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科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの


(348)−(350) 科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの

科目
(項)科学研究費補助事業費
部局等
独立行政法人日本学術振興会(平成15年9月30日以前は日本学術振興会)
補助の根拠
独立行政法人日本学術振興会法(平成14年法律第159号)(平成15年9月30日以前は日本学術振興会法(昭和42年法律第123号))
補助事業者
(事業主体)
大学長1、研究代表者等3、計4事業主体
補助事業の概要
我が国の学術を振興するため、あらゆる分野における優れた独創的・先駆的な学術研究を行うもの
上記に対する国庫補助金交付額の合計
39,710,000円
(平成14年度〜18年度)
不当と認める国庫補助金交付額
26,101,958円
(平成14年度〜18年度)

1 補助金の概要

(1) 科学研究費補助金の概要

 独立行政法人日本学術振興会(平成15年9月30日以前は日本学術振興会。以下「振興会」という。)は、独立行政法人日本学術振興会法(平成14年法律第159号。15年9月30日以前は日本学術振興会法(昭和42年法律第123号))等に基づき、文部科学省が所掌する科学研究費補助金の交付対象となる一部の研究種目等について、11年度から国の補助金を財源として、科学研究費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
 この補助金は、我が国の学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする研究助成費であり、基盤研究等の研究種目等がある。
 この補助金の交付の申請をすることができる者は、「独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究等)取扱要領」(平成15年規程第17号)等(以下「取扱要領」という。)により、〔1〕大学、大学共同利用機関等の学術研究を行う機関(以下「研究機関」という。)に所属する研究者が1人で科学研究を行う場合は、当該研究機関の代表者、〔2〕研究者2人以上が同一の研究課題について共同して科学研究を行う場合は、当該研究者の代表者(以下「研究代表者」という。)又は研究代表者の所属する研究機関の代表者(16年度からは、〔1〕 、 〔2〕 いずれの場合も研究代表者)等とされている。
 補助の対象となる経費は、「科学研究費補助金(科学研究費及び学術創成研究費)の取扱いについて」(平成15年文科振第92号文部科学省研究振興局長通知)等(以下「局長通知」という。)により、研究計画の遂行に必要な経費及び研究成果の取りまとめなどに必要な経費(直接経費)のほか、一部の研究種目については、研究の実施に伴い研究機関において必要となる管理等に係る経費(間接経費)も補助の対象とされている。

(2) 補助金の管理方法

 交付された補助金の管理方法は、局長通知により、研究代表者又は研究代表者と共同して研究計画の遂行に中心的役割を果たす研究分担者(以下「研究代表者等」という。)は、所属する研究機関に補助金の管理を行わせることとされている。そして、研究代表者等が所属する研究機関は、補助金及び納品書、請求書等の関係書類の管理を適切に行うこととされている。

(3) 補助事業の期間等

 局長通知によると、補助金による研究の実施期間は、研究実態に応じ、1年から6年までとされている。しかし、補助事業の期間は、補助金の交付対象年度の4月1日から翌年の3月31日までの1年間で区切られているので、研究代表者等はこの期間内に交付申請書に記載した研究計画を実施することとなる。
 このため、当該研究計画を実施するために使用する設備備品、消耗品等(以下「研究用物品」という。)を研究機関において購入することができる期間は、補助金の交付対象年度の4月1日から翌年の3月31日までとなる。


2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、交付された補助金が研究機関において取扱要領、局長通知等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、振興会及び37研究機関に係る260事業主体(3大学長及び257研究代表者等)において会計実地検査を行った。そして、これらの事業主体が行っている405研究課題について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、補助金の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、研究機関に報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 4事業主体(1大学長及び3研究代表者等)において、3研究代表者等が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより架空の取引に係る購入代金を所属する研究機関に支払わせて別途に経理していた。このため、補助金26,101,958円が過大に交付されていて不当と認められる。
 上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 振興会は、獨協医科大学医学部助教授を研究代表者とする研究課題(研究種目:基盤研究(B))を対象として、平成16、17両年度に、補助金計10,400,000円を交付しており、獨協医科大学が補助金の管理を行っている。同大学は、研究代表者から研究用物品を9,245,903円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際に上記の研究用物品を購入した額は174,982円にすぎず、差額の9,070,921円については、研究代表者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、研究代表者は9,070,921円全額を業者に預けて別途に経理していた。

 このような事態が生じていたのは、研究代表者等において、補助金の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、補助金を管理する研究機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、振興会において、研究代表者等及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。
 これを研究機関別・研究代表者等別に示すと次のとおりである。

 
研究機関名
研究代表者等
年度
事業数
補助金交付額
不当と認める補助金額
 
 
 
 
 
千円
千円

(348)

獨協医科大学
大学長及び研究代表者等A
14〜18
6
34,410
22,919

(349)

 同
大学長及び研究代表者E
15、16
2
3,500
1,488

(350)

吉備国際大学
研究代表者F
16、17
2
1,800
1,694
(348)−(350) の計
 
10
39,710
26,101