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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第28 東日本高速道路株式会社、第30 中日本高速道路株式会社、第31 西日本高速道路株式会社)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

鋼道路橋の塗装仕様の選定について、塗装の特性等を考慮して見直すことによりライフサイクルコストの低減を図るよう改善させたもの


(4)−(6) 鋼道路橋の塗装仕様の選定について、塗装の特性等を考慮して見直すことによりライフサイクルコストの低減を図るよう改善させたもの

会社名
(1)
(2)
(3)
東日本高速道路株式会社
中日本高速道路株式会社
西日本高速道路株式会社
科目
仕掛道路資産
道路資産完成原価
管理費用
部局等
(1)
(2)
(3)
4支社
4支社
4支社
鋼道路橋の重防食塗装の概要
海浜地区や都市部等で飛来塩分及び自動車の排気ガス等の影響を受けるなど厳しい環境における鋼道路橋に対し、鋼材の腐食を防止するため耐久性の高い仕様により塗装を行うもの
重防食塗装のうちC2塗装に係る鋼道路橋、面積
(1)
(2)
(3)
61橋 454,418m2
22橋 213,310m2
30橋 128,267m2
重防食塗装のうちC2塗装に要するライフサイクルコスト(40年後試算額)
(1)
(2)
(3)
76億8829万余円
36億2840万余円
21億2346万余円
 
上記のC2塗装をC4塗装とした際の効果額(40年後試算額)
(1)
(2)
(3)
25億4973万円
11億9282万円
6億4402万円
 

1 鋼道路橋の概要

(1) 鋼道路橋の概要

 東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社及び西日本高速道路株式会社(以下「各会社」という。)では、高速道路の建設工事の一環として、鋼道路橋を建設しており、建設後の供用された鋼道路橋は、その性能等を低下させないよう健全な状態に保つため維持管理を実施している。
 鋼道路橋における主たる損傷形態の一つである鋼材の腐食は、これを防止して耐久性の向上を図ることが重要であり、そのための対策として、鋼道路橋には塗装が施工されている。

(2) 塗装仕様の内容

 各会社が建設する鋼道路橋の塗装については、平成9年10月に改定された「設計要領第二集」(旧日本道路公団制定。以下「設計要領」という。)に基づき行われている。
 そして、塗装仕様の選定については、海浜地区や都市部等で飛来塩分及び自動車の排気ガスや工場の煤煙の影響を受けるなど厳しい環境における鋼道路橋には、供用後の維持管理等も考慮し、塗膜厚が厚く耐久性が高い重防食塗装を採用することとしている。
 重防食塗装には、「施工管理要領基準集」(旧日本道路公団制定。以下「管理基準」という。) により、ポリウレタン樹脂塗料を使用するC2塗装とふっ素樹脂塗料を使用するC4塗装の仕様がある。

(3) 工場塗装単価の内容

 17、18両年度に建設している鋼道路橋の工場塗装の各会社の平均塗装単価は、C2塗装は4,155円/m2 から4,640円/m2 、C4塗装は4,703円/m2 から5,009円/m2 となっており、C4塗装はC2塗装に比べ1m2 当たり1.05倍から1.20倍(単価差268円/m2 から854円/m2 )となっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点及び方法)

 近年、鋼道路橋に関しては、長期的な視点から、鋼道路橋の建設から塗替塗装等の維持補修まで全体の費用であるライフサイクルコスト(Life Cycle Cost。以下「LCC」という。)をより小さくすることが重要視されてきており、鋼道路橋のような社会資本に対するLCC低減についての社会的要求が高まっている状況である。
 そして、現行基準となっている設計要領等の改定が9年10月に行われ、約10年が経過し、また、社団法人日本道路協会制定の「鋼道路橋塗装・防食便覧」(以下「防食便覧」という。)が17年12月に改訂され、LCC低減のために耐久性に優れたふっ素樹脂塗料を用いた重防食塗装の仕様が明示されている。
 そこで、本院は、各会社において、会計実地検査を行った。そして、経済性等の観点から重防食塗装仕様の選定が適切なものとなっているかなどに着眼し、設計書等の書類及び現地の状況を検査した。

(検査の対象)

