ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 成田国際空港株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

空港内駐車場における放置車両について、適切な管理及び処分を図るよう改善させたもの


(1) 空港内駐車場における放置車両について、適切な管理及び処分を図るよう改善させたもの

科目
一般駐車場使用料(時間貸)
部局等
成田国際空港株式会社(平成16年3月31日以前は新東京国際空港公団)本社
駐車場事業の概要
成田国際空港を利用する旅客等の利便に供するなどのため、成田国際空港株式会社が自ら設置した有料駐車場を運営するもの
放置車両の累計台数
189台(平成元年度〜18年度)
適切な管理等を行った場合の上記放置車両に係る駐車料金相当額(試算額)
3835万円

1 放置車両の概要

 成田国際空港株式会社(平成16年3月31日以前は新東京国際空港公団。以下「成田会社」という。)では、旅客等の利便に供するなどのため、有料駐車場として、第1駐車場、第2駐車場及び第3駐車場(以下、これらを合わせて「空港内駐車場」という。)を設置している。
 空港内駐車場の管理について、成田会社では、駐車場法(昭和32年法律第106号)に基づき、供用時間や駐車料金等に関する事項を一般駐車場管理規程(平成16年規程第29号。16年3月31日以前は昭和53年規程第9号。以下「管理規程」という。)で定め、この主な内容を駐車場内等に明示して利用者に示している。そして、管理規程によれば、事前に届出のあった場合を除き、同一の車両を引き続き20日を超えて駐車してはならないとされていて、駐車開始後20日を経過しても引取り又は連絡がない車両(以下「放置車両」という。)については、8年6月に放置車両取扱要領(平成8年事管事第138号。以下「取扱要領」という。)を定め、これに基づき次のように取り扱うこととしている。
〔1〕 車両調査
 警察に盗難等の犯罪に関係がないかどうかを確認した後、運輸支局等に登録者名義等所要の事項を照会し、判明した登録名義人等に車両の引取りを要請する。 
〔2〕 車両の移動
 登録名義人等と連絡が取れないか、又は登録名義人等が引取りに応じないときは、放置車両を出車させ空港内駐車場から成田会社が別に定める保管場所へ移動し、登録名義人等に対し通知書を送付する。 
〔3〕 放置車両処理調書
 上記の措置状況を放置車両処理調書に記録する。
〔4〕 処分の対象
 保管の開始後、相当期間(3年間程度)を経過し、かつ、処分を行っても問題が生じないと明らかに認められる車両は処分の対象とし、また、上記期間の経過前であっても明らかに所有権が放棄されていると判断されるときは、処分の対象とすることができる。
〔5〕 車両の処分
 処分の対象とした車両については、査定を行って評価額を算定し、その評価額が当該放置車両に係る駐車料金を上回ったときは、処分を行わないものとする。また、処分の方法は、売却又は廃棄等とする。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 駐車場法によれば、駐車場管理者は、利用者の保護を図るなどのため、駐車場管理規程を定め、これを都道府県知事に届け出なければならないとされていて、成田会社は管理規程を定め、千葉県知事に届け出ている。また、駐車場法では、駐車場に駐車する自動車の保管に関し、善良な管理者の注意を怠らなかったことを証明する場合を除いては、損害賠償責任を免かれることができない旨規定されている。一方、近年、一般の駐車場管理者が運営する駐車場において、車両の引取りに現れない、若しくは引取りを拒否するという問題が顕在化してきているため、17年1月、適切なルールに則った駐車場運営と駐車場利用者の利益の保護に資することを目的として、駐車場法を所管している国土交通省都市・地域整備局が「駐車場管理規程例」(以下「管理規程例」という。)を作成し、公表している。
 本院は、これらのことなどを踏まえ、元年度から18年度までに入車した放置車両189台を対象として、成田会社本社において会計実地検査を行った。そして、経済性等の観点から、放置車両の管理及び処分は適切なものになっているかなどに着眼して、放置車両処理調書等の書類により検査した。

(検査の結果)

 放置車両の記録が保存されていた元年度から18年度までの放置車両の累計は189台となっていた。そして、19年3月末現在、空港内駐車場に駐車中のものが12台、保管場所へ移動していたものが114台、処分されていたものが63台となっていた。

