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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 独立行政法人農業生物資源研究所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

ジーンバンク事業の実施に当たり、自己収入の増加を図るために交換協定の取扱いに関する規程を整備したり、委託事業における実績報告書に非常勤職員の業務実態を反映させたりして、事業を適切に実施するよう改善させたものて


ジーンバンク事業の実施に当たり、自己収入の増加を図るために交換協定の取扱いに関する規程を整備したり、委託事業における実績報告書に非常勤職員の業務実態を反映させたりして、事業を適切に実施するよう改善させたもの

科目
(1)
(2)
事業収益
研究業務費
部局等
独立行政法人農業生物資源研究所
契約名等
(1)
(2)
生物遺伝資源交換に関する研究協定
委託契約
契約等の概要
(1)
独立行政法人農業生物資源研究所と研究機関双方の遺伝資源研究の促進に資するため、所有する遺伝資源の交換を図ることを目的とする研究協定
(2)
ジーンバンク事業の効果的な推進を図るためサブバンクに事業を委託するもの
交換協定で配布した遺伝資源
(1)
12,652点(平成14事業年度〜18事業年度)
委託費
(2)
5億2483万余円(平成17、18両事業年度)
契約の相手方
(1)
(2)
研究機関
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
独立行政法人農業環境技術研究所
契約
(1)
(2)
平成14年4月〜19年2月
平成17年7月、8月、18年6月 随意契約
徴収できた遺伝資源配布収入
(1)
6008万円
(平成14事業年度〜18事業年度)
実績報告書に計上された非常勤職員の賃金
(2)
1億2202万円
(平成17、18両事業年度)

1 事業の概要

 独立行政法人農業生物資源研究所(以下「生物研究所」という。)は、農業分野の生物遺伝資源(以下「遺伝資源」という。)の探索、収集、特性評価、試験研究機関への配布等を事業内容とする農業生物資源ジーンバンク事業(以下「ジーンバンク事業」という。)を行っている。この事業は、生物研究所が遺伝資源の収集等を中心になって行うセンターバンクとして、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「機構」という。)、独立行政法人農業環境技術研究所(以下「農環研」という。)等が生物研究所の収集等を補完するサブバンクとして連携して行われている。
 生物研究所は、遺伝資源の配布に当たっては、植物、微生物、動物、DNA各部門の遺伝資源ごとに定めた配布規則等(例えば植物の場合、平成13事業年度から17事業年度の間は「植物遺伝資源配布要領」(平成13年13農生研70号)。18事業年度からは「植物遺伝資源配布規則」(平成18年18農生研第0401133号)。)に基づき行っており、遺伝資源の配布価格は配布規則等で遺伝資源ごとに定められている。
 13事業年度の配布価格は、国、独立行政法人、地方公共団体関係機関、大学は無償などと定められていた。しかし、ジーンバンク事業が運営費交付金で賄われていることから、理由ある場合に限って無償配布すべきとの指摘を国から受け、14事業年度からは、大学等が遺伝資源を学校教育の教材として使用するなどの場合のほかは、生物研究所と他の公共研究機関等(以下「研究機関」という。)双方の遺伝資源研究の促進に資するため、「生物遺伝資源交換に関する研究協定」(以下「交換協定」という。)を締結し、所有する遺伝資源の交換を行う場合に限り、無償配布することとしている。
 また、生物研究所は、ジーンバンク事業の効果的な推進を図るため、サブバンクである機構、農環研等とジーンバンク事業に関する委託事業(以下「委託事業」という。)に係る委託契約を締結し、遺伝資源の探索、収集、特性評価等を行わせている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、生物研究所、機構及び農環研において、合規性、経済性等の観点から、配布規則等に基づいて遺伝資源の配布が適切に実施され、自己収入の増加が図られているか、また、委託事業の実績報告が適切に行われているかに着眼して会計実地検査を行った。そして、生物研究所が14事業年度から18事業年度までに交換協定を締結して無償で配布した遺伝資源12,652点、機構及び農環研(以下「2法人」という。)との間で締結した委託事業(17、18両事業年度委託費計5億2483万余円)を対象として、交換協定、実績報告書等の書類により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) 遺伝資源の無償配布について