 検査に当たっては、現在適用している設計要領及び管理基準に基づき建設している10年度以降の鋼道路橋のうち、重防食塗装であるC2塗装を採用している鋼道路橋113橋、塗装面積795,995m2 及びC4塗装を採用している鋼道路橋101橋、塗装面積734,406m2 を検査の対象とした。

(検査の結果)

(1) 塗装仕様の選定状況

 各会社の工事事務所等では、鋼道路橋の塗装仕様を重防食塗装とする場合、C2塗装又はC4塗装のいずれの塗装仕様を選定するかの基準が設計要領等において特に明示されていないなどのため、塗装仕様の選定が区々となっていた。

(2) C2塗装とC4塗装の比較

 17年12月に防食便覧が改訂され、鋼道路橋に対してLCC低減の視点から、耐久性に優れたふっ素樹脂塗料を用いた重防食塗装であるC5塗装(各会社管理基準のC4塗装と同等の仕様、以下これを含めて「C4塗装」という。)を基本とすることが明示された。
 そして、塗装面の弱点となる錆発生の可能性について、各会社が18年度に行った傷部における防錆性試験の結果等をみると、C4塗装はC2塗装に比べ錆発生に要する日数がかなり抑制される傾向にあるなど、C4塗装の方が防錆効果が高いものとなっている。

(3) 塗装に関するLCCの試算

 上記のように、各試験結果等からみると、C4塗装は傷部からの錆の発生をかなり抑制することが可能であり、C2塗装に比べ耐久性が高いものと認められるが、各会社では塗装の耐用年数について、実橋の塗装実態調査などの試験結果が十分得られていないとして、LCCの比較計算に必要な耐用年数の算出には至っていない。
 そこで、LCCの比較計算に当たっては、社団法人日本鋼構造協会の鋼橋塗装小委員会の報告書(14年7月)において、室内実験等を基に推定している期待耐用年数(C2塗装20年、C4塗装30年)を採用してこの期間経過ごとに全面塗替えを行うこととし、また、将来発生する塗替塗装単価については代表的な地区での単価により、両塗装のLCCの試算を行った。東日本高速道路株式会社の単価による試算結果を例にすると、次 のとおりとなる。

図 C2塗装とC4塗装のLCCの比較

図C2塗装とC4塗装のLCCの比較


 上図のとおり、C2塗装の場合、40年経過時では新設塗装後、塗替塗装を2回行うこととなり、この間に必要な1m2 当たりの塗装費用を試算すると、東日本高速道路株式会社では16,919円/m2 となる。そして、同様に中日本高速道路株式会社では17,010円/m2 、西日本高速道路株式会社では16,555円/m2 となる。
 また、C4塗装の場合、40年経過時では新設塗装後、塗替塗装を1回行うこととなり、この間に必要な1m2 当たりの塗装費用を試算すると、東日本高速道路株式会社では11,308円/m2 となる。そして、同様に中日本高速道路株式会社では11,418円/m2 、西日本高速道路株式会社では11,534円/m2 となる。
 そして、本件対象の鋼道路橋については、C4塗装の塗装単価がC2塗装に比べて高いことを考慮しても上記のとおり40年経過以降は、C4塗装の塗替回数はC2塗装の塗替回数を下回ることになり、塗装費用を比較するとC4塗装の方が1m2 当たり5,021円から5,611円有利性が見受けられ、C2塗装をC4塗装とした場合の効果額は、40年後の東日本高速道路株式会社で25億4973万余円、中日本高速道路株式会社で11億9282万余円、西日本高速道路株式会社で6億4402万余円と算定される。
 このように、重防食塗装仕様の選定について、明確な基準を設けていないことは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因) 

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 各会社が重防食塗装仕様の耐用年数の算出に至っていなかったなどのため、設計要領、管理基準等において、C2塗装、C4塗装のいずれの重防食塗装仕様を選定すべきかについての基準が明示されていなかったこと

イ 各会社において、鋼道路橋に対する経済的な塗装仕様の選定に向けた取組が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、各会社では、19年7、8月に、重防食塗装仕様の選定に当たっては、防食性能及び塗装費用の価格差を総合的に判断した結果、C2塗装を廃止し、C4塗装を採用するよう、設計要領、管理基準等を改定し、同年8月以降から適用する処置を講じた。