便差出箱(以下「ポスト」という。)を設置しており、その数は、18年度末において192,300本に上っている。
ポストの設置に当たっては、郵便集配業務を行う郵便局(以下「集配局」という。)の局長が、郵便物の取集経費等を考慮し、ポストを利用すると見込まれる戸数、隣接するポストとの距離等を勘案して決定することとされている。
そして、公社では、従来、集配局がポストの点検を行うこととしており、郵便物の取集等の業務の際にポストの汚れやビラの貼付などの美観状況等に注意を払い、必要に応じて、ポストの清掃、ビラの撤去及び状況に応じた周辺障害物の除去等(以下「清掃等」という。)を実施することとしている。
公社では、16年11月から、ポストの美観を維持し、郵便利用者の利便性の向上等を図るため、新たに郵便切手類販売所等(以下「販売所等」という。)に委託して清掃等を行うポストの美観保持作業(以下「美観保持作業」という。)を開始している。
この販売所等は、郵便切手類販売所等に関する法律(昭和24年法律第91号)等に基づき郵便局以外の場所で郵便切手類の販売等に関する業務を郵便局から委託された個人又は法人であり、18年度末の数は154,090箇所となっている。
公社では、美観保持作業を開始するに当たって、16年10月に、各支社に対して、以下のような手順により、美観保持作業を実施した販売所等に対し美観保持作業協力謝礼金(以下「謝礼金」という。)を支払う制度を実施することとする指示文書を発した。
〔1〕 集配局の局長は、ポストが販売所等の近辺にあり定期的に清掃等を実施できることなど公社が定めた条件に合う販売所等を選定し、美観保持作業の協力依頼を行う。
〔2〕 依頼を受けた販売所等は、美観保持作業に協力する場合には当該集配局に同意書を提出し、1週間に最低1回ポストの清掃等を実施する。
〔3〕 清掃等の実施後、販売所等は、当該集配局から交付された「郵便差出箱の美観保持協力実施報告書兼協力金請求書(兼受領書)」(以下「請求書」という。)に作業実施日を記入する。そして、当該集配局の局員は、実施の都度、作業実施状況を点検する。
〔4〕 当該集配局は、請求書に基づき月額500円の謝礼金を支払う。
このような手順により、公社が販売所等に対し支払った謝礼金の額は、17、18両年度計2億9105万余円となっていた。
ポストの美観等については、前記のとおり、従来、集配局の局員が管内のポストについて自ら清掃等を実施することにより維持してきたところであるが、公社では、16年11月から美観保持作業を開始し、新たに販売所等に対し、その近辺にあるポストを対象に清掃等を委託し謝礼金を支払うこととなった。
そこで、本院は、有効性等の観点から、美観保持作業は謝礼金を支払って実施する必要性があるか、ポストの美観の維持等に有効なものになっているかなどに着眼し、各集配局における美観保持作業の販売所等への委託状況や管内のポストの清掃等の実施状況を調査するなどの方法により、13支社(注)
管内の143集配局において会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような状況となっていた。
検査を実施した143集配局における美観保持作業の委託状況をみると、表1のとおりとなっていた。
区分
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管内のポスト
(A)
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同意が得られて作業を委託したポストの割合
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作業の対象に指定したポスト比
(C/B)
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管内ポスト比
(C/A)
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作業の対象に指定したポスト
(B)
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同意が得られて作業を委託したポスト
(C)
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集配局数
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(局)
143
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(局)
118
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(局)
113
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(%)
95.7
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(%)
79.0
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ポスト数
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(本)
23,178
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(本)
8,972
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(本)
3,669
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(%)
40.8
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(%)
15.8
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143集配局のうち25集配局では、従来、自局の局員が郵便物の取集等の業務の際に必要に応じて管内のポストの清掃等を実施していることなどから、販売所等に対して美観保持作業の協力を依頼する必要はないとしていた。そして、これらを除いた118集配局では管内の販売所等への協力依頼を行っていたが、このうちの5集配局では販売所等の同意が1件も得られなかったため、実際に販売所等に美観保持作業を委託できたのは113集配局であった。
また、上記の118集配局の局長が販売所等に協力を依頼することとして美観保持作業の対象に指定したポスト(以下「指定ポスト」という。)は、8,972本であった。しかし、これらの指定ポストは、単に設置されている場所と販売所等との距離等の条件に合うものが指定されているにすぎず、個々のポストの清掃等の必要性を考慮した上で選定されたものとはなっていなかった。そして、これらの指定ポスト8,972本のうち販売所等の同意が得られて実際に美観保持作業を委託したポスト(以下「委託ポスト」という。)は、3,669本と指定ポストの半数以下であり、また、管内の全ポストに対する割合は15.8%となっていて、美観保持作業の委託状況は低調なものとなっていた。
以上のことから、美観保持作業は、個々のポストの清掃等の必要性を考慮した上で実施されたものとはなっておらず、委託状況も低調なものとなっていた。
管内のポストのうち、委託ポストを除いたポストは、点検等により清掃等の必要があると認められた場合は、集配局の局員が清掃等を実施することになる。
そこで、上記(1)の143集配局のうち、清掃等の実施状況の確認がとれた142集配局において、これらの委託ポスト以外のポストの局員による清掃等の実施状況を調査したところ、表2のとおりとなっていた。
清掃等を実施するポスト
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清掃等の頻度
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清掃等の時間
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計
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15分程度
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5分程度
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1分程度
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1分未満
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|||
すべてのポスト
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年1回
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1
(0.7)
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5
(3.5)
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4
(2.8)
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1
(0.7)
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42
(29.5)
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半年1回
