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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 成田国際空港株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

学校等施設の騒音防止工事に対する助成金の交付に当たり、騒音の測定の結果により交付対象施設の決定を適切に行うよう改善させたもの


(2) 学校等施設の騒音防止工事に対する助成金の交付に当たり、騒音の測定の結果により交付対象施設の決定を適切に行うよう改善させたもの

科目
助成金(防音設備−学校)
助成金(防音設備−保育所)
助成金(防音設備−病院)
部局等
成田国際空港株式会社(平成16年3月31日以前は新東京国際空港公団)本社
助成の根拠
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)
助成金の概要
成田国際空港周辺における航空機の騒音により生ずる障害を防止し又は軽減するため、地方公共団体等が学校等施設の騒音防止工事を行うときに、その費用の全部又は一部を交付するもの
検査した助成金の交付施設数及び金額
25施設 14億4907万円(平成14年度〜18年度)
交付対象施設の決定が適切でなかったものの数及び助成金額
5施設 2億1309万円(平成14、15、17各年度)

1 助成金の概要

 成田国際空港株式会社(平成16年3月31日以前は新東京国際空港公団。以下「成田会社」という。)では、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(昭和42年法律第110号)等に基づき、成田国際空港(16年3月31日以前は新東京国際空港。以下「成田空港」という。)周辺の地方公共団体等が、学校、保育所、病院等(以下、これらを合わせて「学校等施設」という。)の騒音の軽減及び有効な空気調和の確保を目的とする工事並びに学校等施設の空気調和を図るために設置された空気調和設備の機能回復を目的とする工事(以下、これらを合わせて「騒音防止工事」という。)を行うときに、その費用の全部又は一部を助成している。
 上記の助成は、航空機の騒音の強度及び頻度が、学校等施設において「航空機の騒音の強度及びひん度に関する告示」(昭和42年運輸省告示第308号。以下「告示」という。)等に定める限度を超える場合に行うものとされている。そして、告示によれば、航空機の騒音の強度及び頻度が限度を超える場合とは、それぞれの学校等施設の別に定められた航空機の騒音の強度及び頻度の程度を表わす阻害率(注) が、学校、保育所等(以下「学校等」という。)については20%以上、病院等については30%以上であり、かつ、この状態が通常継続すると認められる場合などとされている。

 阻害率
阻害率は以下の算式から計算される。

阻害率


2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、成田会社本社において会計実地検査を行った。そして、助成金交付決定の通知等の関係書類が保存されていた14年度から18年度までの5箇年度に交付された助成金25施設、14億4907万円を対象とし、合規性等の観点から、交付対象施設の決定が適切なものになっているかなどに着眼して、助成金交付決定の通知等の関係書類、騒音の測定値等により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) 成田会社における交付対象施設の決定について

 成田会社では、助成金の交付を開始した昭和45年当時は開港(53年)前で航空機が運航していないため、騒音の強度及び頻度を測定できなかったことから、当時の主力機の騒音の強度を基にするなどして、成田空港周辺における騒音の強度及び頻度を予測して助成金の交付対象区域を設定し、この区域内にある学校等施設であれば助成金を交付することにしていた。そして、その後この方式で助成金を交付することとして現在に至っているため、交付対象施設の決定に当たっては、学校等施設ごとに阻害率を算定するなどしていなかった。

(2) 阻害率の試算等について

 成田会社及び成田空港周辺地方公共団体では、航空機の離着陸に伴う騒音の実態を把握するため、開港当初から航空機騒音監視測定局(平成18年度末現在、成田会社が設置した測定局33箇所、成田空港周辺地方公共団体が設置した測定局69箇所)を設置し、成田空港周辺で年間を通じて騒音を測定している。
 本院は、成田会社に対して、学校等施設における騒音について測定を求め、その実測値及び測定局の測定値などに基づいて本件25の学校等施設に係る阻害率を試算した。
 その結果、学校等16施設においては20.0%から100%、病院等4施設においては57.1%から100%となっていて、それぞれ告示等で定める所定の阻害率を上回っていたが、学校等5施設、交付額計2億1309万余円については3.3%から16.7%となっていて、告示等で定める所定の阻害率を下回っていた。

<事例>

 成田会社では、平成15年5月にA町から提出されたB保育所の騒音防止工事の事業計画に係る概要書等を審査して、同保育所が前記の交付対象区域内に所在していることなどから同年9月に助成金の交付決定を行い、16年3月に同町に対し助成金1479万余円を交付している。
 しかし、同保育所から約1.2kmの地点に、C市が設置している測定局があり、この測定局の測定値を採用し、実測値等により補正して阻害率を試算すると5.0%となっていて、告示等で定めている学校等における阻害率20%を大幅に下回っていた。

 上記のように、学校等施設に係る交付対象施設の決定が告示等で定められている騒音の強度及び頻度の条件に適合していないのに助成金を交付している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、成田会社において、航空機のエンジン音等に対する騒音対策が図られてきていることなどにより騒音の強度が減少しているものの、航空需要の拡大に伴い離着陸回数は増加しているため、航空機騒音に大きな変化はないと考え、地域住民等との関係も考慮して従前の交付決定方法を踏襲し、交付対象区域内に所在する学校等施設であればすべて交付することとしてきたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、成田会社では、19年9月に、告示に基づく助成金の交付対象施設の決定を行うための測定要領を定めるなどして、測定局の測定値の利用を含めた騒音の測定の結果により交付対象施設の決定を適切に行うこととする処置を講じた。