(1) 車両調査の状況

 上記189台のうち、8年6月の取扱要領制定以降に入車した放置車両で、放置車両処理調書等により車両調査の状況を把握することができたのは101台となっていた。
 そして、成田会社では、警察に対する確認後の登録名義人等の調査を、入車後、平均1.7箇月(最長11.4箇月)経過してから行っていたが、連絡が取れない状況であった。

(2) 放置車両の移動及び処分等の状況

 空港内駐車場に駐車中の車両12台の平均駐車日数は10箇月(最長18.9箇月)となっていた。また、保管場所へ移動した177台の入車から保管場所へ移動するまでの期間は、平均4箇月(最長19箇月)となっていて、いずれも管理規程で定める20日を大幅に超えるものとなっていた。
 そして、処分されていた63台はすべて廃棄の方法によるものであり、保管の開始から処分までの期間は、平均64.5箇月(最長123.8箇月)となっていて、これも取扱要領で定める相当期間(3年間程度)を大幅に上回るものとなっていた。なお、これら63台の処分費用は、処分費用相当額から鉄くずとしての売却益相当額を相殺した残額の約209万円となっていた。

(3) 放置車両の処分方法の検討等

 前記のとおり、取扱要領では、放置車両の評価額が当該放置車両に係る駐車料金を上回ったときは、処分を行わないものとしている。
 しかし、この場合であっても売却することとすれば駐車料金相当額等の回収が可能となる。
 すなわち、管理規程例によれば、「期限を定めて車両の引取りの催告をしたにもかかわらず、その期限内に引取りがなされないときは、催告をした日から3カ月を経過した後、利用者に通知し又は駐車場において掲示して予告した上で、公正な第三者を立ち会わせて車両の売却、廃棄その他の処分をすることができる。」とされている。さらに、「車両を処分した場合は、駐車料金並びに車両の保管、移動及び処分のために要した費用から処分によって生じる収入があればこれを控除し、不足があるときは利用者に対してその支払いを請求し、残額があるときはこれを利用者に返還するものとする。」とされており、売却により生じる収入が駐車料金相当額等より多くなる場合があることも想定している。
 そして、放置車両について、駐車期間を20日、車両調査に約1箇月、登録名義人等への引取り要請後の協議等に約1箇月、合わせて入車日から3箇月程度で保管場所へ移動することとし、車両価値が売却等費用を上回るものについて、引取りの催告を行いその日から3箇月経過した後に裁判所による競売等に付すこととした場合、競売等の手続に3箇月程度要すると見込まれるので、入車から放置車両の処分までに要する期間は計9箇月程度となる。
 上記のように早期に処分を行うこととすれば、一般的に年式が新しいほど高価となる市場価格に連動して売却価格もより高価となる傾向にあることを考えると、駐車料金相当額等を相当程度回収できたものと認められる。

<事例>

 平成16年12月20日に入車した11年初度登録の車両は、入車から9.6箇月後に保管場所へ移動されており、18年度末時点において入車から27.7箇月経過している。
 この車両について、入車から3箇月後に保管場所へ移動することとした場合、その駐車料金相当額は約13万円と試算され、前記のとおり、入車から9箇月後の17年9月に売却したとすれば、駐車料金相当額等を相当程度回収できたと認められる。

 このように、放置車両について、車両調査を行うまでの期間、駐車期間、保管場所へ移動するまでの期間及び処分までの期間がいずれも長期になっていることなどにより、放置車両に係る駐車料金相当額等を回収しないまま費用をかけて廃棄せざるを得ない状況となっていることは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
 前記の放置車両について適切な管理等を行って、入車から3箇月後に保管場所へ移動したとした場合、その売却により回収すべき駐車料金相当額は3835万余円と試算される。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、成田会社において、取扱要領において車両調査の時期を明確にしていなかったり、処分に当たり当該車両の評価額が駐車料金を上回ったときは処分を行わないとしていたりしていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 本院の指摘に基づき、成田会社では、19年10月に、放置車両の管理及び処分を適切に行うよう、次のような処置を講じた。
ア 管理規程を改定して放置車両の取扱いを明確に定めることにより、放置車両を売却し、その収入を駐車料金相当額等に充てることができるようにするとともに、駐車場利用者に対しても上記の管理規程等の主な内容を明示するなどして周知を図った。
イ 取扱要領を改定して所有者等への連絡や放置車両の移動・処分の手続等を定め、車両調査の具体的な方法や対応時期を明確にした。