科目
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一般勘定(経常収益)
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部局等
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独立行政法人日本スポーツ振興センター
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契約の概要
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スポーツ施設等のうち事務所等を第三者に貸し付けるもの
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検査対象とした契約件数及び金額
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33件
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5564万余円
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(平成16事業年度〜18事業年度)
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一定の算定基準に基づき、貸付料を算定する必要があると認められる契約件数及び金額
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23件
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3021万余円
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(平成16事業年度〜18事業年度)
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上記の契約について、蔵管1号に基づき算定した場合に貸付料となる額
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5924万余円
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徴収できた貸付料
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2902万円
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(平成16事業年度〜18事業年度)
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独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「センター」という。)は、平成15年10月に日本体育・学校健康センターが解散した後、独立行政法人日本スポーツ振興センター法(平成14年法律第162号)に基づき設立された法人であり、スポーツの振興を図るため、スポーツ施設等を運営するなどしている。
センターは、国立霞ヶ丘競技場(陸上競技場、ラグビー場等)、国立代々木競技場、研究・支援施設等を備えた国立スポーツ科学センター等を設置しているほかに、国立霞ヶ丘競技場の敷地内に本部事務所を有している。そして、センターでは、業務に支障のない範囲において、その一部を第三者に貸し付けており、貸付けに当たっては、独立行政法人日本スポーツ振興センター固定資産管理規程(平成16年度規程第45号)第8条に基づき、原則として有償で行うこととしている。ただし、センターの業務遂行上、契約担当役が必要であると認めるときは、無償で貸し付けることができるとしている。
センターでは、食堂及び店舗を貸し付ける場合は、独立行政法人日本スポーツ振興センター食堂等貸付規程(平成15年度規程第53号)等において貸付料の算定方法等を定めているが、事務所等を貸し付ける場合は、貸付料の算定方法等に関する特段の規程を定めていない。このため、センターでは、事務所等の貸付けに当たり、従前から「国の庁舎等の使用又は収益を許可する場合の取扱いの基準について」(昭和33年蔵管第1号大蔵省管財局長通達。19年1月以降は「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」(平成19年1月財理第243号)。以下「蔵管1号」という。)に定める使用料算定基準に基づいて算定した額を、貸付契約における貸付料として徴することを慣行としている。
センターが設立された15年10月当時の蔵管1号の建物の使用料算定基準及び17年4月1日以後使用料を算定する場合に適用される蔵管1号の建物の使用料算定基準は、表1のとおりとなっている。
適用時期
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平成15年10月〜17年3月
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17年4月以降
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使用料算定基準 | 新規使用
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近隣取引事例(注)
を基に算定
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近隣取引事例を基に算定
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継続的使用
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前回の使用料×財務局長が設定した率×経年による残価変動率+土地に係る使用料
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前年次使用料との調整 | 継続の場合の上記算定額が前年次使用料の1.05倍を超える場合→前年次使用料の1.05倍前年次使用料の0.8倍に満たない場合→前年次使用料の0.8倍
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上記算定額が前年次使用料の1.2倍を超える場合→前年次使用料の1.2倍前年次使用料の0.8倍に満たない場合→前年次使用料の0.8倍
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このように、17年4月以降は、継続的使用の場合も原則として近隣取引事例を基に使用料を算定するが、その算定額が前年次使用料の1.2倍を超える場合は前年次使用料の1.2倍の額を使用料とすることとなっている。
本院は、センターの本部事務所及びスポーツ施設において、合規性、効率性等の観点から、その資産の管理及び事務手続は適正かつ公平に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、16事業年度から18事業年度までの11団体に対する事務所等に係る貸付契約(33件、貸付料計5564万余円)を対象として、賃貸借契約書等の書類及び貸付物件の現況を検査した。
検査したところ、10団体に対する貸付契約(23件、貸付料計3021万余円)において、事務所等の貸付料の算定に当たり、合理的な理由のないまま蔵管1号に基づく算定額とは異なる額を貸付料としていたり、蔵管1号とは異なる算定方法により貸付料を算定していたり、無償としていたりしていて、貸付先によって貸付料の取扱いが区々となっていた。
これを態様別に示すと、次のとおりである。
5団体 8件
これらは、合理的な理由がないまま前事業年度の貸付料と同じ額を貸付料とするなどしていたものである。
センターは、A団体に対する平成17事業年度の貸付料の算定に当たり、改正された蔵管1号により、貸付対象資産の近隣取引事例5件(渋谷区千駄ヶ谷4件、新宿区信濃町1件)を基にした算定額1645万余円が、16事業年度の貸付料394万余円の1.2倍の額である473万余円を超えていたため、473万余円を貸付料として算定したにもかかわらず、合理的な理由がないまま16事業年度と同額の394万余円を貸付料としていた。
そして、18事業年度においても、近隣取引事例を基にした算定額1581万余円が、17事業年度の貸付料394万余円の1.2倍の額である473万余円を超えていたため、473万余円を貸付料として算定したにもかかわらず、合理的な理由がないまま17事業年度と同額の394万余円を貸付料としていた。
1団体 3件
これは、合理的な理由がないまま、この1団体に対してのみ昭和63年当時の台帳価格に基づいて算定した額を貸付料としていたものである。
4団体 12件
これらは、センターの業務遂行上貸付料を無償とするほどの必要性があるとは認められないのに、貸付先が財政的に困難であることなどを理由に、無償での貸付けとしていたものである。
このように、事務所等の貸付けに当たり、蔵管1号に定める使用料算定基準に基づいて算定した額を貸付料として徴することを慣行とするとしながら、貸付先によって貸付料の取扱いが区々となっていて、貸付契約の透明性及び公平性が確保されておらず、適正な貸付料が徴収されていなかった事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記の10団体に対する貸付料の算定に当たり、毎事業年度蔵管1号に基づく算定額を貸付料としていれば、表2のとおり5924万余円となり、実際の貸付料計3021万余円との差額2902万余円が徴収できたと認められた。
事業年度
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区分
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平成16事業年度
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17事業年度
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18事業年度
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合計
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貸付料(A)
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223
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13,911
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16,081
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30,216
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蔵管1号に基づく算定額(B)(注)
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6,344
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23,209
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29,691
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59,246
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差額(B)-(A)
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6,121
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9,298
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13,610
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29,029
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このような事態が生じていたのは、センターにおいて、事務所等を貸し付ける場合の貸付料の算定基準等を整備していないことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、センターでは、事務所等に係る貸付契約の透明性及び公平性を確保し、適正な貸付料を徴収するため、平成19年10月に、蔵管1号に準じて貸付料を算定すること及び貸付けを無償とする場合の明確な基準を定めた独立行政法人日本スポーツ振興センター不動産貸付等細則を制定し、19年11月以後締結する貸付契約に適用することとする処置を講じた。