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  • 平成18年度|
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先端計測分析技術・機器開発事業に係る委託費の経理が不当と認められるもの


(347) 先端計測分析技術・機器開発事業に係る委託費の経理が不当と認められるもの

科目
一般勘定
(項)新技術創出研究関係経費
部局等
独立行政法人科学技術振興機構
契約名
先端計測分析技術・機器開発事業の開発課題実施に伴う委託開発契約
委託契約の概要
高感度・高密度バイオ光受容素子を開発するもの
契約の相手方
学校法人東京理科大学(再委託先 国立大学法人静岡大学)
契約
平成17年10月(再委託契約 平成17年10月)
支払額
74,971,466円
(うち国立大学法人静岡大学への再委託費15,275,000円)
不当と認める委託費の支払額
3,525,289円
(全額国立大学法人静岡大学への再委託費)

1 委託契約の概要

(1) 先端計測分析技術・機器開発事業の概要

 独立行政法人科学技術振興機構(以下「機構」という。)は、国から交付された運営費交付金を原資として、先端計測分析技術・機器開発事業(以下「開発事業」という。)を実施している。この事業は、最先端の研究ニーズに応えるため、将来の創造的・独創的な研究開発に資する先端計測分析のための技術、機器及びその周辺システムの開発を推進するものである。
 開発事業については、機構が作成している「先端計測分析技術・機器開発事業受託業務事務処理要領」(平成16年8月制定)等(以下「事務処理要領等」という。)によると、国立大学法人、私立大学等を設置している学校法人、独立行政法人、企業等(以下、これらを「開発機関」という。)に委託して実施することとされている。
 そして、機構は、公募により採択した開発課題について、開発事業の中心となる事業実施者(以下「チームリーダー」という。)が所属している開発機関(以下「中核機関」という。)と委託契約を締結し、委託費として、開発事業に要する経費を支払うこととされている。
 また、中核機関はチームリーダーが受託した開発事業の一部を中核機関以外の開発機関に所属している事業実施者(以下「分担開発者」という。)に実施させる必要があると判断した場合は、機構の承諾を得た上で、分担開発者が所属している開発機関(以下「参画機関」という。)と再委託契約を締結し、機構から受領した委託費の中から、再委託した開発事業に必要な経費として再委託費を支払うことができることとされている。

(2) 委託費の経理等

 事務処理要領等によると、委託費は、直接経費と間接経費とから構成されており、直接経費は、人件費、消耗品費、旅費、設備備品費等の経費で開発事業の実施に直接必要な経費とされていて、間接経費は、開発事業の実施には直接的にかかわらない経費で、直接経費に一定比率を乗じて得た額が支払われることとされている。
 また、委託費は中核機関が、再委託費は参画機関が、それぞれ経理事務等を行うこととされている。

(3) 委託費の額の確定

 参画機関は、毎年度、再委託業務が完了した場合は、再委託費の使用実績について再委託業務完了報告書を中核機関を通じて機構に提出しなければならないこととされており、中核機関は、参画機関から再委託業務完了報告書の提出を受けたときは、再委託業務の内容が適正であると認めた場合に再委託費の額を確定することとされている。
 そして、中核機関は、毎年度、受託業務が完了した場合は、委託費の使用実績について、受託業務完了報告書を機構に提出しなければならないこととされている。
 機構は、必要に応じて行う実地調査等により、受託業務完了報告書の内容が適正と認めた場合に再委託費を含む委託費の額を確定することとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、機構及び委託先等の9開発機関において、合規性等の観点から、委託費は開発機関において事務処理要領等に従って適切に管理されているか、設備備品及び消耗品の購入、役務の発注等に係る経理手続は適正に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。
 そして、これらの開発機関が行っている10開発課題について、納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、機構及び開発機関に報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 機構は、平成17年度に、学校法人東京理科大学(以下「東京理科大学」という。)に所属している教授をチームリーダーとする開発課題について、東京理科大学と委託契約を締結し、委託費として74,971,466円(直接経費57,671,466円、間接経費17,300,000円)を支払っている。そして、東京理科大学は、開発事業の一部を国立大学法人静岡大学(以下「静岡大学」という。)に所属している分担開発者である教授に実施させる必要があることから、静岡大学と再委託契約を締結し、上記委託費の中から再委託費として15,275,000円(直接経費11,750,000円、間接経費3,525,000円)を支払っている。
 検査したところ、東京理科大学が開発事業の一部を再委託した静岡大学における再委託費の経理について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 静岡大学は、上記の分担開発者から、再委託を受けた開発事業を実施するために必要なイオン注入作業を計2,268,000円で業者に発注して行ったとする納品書、請求書等の提出を受け、その作業代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際にはイオン注入作業は行われておらず、分担開発者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより静岡大学に架空の取引に係る作業代金を支払わせていた。そして、分担開発者は、2,268,000円全額を業者に預けて別途に経理し、その一部、計223,650円を消耗品の購入代金等の支払に充てていた。
イ 静岡大学は、同分担開発者から、再委託を受けた開発事業を実施するために必要な消耗品を計443,289円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際は、上記の消耗品とは異なる設備備品が納品されているなどしていた。

 したがって、静岡大学に対する適正な再委託費の額を算出すると、11,749,711円(直接経費9,038,711円、間接経費2,711,000円)となることから、3,525,289円(直接経費2,711,289円、間接経費814,000円)が過大に支払われており、ひいては機構から東京理科大学に支払われた委託費は3,525,289円が過大に支払われていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、再委託費を経理している静岡大学において、納品検査等が十分でなかったこと、前記の分担開発者において、再委託費の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、東京理科大学において、静岡大学から提出された再委託業務完了報告書等について調査及び確認が十分でなかったこと、機構において、開発機関及び事業実施者に対して委託費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。