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1
(0.7)
|
7
(4.9)
|
4
(2.8)
|
0
(0.0)
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||
月1回
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1
(0.7)
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6
(4.2)
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7
(4.9)
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2
(1.4)
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||
週1回
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0
(0.0)
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2
(1.4)
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1
(0.7)
|
0
(0.0)
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||
汚れの目立つポストのみ
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年1回
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2
(1.4)
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25
(17.6)
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10
(7.0)
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3
(2.1)
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100
(70.4)
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半年1回
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4
(2.8)
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22
(15.4)
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13
(9.1)
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0
(0.0)
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||
月1回
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2
(1.4)
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8
(5.6)
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7
(4.9)
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2
(1.4)
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||
週1回
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0
(0.0)
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0
(0.0)
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2
(1.4)
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0
(0.0)
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すなわち、集配局の局員によるポストの清掃等は、汚れの状況等を勘案して1年間に1回又は2回程度、数分間で実施されていることが多く、集配局の局員が郵便物の取集等の業務の際において必要に応じて行っており、このような清掃等によって、調査した集配局のポストの美観は十分維持されていた。
以上のことから、集配局の局員が従来どおり必要に応じて清掃等を実施すれば、販売所等に美観保持作業を委託しなくてもポストの美観は十分維持できると認められた。
前記(1)の委託ポスト3,669本のうち、謝礼金の支払状況の確認がとれた92集配局における3,078本に係る謝礼金の支払状況から美観保持作業の実施状況を調査したところ、表3のとおりとなっていた。
区分
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委託ポスト
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作業が全く実施されていなかった委託ポスト
(B)
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作業が全く又は一部の月で実施されていなかった委託ポスト
(A)+(B)
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作業が実施されていた委託ポスト
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左のうち作業が実施されていなかった月があった委託ポスト
(A)
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||||
集配局数(局)
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92
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88
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48
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56
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−
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ポスト数(本)
(%)
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3,078
(100.0)
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2,454
(79.7)
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351
(11.4)
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624
(20.2)
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975
(31.6)
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すなわち、3,078本の委託ポストのうち、実際に美観保持作業が実施された委託ポストは2,454本(全委託ポストの79.7%)となっており、残りの委託ポスト624本(全委託ポストの20.2%)については、同意が得られていたにもかかわらず、作業が全く実施されていなかった。また、作業が実施された委託ポスト2,454本の中にも、作業が実施されなかった月があったものが、48集配局で351本(全委託ポストの11.4%)見受けられた。
このように、美観保持作業の対象となっていながら、実際には作業が全く又は一部の月で実施されなかったポストが約3割見受けられた。
上記(1)、(2)及び(3)のとおり、美観保持作業は、委託状況及び実施状況が低調なものとなっていた。また、集配局の局員が郵便物の取集等の業務の際に必要に応じてポストの清掃等を実施すれば、販売所等に美観保持作業を委託しなくてもポストの美観等は十分維持できると認められた。
したがって、美観保持作業について、謝礼金を支払って実施する必要性が認められないにもかかわらず実施している事態は適切とは認められず、制度の廃止を含めて見直しを行う必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 集配局におけるポストの清掃等の実態を踏まえて、美観保持作業の必要性について十分検討を行わなかったこと
イ 本件作業の導入後において、作業の効果を検証するなどして適切な見直しを図らなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、公社では、19年4月に各集配局に対して指示文書を発し、同年6月をもって本件謝礼金の支払制度を廃止することとする処置を講じた。