 生物研究所では、18事業年度までに79の研究機関と交換協定を締結しており、14事業年度から18事業年度までの5年間に交換協定を締結した研究機関に対して遺伝資源12,652点を配布していた。しかし、このうちの10,512点については、次のとおり、交換協定の目的である遺伝資源の交換が適切に行われていなかった。

ア 生物研究所は、交換協定締結後に研究機関に遺伝資源を配布しているのに、18事業年度末までに研究機関からの遺伝資源の受入れが全くないもの

42研究機関 遺伝資源3,333点


<事例1>

 生物研究所では、平成14事業年度にA大学と交換協定期間を24年3月までとした交換協定を締結し、A大学からの申込みを受けて、14年5月から18年12月までに、計42点の遺伝資源を無償で配布していたが、18事業年度末までにA大学から遺伝資源を受け入れたものはなかった。


イ 生物研究所は、交換協定締結後に研究機関に遺伝資源を配布しているのに、相当期間研究機関からの遺伝資源の受入れがなかったもの

17研究機関 遺伝資源7,179点


<事例2>

 生物研究所では、平成14事業年度にB研究センターとの間で交換協定期間を24年3月までとした交換協定を締結し、B研究センターからの申込みを受けて、14年7月から16年8月までに、計74点の遺伝資源を無償で配布していたが、B研究センターから遺伝資源を受け入れたのは18年3月以降であった。

 したがって、交換可能な遺伝資源の有無を確認し、交換可能な事業年度に交換協定を締結して、それまでは有償で配布することとしていれば、配布収入の増加を図ることができたと認められた。

(2) 委託事業における非常勤職員の賃金について

 生物研究所では、委託事業を、機構に委託費17事業年度2億4979万余円、18事業年度2億4025万余円、農環研に17事業年度2288万余円、18事業年度1190万余円、計5億2483万余円で委託し、2法人では18年3月及び19年3月に事業を完了して、実績報告書を提出していた。
 上記の実績報告書には、非常勤職員の賃金が、機構では17事業年度5778万余円、18事業年度5292万余円、農環研では17事業年度568万余円、18事業年度562万余円、計1億2202万余円計上されていた。
 これらの非常勤職員は、2法人の研究室において、委託事業等の研究業務の補助業務を行うために雇用されており、2法人では、この非常勤職員の賃金について、主に委託事業に従事した月の賃金を、すべて委託事業分として実績報告書に計上していた。
 しかし、上記の2法人の非常勤職員の大多数は委託事業以外の複数の研究業務に共通する補助業務(実験器具洗浄等の業務)にも従事していて、委託事業に係る研究業務の補助業務のみに専属として従事している者はほとんど見受けられなかった。

 以上のように、遺伝資源の交換が適切に行われておらず、遺伝資源の配布収入の増加が図られていなかったり、研究業務の補助業務の実態を反映させることなく、非常勤職員の月額賃金が実績報告書に計上されたりしている事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(徴収することができた遺伝資源配布収入)

 遺伝資源の配布が適切とは認められない10,512点について、配布規則等で定める配布価格により研究機関から徴収したとすると、6008万余円が徴収できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 交換協定を締結する際に、交換可能な遺伝資源の有無や遺伝資源の交換可能な時期を確認しないまま交換協定を締結していたこと
イ 2法人の研究室は複数の研究業務を行っており、非常勤職員は委託事業以外の研究業務の補助業務にも従事しているのに、非常勤職員の賃金の実績報告書への計上が補助業務の実態を反映させたものとなっていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、生物研究所では、19年9月に次のような処置を講じた。
ア 遺伝資源の配布については、自己収入の増加を図るため、交換協定の取扱いに関する規程を新たに定め、同月以降締結する交換協定から適用することとした。
イ 委託事業における非常勤職員の賃金の実績報告書への計上については、研究業務の補助業務の実態を反映させるよう2法人に文書を発し、20事業年度の委託契約から適用することとした。